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困らせたい訳じゃない。ただ見たいのは、
しおりを挟む弾丸の放たれる音が大きく木霊する。その後すぐに、親しみのあるひとの甲高い悲鳴が、先程の銃撃音を追うようにして響き渡り、鼓膜を刺激する。
鮮血が宙を舞う。ポタポタとあちこちに降り注ぐ赤の液体は重力に従って、磨き抜かれた床に落ち、赤黒く染めていく。楽しげに賑わっていた空間が騒然とし、恐怖に戦いたものに変化する。
ぼと、と重量感を持たせて地に落ちたのは、今の今まで、胴体の一部として繋がっていたはずの右腕。絶ち切られたばかりの神経が痙攣し、意思を持たない筈の指先がビクビクと震えている。千切れた腕の部分、その断面から不規則に赤いものが吹き出していた。
かつて腕の持ち主であった人物は、とてつもない痛みに叫び声を上げながら、軽くなった己の右肩と、撃ち落とされて床に転がる自身の腕を見比べて、血反吐が出るのではないかと思うほど咆哮した。バランスを保てなくなった身体は地に落ち、悲壮感に満ち溢れた苦痛を訴え叫び続ける。
私はただ、その光景を間近で目にし、絶望していた。声を出せなかった。頭が真っ白になる。尋常じゃない絶望感に支配された。ガクガクと震える足で立っていることなど到底不可能で、その場で膝を折る。
容赦も、慈悲の欠片も無く、何の罪も無いひとりの人間の腕を撃ち落とした女性は、大階段の踊場からその光景を見下ろしていた男を無感情に、しかし、とてつもなく強い怒りと深い憎しみに満ちた鋭い目付きで睨み上げている。太刀川さんだけを一心に見つめ、今にも尚、その手に握る銃を彼に向け、撃ち殺さんばかりに。
耳をつんざくような叫喚を耳にしながら、顔色ひとつ変えない太刀川さんは、今しがた起きた出来事に惑うどころか、目を閉じて愉しそうにくつくつと笑った。ひとしきり笑い声を漏らしたあと、うっすらと青い瞳を開き、笑みは浮かべたままに、一言だけを発した。
「やってくれるじゃねェか」
ジェイさんの運転する車に乗って、連れてこられたのは、見上げるのも辛い、どこまで続いているんだと思うほど高層のホテルだった。
リムジンだのベンツだのが私達の後に次々と現れ、そこから降りてくるのは、見るからに一般人ではない、VIPクラスとすぐわかるオーラを漂わせるひとばかりだ。ハリウッドか、ここは。ドレスコードが定められているらしく、男性はきちんとしたタキシードかスーツ、女性はそれぞれ個性溢れる美しいドレスを身に纏い、ホテルの中に入っていく。日本人だけでなく、海外の方も多数居た。
そこらかしらには、耳に通信用のイヤホンをつけ、真っ黒なグラサンをかけた黒服の男性方、所謂SPが十数人居て、周囲を警戒している。彼らが立つ向こう側には、カメラを構えている人達が何人か居て、ホテルに入っていく人々をなんとかシャッターに収めようと必死になっている。もしかしてあれは、所謂パパラッチというものなのでは。初めて見た。本当に居るんだ。
周囲の安全確認を終えたジェイさんに外から開けて貰った車から降りる途中だった私は、テレビでしか見たことのない風景に驚いて固まっていると、カメラを持つひとりの黒人男性と目が合ってしまった。彼は私を見て訝しげな顔をしたが、直ぐ様ハッとした表情に切り替わり、周りにいたカメラ仲間に興奮気味に何か伝えたあと、すぐさまこちらにレンズを戻した。え、う、うそ、なんで。戸惑っていると、カメラを持つ人達はもみくちゃになりながら押し合いを始め、これまで以上にシャッターを切り始めた。まさかの、私に対して。
まぶしい。SPの男性たちも怒号を飛ばしながら、身体を乗りだそうとしているパパラッチ達を乱暴ともいえる動作で押さえ込んでいる。
訳も分からず困惑している私に、フラッシュの光が次々と襲う。目がチカチカとして、ふらつき、びっくりして動けなくなる。
「志紀!」
私に続いて車を降りた女将さんに名前を呼ばれ、顔を上げるが、その前にバサリと、頭の上に良い匂いのする暖かい布を被せられる。中から見える布地の色から、女将さんの上掛けだとわかった。そして、そのまま頭からすっぽり姿を隠された状態で背中に腕を回され、こっちだと誘導される。さながら気分は、テレビに映らないようにと顔を隠され、警察に導かれる犯罪者だ。その間も後ろから聞こえるシャッター音は、私達がホテルに入るまで、絶え間なくずっと聞こえていた。
