召喚された聖女の兄は、どうやら只者ではないらしい

荷稲 まこと

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1巻

1-2

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 魔法の教師の手配をせねばな。第三隊は騎士団で唯一、平民も所属する隊だ。平民にも魔法が使える者はいるが、適切な教育を受けていない場合が多い。そのため教師を呼び寄せる必要がある。しかし、平民に好んで魔法を教えようという者はこの国の貴族にはそうそういない。
 だから、いつも頼りにするのは教会の神父。先代の隊長からの縁で、なにかと面倒を見てくれる。その教会はこの基地の近くにあるため、手紙を書くより直接向かった方が早いだろう。今日は急ぎの仕事も特にないし、副隊長に外出するとだけ伝えて……帰り道に、菓子でも買って帰ろうか。魔法が使えることを最初に確認しなかった詫びとして、シローにこっそり差し入れしよう。それがなんだかひどく楽しげな計画に思えて、ふっと吐息がれ出た。楽しいだなんて、いつぶりだろう。
 副隊長を捜そうと基地本部に入ると、偶然にも彼は廊下のすぐ先を歩いていた。彼の名はエジリオ・ペルフェ。絹のような銀の長髪を後頭部で一纏めにした、紫の瞳の男。一般的な評価は美青年らしいが、俺からすれば常にうれい顔の優男やさおとこだ。
 駆け足でエジリオに追いつき、声をかける。

「エジリオ」
「隊長。お帰りになられてたんですね。どうかされましたか?」

 ゆっくりと振り向いた彼は、眉尻を下げて微笑んだ。困っているような顔だが、これが通常だ。

「神父に魔法の教師をお願いしに行ってくる。もう少し留守を頼んだ」
「え? つい最近見習いの教育は終わったはずですが……不足でも?」
「いいや。シローがな、魔法を使えたみたいなんだ」
「へえ、それはそれは……」

 エジリオは納得した様子で頷くと、廊下の窓から訓練場の方を見た。

「だから、そんなに嬉しそうなんですね」
「ん?」
「ふふ。シローくんが来てから……以前よりずっと、人らしくなられました」

 よいことですね、と彼は言って、ふわりと柔らかい笑みを浮かべた。その顔はなるほど、美青年と評されるだけのことはある。

「承知しました。いってらっしゃいませ」
「……ああ」

 俺は元から人なんだがな……と思いはしたが、エジリオが本当に嬉しそうに笑うので、そのまま彼に背を向けた。賢いからか、貴族だからか、はたまたあの騎士団長の息子だからか……彼は時々、含みのある言い方をする。そして、その意味はしばらく経ってわかるのだ。今回のことも、いつかわかる日が来るのだろう。一応記憶の端に仕舞って、軽い足取りで基地を出た。


   ◇◇◇


 あの後、きちんと魔法の勉強をしたシローの実力はめきめきと伸びていった。シローに魔法を教えた神父によれば、彼の魔力量は桁違けたちがいらしく、もしかしたら制御できていなかった魔力のせいで体も上手く動かせなかったのでは、とのことだった。魔力はあれば便利だが、時にさまたげにもなる。
 シローが魔法を使えることを何故知らせなかったのか、と騎士団長にそれとなく文句を言いに行ったが、団長すらその事実は知らなかったらしい。少し魔法が使えたところで役立たずだ、と宰相が切り捨てたのかもしれない。シロー自身も鑑定内容は『女神の加護がない』ということしか知らされなかったのだとか。本命は聖女とはいえ、あまりにないがしろにされすぎだ。宰相に抗議するか、と団長は提案してくれたが、断った。したところで適当な謝罪をされるだけだろうし、それならシローを立派に成長させて見返してやった方がいい。たまには仕返しをしてもばちは当たらんだろう。
 シローが魔法を使えると判明してからまた二週間経ち、彼は今では他の隊員と肩を並べるどころか、既に頭一つ抜け出てすらいる。体力がある程度ついた頃から筋力鍛錬も追加し、それも慣れた様子でこなしていた。
 それならば、と更に素振りも追加したのだが、こちらは壊滅的だった。聞いた話によると「キントレはそれなりにしていましたから。素振りはまったくの未経験で……。こんなことならステゴロにこだわらず、得物えものも使えばよかったです」とのこと。ほとんど意味はわからなかったが、シローは無手の方が向いているのだろうと判断し、素振りはやめさせた。他の隊ならともかく、第三隊は剣や槍に限らず、各々おのおの得意な武器を扱う。そちらの方が生存率が格段に上がるからだ。魔物を前に形だけの騎士の誇りなど、ほこり同然。掃いて捨ててしまえばいい。
 シローには代わりに体術の訓練をさせた。すると、思った通り動きがよくなり、模擬戦では見たことのない技術まで披露してみせた。“カラテ”という名の異世界の格闘術らしい。すっかり自己流になっていますがね、とシローは自嘲気味に言っていたが、その動きは十分洗練されているように見えた。
 この頃にはすっかり心配する気持ちは消え失せ、シローの成長を見るのが楽しみになってきていた。これならもしや……

