運命のひと。ー暗転ー

破落戸

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 自ら地獄耳だと言っていた彼の名前を、小さく呟く。ボソボソとした私の話し方に「もうちょいハッキリ喋れよ」と何度か私に注意しつつも、彼が私の言葉を聞き逃すことはなかった。だというのに、今の彼は、何の反応も示してくれない。応えてくれない。私の声なんて聞こえていない。

 刀という武器を用いて相手を斬りつける、というよりもあれは、刀を鈍器か何かと勘違いして、相手を無茶苦茶に殴りにかかっていると言った方が正しい気がする。その剣筋は、素人目から見ても無茶苦茶だ。

 生きる為に、自身の腹に納める食い物としての標的を定め、獲物を全身全霊で狩り取ろうとする獅子と言うにも、また違う。今の岡崎さんは、狩りそのものを、獲物を痛め付ける行為を楽しんでいる。そんな風にしか見えなかった。

 瞳孔の開いた赤い瞳は澄み切っていて、透明度が高い。深みのある赤は喪われていた。瞬きもせず開ききった双眼は、太刀川さんから目を離すことはない。対照的に、太刀川さんの青も一瞬一瞬を逃すことなく、岡崎さんの動きを見極めている。完全に理性が飛んでいるとしか思えない人間離れした動きで、刀を滅茶苦茶に振り回してくる岡崎さんの動きに対処する太刀川さんに、今まで僅ながらにあった余裕は、全く見られなくなった。

 けれど、太刀川さんの表情も、岡崎さんとそう変わらない程には、今に見合うものではなかった。

 ひどく愉しそうだ。いつもの気だるげな表情は息を潜め、生き生きとしている。岡崎さんに殴られた痣を頬に蓄え、汗を滲ませている。にも関わらず、彼も、うっすらと笑っているのだ。いつものニヒルな笑い方とは違う。あんなにも生気に溢れた太刀川さんの顔を見たのは初めてだ。命綱を渡っている様には見えない。太刀川さんもまた、ギリギリのラインで為される岡﨑さんとの命のやり取りを、心の底から楽しんでいた。

 今の太刀川さんは、まるで躾のなっていない、噛み癖のある犬を相手にするトレーナーみたいになっている。刀をいくら振り回しても、時折太刀川さんの身体を刃が掠る程度という膠着状態が続き、痺れを切らしたのか、岡崎さんが捨て身で距離を一気に縮めた。牙も歯茎も剥き出しの大口を開けて、太刀川さんの首に噛みつこうと彼は迫ったが、寸前で左手を岡崎さんの口に翳し当てて防いだのは太刀川さんだった。しかし、岡崎さんは、なんだって構わないと腕に噛みつく。信じられないことだが、岡崎さんの牙は着物をも食い破り、肉まで歯が通ったということが、太刀川さんの着物から覗く腕から、だらだらと吹き出し始めた血の飛沫でわかる。

 岡崎さんを左腕に食いつかせたまま、右手の刀の切っ先を岡崎さんの左肩に、縦からズブズブと埋め込んでいく。三分の二ほど、太刀川さんの刀が、まるで鞘の様に岡崎さんの身体に収まっていく。あまりにも惨たらしい光景だ。自身の身体に、ゆっくりと刃が埋まっていくというおぞましい感覚を想像して、目を反らしたくなる。

 けれど、本当に末恐ろしいのは岡崎さんの方だった。痛みはあるのだろう。顔に汗を滲ませつつ、太刀川さんの腕を噛み千切らんばかりに咥えて離さない。その表情は息荒く、強張っている。それでも尚、彼は笑っていた。ギラついた赤い瞳を、太刀川さんに向けたまま。

 いい加減、岡崎さんに噛みつかれているのが鬱陶しくなったのか、太刀川さんが一気に刃を引き抜く。一時的に鞘となっていた岡崎さんの肩口から、噴水のように赤が舞った。

 自身の腕を噛み千切ろうとしている岡崎さんの顔面を殴ると、岡崎さんの身体は壁にまで吹っ飛び、体の内臓が破裂してしまうんじゃないかという程、思い切り体全身を打ち付けられる。壁にぶつかった反動で身体を跳ねさせた岡崎さんは、膝をつき俯いて、太刀川さんに斬られた傷口や頭部などから、血を大量にポタポタと滴り落とす。