「あ、有難うございます。女将さん」
「迂闊やったわ。まさか、あんなに待ち伏せしとるなんてね。場所が場所だし、バレるのも仕方ないわ」
お返しした薄紫の上掛けを羽織り、慣れた口調で自身の身なりを軽く整えている女将さんの発言に首を傾げる。女将さんは、サイドに垂れた髪を耳に掛けながら、私の疑問に答えてくれた。
「このホテルは会員制でね。著名人や財閥、政治家だのなんだの、極一部の選ばれた人間しか入られへんって有名なとこや」
「へ、へぇ~」
「どこぞの海外セレブやらモデルにも人気で、お忍びで泊まりにも来はる。せやから、そんな人らの生活をネタにして生計立ててる連中にしたら、張らない理由が無いから、山ほど沸いて出てくるって訳」
「そ、そんな蝿みたいな。じゃあ勘違いされたんですかね」
「は? 何が?」
「え? いえ、なんでか、さっきカメラ向けられて、物凄く撮られちゃったので。ほんと吃驚しました。あんなにたくさんのカメラに狙われるなんて、始めてで。記者会見受ける人の気持ちがわかった気がします。長いことフラッシュ焚かれると、目を悪くしちゃいそ……」
「あんた、何言うてんの」
「うで……へ?」
「アレは明らかに、あんたを狙ったもんやないの」
「エッ。なっ、なんで!?」
「なんでもなにも……自分の立場考えたら、すぐわかりそうなものやけどね」
「……えっと……?」
「今や日本に留まらず、アジアに北米、中南米、欧州と、あちこちの国の裏社会を勢いに乗って侵略しとる天龍組若大将の女やもの。どうやって、あの冷酷無情の龍を誑し込んだのかって、皆気になってしゃあないんやろ。それも、数少なく出回ってる噂では、若大将よりひとつ回り年の離れた小娘や言うんやから」
『遠坂志紀さんだろ。あんたの情報は情報屋の界隈じゃあ貴重でねぇ。高値で取引されてるよ。綿密な情報がろくに掴めやしねぇってさ』
居酒屋の前で、身ぐるみ剥がされ眠りこけていた、ダンディズムなお髭が特徴的だった情報屋のイワンさんも、そんなことを言っていた。そうか、こういうことだったのか。
「あんたは、今までの尊嶺はんの女達とは扱いがちゃうくて、大事に囲いこまれてるってことは、流石に色んなところに知れ渡っとる。ただまぁ、あんまりにも尊嶺はんが、あんたを表には出さへんから、あの人らには限られた情報だけが巡り巡って、遂にはあんたの存在は作り話か都市伝説ちゃうかって疑う声も出てきたとこやったんよ」
「とっ、都市伝説」
「それぐらい、尊嶺はんが何の魅力も感じられない小娘を贔屓して、挙げ句の果てには陥落させられたとは信じられへん……というか信じたくないって輩も居るんよ」
「ファンって言ったら少し変ですけど、人気高いんですね、太刀川さん」
「何を今更な。当然やろ。そういう訳やから気を付けや。いつ、どこにいて狙われてもおかしない。出来るだけ、身を隠すことを意識し」
「わっ、わかりました」
「あと、物珍しいからいうて、あちこちキョロキョロせぇへんの。こういう場所で不慣れなとこ見せると、反って余計に目立つんやからね!」
「わかりました!」
「見た目はパッとせぇへんし、地味やし、それらしいオーラは微塵も無いし、存在感薄いし、インパクトに欠けるから自分は大丈夫~なんて思て油断してたらアカンからね!」
「わかり……アッハイ……」
ちょびっと本音が垣間見える女将さんのお言葉に、ちょっぴり涙がちょちょ切れそうになるが、耐えた。車を駐車し終えたジェイさんも後ろからやって来たところで、お客様のお出迎えに立っていた、ジャケットを上品にきっちりと着こなした男性、おそらくこのホテルのコンシェルジュを担当している方が私達に近寄り「鏡花様、そして志紀様ですね」と穏やかな口調で確認を行う。
「ようこそお越し下さいました。どうぞこちらへ。ご案内致します」
白い手袋が私達を中へと誘導する。事前に話を聞いていたのか、男性はよたよたと歩く私に何度も「ゆっくりで大丈夫です、車椅子等ご用意しましょうか?」など気遣いの言葉をかけてくれた。
エントランスを抜けると、薄暗さはあるも、雰囲気作りには丁度良い真紅と紫の照明が、ロビーをムーディーに灯し、私達の体もそれらの色に照らされる。ロビーには女性ボーカルのジャズバラードが流れていて、落ち着きを感じさせた。上にある大きなシャンデリアや壁に掛けられた大きな絵画が、更に高級感を醸し出している。
