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オマケ
お披露目4
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馬車はゆっくりと進んでいく。
後ろの架台に立ったゼットンとサラが小声で変更した点を教えてくれる。
「このまま大聖堂へ向かいます。」
ここで大司教に御目通りをし、私に国教会の役職が与えられる。
「ルートをいくつか割愛できますが、如何いたしますか?」
「うーん、大丈夫そう。」
ルートを減らすという事は待っていてくれた人の前を通らないという事。そんな事できるわけがない。
さっきまで立つことすらままならなかったのに、今は全然平気だ。なんなら少し小腹も空いた気さえする。今ならなんでも食べられそう。
怖いから食べないけど。
やっぱり、なんとかなるもんじゃない?
堀を渡り、馬車は貴族街へと入っていく。
この道は慣れた道だ、馬車は私の生家へと向かっているんだから。
結婚式とお披露目が同じ日だったなら、私は実家から父と共に大聖堂に向かっていたはずだった。
挙式をし、国教会の位を拝し、2人で王城に行き、国王陛下夫妻にご報告。それからバルコニーでのお披露目。
私達の場合、先に領地で挙式を済ませてしまった為、順番があちこち入れ替わってしまった。
今日、実家に立ち寄る必要はなかった。
だけど、これはブルーノ殿下がどうしても譲れないだろうと仰って下さった。
通常とは違う過程で嫁ぐことになった私、それでも私を送り出した父母への謝意らしい。
家に近づくにつれて、身知った顔が沿道に散見し始めた。
幼馴染、出入りの商人、よくしてくれたみんながにこやかに手を振ってくれる。
…漸く会えた。元気な顔を見せられた。
「レーチェーぇ!!」
親友のノックスの顔が見えた途端に涙が込み上げた。長く手紙のやり取りは家族だけしか許されなかったから、ノックスにはきっとたくさん心配かけたに違いない。
「個人へのお声がけはダメですよ。」
事前に儀典部の官僚達にそう釘を刺されていたけれど、無理だ。
「ノックスー!ノックスー!」
思いっきり手を振った。
「もう!バカぁ!!」
声がけはされない、と予め知ってたっぽいノックスの方が私を嗜める。
だけどサラは何も言わないし、エルに限っては、
「異例尽くしの俺達だから、好きにしたらいいさ。」
とまで言ってくれる。
その言葉に甘え開き直ることにした。
気付いた見知った人には一人一人の名前を呼んだ。
時に笑いながら、そして涙を流しながら、たくさんの人に向かって笑顔を見せて手を振り続けた。
立ち寄るはずだった実家、私が時間に遅れたせいで前に停車するだけになった。
家の門の前に立つのは兄と7歳の弟。そして使用人達。父と母は既に大聖堂にいってしまったらしい、ああ、ブルーノ殿下の謝意も私は無碍にしてしまった。
「兄様!!ディック!!」
少し高い位置に座る私に少しでも近付けようと兄が弟のディックを抱き上げた。
「ねえ様、いつお戻りになるの?」
母親似でまだ可愛らしいディックがあどけなく聞いてくる。
…だよね。ディックはそう思うね。
ちょっと行ってくる、そう言ってそれっきりなんだもん。
どう答えようと迷っていると隣のエルが、
「もう帰さないんだ。レイチェルがいないと俺が寂しいんだよね、ごめんな、ディック。レイチェルに会いたくなったら、ディックがいつでもお城に来ればいいよ。」
と優しく語りかけてくれる。
「じゃあ明日行く!!」
「うん、いいよ。おいで。」
ワシャっとエルがディックの髪の毛をかき混ぜると、ディックは嬉しそうにクシャリと微笑んだ。
「おめでとうございます。ライナス公爵殿下、レイチェル様。」
「ありがとう。でも無礼講で構わない、今だけは兄として声掛けしてやってくれ。」
他人行儀な兄はエルに嗜められ、すかさず兄の表情に変わる。
「レーチェ、おめでとう。」
「ありがとう、兄様。」
使用人ひとりひとりに声を掛けた。私付きだったドロシーは、涙で化粧が崩れて散々な顔になっている。
けれど笑ってた。
それがなんだか赦された気になって、嬉しかった。
「ドロシー、元気だった?」
「はい!!レイチェル様は?」
「もちろん元気だったわよ。」
可能な限り腕を伸ばして、ドロシーの手を取った。
「あなたこれからどうするの?」
もし解雇とかになるんならもう一度私に侍って欲しかったんだけど、ドロシーはあっさりと、
「私、リアム様の奥方様付きになります!」
と笑顔で答えられて…。
えっ!?兄様結婚するの!?
驚きの視線を兄様に向けた。
「まだ誰と決まった訳じゃない。ウチそれどころじゃなかったから。だけど近いうちに。グレイシア公爵が仲人だ。」
少し照れていそうだけども、穏やかなやり取りに、家が落ち着いているんだと実感した。
きっといろんな事があったはずなのに、父も母も私が心配しそうな事は一切言わなかったから。
これで憂いなく…。
「そうなのね、おめでとう。決まったら教えてね。」
「ああ、決まったらな。」
そろそろお時間が…とゼットンにせかされて、みんなが馬車から離れていく。
「いってきます!!」
と笑顔で手を振った。
ようやくまたひとつ、やり残した事が払拭できたのがともかく嬉しかった。
後ろの架台に立ったゼットンとサラが小声で変更した点を教えてくれる。
「このまま大聖堂へ向かいます。」
ここで大司教に御目通りをし、私に国教会の役職が与えられる。
「ルートをいくつか割愛できますが、如何いたしますか?」
「うーん、大丈夫そう。」
ルートを減らすという事は待っていてくれた人の前を通らないという事。そんな事できるわけがない。
さっきまで立つことすらままならなかったのに、今は全然平気だ。なんなら少し小腹も空いた気さえする。今ならなんでも食べられそう。
怖いから食べないけど。
やっぱり、なんとかなるもんじゃない?
