運命のひと。ー暗転ー

破落戸

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 まだまだ暑い日が続くが、夏も折り返し地点に立った。とはいえ、子供たちは長いお休みをまだまだ堪能している。油断してると、最後に宿題という名のラスボスを倒せなくなっちゃうよ。そう、鼻水垂らした近所のやんちゃっ子に忠告してあげたのがまだ記憶に新しい。「そんなの夏休みの初日に全部終わらせたもんねー! 志紀ねぇちゃんとは違うのだよ。志紀ねぇちゃんとは!」とふんぞり返って言い返されてしまった。

 部屋にあるカレンダーを見て考えたこと。ただひたらすらに、私の世界のことだった。突然居なくなった私を心配して家族が心配しているだろうかとか、捜索願出されて警察が動いていたりするのだろうかとか。こちらでの生活に、私の世界に関わる大きな変化も見られない。京都に行くための資金も手段も、まだまだ何も整っていない。 ここにやって来てからの日数を何度数えたことだろう。 重いため息をついた。私も、宿題は溜め込むタイプではなかった筈なのだけれど。

 私はいつまで、ここに居ればいいんだろう。




「女将さんが、私と話してくれない」


 いつも通り、お仕事を終えた香澄ちゃんは、私が掃除当番の日の洗いたてのお風呂を狙って湯船に浸かっている。その湯船の前に座り込む。ずーーんとした顔で最近の悩みを打ち明けた。あまりにも暗い顔だったのか、香澄ちゃんはひくりと顔をひきつらせてビシャッとお湯をかけてきた。顔がびしょびしょになった。


「あんたはいつもいつも辛気臭い顔して鬱陶しいのよ」

「うっ……」

「まーた女将か。何。元々あの女(ひと)とベラベラ話す仲でもなかったでしょ」

「そうだけど、いやそうじゃなくて……」

「あぁシカトされてんだ?」


 いじわるな表情で直球な言葉を投げかけてくる香澄ちゃんにうっと詰まる。シカト、と言うには少しきつい。避けられてると言った方が正しいだろう。

 お仕事でわからないことや、おかしいなと思ったことがあれば、トラブルを起こす前にすぐ自分に報告しろと言ってくれたのは女将さんだった。しかし最近は質問に行けども「香澄か他の従業員に聞けばいい」と取り合ってくれない。それどころか私へのお仕事の指示もしてこなくなった。前はそれなりの量のお仕事を言いつけられていたのに。


「確かに、来なくなったわね」

「え?」

「女将。この時間帯、たまにあんたんとこダメ出ししに来てたじゃない。よかったじゃん」


 って、プラスに考える女(タマ)じゃないか、あんたは。と香澄ちゃんは湯船から上がりシャワーに向かった。赤く火照って濡れた肢体がとても艶やかだ。同じ女性とは思えない、自分にはないものにいくら見慣れたといえども少し顔が熱くなる。


「そりゃあ腸煮えくり返る心境でしょうよ。 好いた男にあっさり切り捨てられた上、特別なポジション奪った女が目の前にいて。今まで通り接せられるとは思わないわね」

「奪った、のかな。私…」
 
「あんたはそのつもりじゃなくても、周りはそう見るわよ。っていうか近いうちにまた会合あんでしょ? そっちを気にしといた方がいいんじゃないの?」

「そ、そうだよ。今度は私じゃなくて女将さんに戻ってるかも! そうだ。きっとそうだ。前回はなんかこう、気まぐれだったんだ、うん。そうにちがいない!」

「おーい現実逃避はそこまでにしてそろそろ帰るわよ。さっさと片付けな」


 しかし、私の囁かな希望は早々に打ち砕かれる。

 次の会合でも太刀川さんが指名したのは女将さんではなく、私だった。なんで、どうして、とまたビクビクしながら太刀川さんの後ろ、西園寺さんの隣という、もはや定位置に座っていた。ただの近況報告のみで、前回の様な諍いもなく終了してくれたのが何よりの救いだった。が、心のもやもやは晴れない。

 太刀川さんも別の用件があったらしく、会合が終わればすぐに旅館を出て行った。土師さんに頂いた美味しそうな菓子折りを給湯室に持って行く廊下の途中で女将さんと鉢合わせた。明らかに会合に行ってきましたと主張する着飾った自分の姿を、女将さんに見られるのがこんなにもいたたまれない。あ、あの、と声をおかけするも、女将さんは私を一瞥しただけで私の横を通り過ぎてしまった。凛とした物腰。毅然とした態度。女優に負けず劣らない綺麗な女性(ひと)。やっぱり、私にはないものばかりだった。

 そうしてどうにもならない陰鬱とした気持ちを抱えたままの日々が続いていく。時間が経つにつれて気にならなくなると、香澄ちゃんは言った。けど、心にくすぶったままの靄は晴れず、曇っていく一方だった。

