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オマケ

占い師4

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城に帰ったアレンを待ち受けていたのは、ハータオーリ…ではなくて、アイリーン妃殿下のおねだりだった。

「ねえ、7日でいいの!ウッドバーンに行かせて。」
「イヤイヤ、アイリーン様の予定はライラと相談してくださいよ。」
「それがね、ライラはいいよって言ってくれてるのに、アリがダメって言うの。
一緒じゃなきゃダメだ、って。
だからアリの予定をこうー、ちょちょいっと調整してくれない?」

可愛らしく首を傾げるアイリーン様だけど。それはアリストリア殿下には通用するかもしれないが、アレンにはもう全く響かない。

アイリーン様がこんなだから、気をつけろとか言われるのだ。
考えるまでもなく答えはひとつだけ。

「無理です!先月エリールに行ってきたばかりじゃないですか!あの時ずらした予定がまだ残ってます。
来週にはリンデンバーグの王子が外遊でやってきます。アリストリア様にはそのお相手をして頂かないと…。」

途端にアイリーン様はムウっと頬を膨らませたけれど、アイリーン様のお願いをまともに聞いていたら、公務はちいっとも進まない。

その時ふと思い出した。

「アイリーン様、ウッドバーンといえば、ルバーン神話のことを聞いても良いですか?
ハータオーリのことなんですが?」
「ハータオーリ?何それ?」
「工芸の女神…と聞きましたが?」
「女神?そんなのいないわよ?」

はっ?いない?
訝しげにアイリーン様は私を見るけれど、ルバーン神話について少し解説をしてくださった。

「ルバーン神は唯一神だから、他の神はいないの。身を切り分けて創り出した神の子ならいるけど、それには性別はないの。
ハータは麦、オーリは人って言う意味だけど…。麦の人って?言葉が繋がらないわ。

そうね、もし工芸の女神を直訳するなら、工芸はタルカ、女性はハンナ、神の子ならラブーブ。
タルカハンナ、タルカラブーブ…かしら?
ねえ、どうしたの?急に変な事言い出して。」

「いえ…なんでもないです。忘れてください。」

既に察した。やはりあの占い師はインチキだったのだ。
ニルスにとって一番身近な外国はサトラリアやウォルソンだけれど、その次に近しいのは一時期ニルスの植民地だったザイモックを抱えるウッドバーンだ。
しかし、全く違う文化圏にあるためにエキゾチックに捉えられることもある。

…くそ、してやられた。

あの占い師、絶対とっちめてやる!!

次の日、出勤したホーキンスもどこか高揚した様子で、「絶対とっ捕まえてやりましょう!!」と意気込んでいた。

ルカリオ宰相閣下に直訴した時、閣下は初めは鼻で笑って、
「流行りなんですからすぐに沈静化しますよ。ああいったのは放っておけばその内に淘汰されます。」
と相手にもしてくれなかった。

ホーキンスと2人で執拗に改善の必要性を訴える。
「そんなに言うなら勝手にどうぞ。」
と言質を取り付けて、あの館に警ら隊と踏み込んだ時には、既に屋敷はもぬけの殻だった。

クソっ!してやられたのだ。あの詐欺占い師は、適当な事を吹き込んで逃げる時間を稼ぎ出したのだ!
あまりの悔しさにホーキンスと2人で拳を握り締め歯を食いしばる。

「占い如きに振り回されるようなことが今後起きないように。」
報告に行ったとき、どこか冷めた視線で自分を見る閣下と、気の毒そうに見つめるライラの視線が痛い。

「ああいう輩はすぐにまたどこかに現れます。次は絶対にとっ捕まえましょう!!」
とホーキンスと2人で誓い合った。
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