 しかし、ゆらりと上げた顔は、にんまりと歯を見せて不気味に笑ったままで、その口許は太刀川さんの血で真っ赤だ。

 起き上がった岡崎さんが、地面に勢いをつけて吐き出したものは、引き千切った肉片だ。太刀川さんの方を見ると、彼は左腕を力なくだらんと下げ、じわりじわりと破れた着物が赤に染まり、指先から血が流れていた。ねじ切られた着物から覗く龍の胴体が、血を流しているようにも見えた。

 岡崎さんは、地面に転がった鹿部さんが打ち直してくれた刀には、もう目もくれず、血走った目で、太刀川さんへと身ひとつで再び立ち向かう。しかし、今度は太刀川さんの方が速かった。

 岡崎さんの左手を刀で突き刺し、貫通させ、壁から背中を離していた岡崎さんを磔にした。動こうともがく岡崎さんだが、壁に突き刺さった刀のせいで身動きを封じられ、動けば動くほど自らを痛めつけることに繋がる。抜き身の刃に右手を添え、血が滴るのも気にせずに抜こうとするが、太刀川さんがそれを許さない。


「言葉も通じなくなるたァな」


 岡崎さんの抵抗からガタガタと揺れる刀の柄を、しっかりと握り締めたまま、フーフーと興奮状態にある岡崎さんを、太刀川さんは笑みを浮かべて蔑む様に言う。


「引き取らなくて正解だったな。……人間ひとの皮を被った化け物が」


 それを耳にしたからなのか、それとも縛り付けられている屈辱に耐え難かったからなのか。凄まじい憤怒へと表情を変化させた岡崎さんが、自らの左腕の傷が更に深くなり、将来的に使い物にならなくなるかもしれない可能性をも厭わず、突き刺された左腕を前に持っていき、そのままの勢いで太刀川さんの右頬に拳を打ち込んだ。

 岡崎さんの身体は解放され、殴打され、よろめいた太刀川さんに追撃をかけ、更に拳を突き出そうとした岡崎さんだったが、その前に、太刀川さんによってその拳が流され、そのまま背負い投げられる。思い切り地面に打ち付けた岡崎さんの首を、太刀川さんがズタズタの左手で鷲掴み、窒息に近い状態にさせ、酸素か少なくなり動きが鈍った岡崎さんの脳天に向けて、刀を振り下ろそうとした。けれど、彼もまた暴れ犬となった岡崎さんに腹部を蹴り上げられ、離れた距離まで飛ばされる。

 お互いに受けた外傷は深く、二人とも起き上がるのに少々の時間を要す様になった。出血量から見ても、もう、いつどちらかが倒れてもおかしくはない。

 太刀川さんは、刀をしっかりと握り締め、身を起こす。岡崎さんは、やはりその身体ひとつで抵抗するつもりでいるらしく、狂喜染みた笑みを浮かべて不気味に立ち上がった。何故、二人かまだ立っていられるのかわからない。傷だらけの二人が、再び互いに向かって走っていく。殴る、蹴るなどの暴行を加え、空を切る刀の音が耳をつんざく。


「ば、化け物……」


 すぐ近くから、ふくよかな男性の呆然とした声が聞こえてきた。ゆっくりと目の前の光景から横に顔を向けると、男性は岡崎さんを、心底おぞましいものを見る目で見ていた。

 やめて、そんな目で彼を見ないであげて。岡崎さんは化け物なんかじゃない。そう反論してやりたいのに、もう、男性の発言に、違いますと胸を張って強く否定する言葉が出てきてくれない。それはつまり、私が彼のことを、そう呼ばれるに値する人間なのだと認めてしまったことと同義だった。喉の奥が詰まる。絶望感に身体中を支配される。

 今、太刀川さんと互角か、それ以上の常軌を逸した力を以て闘っている男性ひとは、私の知っている岡崎さんではない。重傷を負っているとは思えない野獣的な動きを繰り出す岡崎さんが恐ろしい。こんな感情を、彼に対して抱きたくはなかった。

 プールに投げ飛ばされた岡崎さんの姿が、派手な水飛沫によって隠される。しかし、すぐにその飛沫から飛び出してきた岡崎さんは、太刀川さんに一直線で、そんな彼を刀を構え待ち受ける太刀川さんも、歯を見せて狂喜に満ちた笑みを見せていた。

 岡崎さんが化け物だというなら、反対に、今私の目に写る太刀川さんは、これまでで一番人間らしく見えた。太刀川さんもまた刀を振るい、ときに拳をぶつけ、いつも静観とした振る舞いを主としていた彼には、らしくない闘い方をしている。言ってみれば、泥臭い。そこに、衣笠さんと刃を交えたときの格式だとか、そういったものは一切感じられない。完全に岡崎さんにペースを乱されている。