左手にはカウンター、そしてその左奥には、立ってお酒を飲むスペースがある。そこでは、正装した人達が歓談を楽しんでいる。右手はラウンジとなっていて、ずらりと並べられた真っ赤な皮のソファに座る人々に、バーテンダーが、カクテルやシャンパン、ワインなどを提供していた。
上品ではあるけれど、妖しげな空間に、お酒の匂い、私が今まで触れたことの無いムーディーで大人な雰囲気のあるホテルに!僅かばかり緊張する。というか、服はお着物で大丈夫だったのだろうか。一応きちんとした正装ということで、女将さんに着付けてはもらったが。
自分の姿を改めて見下ろし、確認する。数年前に、太刀川さんからバレンタインのお返しに頂いた、藍色の下地を飾る、青と白の薔薇の柄が珍しい着物。きっちりと纏め上げて貰った髪に挿したのは、着物の柄と同じ精巧な作りの、薔薇が綺麗な簪。
洋の要素は多少あるものの、このホテルでは悪目立ちするのではなかろうかと心配したが、誰もその異質さを気にしていない様子から、特に問題はないのだということがわかる。何しろ、高校の制服姿のままでやって来たジェイさんにも、皆目をやらないのだ。少し後ろを歩くジェイさんを振り返り、その姿をちらりと確認する。こういうホテルに、制服姿の女子学生が居るのはなんとなくアウトな……如何わしいというか、危ない雰囲気が強調されているというか、なんというか。
カウンターを通り過ぎ、私達を案内するホテルマンがエレベーターのボタンを押す。匣が上から降りてきたことを知らせる音が短く鳴り、その重厚な扉が開く。外の風景を眺められるスケルトンタイプのエレベーターに乗り込み、ホテルマンの方が、最上階である70階のボタンを押した。そんなに高いのかと、思わず顔がひきつる。空中庭園並みだ。ぐんぐんと上がっていくエレベーターから見下ろす夜景は、確かに圧巻だが少し怖い。「わ~きれ~!」と感動するよりも先に、このタイミングで地震来たらどうしようなんて考えてしまうから、こういうとこが駄目なんだと思う。
最上階に到着したことを告げる、機械的な女性の声が鳴り、扉が開く。
そこは、一階の上品な空気はそのままに、淫靡な別世界が広がっていた。酒池肉林とは、このことを言うのではないだろうか。
お酒を飲む為のバーに、男女が人目を気にせずベタベタとくっつき合って深い口付けを交わしていたり、上に跨がって座る女性の太腿に、男性が手を厭らしく這わせていたりと、やりたい放題だ。
各箇所では、ポールダンスやストリップショーが行われていて、セクシーな女性達が露出度の高い衣装を徐々に脱ぎながら、くねくねと腰を振るなどして、躍りを、すぐ側にいる観客に披露し、色気たっぷりの肢体を惜しげもなく見せつけている。一見美しいものであるといえるし、芸術的と言われればそうかもしれないが、人間の欲望というものが露になった世界という印象は変わりはしない。
かつて、私がお仕事で居た旅館も、ここと同じ部類に入るのだろうが、たまに我慢仕切れなくなったお客様が、そこかしらでやらかしているのを目撃するくらいで、やはり、きちんと旅館としてのお役目も果たしていたこともあり、ここまでおっぴろげではなかった。
ホールの片隅では、煙草や煙管、古めかしい水パイプをを吸っている人達が何人か集まっていて、白い煙を宙に揺蕩わせている。煙草? 本当に? 煙を吸っているひとたちは皆、目が虚ろだったり、いやに陽気だったり、呂律の回らない口で、誰もいない隣の空間にお喋りしているひとも居る。その中のひとりと目が合うと、隣を歩く女将さんに「目合わせたらアカン」と小声で囁かれる。両頬を掴まれ、無理矢理ぐいっと顔を前に向けられた。
私達を案内する男性も、その光景に関してはなにも言わず、どうぞこちらへと動じることなく冷静に、私達を案内し続ける。それを見て「あぁ、このホテルではこれが普通のことで、これも経営の一貫なんだな」と、無理矢理自分を納得させる。
VIP御用達の意味がよくわかった。おそらく、表沙汰には出来ない鬱憤を、彼等はこうして、この場所に赴き、晴らしているのだろう。確かに、こんなとこパパラッチされようものなら、芸能人であれば、一発で職と人気を喪い、最悪御用だろう。下に居たカメラマン達が、この状況を写真に納めれば、多大な報酬が彼らに舞い込んでくることはよくわかった。