 黙々と地下で雑用をこなしてい私の元に、腰を曲げ、痛々しく表情を歪ませた掃除婦のおばあさんがトイレットペーパーが12ロール入った包みを苦しげな表情で持ち、腰を痛めたと言ってやってきた。慌てて駆け寄り手を貸す。近くにある椅子にゆっくりと座って貰った。


「志紀ちゃん、悪いんだけど、ひとつだけお願いがあって……。このトイレットペーパー、4階のお手洗いのとこ持って行ってくれないかしらぁ。さっき階段のぼるとき腰いわしちゃって……」

「だ、大丈夫ですか? 腰は悪化すると大変ですよ! 私が運んできますから、フネさんは休んでてください。えっと、ここある分でいいんですよね」

「いつもごめんねぇ。少し前まではもうちょっと動けてたんだけど。ほんと年をとるのは嫌だねぇ」


 しょんぼりとしてしまった掃除婦のおばあさんのフネさんは、実は若いときこの旅館の従業員、つまり春をお売りになられてたお方だ。年をお召しになられ引退されてからは身寄りもなく、掃除婦として長年この旅館に置いて貰っているのだとか。私はこのひとの、ご老人特有ののんびりとした語り口調が好きだった。あいたたたと痛がるフネさんの腰をさすっていると、おばあちゃんを思い出す。おばあちゃんも腰を悪くしてからは自由に動くことが出来ずに困り果てることが多くなっていった。こうしてよくさすってあげたものだ。


「あの、フネさん」

「なぁに?」

「私、フネさんのお仕事しばらく担当しましょうか? あんまり無理なさらないほうがいいですよ」

「それはとってもありがたいんだけどねぇ。これはわたしの仕事だからねぇ」

「本当? 別に気を使わなくたっていいんですよ」

「大丈夫大丈夫。心配させてごめんねえ。少し休めばマシにはなるから。それにこの旅館で働くことは私の生き甲斐なの。余生短い年寄りからそれを奪わないで頂戴な」

「生き甲斐、ですか?」


 そうそう、とゆるく頷いたフネさんの表情はとても穏やかだ。そして、まるで子供に読み聞かせでもするように、昔話をしてくれた。


「私はねぇ、昔はこの旅館が大嫌いでねぇ、仕事柄そりゃあ嫌なことしかなかったのよ。売られた身だったから、生きるためには仕方なかったんだけれど……」

「……」

「皆みーんな、旦那さん方に身請けされてったり、病で亡くなってしまった娘たちもたぁくさん居たえねぇ。気づいたら私ひとりだけこの旅館に残されちゃってねぇ」


 遠い思い出を語るフネさんの表情や声色からは悲しみや辛さは感じられない。ただただ懐かしい思い出を振り返る少女の様だった。


「でも、私にはここしかなくってねぇ。気付いたら年だけとっちゃって。これからどうしようってところに、この旅館だけはこんな私でも受け入れてくれてねぇ。もう私の家だったのよぉ」

「そう、だったんですか」

「うん。私はこの旅館が好きだから恩を返したいの。でもこんな老いぼれに出来ることはもう掃除ぐらいしかなくってねぇ。私がここにおいて貰える確かな理由は、それしかないから」


 だから奪わないでくれ、と。自分がここにいる為の存在意義を取らないでと、フネさんは笑って言った。穏やかな口調だったけれど、踏みにじってはならないものが確かにあった。そして、私はその大事な何かを踏みにじり奪い取ろうとしていた。そうじゃない。もうすでに、奪ってしまったことに気付いた。


「でもありがとぉねえ。志紀ちゃんはほんと優しい子だわぁ。お偉い人に見初められる訳だねぇ」

「そんな、私は……優しくなんか」

「志紀ちゃん?」

「わっ私、4階行ってきますね! フネさんはしばらく休憩しててください!」


 今まで、わからないわからないともがいていたものがわかった気がした。4階に駆け上がる。お手洗いの戸棚に詰め替え用のトイレットペーパーを入れる。誰も居なかったので個室トイレを各所覗くと一室だけペーパーが切れていた。ついでに、とペーパーを取り替えていると、従業員の女性が二人、姦しい話し声でお手洗いに近付いてくるのがわかった。


「あぁそっか。あんた長期休み取ってたから知らないんだ。今はあの鈍臭い雑用係の子が会合呼ばれてんだよ。天龍の若大将も何考えてるんだかよくわかんないよね~ 」

「えっあの大人しそうな子供? はー、ビクビクオドオドした娘(こ)だと思ってたけどなぁんだ。やることはやってんのねー。それも相手は若頭じゃん。どうやって取り入ったんだか」

