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アナン
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アナンはその場にいる全ての者に剣を投げ捨てさせた。
そして全ての者に隣にいる者の手首を後ろ手に縛りつけるように命じた。
フーシンにジンシの腕を縛らせて、そのフーシンの腕をフェイに縛らせた。
「母上、もう無駄ですよ。」
フェイが静かに言った。
「わかっている。」
「それなら何故?」
「ここは人が多くてうるさい、フェイ、ジンシを連れて付いてこい。」
アナンはリーエンを抱いたまま歩き出した。フェイがジンシを引っ立てて後に続く。
アナンは舞台のある場所の後ろの壁、1枚の壁画の前で止まった。
「ふん、ハンジュのための秘密通路が、その息子の死に役立つとは滑稽だ、まさしく最高の余興だな。…フェイ入れ!」
アナンが靴先で絵を蹴り飛ばすと、絵がくるりと回った。
どんでん返しの抜け道だった。
ジンシを押し込みながらフェイが行く、アナンもまた通路に入った。
扉を閉める前、アナンは何か液体の入った容器を広間へと蹴り飛ばし、通路に挿してあった松明を投げ入れた。
…鼻につく油の匂い、火を放ったか。
…ハル、頼むぞ。
通路を進み、螺旋階段を降りる。
中央の柱から板が伸びて、周りは柵で覆われていて、まるで鳥かごのような階段を下へ下へと降りていく。
…まずいな。この螺旋階段は動いた階数がわかりにくい…。
ジンシに少し焦りが生まれる。
一番下まで降りきった先には何もない。
「ここに立て。」
アナンが示したのは少しだけ敷石の色が違う大きな平石の上だった。
「フン、やはり全員は無理か。」
そう言うとアナンはリーエンの首に掛かっていたロープをフェイの腰に括り付けた。
「フェイ、不甲斐ない母を許せ。罪は全て我に押し付けよ。」
アナンはリーエンを押し付けるように差し出して、フェイが俺とリーエンを包み込むように抱き込むと、
「母上、後程。」
とアナンに向かって言い、
「ふん!もう会いたくもないわ、来なくていい。」
とアナンは答えた。
アナンがまるで虫を踏み潰すかのように、大きく床を踏みつける。
そのまま瞬間、足元が崩れ落ち、3人は暗闇の下に落ちていった。
落ちた先は小さな何もない部屋。
「ここは…?」リーエンが呟いた。答えたのはフェイだった。
「奈落だ。」
「ならく?」
「どちらのだ?」
奈落には2種ある。敵を落とすものと味方を守るものだ。
「守る方だ。あの螺旋階段は死のカゴだ。おそらく今は毒が噴き出ている。」
「だからか、火を放ったのは。」
「ああそうだ、誰も入れないように。」
死のカゴの中で死ぬのはアナンだけになるように。
毒は上に上にと登って行くからここは安全だ。ただ毒が抜け空気が入れ替わるまでは誰もここには来れない。
見上げた天井にはポッカリと穴が開いている。
石壁の下の方は手のひら程の大きさの板の壁がいくつもある。
フェイは俺とリーエンの縄を全て切った。
「嵌っている板を壊してくれ。空気の道がある。」
下から空気を入れると上に登って行く風が出来るのだそうだ。更に毒がこちらに来ないように出来る、らしい。
「しばらくは誰も来れない。俺を殺しても良いが死に体と過ごす羽目になる。
しばらく待て。いずれ影が来るだろう。」
「兄上、聞いても良いか?なぜこのようなことを?」
「ふん、こんな狭い場所で黙っていても気が重いだけだな、わかった話してやる。」
そして全ての者に隣にいる者の手首を後ろ手に縛りつけるように命じた。
フーシンにジンシの腕を縛らせて、そのフーシンの腕をフェイに縛らせた。
「母上、もう無駄ですよ。」
フェイが静かに言った。
「わかっている。」
「それなら何故?」
「ここは人が多くてうるさい、フェイ、ジンシを連れて付いてこい。」
アナンはリーエンを抱いたまま歩き出した。フェイがジンシを引っ立てて後に続く。
アナンは舞台のある場所の後ろの壁、1枚の壁画の前で止まった。
「ふん、ハンジュのための秘密通路が、その息子の死に役立つとは滑稽だ、まさしく最高の余興だな。…フェイ入れ!」
アナンが靴先で絵を蹴り飛ばすと、絵がくるりと回った。
どんでん返しの抜け道だった。
ジンシを押し込みながらフェイが行く、アナンもまた通路に入った。
扉を閉める前、アナンは何か液体の入った容器を広間へと蹴り飛ばし、通路に挿してあった松明を投げ入れた。
…鼻につく油の匂い、火を放ったか。
…ハル、頼むぞ。
通路を進み、螺旋階段を降りる。
中央の柱から板が伸びて、周りは柵で覆われていて、まるで鳥かごのような階段を下へ下へと降りていく。
…まずいな。この螺旋階段は動いた階数がわかりにくい…。
ジンシに少し焦りが生まれる。
一番下まで降りきった先には何もない。
「ここに立て。」
アナンが示したのは少しだけ敷石の色が違う大きな平石の上だった。
「フン、やはり全員は無理か。」
そう言うとアナンはリーエンの首に掛かっていたロープをフェイの腰に括り付けた。
「フェイ、不甲斐ない母を許せ。罪は全て我に押し付けよ。」
アナンはリーエンを押し付けるように差し出して、フェイが俺とリーエンを包み込むように抱き込むと、
「母上、後程。」
とアナンに向かって言い、
「ふん!もう会いたくもないわ、来なくていい。」
とアナンは答えた。
アナンがまるで虫を踏み潰すかのように、大きく床を踏みつける。
そのまま瞬間、足元が崩れ落ち、3人は暗闇の下に落ちていった。
落ちた先は小さな何もない部屋。
「ここは…?」リーエンが呟いた。答えたのはフェイだった。
「奈落だ。」
「ならく?」
「どちらのだ?」
奈落には2種ある。敵を落とすものと味方を守るものだ。
「守る方だ。あの螺旋階段は死のカゴだ。おそらく今は毒が噴き出ている。」
「だからか、火を放ったのは。」
「ああそうだ、誰も入れないように。」
死のカゴの中で死ぬのはアナンだけになるように。
毒は上に上にと登って行くからここは安全だ。ただ毒が抜け空気が入れ替わるまでは誰もここには来れない。
見上げた天井にはポッカリと穴が開いている。
石壁の下の方は手のひら程の大きさの板の壁がいくつもある。
フェイは俺とリーエンの縄を全て切った。
「嵌っている板を壊してくれ。空気の道がある。」
下から空気を入れると上に登って行く風が出来るのだそうだ。更に毒がこちらに来ないように出来る、らしい。
「しばらくは誰も来れない。俺を殺しても良いが死に体と過ごす羽目になる。
しばらく待て。いずれ影が来るだろう。」
「兄上、聞いても良いか?なぜこのようなことを?」
「ふん、こんな狭い場所で黙っていても気が重いだけだな、わかった話してやる。」
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