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体育祭
吹部デモンストレーション
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とうとうこの時がやってきた。
昼休憩を終えて着替えて、鏡の前で最終チェックを済ませた。
セクションリーダーの証、この紺ジャケを着るのは本当に嫌だった。
「ゴメン…でも諦められない。」
マーチングのための編成会議の場で、遥先輩は金管みんなに頭を下げた。
行進の編成の都合で、金管の紺ジャケを着るセクションリーダーはトランペットから出るのが慣例だったけれど、指揮の赤ジャケットに憧れて入学した遥先輩は指揮者オーディションを受けたい、と言った。
多かれ少なかれ、みんな同じ気持ちでこの学校を選んでいるから、先輩の気持ちはよくわかる。反対はなかった。
無事に指揮者に合格した遥先輩は顧問とトランペットの先輩と相談して、体育祭のトランペットのパートリーダーに私を指名した。
それはそのまま金管セクションリーダーへの指名と同義になる。
反発は強かった。特に打楽器の先輩から猛烈に突き上げられた。
指揮の遥先輩からリーダーとしての自覚を何度も問われた。
一緒に並ぶ金管の先輩達には見つけられない小さなアラを容赦なく指摘された。
リーダーがしっかりしないとダメ!何度も責められた。
必死で練習した。それでも毎日泣いた。
泣いている事すらも責められた。
救いは金管の仲間のサポートと応援団の練習だった。
そして和津くんの一言が世界を変えた。
「こうやって離れてみていると、全体が良くわかるよな。」
和津くんの言葉は固定された太鼓の位置から見る応援団の隊列のズレに対してのもの。
少しみんなの間隔が変わるだけで全体の統一感は崩れていく。
そうか。
突き上げじゃない、アラじゃない。
動かない打楽器や指揮者からは良く見えるんだ。
私に至らないところがあるから。
そう気付いた。
それからまた必死で練習した。必死で考えた。
リーダーとして今まで見えてこなかったものが朧げに見えてきた。遠慮して言えなかった事が言えるようになった。
とうとうこの時がやって来た。
今の私を全部出さなくちゃいけない!
私のソロからのスタート。
移動。
吹いて移動。
吹きながら移動。
一曲目が終わる。
ダンス隊、ガード隊…。
どんどん時間が過ぎていく。
そして最後の曲が終わる。
視界に応援団の法被が見えた。
…和津くんだ。
和津くん、ありがとう。
和津くんの言葉で、世界が変わった。
やり切ったと思えたよ。
昼休憩を終えて着替えて、鏡の前で最終チェックを済ませた。
セクションリーダーの証、この紺ジャケを着るのは本当に嫌だった。
「ゴメン…でも諦められない。」
マーチングのための編成会議の場で、遥先輩は金管みんなに頭を下げた。
行進の編成の都合で、金管の紺ジャケを着るセクションリーダーはトランペットから出るのが慣例だったけれど、指揮の赤ジャケットに憧れて入学した遥先輩は指揮者オーディションを受けたい、と言った。
多かれ少なかれ、みんな同じ気持ちでこの学校を選んでいるから、先輩の気持ちはよくわかる。反対はなかった。
無事に指揮者に合格した遥先輩は顧問とトランペットの先輩と相談して、体育祭のトランペットのパートリーダーに私を指名した。
それはそのまま金管セクションリーダーへの指名と同義になる。
反発は強かった。特に打楽器の先輩から猛烈に突き上げられた。
指揮の遥先輩からリーダーとしての自覚を何度も問われた。
一緒に並ぶ金管の先輩達には見つけられない小さなアラを容赦なく指摘された。
リーダーがしっかりしないとダメ!何度も責められた。
必死で練習した。それでも毎日泣いた。
泣いている事すらも責められた。
救いは金管の仲間のサポートと応援団の練習だった。
そして和津くんの一言が世界を変えた。
「こうやって離れてみていると、全体が良くわかるよな。」
和津くんの言葉は固定された太鼓の位置から見る応援団の隊列のズレに対してのもの。
少しみんなの間隔が変わるだけで全体の統一感は崩れていく。
そうか。
突き上げじゃない、アラじゃない。
動かない打楽器や指揮者からは良く見えるんだ。
私に至らないところがあるから。
そう気付いた。
それからまた必死で練習した。必死で考えた。
リーダーとして今まで見えてこなかったものが朧げに見えてきた。遠慮して言えなかった事が言えるようになった。
とうとうこの時がやって来た。
今の私を全部出さなくちゃいけない!
私のソロからのスタート。
移動。
吹いて移動。
吹きながら移動。
一曲目が終わる。
ダンス隊、ガード隊…。
どんどん時間が過ぎていく。
そして最後の曲が終わる。
視界に応援団の法被が見えた。
…和津くんだ。
和津くん、ありがとう。
和津くんの言葉で、世界が変わった。
やり切ったと思えたよ。
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