「さぁ? あたしらなんか及ばない程の床上手なんじゃない? ぎゃはは」


 とっさに個室の中に入り込み鍵を閉める。バクバクと鳴る心臓が痛い。や、やばい。盗み聞きなんかしちゃ駄目だってわかってるのに。しかし今から自分の陰口か何か叩かれそうな予感がするのに、渦中のご本人様がバーンと出て行くのは彼女らにとっても私にとっても気まずいことだろう。ドッキリじゃないんだから。

 早く用を済まして出て行ってくれないかなと願うもどうやら化粧直しに来たらしい。鏡の前で二人はお喋りしながらいそいそと化粧直しを始めてしまった。これは長丁場になりそうだ。


「じゃあ女将はもう用済みってこと?」


 ビクリ、とそのワードに敏感に反応した私はとても単純だ。誰しも好き好んで自分への悪口など聞きたくない。これ以上落ち込む要素を増やしたくないので耳を塞ぐ。やり過ごそうとしていたタイミングでこれだ。耳を塞ぐどころか、全神経を尖らせ、聞き耳をたてることに必死になってしまう。


「そういうことっしょ。惨めな話よねー。どこの生まれかもわからん、 しかも自分よりも遥かに女としてレベルの低いぽっと出の小娘に男取られたんだから。あたしは女将に同情するわ~」

「でもさぁ、ぶっちゃけいい気味じゃない? もういい年でしょ、あのひと。なのに必死で若作りしちゃってさ。化粧濃いのなんの。ちょーっと若頭に気に入られてるからって偉っそうにしちゃって」

「あ~言えてる。いちいち人のやることなすことに口出ししてくるからうざいんだよね。小姑かっつの。香水も臭くない? どんだけ全身に振りかけてんだよって感じ」

「ぷっ、ひっど。加齢臭隠してんじゃない? はは。女将ってもうウリはしてないんだっけ」

「前はガッツリしてたけどね。女将になって太刀川さんのオンナになった頃から一切してないよ。そりゃあ、あのひと綺麗だけど、年齢的に今からウリに戻るってきつくね」

「へ~。今はどういう気分かしらね~! 好きな男に女として見られなくなったってことでしょ。あはは! なんで身体も売らないのに女将やってイキってんの? って感じ」

「ただの小うるさいオバサンしたいからでしょ」

「ぎゃはは、それ笑えるけど女としては最悪じゃん。ひっさーん」


 それから二人は別の話題で盛り上がり15分位経ってからやっとお手洗いを出て行った。私は便座を下ろしてうずくまり、座り込んだまま動けなかった。

 惨めだ悲惨だと笑いもって陰口を叩かれている女将さんが不憫でならない。やめてよ。そんなひどいこと言わないで。

 この旅館でお仕事をさせてもらうことが決まり、実際に働き始めた当初、それはもうミスの連発にトラブルを引き起こしてばかりだった。働くといった行為自体が初めてで、職場の性質が性質なだけに何もかもが戸惑うことばかりで。いつもひとり隠れてメソメソ泣いていた私を一番最初に見つけて、活を入れてくれたのは女将さんだった。何かわからないことがあればすぐに言えって助けてくれた。 女将さんに尋ねれば嫌みは言われはするものの、物覚えの悪い私にでもわかりやすい様、懇切丁寧に何度も何度も繰り返し説明してくれた。

 そんな女将さんから私が奪ったもの。それは会合に呼ばれるポジションだとか誇りだとか、太刀川さんの傍にいるという優越感でもなくて、フネさんの言うような生き甲斐そのものだったとしたら。頭をぐしゃぐしゃと掻き乱す。髪型がとてつもなく崩れた。どうにか、どうにかしなきゃ。

 それからの私の行動は早かった。衝動的といってもいい。無理矢理でも女将さんとの接触を計ろうとした。一言でも謝りたくて。今度は、太刀川さんにした保身の為の謝罪なんかじゃなくて、心からの謝罪をしたかった。


「おっ女将さん!」

「……」

「あ、ま、まって、まってください! お伝えしたいことが」


 今日のお仕事を終えた女将さんが玄関にやってくるタイミングを見計らい、待ち伏せしていた私はなんとか女将さんと鉢合わせることに成功した。しかし私の姿を視界に入れると女将さんは眉尻を寄せてそそくさと履き物に足を入れ始めてしまう。慌てて引き留めると女将さんはこちらを振り向きはしないものの、「なんやの」と返事をしてくれた。とりあえず話は聞いてくれる様で、安心した。


「あの、ほんとうに、なんて言ったらいいのか……」

「……」

「い、今だけだと思います! きっと太刀川さんも気まぐれで、こんなことになってるだけで」

「……」

「……ち、ちがう、こんなこと言いたいんじゃないんです。ちがうのに 」


 なんで、本人を目の前にすると言葉が出てこなくなってしまうのか。萎縮してしまう自分の性根が発言力を鈍らせてしまう。ひどく煩わしい。謝りたいのだ、女将さんに。傷つけるようなことになってごめんなさいって。