 けれど、岡崎さんによって、自身の身体に深い傷を刻まれる度、太刀川さんはその笑みを深くしていくのだ。浮き世離れした、どこか掴みがたい太刀川さんが、これまでで一番生き生きとしている風に見える。

 腰を抜かして地面にへたりこんでいる私には、太刀川さんに、あそこまで感情を剥き出しにした顔をさせることは出来ない。暴力という対話で以て、太刀川さんをここまで、私が引っ張ってこられなかった場所まで引きずり出したのは、紛れもない岡崎さんだ。太刀川さんと本当の意味で対等で在ることが出来るのは、灰色の髪に赤い瞳をした彼しか居なかったのかもしれない。

 いつしか、素手での殴りあいの方が中心となっている二人の闘いを、徐々に平静な目で見守っている自分が居た。邪魔をしてはいけない。本当は、もうふたりが傷つけ合うの見たくはない。止めたいのは山々だけれど、今、あの二人の間に割っては入るのは違うと思った。

 獣の如く本能のままに暴れ倒す岡崎さんを見つめる。どちらが本当の彼なのだろう。太刀川さんや浩然ハオランさんの言う通り、いつもお気楽な調子で振る舞っていた彼こそが偽りで、殺戮を楽しんでいる様にしか見えない今の彼こそが、岡崎さんの本当の姿だったのだろうか。私は、それにまんまと誤魔化されていただけ? 

 香澄ちゃんのことを思い出した。自分の心は女の子だけれど、ときに男の子にもなると、辛そうな顔で言う友達の姿。私はあのとき、どっちがどうとか、そんなことはどうでもいいと答えた。本心だった。どんな心を持っていようとも、私にとっては、結局は、香澄ちゃんは香澄ちゃんで、何ら変わりはしないのだと。

 けれど、今回ばかりは訳が違う。おそらく岡崎さんが、ずっとひた隠しにしていた、暴力的なあの姿までもを、すんなりと受け入れることが私には出来るだなんて、そんな果敢なことは言えない。なんせ太刀川さんですら、あれぐらい躍起になっているのだから。油断を見せれば息の根を止めようとしてくる荒々しいわんちゃんを大人しくさせる、そんな根気強いトレーナーの技量を、へっぽこの私が持ち合わせている訳もない。

 だけど、考えた末に行き着いた結論は、きっと、香澄ちゃんのときと同じだった。じわりと視界が滲む。どちらの岡崎さんだって構わない。彼が私にくれた言葉の数々は、私とっては、どれも本物だった。一度は忘れてしまっても、心の奥底に深く刻み込まれたままだ。

 太刀川さんが岡崎さんの眼前に突き刺そうとした刃を、白刃取りならぬ、なんと歯で受け止めた岡崎さんが、その異常な咬合力で太刀川さんの刀をバラバラに噛み砕いてしまった。名匠と謡われている鹿部さんが打った刀だというのに、どうなってんだ、と突っ込みたくなるのも束の間、太刀川さんは己の刀が打ち砕かれたのも構わず、長い刀身でなくなり短刀と化した刀の柄をしっかりと握りこみ、砕けた刃の部分で岡崎さんの即頭部を強く殴打した。鋭い破片が岡崎さんの頭に刺さり、血が吹き出す。通常なら即死ものだが、頭から滲み出る血で顔を赤く染めた岡崎さんは、もはや痛覚すらも飛んでしまっているのか、太刀川さんの首を大きな手で囲い、にんまりと笑いながらギリギリと絞め殺そうとしている。

 いつもは首を取る側の太刀川さんが逆の立場にあることが、どれだけ異常な事態であるか。首を掴んでくる岡崎さんの腕に、太刀川さんが折れた刀の切っ先を突き刺す。岡崎さんの右腕から力が喪われ、だらんと垂れ下がったその隙に、太刀川さんが岡崎さんの腹部に思い切り回し蹴りを食らわせた。遠くに転がっていく岡崎さんの身体は、とっくの昔に、ぼろ雑巾のようになっている。だというのに、理性を失ってもなお、膝をつき、そしてまた立ち上がろうとするのだ。

 身を起こしかけている岡崎さんの姿を見据える太刀川さんも、折れた刀を投げ捨て、ふらつきながらも、丁度近くに転がっていた岡崎さんの刀をそっと拾い上げる。そして一度空を切り、静かに構えの姿勢を取る。それはまるで、向かってこいと、岡崎さんに訴えるみたいに。