「すごいですね、あの子。もしかしたら、本当に魔王討伐隊についていけちゃうんじゃないですか?」
「ラチェレ」

 俺と同様に訓練の見学をしていたラチェレが、今しがた俺が考えていたことを口にした。

「辞めさせろ、なんて言ってたのは誰だったかな?」
「それはもう忘れてください……。あんな健気けなげな様子見せられて、女子としては母性がくすぐられちゃったんですぅ」

 彼女は照れ隠しだろうか、口を尖らせ、髪を一房指に巻きつけながらおどけるように言った。そうか、母性か。俺がシローに感じる気持ちも、それに似たものなのだろう。……微妙に違う気もするが。

「とにかく! 楽しくなってきたじゃないですか! このまましっかり! がっつり! どつきまわ……鍛えてやりましょう!!」

 ラチェレはしゅっ、しゅっ、と拳を何度も突き出している。

「仮にも貴族令嬢が『どつきまわす』なんて言うな。それに、お前に言われずともしっかり鍛えるさ」
「ふふふっ! そうこなくっちゃ! もしまた倒れたら、私特製の栄養剤をプレゼントしますね!」
「それだけは駄目だ。絶対に」

 ぶんぶんと頭を振る。それだけは阻止しなければならない。
 ラチェレの家、アウティエリ伯爵家は代々医師や調薬士を輩出する名門。それゆえに彼女も簡単な調薬はできるが……彼女が作った物はとにかく不味まずい。栄養剤を飲んだエジリオが、泡を吹いて気絶したくらいだ。平気で飲めるのは多分、鋼鉄の舌と胃を持つ本人だけだろう。そんなものを疲労困憊ひろうこんぱいのシローに飲ませてみろ。とどめにしかならない。

「えええ!? なんでですかー!」
「なんでもだ。ほら、お前も訓練に戻れ」

 またしてもラチェレは口を尖らせたが、しぶしぶと訓練に戻っていった。ふう……危なかった。彼女からの差し入れは口にするな、とシローに言っておくべきかな。
 気を取り直して訓練場の方に視線を戻す。いくつもの雄叫おたけびが飛び交うそこは、熱気に満ちている。シローの急成長に触発されたのか、見習いたちも全員やる気満々で、脱退する者もまだ出ていない。これは、俺が騎士団に入団してから初めてのことだ。彼に影響を受けたのは見習いだけではない。今では誰しもが彼に注目している。この隊は完全実力主義。強者になりうる新人の登場に、浮き立たずにはいられないらしい。

「さて……俺も参加するか」

 久方ぶりの高揚感が胸に湧き、心からの笑みがこぼれた。シローの望みをどうしても叶えてやりたい。そんな願いまで抱いてしまっている。
 俺にできうる限り、助力しよう。魔王討伐隊に同行できて、尚且なおかつ、生きて帰ってこられるように。