「ご、ごめんなさ」

「謝らんといて」

「……」

「ほんまに、 あんたと同じ空気吸ってると、苛々するわ」


 それ以上、声を発することは出来なかった。というか許されなかった。女将さんは結局一度も振り向くことなくお帰りになってしまわれた。

 ぽつんと、ひとり玄関口で突っ立ったままの私はなんて愚かしいのか。謝ってそれで、「いいのよ気にしないで」って笑って許してもらえるとでも思ったのか。自分の馬鹿さ加減に反吐がでる。なにが保身なんかじゃないだ。思いっきり保身じゃないか。


「まーた泣いてやんの、弱虫」

「香澄ちゃん……」

「盗み聞きしてた訳じゃないわよ。たまたま通りかかっただけ」


 香澄ちゃんは私の腕をひっつかんでお手洗いに連れて行った。ぐしゃぐしゃの顔を洗えと言いたいのだろう。タオルをずいっと押しつけてきた。


「気にすんなっていったでしょ。あんたも融通の利かん子ね」

「うっうう……」

「泣くな! 鼻水垂らすな。みっともない。しょうがないでしょ。あのひと嫉妬してんのよ、あんたに」

「……」

「天龍の姐さんになるだろうって言われてたのよ。太刀川にしては割と長く囲いこんでるから。まぁ肝っ玉あるし。気も強いし。経歴が経歴だから文句言う奴も居なかったのよ。それもあんたが現れるまではの話だけどね」

「……」

「つまりはプライドが許さないのよ。今は本人の中で整理がつくまでそっとしとくのが一番なの!」

「でも、私のせいで」

「でももヘチマもない! もうくよくよすんなバカ。世の中上手くいってたことが、どうにもならなくなることだってあんのよ」


 でも、それじゃああんまりにも女将さんが不憫だ。ずっと尽くしてきただろうに、男の人の勝手で、切り捨てるときはあっさり切り捨てられるなんて。それは泣き寝入りしろといっているのと同義なのではないのか。もやもやをどうにかしたくて香澄ちゃんにしがみつくと「鬱陶しい」と言われたが振り払われることはなかった。むしろ泣いている子供を慰めるお母さんみたいに、ぽんぽんと背中を叩いて抱き返してくれた。女将さんにも、こうして慰めてくれるひとは居るんだろうか。本当に泣きわめきたいのは私なんかじゃなくて女将さんだろうに。

 一連の襲撃騒ぎのせいで会合は頻繁に開かれた。これで、私がこの会に同席させてもらうのもついに5回目となる。全て、お呼ばれされるのは、私だった。いつまで、いつまで続くんだ。いつになったら。組の長達の笑い声が耳に響く。焦りだけが増していく。何にも集中出来なかった。


「俺に、何か言いたいことがあるんじゃねぇのか」

「え……」


 気づけば、あの料亭に居た。どこまでぼーっとしていたのか。言われるがまま何も考えず此処に来てしまったのだろう。お猪口を手にした太刀川さんは真正面に座る私を真っ直ぐに見据えていた。

 言いたいことなら、ある。でも私の立場でそれを言ってしまっていいのか。良いわけない。これだけはという一生分のお願いはすでに自分の為に使ってしまった。

 口をつぐんでいると、太刀川さんは私のところまで移動してきて、思い切り私の顎を掴み上げた。強制的に合わせられた目線は、思い出したくないことを思い出させる。が、太刀川さんの目には私がひた隠しにしている何かを探ろうとしている意図しか感じられない。


「言ってみろ。志紀」

「……」

「言え」


 唇に指が添えられ、なぞられる。クチ、と口内が鳴る音がした。このひとに、隠し事は出来ない。




 バシン! と乾いた音ともに、左頬がじんじんと熱く痛んだ。目の前には美しく着飾った女将さんが顔を真っ赤にして、ハァハァと息を荒げ、今度は右手を高く掲げていた。そしてもう一発、今度は右頬を思い切りぶたれた。痛い。周りの人々のざわめきが聞こえる。お客様も従業員の皆もなんだなんだと私達を見守っていた。


「志紀はん。あんた……尊嶺(たかね) はんに何言うたんや」

「ごっ、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい」

「そんな謝罪聞きたいんやない! あのひとに! 何を! 言うたんや!」


 もう一度振り翳された左腕を見上げる。あぁもう、なんで、私はこう、上手くいかないんだろう。

 8月中に行われる最後の会合に呼ばれたのは私ではなく、女将さんだった。私はその知らせを地下の洗い場に洗濯に来ていた咲ちゃんから聞いた。


「女将さん、めちゃ驚いてましたよ。せんぱいなんかやらかしたんすか?」


 尋ねられたが笑って誤魔化した。何かしたといえば、した。もうそろそろ会合も終わる頃合いだろう。これで元通りだ。全部、丸く収まる。と、私は安心しきっていた。血相を変えた仲居さんが私を呼びにくるまでは。