 バッと顔を上げた岡崎さんが、空に向かって大きく咆哮する。その姿はいつだったか、ジェイさんが岡崎さんのことを狼と形容していたことを思い出させた。その狼さながら、勢い余って四足歩行から動き出した岡崎さんが、彼自身から流れる血潮を空中に撒き散らしながら、二本の足で太刀川さんに襲いかかる。

 牙を剥き迫り来る岡崎さんを、薄い笑みを浮かべて刀を手に構えていた太刀川さんが、あと数メートルという近さまで来た岡崎さんに刀を振るおうとしたときに、異変は起こった。

 太刀川さんが動かなくなった。目の前に岡崎さんが来たというのに、その剣を振るわなければ、してやられるといった状況で、何が起こったのか、太刀川さんからすっと笑みが喪われ、太刀川さん本人も、まさかといった無表情に逆戻る。

 突然、太刀川さんが、その場で大きく咳き込み始める。妙な咳を繰返し、大量の血を吐き出した。倒れそうになったのを、手にしていた刀を地面に突き刺すことで回避するも、僅かに身を屈め、血を吐きながら苦しそうに咳き込み続ける太刀川さんの状態は、決して深手を負ったが故の症状ものには見えない。病を患い、ベッドの上で苦しそうに咳き込んでいた祖父のそれと、よく似ていた。なぜ、どうしてその姿と太刀川さんがダブる。

 口から血を吐き出しながら、太刀川さんはチッと舌打ちするも、刀を握る力も喪われたのか、彼はなんと構えていた刀から手を離してしまった。抵抗することもままならない状態になった太刀川さんに何が起こるのか、言うまでもない。


「った……太刀川さんッ!!」


 彼の名を呼ぶ私の声は悲鳴だった。抵抗の出来なくなった太刀川さんの腹部を狙って、思い切り岡崎さんが拳を打ち込んだことにより、太刀川さんは更に大量の血を吐き出し、まるで物の様に簡単に身体が転がっていく。そして、ついに起き上がらなくなってしまった。

 私寄りの少し近い距離で動かなくなった太刀川さんの姿に、心が焦りに包まれる。なんで、さっきまであんなに。どうして起きないの。だめだよ、起きて。たちかわさん。今の岡崎さんの前では危ないから。起きて、起きて起きて。おねがい、起きて。

 心のなかで念じていた必死の声は、実際に声にも出ているけれど、太刀川さんは地面に這いつくばったままピクリともしない。絶望以外の何者でもなかった。

 投げ飛ばされる寸前に太刀川さんが手放した刀を、岡崎さんが拾い上げる。あの刀は太刀川さんが持つよりも、本来の所有者である岡崎さんが手にしている方がしっくりくるけれど、今の彼にそれを持たせることは、子供に包丁を持たせるのと同じだ。何をしでかすかわからない。しかし、どんな使い方をしてくるのかなんて決まりきっている。

 ぎゅうと刀の柄を握りしめ、さながら悪魔の様にも見える笑顔を見せた岡崎さんが、倒れた太刀川さんの息の根を止めようと興奮気味に走ってくる。

 このままだとどうなるかなんて、想像もしたくない。だからこそ、力の抜けていた身体が動き出した。息を吹き返したかの様に軽くなった足が、途中転びそうになりながらも、必死に太刀川さんへと向かう。恰幅の良い男性が静止してくるのも構わず、殆ど崩れ落ちる様にして太刀川さんの元に膝をつき、太刀川さんの名前を必死に叫びながら上半身を抱き起こす。

 抱えて呼び掛け続けるも、綺麗な顔は痣と血だらけになって、口からは未だに真新しい血液を流しながら、太刀川さんは死んだひとみたいな顔色で瞼を閉じていた。辛うじて息はしている様だが、ほっとしている間などない。

 突然戦場に飛び出してきた女にも構うことなく、鈍く光る刃を手にした岡崎さんが向かってくる。太刀川さんを隠すように抱き抱える女を先に狙うのは当たり前のことだ。このままじゃ、太刀川さんも私も揃って岡崎さんに殺される。太刀川さんを守るようにして抱き締めながら、おかざきさん、と小さく呼んでも意味は為さない。

 鹿部さん、必死に声にしても、一番思いを届けたいひとに届かない場合はどうしたらいいの。叫んでも、彼の耳にもう私の声が届かないんです。大事なひとの命ひとつ、私には守ることが出来る気がしない。

 こうして、一緒に居てあげることしか。


『なら、最期は付き合ってくれるってのかい』

『俺の地獄への道行きに』


 は、とした。腕のなかにいる太刀川さんを見つめる。彼と交わした約束を、決して美しいとはいえない形での、呪縛にも似たそれを思い出す。太刀川さんに泣きながら縋る私を見て、あんなにも嬉しそうな顔をした太刀川さんを。