堀を渡り、馬車は貴族街へと入っていく。
この道は慣れた道だ、馬車は私の生家へと向かっているんだから。
結婚式とお披露目が同じ日だったなら、私は実家から父と共に大聖堂に向かっていたはずだった。
挙式をし、国教会の位を拝し、2人で王城に行き、国王陛下夫妻にご報告。それからバルコニーでのお披露目。
私達の場合、先に領地で挙式を済ませてしまった為、順番があちこち入れ替わってしまった。
今日、実家に立ち寄る必要はなかった。
だけど、これはブルーノ殿下がどうしても譲れないだろうと仰って下さった。
通常とは違う過程で嫁ぐことになった私、それでも私を送り出した父母への謝意らしい。
家に近づくにつれて、身知った顔が沿道に散見し始めた。
幼馴染、出入りの商人、よくしてくれたみんながにこやかに手を振ってくれる。
…漸く会えた。元気な顔を見せられた。
「レーチェーぇ!!」
親友のノックスの顔が見えた途端に涙が込み上げた。長く手紙のやり取りは家族だけしか許されなかったから、ノックスにはきっとたくさん心配かけたに違いない。
「個人へのお声がけはダメですよ。」
事前に儀典部の官僚達にそう釘を刺されていたけれど、無理だ。
「ノックスー!ノックスー!」
思いっきり手を振った。
「もう!バカぁ!!」
声がけはされない、と予め知ってたっぽいノックスの方が私を嗜める。
だけどサラは何も言わないし、エルに限っては、
「異例尽くしの俺達だから、好きにしたらいいさ。」
とまで言ってくれる。
その言葉に甘え開き直ることにした。
気付いた見知った人には一人一人の名前を呼んだ。
時に笑いながら、そして涙を流しながら、たくさんの人に向かって笑顔を見せて手を振り続けた。
立ち寄るはずだった実家、私が時間に遅れたせいで前に停車するだけになった。
家の門の前に立つのは兄と7歳の弟。そして使用人達。父と母は既に大聖堂にいってしまったらしい、ああ、ブルーノ殿下の謝意も私は無碍にしてしまった。
「兄様!!ディック!!」
少し高い位置に座る私に少しでも近付けようと兄が弟のディックを抱き上げた。
「ねえ様、いつお戻りになるの?」
母親似でまだ可愛らしいディックがあどけなく聞いてくる。
…だよね。ディックはそう思うね。
ちょっと行ってくる、そう言ってそれっきりなんだもん。
どう答えようと迷っていると隣のエルが、
「もう帰さないんだ。レイチェルがいないと俺が寂しいんだよね、ごめんな、ディック。レイチェルに会いたくなったら、ディックがいつでもお城に来ればいいよ。」
と優しく語りかけてくれる。
「じゃあ明日行く!!」
「うん、いいよ。おいで。」
ワシャっとエルがディックの髪の毛をかき混ぜると、ディックは嬉しそうにクシャリと微笑んだ。
「おめでとうございます。ライナス公爵殿下、レイチェル様。」
「ありがとう。でも無礼講で構わない、今だけは兄として声掛けしてやってくれ。」
他人行儀な兄はエルに嗜められ、すかさず兄の表情に変わる。
「レーチェ、おめでとう。」
「ありがとう、兄様。」
使用人ひとりひとりに声を掛けた。私付きだったドロシーは、涙で化粧が崩れて散々な顔になっている。
けれど笑ってた。
それがなんだか赦された気になって、嬉しかった。
「ドロシー、元気だった?」
「はい!!レイチェル様は?」
「もちろん元気だったわよ。」
可能な限り腕を伸ばして、ドロシーの手を取った。
「あなたこれからどうするの?」
もし解雇とかになるんならもう一度私に侍って欲しかったんだけど、ドロシーはあっさりと、
「私、リアム様の奥方様付きになります!」
と笑顔で答えられて…。
えっ!?兄様結婚するの!?
驚きの視線を兄様に向けた。
「まだ誰と決まった訳じゃない。ウチそれどころじゃなかったから。だけど近いうちに。グレイシア公爵が仲人だ。」
少し照れていそうだけども、穏やかなやり取りに、家が落ち着いているんだと実感した。
きっといろんな事があったはずなのに、父も母も私が心配しそうな事は一切言わなかったから。
これで憂いなく…。
「そうなのね、おめでとう。決まったら教えてね。」
「ああ、決まったらな。」
そろそろお時間が…とゼットンにせかされて、みんなが馬車から離れていく。
「いってきます!!」
と笑顔で手を振った。
ようやくまたひとつ、やり残した事が払拭できたのがともかく嬉しかった。
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