   朝霞士狼あさかしろうの手記(抜粋)一


 俺の名前は朝霞士狼。この世界ではシロー・アサカか。俺と妹の鷹子ようこの身に起こった不可思議な現象と、それからの生活を記録として残そうと思う。
 あの日は、珍しく仕事に追われてなくて、早朝出勤せずに済んだ穏やかな朝だった。学校へ向かう妹の髪を結っていた時、突然目を開けていられないほどの強い光に包まれ、気がついたら冷たい床の上に妹と共に寝転んでいた。そこは西洋風の教会だか神殿だか、とにかく日本では滅多に見られない荘厳な建物の中だった。俺たちを囲んでいたのは、これまた西洋風な顔立ちの大勢の人間。その人たちは中世や近世を思わせる服装を身に纏っていて、中には剣や魔法使いの杖のような物をたずさえている者もいた。まるでゲームの世界だ。最初の感想はそれ。次に脳裏をぎったのは『異世界召喚』という言葉。物語の中でしか存在しないと思っていた事象が現実に、しかも自分たちの身に降りかかろうとは、誰が想像できただろう。
 俺たちが召喚されたのは、妹が聖女とかいう存在だったからで、俺はただ巻き込まれただけらしい。それはまあ、別にいい。特別な存在になりたいだなんて願望はないし、妹をわけのわからん世界でひとりぼっちにしないで済むのなら。問題は、妹……聖女が召喚された理由だ。聖女が使える特別な魔法で、この国を魔王の手から救ってほしい。それが理由。信じられるか? その代わりに生活は保証する、と言っていたけど、そんなの拉致らち、軟禁、強制労働じゃないか。てめえらの危機くらい、てめえらでどうにかしろっての。今思い出しても腹が立つ。妹にごま擦りする王侯貴族の顔。そんで、想定外の俺に対する冷たい態度。信用できない。俺はそう思っていたけど……亡き両親に似て馬鹿がつくくらいお人好しの妹は、自分にしかできないのなら、と引き受けてしまった。……元の世界に帰る方法はないと言っていたし、引き受ける以外にこの世界で生き延びるすべもないとも言えるけど。
 妹が戦うことを決めたなら、兄が何もしないわけにはいかない。正直、このファンタジーの世界で、子供の頃に空手を習っていたことと、喧嘩けんかばかりしていた経験が役に立つかと言われれば怪しい。それでも、妹を一人にしちゃいけない。俺たちは、たった二人の家族だから。だから、俺も鍛えてほしいと申し出た。露骨に面倒臭そうな顔をする宰相に、しつこいくらい頼み込んだ。それでやっと、鍛えてくれることにはなったけど……妹とは引き離されてしまった。


 俺は今、王国騎士団第三隊に預けられている。最初に第三隊の基地に案内してくれた第一隊の騎士は道中ぶちぶちと文句ばかり言っていて、一体どんな隊に連れていかれるんだ、と不安になったものだった。
 その不安は“彼”に出会った瞬間に吹き飛んだ。
 俺を直々に迎え入れてくれた“彼”は、第三隊の隊長。名前はレオナルド・ランテ。その第一印象は『美しい人』だった。夕焼けのような真っ赤な髪が背中まで伸び、輝く金の瞳は太陽のよう。太めの眉と彫りの深い目鼻立ちはいかめしいが、柔らかく弧を描く大きめの口がその雰囲気を中和する。服の上からでもわかる鍛えられた体は均整が取れていて、圧倒的な強者の風格をかもし出していた。
 ……なんて、綺麗な言葉を並べてはみたが、素直な感想は『かわいいッ!』だ。自分よりタッパのある男に持つ感想ではないことはわかっている。わかってはいるけど、無性にかれた。所謂いわゆる、一目惚れだ。元々『健康的で高身長で笑顔が綺麗なかわいい人』が俺のタイプで、正にドストライク。同性を好きになったのは初めてだけど、今まで出会わなかっただけだな、と違和感もなかった。人が人に恋をするのに、性別なんて関係ないのだ。
 赤い髪をぐちゃぐちゃに掻き乱し、高い鼻に噛みついてみたい。そうしたら、彼はどうするだろう? 眉尻を下げて呆れたように笑ったらカンペキだ。俺はきっと、命だって捧げてしまう。そんな劇的な出会いだった。衝動的に結婚相手や恋人の有無を聞いてしまったくらいだ。いないって。頑張るっきゃないよな。
 隊長は挨拶をした時、俺の顔……というより目元を凝視していた。そりゃ、前髪と眼鏡で目を隠してるなんて、異様だと自分でも思う。でも、この瞳は見られたくない。気になる人になら尚更なおさら。もし、彼にまで気味が悪いと言われたら、俺は……。全てを受け入れてほしいという気持ちもあるけど、それは……いつか。
 この時にはもう、この国に対する不信感とか、漠然とした不安とか、そんなものは消えてしまっていた。恋心一つで浮上する俺は馬鹿なんだろう。いや、逆かな。恋が俺を馬鹿にしたんだ。そういうことにしておきたい。