 ごくりと生唾を飲み込み、ぎゅっと太刀川さんの身体を抱き締め、龍の刺青が覗く太刀川さんの首もとに顔を埋める。唇を噛み締め、涙に濡れた顔を上げ、真っ直ぐに岡崎さんを見つめて、そのときが来るのを待ち構える。その赤い瞳から目を反らさないまま、私の髪を縛る簪に手を伸ばした。留めていた長い髪が、重力に従い下ろされる。

 首の真横に刀が差し迫る。あと少し動けば、私の頭は右に飛んでいき、頭部のない胴体の切り口から、生暖かい血が湯気とともに真上に盛大に吹き出すことだろう。しかし、何の抵抗もしなかった訳じゃない。無謀で無茶で、無意味だとわかりつつも、凶器としての簪を岡崎さんに向けた。

 青と白の薔薇が飾りとなった簪を持つ手を伸ばし、尖った先の部分で、岡﨑さんの太い首の筋に当てる。岡﨑さんの皮膚が破れて、一筋の血が流れる。彼の負っている怪我に比べれば対したことはない。掠り傷にしかならない。
 
 このまま気付く間もなく、お陀仏してしまうのかなと思ったら、そうではなかった。私の首に刃が当たる寸前で刀が止まり、それ以上動かない。私も、岡崎さんの首筋に簪の先を充てて、彼を傷つけたまま動かず、ぎゅっと唇を結んだまま、透明度の高い赤色を、涙混じりの目でじっと見つめていた。あれほど荒れていた場が突然静まり、時が止まってしまったかの様な感覚に陥る。

 近くにある岡崎さんの目を、その身体を、見上げる。灰色の頭はすっかり真っ赤に染まり、その顔も血塗れだ。人間の限界を超えた無理な動きのせいで、身体中から浮き出た血管や筋が破れ、内出血を起こしていたり、皮膚のあちこちから血が吹き出している。致命的な重傷をいくつも負っているというのに、それでも尚動き続けた岡崎さんの身体は、見るからにボロボロだ。いくら体力おばけと言えども、その強靭な身体は悲鳴を上げている。

 赤い双眼と視線がかち合う。

 なんで、動かなくなったんだろう。それとも、実はもう私、死んでたりする? ひとは死んだら、最期の瞬間から意識が止まったままでいるとか。なんだそれ、地獄だな。天国なんてあったもんじゃない。でも悪くないかもしれない。

 最期の瞬間、私を心穏やかにしてくれたひとの姿ではないけれど、それでも好きになったひとの目を見ていられて、それも、この世でいちばん大事なひとと一緒に居られるというのだから。好きになったひとに殺されるなんて、私みたいなモブっ子にしては壮大だな、劇的だな。映画みたいだ。

 ふっと、岡崎さんから、ゆっくりと笑みが喪われていく。カタカタと私の横にある刀が小さく、やがて大きく震え始めた。私を見つめる岡崎さんの血走った目から血が流れ始める。それは、まるで涙みたいに見えた。

 岡崎さんの口が、何事かを呟き始めた。声になっていないので何を言っているかはわからないが、岡崎さんのなかで何かがせめぎあっている気がした。


「おかざきさん。おかざきさん、おかざきさん。おかざきさん、岡崎さん」


 彼の名前を、そっと呼んでみる。何度も、何度も。繰返し、何度も。かつてのように、スーパーに買い物に行くから荷物持ちに付き合ってください、と他愛のないことで彼を呼び、話しかけるみたいに。

 何度目になるかわからない岡崎さんを呼んで、大きく揺れていた刀がピタリと止まり、岡崎さんの血みどろの手から滑り落ち、カランと虚しい音を立てた。

 代わりに岡崎さんの腕が大きく上がったので、殴られるかもと思いつつ、簪を持つ手も、岡崎さんから目を離すことはなく、真っ直ぐに見つめていた。

 その握り拳が大きく振りかざされる。頬か頭に痛みが走ると思われたが、いつまで待っても襲ってこない。拳が向かった先は、岡崎さん自身の頭だった。先ほど太刀川さんに刺された部分を思い切り殴るという自傷に及んだ岡崎さんの行動に、目を丸くする。ボタボタと新しい血が岡崎さんの二の腕を伝った。自身の頭を殴るという行為を何度も何度も繰り返すので、突然の奇行に呆然として止めることも忘れてしまった。