衝撃的ともいえる現場を後にし、更に奥へと導かれる。並ぶ客室の前を歩いている途中で、女将さんとジェイさんは別に用意されたお部屋にそれぞれ先に案内されていた。女将さんは「それじゃあ、また後で」と私に一言声を掛けてから、己に用意された客室の扉を、女将さんが閉じ切るまで見守る。私ひとりを案内することになったコンシェルジュの男性は、更に一番奥へと歩を進める。
女将さんの部屋からはそこそこに距離を開けた、一際広い、真ん中に噴水があるホールにたどり着く。そこには一室、特別感のある金刺繍の入った、チョコレート色の扉がある。ここまで連れてきてくれた男性は、私にルームキーを恭しく渡した。
「こちらが鍵となります。それでは、お食事のお時間まで少々ですが、ごゆっくりお過ごし下さい」
「え、あ、はい。どうも」
「何かあれば、ご遠慮なくお申し付けください。すぐにお望みのものをご用意致します」
「何から何まで、有難うございます」
戸惑いながら頭を下げると、コンシェルジュは上品に笑みを浮かべ、優雅な足取りで、この場を去っていった。
ひとり残された私は、心地よい噴水の水音を耳にしつつ、女将さんから、あまり物珍しそうにキョロキョロするなという言い付けも忘れて、辺りを見渡してしまう。うだうだしながら、飾られた絵画や花瓶の花などを見つめたあと、手にしていたルームキーを、やっと扉の鍵に差し込んだ。
ちょびっとだけ扉を開けてから室内を覗きこむ。えっ、な、なにこれ。えっ?
「おっ、おじゃまします」
恐る恐る中へと足を踏み入れ、パタンと後ろ手で静かに扉を閉める。まず感想としては、私の知ってるホテルの部屋じゃない。全然ちがう。家族と旅行先で泊まる様なお部屋とは、桁違いのクオリティだ。もうこれ、ワンフロア全体使ってるんじゃないのと言いたくなるほどの広さが第一に来て、突っ込みたくなるほどの部屋数。いやいや、これはもうホテルじゃなくてお家……いや、お家でこのクオリティは凄まじ過ぎる。
洋楽のバラードがどこからか流れる。広すぎるリビングに、これまた、ふかふかの上質なソファに、やたらと大きいテーブル、キッチンの他にバーカウンターまであり、たくさんの種類豊富な銘柄のお酒が、棚一杯にずらりと並んでいる。壁は全面ガラス張りで、広範囲に、夜景がどこからでも贅沢に眺められるようになっている。
何よりも驚かされたのは、キラキラと色とりどりにライトが変わるプールの存在だった。試しにテラスに出てみると、テラスから飛び出た部分がプールになっており、もちろん安全面を考えて、こちらも室内の全面ガラス張りになっている。宝石のような景色のなかで、冬でも水遊びを楽しむことが出来るようになっている。赤、青、ピンク、紫と、一定感覚で変わるプールの照明がなんだかやらしい上に、プールを出た隣には、準備万端と言わんばかりに円形のベッドが備えられている。えっ、ラ、ラブホテル? 太刀川さんが、両手にナイスバディの水着姿の金髪女性を侍らせて、このプールで遊んでる図を想像してしまったのは秘密だ。ここ、ほんとに日本だよね、ベガスじゃないよね。
隣の部屋には、滅多にお目にかかれないグランドピアノが贅沢に二台も置かれ、その傍らには、何故かステージと、専用の観客席ですと言わんばかりの一人がけのゆったりとした椅子が配置されている。先程、乱れに乱れたスペースで見た、ショーガールが自身の身体を絡ませていた銀色のポールが舞台にある。ということはまぁ、そういうことなのだろう。これがお金持ちの道楽というやつかぁ……と白目になる。
ボーリングやビリヤードが出来る部屋から、もうほんと何のための部屋なのこれ、と言いたくなるほど部屋があり、やっと、ちゃんとした寝室を見つけた。二人以上寝れるでしょこれ、寧ろファミリー向けでしょと言いたくなるダブルベッドがあって、試しに両手で触れてみると簡単に沈んだ。
リビングに戻ると、先程からうっすらと聞こえていたシャワーの水音が聞こえてくる。大きな皮張りのカウチソファに、贅沢にひとり、テレビもつけず、はじっこにちょこんと座る。