 上に戻るなり私を待ち構えていたのは、怒りを滲ませた女将さんと鈍い痛みを与える平手打ちだった。男性の従業員たちが、再び私に平手打ちしようとした女将さんを取り押さえた。


「わてを馬鹿にするのもいい加減にしぃ!」

「おっ女将! 落ち着いてください。お客様もいらっしゃいます!」

「離し! 離せ離せ離せぇ! このっ許さへん、許さへんで! 尊嶺たかねはんの前で恥かかせて……!」

「女将!」

「なんであんたなんかが……あんたなんかがぁ!」


 いつもの凛とした女将さんからは想像出来ないほどの乱れぶりだった。甲高い悲鳴の様な叫び声。お化粧の施された綺麗なお顔は涙で崩れ、整えられた髪は大きな動きのせいで乱れてしまっている。殺意に塗れた鋭い目は私の心に恐怖と、そして悲しみを生んだ。この女性ひとをここまで傷つけた。ズタズタにしてしまった。

 男性従業員に取り押さえられもがきながらも私だけをまっすぐに睨みつけ、 まるで呪詛の様に私に恨み言を綴り続け、裏へ連れて行かれてしまった女将さんを、私は呆然と見送るばかりだった。周りの視線が私だけに集中する。へたり込んでしまった私を引き上げたのは、恰幅の良い見知った男性だった。


「西園寺さん……」

「ここは目立ちます。お嬢も裏へ」


 半ば強制的に背中を押される。ひりひりと痛む頬に触れた。どうすることが正解だったんだろう。後悔だけが渦巻く中、ぽつりぽつりと太刀川さんとの会話を思い出していた。


「……わ、私じゃなくて、女将さんを呼んでください」


 土下座をして、頭は下げたまま、震える声で太刀川さんに告げる。畳に額を押しつける。ここにやってきてから様になった土下座を披露した。このひとに、意見など出来る筈もない。精々私は、このひとの同情心や慈悲の気持ちを引きずり出すために、可哀想な、哀れで惨めな、非力な少女で居るしか出来ないのだ。


「私には、この役は荷が重すぎます。あなたの後ろに控えていることしか出来ません。組の皆さんに満足頂ける接待も、私には難しいんです。女将さんみたいに完璧な女性が努めるべきだと思うんです」

「オメェ、前に自分に出来ることは何でもするって言わなかったか。ありゃあ嘘か」

「そうです。嘘です。嘘つきました、ごめんなさい。私は、そんなちっぽけでずるい女なんです。自分のための嘘だっていくらでもつけるんです」


 私はどんな風に思われたっていい。幻滅されたっていい。実際本当にこの役割は辛いし、私には役不足だ。私は自分を守るためならその時々に口からでまかせだって吐ける。だからこの気持ちは嘘なんかじゃない。

 だからお願いです太刀川さん。こんな、狡猾で小賢しい、腐った根性の小娘こそを切り捨ててください。私はあなたに相応しくない。あなたにしか、女将さんは救えないんです。太刀川さんは暫く声を発することなく黙ったままだった。どれくらいそうしていただろうか。太刀川さんが「顔上げろ」と私に命じる。それに従って、おそるおそる面を上げた。


「いいぜ。次の会合からは鏡花を呼んでやるよ」


 ダメもとのお願いが受け入れられたことに、私は目を丸くする。ほんとうに? と震える声で尋ねる。「あぁ」とどこか楽しそうな声色で太刀川さんは答えた。


「ただし条件がある」

「条件……?」

聞いてやってるばっかりじゃ割に合わねぇと思わねぇか。なぁ? 志紀」


 結果として私は、随分と長い時間を悩みに悩み抜いて、太刀川さんか出した条件を呑んだ。その条件が果たされるのがいつになるかはわからない。次は逃がさない、という言葉がどれだけ恐ろしかったことか。 けれど、その日が来るまでに、私は今度こそ覚悟を決めておかなければならないことは確かだった。

 なのに、私が望んだ元通りの形には戻ってくれなかった。悪化しただけだった。従業員の男性達に連れられた女将さんが今どうしているのか。私達に注目していた皆がこのことをなんと噂しているのか。全く耳に入ってこない、情報の遮断された真っ暗な地下室で私はひとり、地下室の隅っこで体育座りでうずくまっていた。そこにパッと電気がついて聞き慣れた声が2つ近づいてきた。