 止めの一発と言わんばかりに、一番強く自身の頭を殴った岡崎さんは俯き、歯を食い縛っている。


「しき」


 自然と、岡崎さんを傷つけた簪を持つ手が下りる。頭からポタポタと血を流す岡崎さんが呆然としたあと、苦しそうな、悔しそうな表情で私を見下ろしていた。

 その瞳は、深みのある赤に戻っていた。

 岡崎さんは私を見て、なんと言えばいいのか、どうしたら良いのかわからない様で、子どもみたいに戸惑った表情を浮かべている。今までの意識があったのかどうかはわからないけれど、岡崎さんが真っ赤に染まった自身の両手を見て、そしてグッと握りしめたその姿に胸が締め付けられた。

 岡崎さんの身体が大きく揺らぎ、バランスを崩したので慌てる。彼自身も、まともに動くことが出来ない自身の身体に驚いた様で、なんとか膝に手をついて立ってはいるものの、もはや少しも動けず、立っているのがやっとといった様子だ。全身を襲う痛みが凄まじいらしく、歯を食い縛り、汗ばんだ苦悶の表情を浮かべている。その体勢のまま、岡崎さんは私を、そして私の腕のなかにいる太刀川さんを見つめた。吐血は止まったものの、完全に気を喪っている太刀川さんに惑いの表情を見せた。


「太刀川。お前」


 岡崎さんが、意識の無い太刀川さんに声を掛けようとした時だった。

 一発の銃声音が鳴り響く。何事かと辺りを見渡すと、私たちの様子を黙って見守っていた、体格の良い男性の様子がおかしい。え? と何が起こったかわからない表情で、男性はその額に手をやる。そこには赤い丸が出来ていて、たらたらと顔に赤いものが流れていく。そして、そのままぐりんと白目を向いて、前方に大きな音をたてて倒れてしまった。男性の頭部から漏れ出た血で、地面に溜まりを作り始める。
 
 突然の男性の死に何が起こったのか、きちんと脳が理解するよりも先に、もういちど耳に弾丸が放たれる音が届いた。今度は物凄く近くで響き、何故か、今度は私の身体が激しく揺れた。重過ぎる衝撃で、手にしていた簪が手から滑り落ちる。激しい痛みが私の身体に伴い、上手く息が出来ない。目の前で驚愕する岡崎さんの表情が印象的だった。


「志紀ッ!!」


 左肩の後ろが燃えるように熱い。別の生き物が自分の身体に居るみたいに激痛が暴れ回る。何も言えない程に痛くて、いや、痛いなんてもんじゃない。視界がチカチカして、今にも意識が飛びそうだ。太刀川さんを抱えていた腕が言うことを聞いてくれなくて、彼を落としそうになる。

 岡崎さんだって辛いだろうに、慌てて私達の身体を支えてくれた。左腕がだらんと下がり、言うことを聞かない。痛みが走る場所を右手で押さえつけてから離してみると、私の手のひらには、びっしりと暖かい血がこびりついていた。呆然とする私の代わりに、流血が止まらない左肩を、岡崎さんが大きな手で塞ぐ。


「その蛇の息の根を止めなさい、徹也」


 もちろん、その女ごとね、と少し離れた距離から、冷えきった氷の様な無慈悲な言葉が聞こえてきた。聞いたことのある女性の声だったが、私を撃ったのが、その女性ひとだということを信じたくなくて、そちらに顔は向けず、俯いたまま痛みに必死に耐える。今にも意識が飛びそうだった。撃たれるって、こんな感じなのか。


「シラユキ! よせ、撃つな!!」

「はやくして」

「いい加減にしろ、いつまで臍曲げてるつもりだ! もう太刀川こいつは……!」

「はやくして」

「っシラユキ!!」

「もういい」

「……ッ」

「あんたがやらないんなら、アタシがやる」


 新しい弾を詰直す音が、微かに聞こえてくる。そして、こちらに銃を向ける音も。

 ボタボタと自分の腕から流れる血と、私の膝の上で、聞こえるか聞こえないか、今にも止まりそうな呼吸をしている太刀川さんを見つめる。もう限界かもしれない。これが所謂、潮時ってやつなのかも。


「志紀?」


 私を抱き抱え、支えてくれていた岡崎さんの身体を、動く右手で押す。少しだけ身体を離し、私の顔色を窺うように覗き込んでくれた岡崎さんに、痛みに耐えながら、なんとか喉から声をひねり出す。