   ◇◇◇


 最初の記録から一ヶ月近く経過してしまった。疲れすぎて、ペンを握る気力すらなかったんだ。
 先日から魔法が使えるようになった。何故今になってかと言うと、訓練についていくのに必死で、魔法がある世界だってことをすっかり忘れていたからだ。あの時隊長が気づかせてくれなかったら、挫折ざせつしていた未来だってあっただろう。
 この世界に来てからなんとなく、息苦しいような、疲れやすいような、そんな不調を感じていた。この国が標高の高い場所に位置しているのか、はたまた精神的なものか……そう考えていたけど、魔力のせいだったらしい。魔力は目に見えないけど、集中すれば体の中を血液のように流れているのを感じることができる。ファンタジー物でよくある話だ。俺がすんなり自覚できたのも、漫画や小説で見た内容が予備知識になったからだろう。ありがとう、素晴らしきサブカルチャー。


 魔法を無理矢理使おうとしてぶっ倒れた時、頭がほにゃんほにゃんになってた俺は「あなたも守ります」だなんて愛の告白じみたことを言ってしまったのだけど、それに対して隊長は「意味のないこと」と答えていた。「必要ない」ならわかる。俺はまだまだ弱いし。でも、「意味のない」って……何故そんな悲しいことを言うのだろう。
 その答えのヒントは、俺に魔法を教えてくれた先生――教会の神父が教えてくれた。神父は第三隊との付き合いが長く、隊や隊長のことをよく知っているようだった。彼らが選民意識の高い上層部から嫌われていること、特に隊長は複雑な事情があること……。神父は色々教えてくれたけど、どれも細かいことまでは話さなかった。本人から聞くべきだと。それはそうだ。俺だって自分の事情を他人にべらべらと話されたくはない。
 隊長はいつも笑顔だ。いつも同じ笑顔。最初はそういう人なんだろうな、と思っていたけど、そうじゃない。瞳の底が冷えている。誰に対しても一定の距離を置いている。隊員たちのことを気にかけているから、人が嫌いとか興味がないとかではないと思う。むしろ、拒絶されるのは自分の方だと思っている……? 自分を守る意味はない。それはそんな価値はない、という意味なのか。
 早く強くなりたい。そんで、断られようが嫌がられようが、隊長のそばに居続けてやる。意味はあるって、教えるんだ。


 追記
 魔法の勉強の時に隊長がこっそり差し入れしてくれた(と、神父が内緒で教えてくれた)菓子は残さず俺が食べた。自分で買いに行ったのだろうか。その現場を見たかった。かわいい。好き。
 あと、妹よ。お前のことも忘れてないからな。一瞬忘れかけたけど。すまん。元気にやってるだろうか。今度、休みの日に王城を訪ねてみよう。



   第二章 初めての実戦と謎の状態異常


 シローが第三隊に来て早二ヶ月が過ぎた。季節は初夏を迎え、見習いの中でも実力のある者から任務におもむき、見習いから脱出し始める頃だ。シローもそろそろ次の段階に進んでもいいだろう。そう思っていたところに、ちょうどおあつらえ向きの任務が舞い込んだ。