「あぁっ。いたいたぁ。志紀ちゃんどうしたのぉ? 電気もつけないで。こんなところで……皆心配してたのよ。どうしたのぉ」


 フネさんが私の隣に座って背中をさすってくれる。その動作はあまりにも優しい。今の私には涙を誘うものでしかなかった。嗚咽し始めた私に対し、おろおろとしながらもフネさんはよしよし泣かないでと頭をなでてくれた。


「全く……。フネさん、こいつのことはあたしに任せて下さい。腰も痛めてんですから休んでどうぞ」

「でもぉ……」

「大丈夫ですよ。志紀こいつのことは、あたしが一番よくわかってますますから」

「そう? じゃあお願いね香澄ちゃん。志紀ちゃん。それじゃあまた明日。元気な顔、おばあちゃんに見せて頂戴ねぇ」


 フネさんは地下室を出て行く。残ったのは私と、香澄ちゃんだけになった。怒られるかな。怒られるよね。考えていたら予想通り、香澄ちゃんから降ってきたのは、呆れの言葉たちだった。


「あんたほんっっと馬鹿ね、志紀。聞いたわよ。女将のこと、太刀川に土下座して頼んだんだって?」

「……」

「なんでそんなことしたのよ。良いことしたかったの? 感謝されたかったの? あんなの、神経逆撫でするだけに決まってんじゃない。知ってる? 逆鱗に触れるっていうのよ」

「……」

「泣いてばっかりいないで、何とか言いな。黙ってちゃ何にもわかんないわよ」

「きっ、……嫌われたくっ……なかった……」

「……」

「せめて……、せめてお仕事では役に立ちたいって、思ってたのに。……迷惑かけたくないって思ってたのに……。ぜっ、ぜんぶ、空回りして……やらかしてばっかりで、女将さんのことも、余計傷つけて……」

「……」

「もうやだ。もう、私がやだ。こんなの、なんにもできなくて……。消えちゃいたい……」


 せき止められなかった涙がボロボロ流れていく。情けなく泣き続ける私を見て香澄ちゃんはハァアアアと大きなため息をつき、私の隣に座った。右隣に暖かい体温が伝わってくる。


「あんた、ほんっっと、ばかね」

「……うっ、ひっく、うええん」

「ほんとばか」


 香澄ちゃんは私の隣に座ったまま、ずっと黙って私が泣き止むのを待ち続けてくれた。なんとか家に帰り、泣き疲れて眠って、次の日起きたら顔は腫れぼったく、目は真っ赤になっていた。目元は泣きはらした痕で、残念な顔が更に残念なことになっていた。

 そしてこの出来事から、私の日常も一変した。

 まず、私に課せられる仕事量が各段に増え、およそ倍となった。騒ぎを起こしたということで、女将さんは自宅療養という名の謹慎処分となり、女将さんの代わりを努めることになった比較的お若い仲居さんが、ミーティングで皆に仕事を割り当てるのだが、私の担当する仕事のリストが凄まじくて、流石の私も目玉が飛び出た。隣で私のリストを見た香澄ちゃんがちょっと! と私のリストをひったくる。そして仲居さんの前に掲げ、声を荒げた。


「なにこれ。おかしいでしょ!」

「えぇ? なにが?」

「こいつの仕事量、誰がどう見たってひとりでこなせる量じゃないじゃん! 男が担当する仕事まであんじゃないの。あんたこの子潰す気!?」

「潰すだなんて、そんな人聞きの悪い。私達はただ責任をとって貰わないとって、当然の処置をしただけだけど。ねぇ? 皆?」

「はぁ!? 責任てなんのよ!」

「今回女将が抜けることになって、こっちは相当の迷惑してんのよ。遠坂、この騒ぎの大元の原因って、あんたなんでしょ。女将の穴埋めるのは私らしか出来ないんだから。私らの雑用はあんたがやるぐらいの誠意は持ちなさいよ」

「あっ、あんたらねぇ……! やることが姑息なのよ! ダッサイわね!」

「何よ香澄。じゃああんたもその役立たずの手伝いしてあげたら? 友達なんでしょ?」

「うるさい! 志紀。あんたも黙ってないでなんとか言いなさいよ! こいつらつけあがっていいようにパシられるだけになるわよ!」

「……」

「志紀!」

「はいはい。ミーティング終わり。各自持ち場に戻ってお仕事してー。遠坂、あんた今日中に館内の掃除も全部済ませなさいよ。手抜いたら許さないからね」


 ぞろぞろと、皆持ち場に戻っていく。通りすがる何人かの女性に邪魔と言われ、体をぶつけられはした。けれど、何とも思わなかった。ただ、仕方ないと考えるばかりで。香澄ちゃんは憤った顔で私の前に立ちふさがる。