「離れててください」

「何、言って」

「岡崎さんに当たったら、危ないですから」


 赤い目をまんまるにした岡崎さんに、思わず笑みが漏れる。笑うだなんて、本当はそんな余裕ないのに。カタカタと震える手は、今から迎えようとしている死に対してのものなのかもしれない。そりゃあ、そうだよ。やっぱり怖いし、こんなに痛い思いをまたしないといけないのかと考えると、身の毛もよだつ。でも、と考えながら、膝の上にある太刀川さんの傷だらけになった顔を、そっと撫でる。

 私の行動の意を的確に捉えた岡崎さんが、驚愕から怒りに変わる。怒られるだろうなぁ、呆れもするだろう。このひとの根底にあるのは、ひたむきに生きる真っ直ぐさだ。それは私も憧れたものであり、ときに眩しすぎた。

 きっと、太刀川さんと生きると決めた上で待ち受けている最期は、これだった。いつやって来るかわからなかった、そのときが来てしまっただけだ。やっと、太刀川さんと交わした、ずっと一緒だって約束を守ることが出来る。


「ごめんなさい、岡崎さん」


 何に対しての謝罪なのか、そんなもの言い尽くせない。岡崎さんには散々お世話になっておいて、恩を仇で返す結果にしかならなかった。


「私のことは、もう忘れてください」


 太刀川さんの顔を見ながら、岡崎さんに呟く。あなたのことを一時でも忘れてしまった女のことなんか、忘れてしまった方がいい。返事は返ってこなかった。代わりに、岡崎さんがふらふらながらも立ち上がり、私の側から離れたのはわかった。

 ゆっくりと顔を上げてみると、少し距離のある、薔薇が咲き誇る花壇の向こう側に、私達に銃口を向けるシラユキさんの姿が見えた。

 死ぬの、怖いなぁ。もう1度だけでいいから、お父さんとお婆ちゃんに会いたかったな。お婆ちゃんの作った煮崩れした肉じゃが、もう一回食べたかったな。

 慣れ親しんだ家に帰りたかったと思うのと一緒に、これで何もかも楽になれるのかという安堵感に、亡くなったお爺ちゃんに、もしかしたら会えるかもしれない期待が生まれる。また、こんな私を叱ってくれるかもという希望も。

 あ、でも太刀川さんが言うには、私達が堕ちるのは地獄なんだっけ。閻魔大王様とか居るのかな。おしゃぶり咥えてる息子さんも居たりするんだろうか。せめて、地獄でも太刀川さんと一緒がいいなぁ。交渉したら取り合ってくれたりしないかな。ひとりは、太刀川さんをひとりにするのはいやだ。

 痛みの限界値が突破したのか、それとも血を流しすぎたのか、もう何も感じない。太刀川さんを抱き締めたまま、ぼうっとしてきた頭と視界で目の前を見る。シラユキさんの姿も、よく見えない。抵抗はしない方がいいだろう。変にじたばたすると苦しい思いをしそうだ。一瞬で終わらせてくれるなら、一番有難いかも。

 すっと目を閉じようとする、その直前、私の目の前が真っ暗になる。誰かが、座り込む私達の前に立っている。私達を守るかのように。ふらふらとしながらも、刀を構えているシルエットが見えて、更に顔を上げて、曇る姿のそのひとを見上げた。


「忘れねぇよ」

「……」

「お前が忘れても、俺は絶対に忘れねぇ」


 それに、と黒い影は続けた。


「言ったろうが。諦めんなって。お前のことも守ってやるって。その為なら、地の果てだろうが、どこまでもストーキングしてやるって」

「……」

「お前が、太刀川と、どんな約束したのかなんざ詳しくは知らねぇよ。知りたくもねぇや。けどな、俺だって、お前と交わした約束を絶対に曲げるつもりはねぇ。お前が太刀川そいつと地獄にでも行くってんなら、俺も行く。その刺青野郎はどうでもいいけど、頗るどうでもいいけど」

「おかざきさ……」

「でも、そりゃあ今じゃねぇ。こんな趣味の悪ィ場所で、お前を絶対に死なせはしねぇ」


 こちらを振り向かないまま、ハッキリとした声で紡がれた言葉は強い。強いから、縋り、そして頼りたくなる。つーーと暖かい何かが、頬を伝うのを感じた。じんわりと滲んだ視界に映ったのは、やっぱり、いつも後ろから見つめていた大きな背中だった。

 岡崎さんが、こちらに銃口を向けるシラユキさんに対峙し、刀を構える。私達の盾になろうとしていることがわかる。けれど、もうこれ以上はいい。贅沢が過ぎる。十分だ。あれだけの言葉を、今のどうしようもない私にかけてくれただけで、もう。