所謂、此処はスイートルームというやつなのだろう。すごいとは思うけれど、こういう、お洒落で高級感溢れる場所には不馴れということも相まって、落ち着かない。どうやら、どこまでも庶民派な私は、こじんまりとしたお部屋の方が落ち着くらしい。
持ってきた鞄をごそごそと漁り、太刀川さんから貰った宝石箱を取り出す。仕掛けを解いてネジを回し、柔らかい音色と聞き慣れたメロディーに集中し気分を落ち着かせていたら、いつの間にかシャワーの音が止んでいたことに気づかなかった。上から、にゅっと現れた大きな手に、するりと頬を撫でられ「ヘァッ」とウルト●マンの様な声を上げてしまう。
「よォ」
低く艶っぽい声に、慌てて後ろを振り向く。ポタポタと青みのかかった綺麗な黒髪から水滴を滴らせる、和装姿の太刀川さんが、私を見下ろし、薄く笑みを浮かべていた。その姿を見て、ほんの少しだけガッカリする。
「が、ガウンじゃない」
「何消沈してんだ、お前」
「如何わしさの半端ない雰囲気のホテルだったんで……石原●次郎か、シャ●みたいに、バスローブを着て赤ワインをこう片手で揺らしながら出てきてくれるのかな~って期待してたのに」
「……」
「ふへっ」
「笑うな」
「ふぎゅっ! しゅ、しゅいまへん。似合ふか似合わないかって言われたら、しゅしゃまじく微妙なリャインだったんへ、つい」
私の鼻を摘まみ、間抜けな鼻声にさせた太刀川さんは、私から手を離し、長い指ででこぴんを食らわせた。破壊力は凄まじいもので、おでこを押さえ「いたいいいい」とソファの上で、ごろごろとのたうち回り、悶える私の隣に腰掛け、わしゃわしゃと乱雑に、首に掛けたタオルで太刀川さんは髪を拭い始めた。いや、だから、ドライヤーでちゃんと乾かさないと将来禿げますよって言ってるのに。
「ダメですってば。そんな雑にしちゃ。乾かしてあげますから、ちょっと待って」
ついさっきまで、太刀川さんが使用していたお風呂場に向かうと、またもや「エェーマジでぇ~」とぎょっとさせられる。時雨の旅館や香澄ちゃんのお部屋にもあった、スケスケのスケルトン使用の、ジャグジーバスだった。どんだけスケスケさせたいんだ、このホテル。勘弁してくれ。もう夜も遅いし、食事会とやらが終われば、そのまま此処にお泊まりというのはわかっていたが、またこのタイプのお風呂に羞恥心に晒され、ビクビクしながら入らねばならないのか。こんなの扉開けたらシルエット丸見えじゃないか。せめてカーテンぐらいつけてほしい。
とにかくも、ドライヤーを手にリビングに戻ると、早速バーカウンターでお酒とグラスを手にし、お風呂上がりの牛乳ならぬ、ジンを一杯なぞしようとしている太刀川さんを目撃した。
「乾かしてからです。というか、今からご飯でお酒飲むんだから、だめですよ」
嗜めるとなんとか珍しく、特に反論もなく、大人しく言うことを聞いてくれたので、ほっとする。
カウチのソファに座ってもらい、その後ろに立つ。質の良い髪を、温風で、優しく傷まないように気遣いながら、ドライヤーで乾かしていく。
「……?」
「冷てぇからやめろ」
「あ、ごめんなさい」
襟足を乾かそうとして、太刀川さんの後ろ首に触れると、いつもより熱かったので掌でぺたりと触れる。擽ったのか、太刀川さんは振り向きはしないもの、私の行為に制止をかけた。おかしいな、いつもはひんやりとしてるのに。お風呂上がりだからかな。首がダメならと、後ろから太刀川さんの前髪を少し避けて、おでこの熱を測る。物凄く熱い、という訳じゃないけど。
うーんと首をかしげて、太刀川さんのおでこに触れる私の手首を、他でもない太刀川さんに取られる。太刀川さんは、だらりと仰ぐ形で、私の方を見上げた。うわ、上目遣いの太刀川さんだ。なんか新鮮。ちょっとだけかわ……いいなんて口に出したら何をされるだろう、と想像して、きゅっと口をつぐむ。けれど丁度良いやと、私を見上げる太刀川さんの顔を両手で包んで、よく観察する。やはり湯上がりだからか、いつもより血色がいい。寧ろ良い傾向なのか。心配しすぎかな。
「うーん」
「……」
「……いっ!? っん、んむっ!? ……っん~~! ん~~!」