「どういうつもり?」

「どうも、こうも……仕方ないよ。実際、私のせいだし……」

「いい加減にしろ! そうやって自分ばっかり卑下してもどうにもなんないって言ってんの! 自分助けられるのは自分しか居ないんだよ! まずは他人のことより自分のこと考えろっつってんのよ!」

「考えてるよ!」


 私が大声を出したことで、香澄ちゃんはピタリと発言を止めた。そういえば私、香澄ちゃんに強く口答えしたこと、ない。


「考えてるよ……。最初から私は、自分のことしか考えてない……」


 私の答えが香澄ちゃんにどう伝わったかどうかはわからない。が、確実に香澄ちゃんの中でマイナスな方向に受け止められてしまっていることは確かだ。なんせ、今の香澄ちゃんの私を見る目は氷みたいに冷たい。失望しましたという感情がひしひしと、痛いほどに感じられる。あっそ、と呟かれた言葉も、氷柱の様に鋭いものだった。


「もういいわ。あんたの勝手にしな」


 ついに、香澄ちゃんにまで切り捨てられた。いや、これは私が悪い。香澄ちゃんはただ私のことを気遣って、心配してくれたのに。私、なんてことを。サァ、と血の気が引き、我に返った私は慌てて香澄ちゃんに謝ろうとしたが、既に香澄ちゃんは背を向けて、私ひとり残し行ってしまった。本当に大事にしたいひとまで、去っていってしまった。ひとりぼっちの空間はとても寂しく、孤独だった。

 それからは仕事、仕事、仕事の嵐の日々がひたすら続いた。体力仕事が増えて、へとへとになっても休憩を取る時間もない。ご飯を食べることも出来ないことが当たり前になった。かろうじて水分補給はこまめに取るようにしているが、空腹を訴える腹の虫は収まってはくれない。香澄ちゃんにも謝りに行きたいのにその時間すら取れなくなってしまった。

 それでも旅館内を駆けずり回り、ひとつずつ一日の仕事を消化していく。休みも返上して出勤しなければとても間に合わない。そして難儀なのは、仕事だけではない。


「またか……」


 ロッカーを開けると出てきたのはゴミの山。生ゴミも入っているせいで異臭がして、悪口の書かれたメモ書きなどが散乱している。ちょっと、ここはゴミ捨て場じゃないんだよ。ていうか鍵もないのに毎度毎度どうやって開けてるんだ。ピッキングでもしてるのか。

 他にもお手洗いの掃除をしていたら上から水とバケツが降ってくるという古典的なものから、携帯に深夜も問わず大量の迷惑電話またはメールがかかってくるなどの嫌がらせが続いた。本当の急な用事があるといけないので電源を切って寝るなどといったこともできず、連夜続く着信音で睡眠不足だ。

 心も、体も休まる時間がまるで全くなかった。フネさんにはどうしたのその顔色! と驚かれ、栄養満点のお手製の野菜ジュースやお弁当を作ってきてくれた。とても有り難いのに、如何せんお弁当をゆっくり食べる暇がなかった。それでも残す様なことはしたくないので、なんとか合間を見つけて少しずつ口に入れる様にして消化した。

 心も体も重い。何もかも、重苦しくて辛かった。でも仕方ない。自業自得だ。私にはこれぐらいしか出来ないんだから。頑張らなきゃ。そんな日々が続き、私の長い夏はいつの間にか終わりを迎え、季節は秋になっていた。

 ピピピと、仮眠時間の終了を告げるアラーム音が鳴ってゆっくりと目を開ける。ソファから緩慢に起き上がると、体中がバキバキと嫌な音をたてた。仕事、仕事しないと。

 身嗜みを全て整え、準備ができたことを確認してから地下室の扉を開く。最近は家に帰る時間があるならその分少しでも寝たいということで、許可をもらって湿気の多い地下室のソファで寝泊まりするようになった。夏が終わり、秋になったせいで地下室は少し肌寒いが文句など言っていられない。冬になればもっと厳しくなることだろう。というか冬もこの状態が続くんだとしたら死ぬんじゃないかな、私。というかおなか痛いな。なんだこれ。ずきずきする。今日は、あと一踏ん張りすればなんとか家に帰れそうだということで腹部の痛みをなんとか堪えながら、それはもう必死に体に鞭打ち働いた。

 帰り際に先輩方に仕事を言いつけられることなく、お昼で退勤出来たことに感動した。やっとお布団で眠れる……。あれ、そういえば最後にお家に帰ったのっていつだったっけ……。掃除、あと洗濯もしなきゃ。絶対埃だらけになってる……。