 迷いも淀みもなく、目の前には岡崎さんが立ちはだかっているというのに、シラユキさんは発砲した。最初の数発は、弾の動きを読むという信じられない荒業で以て岡崎さんが刀で斬り伏せていたが、岡﨑さんといえど、度重なる戦闘と、特に太刀川さんとのギリギリの死闘の後ということもあり、思うように身体が動かないらしく、あとに撃ち込まれた弾丸は岡崎さんの身体に埋め込まれる。その度に、もういい、もういいから、と叫んで、そこを退くように静止するも、岡崎さんは聞く耳を持たない。岡崎さんの身体から、更に血が地面に流れる。本当にもう、倒れる寸前だということが目に見えてわかる。

 一向に倒れない岡崎さんという壁に、シラユキさんが舌打ちをし、新しい弾を装填する。今度は急所を避けた岡崎さんの身体ではなく、頭を、額を、狙っていた。


「徹也、これが最後よ。アタシは太刀川とその女を殺す為に、あんたがそこに障害として立ち続けるなら、あんたといえども消すわ」


 傷だらけのふらついた状態で、なのに二本の足でなんとか立った状態を保っている岡崎さんが小さく、馬鹿にしたような笑い声を漏らし、赤い瞳をシラユキさんに向けた。


「やってみろよ。飲兵衛女」

「……」

「俺ァ、たとえこのまま死んでも、ここを退いちゃやらねぇよ」


 苦々しい表情になったシラユキさんは、すっと目を閉じ、そして光の喪われた瞳を再び見せた。彼女は、紅の塗られていない唇を動かした。


「さよなら、徹也。あんたは私の……最後の男だったわ」


 引き金に指を添え、ぐぐぐと力を添えたシラユキさんが、本気で岡崎さんを殺す気でいるのだと、ピリピリと凍てついた空気で察する。だからこそ、気を失いそうになる身体に鞭を振り、叫ばずにはいられなかった。


「岡崎さんッ! そこを退いて! はやく!!」


 何度も何度も何度も叫ぶ。彼の服を、身体を引っ付かんで横に退けたいのに、この人たちと違って、至って普通の、なんなら脆すぎた身体は動いてくれない。血を吐きそうになるほど、声がひっくり返っても必死になって叫んだ。お願いだから! と叫んでも、目の前の背中は決して動かない。

 そして、そのときは無情に訪れてしまった。

 岡崎さんの額を狙った銃声音が鳴り響く。絶望感に苛まれ、呆然とする私の前にある身体が倒れる瞬間を目にすることが恐ろしい。二度も味わいたくないと思った感覚が甦る。

 けれど、いつまでたっても岡崎さんの身体は倒れなかった。耳に届くかと思われた、岡崎さんの身体が地に伏せる音の代わりに、聞こえてきたのは、何者かに対して必死に抵抗を試みるシラユキさんの声。

 場の空気が変わった。目の前の岡崎さんが、驚いている雰囲気を漂わせている。


「そこまでだよ、シラユキさん」


 岡崎さんの背中で隠れた向こう側から、聞き覚えのある声がした。ひどく慣れ親しんだ、子供の頃から聞いていた声が。


「僕としたことが、二分の遅刻か。一足遅れちゃったよ。いやぁ参ったね。まさか繁忙期に、こんなことになってるとは」


 身体をなんとかずらし、信じられない思いで前方を確認する。何度も瞬きをして、視界をクリアに近い状態にし、目を丸くした。

 その人物は、シラユキさんの背後から絡むように抱きつき、銃を持った手を捻り上げている。カランと、シラユキさんの手から銃が落ちた。シラユキさんは拘束から逃れようと必死にもがいている。彼は、ひとの手で持てるとは思えない、巨大すぎる、死神が持つような鎌を、シラユキさんの首に当てていた。鎌に飾りとしてつけている、これもまた大き過ぎる真っ赤な布が、旗の様にたなびいている。


「ほんと、面倒ごとになるってわかってたってのに。僕も馬鹿なことをしちゃったもんだよ」


 風によって、こちらまで香ってきたのは薔薇の強い匂い。赤い薔薇で飾ったシルクハットに、身長の高さとすらりとした体型にとてもよく似合った燕尾服。目を囲った赤と黒の派手なアイシャドウが、ただでさえ鋭い目力を増幅させる、私の友人である若者。


帽子屋ジャック?」

「やぁ、志紀」


 帽子屋ジャックは、いつもの様に、にんまりと笑みを浮かべて挨拶を返した。

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