だらりと、ソファの肘掛けに置かれていた太刀川さんの左手が、私の頭の後ろを掴んで、一気に降下させる。すぐ真下にあった太刀川さんの顔に墜落した後は、一寸の隙間を許されないほど、力強く口を塞がれた。不意打ちだった為に、鼻で息をすることも忘れてしまう。後頭部をしっかり掴まれ、逃げることは出来ず、深く深く食べられていると、ほんとに窒息しそうになり、ギブギブギブ! とボクシングの審査員並に、べしべしと肘掛けを叩き続けた。ちゅっと可愛らしいリップ音をさせて唇を離されるも、色気も雰囲気も、かなぐり捨て、ぐったりとした凄まじい形相で、ゼーハーゼーハーと肺に酸素を取り入れ、二酸化炭素を吐き出している女の様といったら、残念としか言い様がないだろう。
項垂れていた右肩を前方に引っ張られると、少しの浮遊感に一瞬襲われ「ヒッ」と小さく悲鳴をあげる。回り込むことなく、太刀川さんの座るソファに無理矢理引きこまれ、ほんのわずかにぽかぽかと暖かい太刀川さんに腰をホールドされ、横抱きにされる。
ご、強引だなぁと、ちょっとだけ呆れるも、頬や髪、顎下を優しく撫でてくる大きな手に、いつも許してしまう。片手に握っていたドライヤーも取り上げられ、私の腰を抱く太刀川さんの手に一緒に握りこまれる。まだ乾かしきってないのに、と頬を膨らませると「あとは勝手に乾く」とだけ押しきられてしまった。
テーブルの上に置いた宝石箱を取ってほしいとお願いして、太刀川さんとシャンプーの良い匂いに包まれながら、再びネジを回す。元より部屋に流れていた音楽は、太刀川さんが遠隔で消してくれたので、何にも阻まれることなく、オルゴールから流れる音楽だけを耳にすることが出来た。
「喜んでる風には見えねぇな」
「え?」
「女は大抵、こういうモンが好きだろうが」
「……あ。このお部屋のことですか? い、いや! 別に気に入ってない訳じゃないですよ!」
「その割には面白くねェ反応だがな」
「そ、それは……っていうか、ま、ままままさか、わざわざ私の為に、こんなすごいとこ取ってくれたとかじゃないですよね、流石に!」
「……」
「です、よね?」
「そうだって言ったらどうする」
「へっ!?」
「大枚叩いて用意してやったんだ。呆けた顔してねぇで、ちったぁはしゃぎ回って見せろや」
「えっえっちょっ、え、ほんとに? それは、えっ、あ、どうしよう。ち、ちなみに、やらしいお話なんですけど、ここ一泊おいくら……」
本当にやらしいし不躾な話だが、こっちは冷や汗が尋常じゃない。ダラダラと血の気が引いていくのがわかる。た、確か、飛行機のファーストクラスとかでも、確か百万とかするんじゃなかったっけ。そのお金で三回位旅行行けるのではとか、中学生時代に突っ込んだ記憶が。
太刀川さんがサラリと、飛行機のファーストクラスのお値段なぞ軽くぶっ飛ぶ金額をサラリと告げたので、思わず両目が$になるという古典的な反応をしてしまう。な、なんてこったい。目から$が取れない。
ニヒルな笑みを浮かべて私を見下ろす太刀川さんだが、こちらはそれどころではない。こうしちゃいられない。太刀川さんに預けていた身体を起こす。パニックになった頭で、太刀川さんのお顔に間近に迫ると、目の前のひとは、まぁた妙なことを言い出すなこの女、と察した表情をされていた。全くもってその通りである。
「ボッ、ボーリングでもします!?」
「……は?」
「わ、私、こんなんですけど、腕位なら振り回せますから! ガター入れるの得意ですよ! 迷わず一直線です!」
「話にならねぇじゃねぇか」
「アッ。でも太刀川さん、お仕事で、お疲れですよね。そうだ! さっき探検したとき、マッサージルームも見つけましたから、太刀川さんは日々の疲れを癒してもらってください! 私、その間……えーとえーと、アッ、な、なんかとにかく高そうなお酒をありったけ使って、カクテルとか調合してみようかな! 一度やってみたかったんですよ、あのシャカシャカするやつ!」
「オイ」
「ショーガールさんもお呼びしましょうか、せっかくだし……! ポロリとかは無しであんまり過激じゃないダンスをお願いしましょう! そうと決まれば、フロントにお電話を!」
「落ち着け」
「んぐえっ! な、なにすんですか! 善は急げですよ!」
「今のオメェは『時は金なり』だろうが。値段分元を取ろうって魂胆が見え見えなんだよ。楽しみ方もわからねぇ癖に、必死になってんじゃねぇ」
「だ、だって、私ひとりなんかの為にこんなとこ用意されちゃったら、何もしないでいるなんて、太刀川さんに申し訳なくて」
「……志紀」
「それに! 何よりも! 勿体ないじゃないですか!!」
「……あ?」