 それにしてもあのひと、ほんと目立つなぁ。こんなに視界定まらないのに、あの容姿だからすぐにわかるよ。目を凝らすと少し鮮明に見えたことで気付いたことがひとつ。なんであのひと、こっち見てあんなに汗だらだら垂れ流してんだ。あ、なる程そういうことか。

 灰色の髪に赤い目をした目立つ容姿のひと。岡崎さんが今しがた出てきた建物の看板には『ぱふぱぷおっぱい♡揉んで吸って♡おいでませ♡♡』と書かれていた。あぁおっパブですかそうですか。もみもみちゅーちゅーしてきたんですか。まぁ酒と女が好きって言ってましたもんね。それにしたって真っ昼間から何やってんだこのひと

 
「……ちっちちちちち違うから! これは違うから! 別に俺もみもみちゅーちゅーなんかしてないから! おおおおおおっぱぶなんか入ってねーから!」

「てっちゃーん。また来てねん! まりんのおっぱい待ってるから♡」

「まりんちゃんんん! いつも見送りしてくんないのに何でこういうときだけー!? ほほほほらお店戻んなさい!」

「……」

「ちちちちがっ。志紀! これはだな……あっあーーそーーだ! 飯っ飯食いに行かね!? 俺奢るぞ! 奮発しちゃうぞー! ……って、お前、なんか痩せた? ぷにぷに感が……しき?」


 もうだめだ、もうむり。全身に力が入らなくなって膝からガクンと崩れ落ちる。しかし地面に叩きつけられたときにくるであろう痛みは来なかった。どうやら倒れる寸前に、岡崎さんによって支えられたらしい。ぼんやりとした視界の中で、血相を変えた岡崎さんが私に対して何か叫んでいる。途切れ途切れにしか頭に入ってこない。いたい。痛くて仕方がなくて、お腹を抑えてうずくまる。


「……志紀! おいどうした! しっかりしろ! 気分悪いのか!?」

「おなか……」


 お腹をさする。下の方が、痛い。


「おなか、いたい……」


 そう口にした途端、浮遊感に襲われた。と思えば、目線が高くなる。目の前には広い背中と灰色の髪の毛があった。暖かい。

 おんなのひとの、たぶんさっきのまりんちゃんのかな、きつめの香水の香りがするのに。すごいな。何なんだろうこの安心感。このひと湯たんぽみたいだ。人におんぶされたのっていつぶりだろう。小さい頃おじいちゃんにしてもらったきりかな。あれ、そうだっけ。


「おっおおおおまえ家どこ!? い、いや、違うな。病院か、病院だな! 待ってろ。タクシーひろってすぐ」


 病院のある方向へ岡崎さんが足を向けた。だめだ。そっちは行けない。病院に行ったことが太刀川さんにバレたら、もしかしたらお仕事に行かせてもらえなくなるかもしれない。それは困る。

 思わずぎゅうううと岡崎さんの首回りに回していた腕に力を入れてしまう。ぐえっと苦しそうな声が聞こえた。


「んぐえっ! おまっ、何すんだ殺す気か……っ! オエッ」

「びょういんだめ。いや」

「は!?」

「う、うちにかえります。だいじょぶ。おろしてくださ」

「バッ……。お前そんな死にかけの顔してただの腹痛なわきゃねーだろ! そんなへろへろな身体で! 病院行くぞ病院!」

「お、おねが、おかざきさ、やだ」
 
 
 再び腕に力を入れる。今度は抵抗の意を込めて岡崎さんの首を締めたが、先程とは違い苦しげな声は聞こえてこなかった。背負った私の様子を窺っているのか、岡崎さんはとても静かだ。

 もうそこらへんに捨て置いてほしい。いっそ野垂れ死にたいとすら思える。だからそんな目で見ないで下さいよ岡崎さん。別にあなたのこと責めたりしませんから。


「……家着くまで意識飛ばすんじゃねーぞ! 右左でも、喋んの辛いなら指動かすだけでもいいから、ちゃんと自分ちまでのナビはしろよ!」


 朦朧としている私に岡崎さんは「しっかりしろ!」と激を入れる。出来るだけ私に負担をかけない様に、けれど急いで走り出した。霞む景色の中、なんとか指を動かしながら岡崎さんを誘導する。ラジコンでも動かしてるみたいだ。

 広くて、大きな背中だなぁ、お父さんみたいだけど、お父さんじゃない。ましてやおじいちゃんでもない。家族以外の男の人におんぶされるのなんて初めてだ。あれ、初めてだっけ。わかんないや。あったかいな。頼っちゃいけないのに、この温もりに縋りたくなる。

 何日かぶりの家が見えてきた。家を指差したところで、岡崎さんの言っていたとおりナビの役目を果たした私の体力と意識は尽きた。

 おなかが痛い。頭がふらふらする。体が重い。でも一番辛いのは、針でつつかれる様にツキツキと痛み続ける心だった。

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