「父の教えなんです。遊園地に入ったら、その入場料分、きっちり開演から閉園時間まで、パークのアトラクション及びショーは隅々まで全部しゃぶりつくせって!」
「此処は宿だ。餓鬼の遊び場じゃねぇ」
「うぐ、そうですけど。でも」
「冗談だ」
「……ハイ?」
「今回の会合に関しては、天龍は一銭も出しちゃいねぇ。全部向こう持ちだ」
だからそう気負うなと、再び腰を抱かれ引き寄せられる。太刀川さんに跨ぐ形になり、恥ずかしいことは恥ずかしいが、羞恥よりも先に安堵が勝り、へなへなと力が抜けた。
「よ、よかった~……。 どうやってお返ししたら良いものかと思ってました。私みたいな、ア●ホテルとか東●インで十分って人間には勿体な過ぎますよ、ほんとに」
「安上がりな女だな」
「ちょ、バカにしちゃいけませんよ。普通に快適に十分過ごせますからね! 庶民の味方なんですからね!」
「馬鹿になんざしてねぇよ」
「まぁ、確かにこのホテル、少し太刀川さんとはイメージが違うというか、言っちゃあなんですけど、賑やかで絢爛すぎるというか」
「へぇ、わかってるじゃねぇか。俺ァ、こういう半端にかぶれた場所は好かねぇ」
「やっぱり、そうですよね。太刀川さん、洋風なものはあんまりお好きじゃないんだろうなって思ってました。いつも、こういう大事な集まりのときは、必ず和室をお選びになられますもんね。私、洋食とかよく作ってましたけど、大丈夫でした?」
「そこまでこだわっちゃいねぇよ。食えるなら何でもいい」
そ、そうかなぁ。私がこの時代に来たばかりの頃、お着替えにと用意されていた着物よりも、動きやすいからという理由で、ここにやって来たときに着ていた洋服を着用したときのことを思い出す。太刀川さんにお呼ばれされ、洋服姿でお伺いした際、私の姿を目にした太刀川さんはひどく機嫌を損ね、すぐさま着物に着替えさせた出来事は、今でも強く印象に残っている。正直、太刀川さんはそこまでというレベルに十分達していると思わなくもないのだが。
「というか、お相手の方も、よくそんなぶっ飛んだ金額出してあげるってなりましたね。気前よすぎませんか?」
「随分と、この宿を気に入ってるらしくてな。悪趣味な野郎だ。もっと落ち着いたところにしろって言っても聞きやしねぇ。しまいにゃ『何でもするから、此処で時間を共にしてくれ』なんざ巫山戯たことを抜かしながら、みっともなく人の足に縋ってくる始末だ」
「そ、そこまで? あれ? お相手の方は女性ですか?」
「いいや。……正真正銘の男だ」
太刀川さんが重いため息をついたのを見て……なんだろう、なんか、妙な勘が働いてしまった気がする。いや、もしかしてだけど、でもこういうときに限って、私の勘は当たってしまうもので。事前に与えられている情報も重なり、パズルの様にピースが嵌められていく。お相手は、もしや太刀川さんのことを。
「太刀川さん、もしかしなくとも……貢がれてません?」
「かもな」
確信を得た声色に、なんと言えばいいのかと考えていると、「奴の話はもういい」と身体をソファに押し倒される。突然の展開に驚き、瞬きを繰り返すのみで、状況を判断するのが遅れた。右の耳朶に、湿り気のあるものと熱い吐息を感じ、鎖骨辺りが大きな手に覆われたところでハッとする。せっかく、きちんと着付けて貰った着物の前合わせに、不躾に太刀川さんが手を突っ込んで弄り始めるから、慌てて太刀川さんの両肩に手を添えて制止するも、ピクリともしない。
「ちょ、ちょっ、だめ! だめですってば! お食事までそんなに時間は無いって、さっきホテルのひとが」
「最後まではしねぇよ」
「そういう問題じゃ、き、着物崩れちゃ、ひゃうっ」
「終わったら元通りに直してやる」
「や、ま……っ終わったらって、その言い方完全に最後までする気じゃないですか……うそつき!」
ちゅ、ちゅ、と耳から頬を、唇でなぞるように口付けられる。着物を捲られ、左腿に、いつもよりは血の通った暖かさの感じられる手で撫でられてゾクリとした。カチリと首輪の留め具を、器用にも、見ないで外される。普段隠されていることが多くなった首回りが露になると、なんとなく気恥ずかしいという謎の違和感に襲われる。そのまま、首と、着物をずらされ、晒された肩口に口付けられていく。かぷり、と首を柔く噛まれたところで、テーブルに置かれている電話が鳴った。た、助かった!
太刀川さんは、少々面倒臭そうな、気怠気な動作で私の上から退き、受話器を手に取る。そして、電話を寄越してきた相手の言葉を黙って聞いていた。その間に、私も上半身をのそのそと起こし、乱れた着物の前合わせを、胸元に急いで手繰り寄せつつ、くしゃくしゃになった頭を軽く整える。
「わかった。部屋まで迎えにこい」
かちゃり、と静かに受話器を置いた太刀川さんは、跳ね散らかった髪を落ち着かせようと必死になっていた私に再び向き合い、「西園寺がすぐに来る」と、小さい頃と同じように、私の着物と髪を整えながら言った。そして、手早く、けれど丁寧に、元通りに私の身なりを直してくれた太刀川さんは、最後の仕上げに簪を挿した。
太刀川さんも自身の着替えを済ませる為、一旦リビングに私をひとり残し、どこぞの部屋へと背を向けていってしまった。
太刀川さんを待つ間、すっかり癖になった、首にある輪を軽く弄ろうとしたら!そこに何もないことに気がつく。あれ? と辺りを見渡すと!先程太刀川さんが外した首輪が無造作に床に投げ捨てられている。いや、ほんと安物じゃないんだから……と、そっと拾い上げて、首に通し、後ろ手に留め具を結ぼうとしたが、その手がピタリと止まる。
鹿部さんから授けられた、首輪なんか付けられるなという伝言が、頭のなかで甦る。結びかけた輪を手の中に戻し、眺めた。少し考えたあと、首輪はテーブルの上に置き、代わりに宝石箱を手に取り、袂に忍ばせる。
「志紀」
太刀川さんに名前を呼ばれ、声のする玄関に向かうと、いつものように着物を緩く着こなした太刀川さんと、扉の外では西園寺さんが待機していた。太刀川さんは首輪を付けていない私に対して何も言わない。
「この着物と簪のデザインなら、首輪は大丈夫かなって」
今の方が統一されてスッキリして見えませんかと尋ねると、太刀川さんからやはりお返事は貰えなかったが、髪が乱れない程度にポンポンと頭を撫でてくれた。
そして、太刀川さんはゆるりとした動作で先を歩き出す。その背中を見つめていると、後ろから「失礼」と声をかけられ、身体が浮き上がった。私を抱えてくれた西園寺さんに、自分で歩けますと断るも、こちらの方がはやいですからと私の主張をはね除け、前を歩く太刀川さんの後を足早に進まれてしまっては、何も言えなくなる。複雑な心境のなか、人形のように大人しく身を任せている私に、西園寺さんが珍しくふっと小さく笑みを溢したので驚いた。
「俺も、そちらの方がお似合いだと思います」
誠実に、そして実直に、初めて西園寺さんに真正面から褒められたという事実が信じられず、ぽかんと口を開けた間抜け面を晒してしまう。西園寺さんは、すぐに元の鉄仮面に戻り、歩みを早めたので、もしかしたら、もしかしたらだけど、このひとも自分で言ったことに照れているのかもしれない。太刀川さんだけじゃない。当初、ギスギスしていた西園寺さんとの距離も、あの頃から考えれば、縮まったと実感する。
悪いこともあれば、良いこともある。心がじんわりと暖かくなった。
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