「実戦……ですか?」

 執務室に呼び出したシローに次の任務に参加するよう伝えると、彼は少しだけその身を硬くした。

「実戦といっても、そう構えることはない。……恐ろしいか?」

 部屋の入り口付近に立つ彼の対面、執務机の椅子に腰掛けたまま、様子を観察する。この面談は彼に限ってすることではなく、見習い全員に行うものだ。

「……はい。正直、少しだけ」

 僅かに間を置いてから、シローは恥じるように言った。だが、その感覚は正しい。最初から自信満々で危機感を覚えない奴の方が危うい。

「最初は皆、恐ろしいものだ。それとも、今回は辞退するか?」
「いえ」

 今度は間髪容れずに返答した。焦った様子はなく、泰然とした態度だ。合格。彼は向かわせて問題ない。

「よろしい。では任務の詳細に移る。……ある地域で、ネズミ型の魔物が大発生を起こしたそうだ。その魔物は弱いが、数の多さに現地の自衛団では危険と判断したらしい。一角鼠いっかっきゅうという名のそれは、体長は三十センチから五十センチ程度。額に鋭利な角があるが、それに注意すれば取るに足らない相手だ。……そういえば、実際に魔物を見たことは?」
「ありません」

 シローはゆるく首を振った。やはりないか。王都周辺には魔物は滅多に出没しないし、この基地をほとんど出ないシローが遭遇していないのも当然だろう。それに、彼が住んでいた世界には危険生物はほぼいないとのことだったしな……

「ふむ。お前の性格上、取り乱すことはないだろうが……。何かあってはいけないな。小隊長に任せようと思っていたが、俺も行こう」
「ええぇ!?」

 俺の言葉に情けない叫び声を上げたのは、執務室の脇でいそいそと茶をれていたエジリオだ。

「どうした、エジリオ。何か問題でも?」
「も、問題ありまくりですよ! また私に書類仕事を押しつけるおつもりですね!?」

 エジリオはティーポットを持つ手をぷるぷる震わせている。……そう、隊長という役職には、書類仕事という面倒極まりない仕事がついて回る。これは本当に理解できないことなのだが、実力で隊長に任命されたわりに、魔物より書類と戦っている方が多いのでは、と思うことがあるほどなのだ。俺は辺境伯家出身ではあるものの、貴族学園には通っていないし、最低限の教養しかない。一生懸命書いて提出しても、上から何かと細かい理由で突き返されて、何度も書き直す羽目になる。だから正直……苦手だ。
 しかし、このたびは書類仕事が嫌だから任務に逃げるわけではない。断じて押しつけるわけではない。断じて、だ。シローのために、必要なことなのだ。なので……ここは押し切ろう。

「お前は好きだろう? 書類仕事」
「討伐よりかは好きですけどね、限度というものがあります! 私は事務員ではないので!」

 エジリオは腕を組んでつん、とそっぽを向いた。むう、なかなか粘るな。仕方がない、こうなったら奥の手だ。

「そうか……そこまで言うなら、わかった」
「わかっていただけましたか! 大体ですね」
「その代わり、シローにはお前が同行してやってくれ」
「……え?」

 説教になだれ込みそうになったエジリオをさえぎりそう言うと、喜色を浮かべていた彼の顔は一瞬にして青ざめた。

「シローは預かっている身だからな。彼に何かあった場合、その責任はお前が負うことになるが……」
「わぁい! 私、書類仕事だぁい好きー! あ!! そういえば先日、備品が少なくなったとおっしゃっていましたよね? 申請書作成のために、倉庫に確認に行ってきまーーす!!」

 早口でまくし立てたエジリオは、逃げるように部屋から出ていった。彼は間違いなく、副隊長の座に相応ふさわしいだけの実力がある。しかし、いまいち自信がなく、あまり討伐任務には行きたがらない。そんな小心者の彼は、責任という言葉も嫌いだ。そこに漬け込んだわけだが……少々罪悪感に胸が痛むな。
 シローもエジリオの奇行に驚いたのだろう。呆気に取られて扉の方を見つめている。駄目な副隊長だと誤解していなければいいが……。そんな心配をしていると、彼はふっ、と小さく笑みをこぼした。彼の笑みを見るのはこれで二度目だ。今回は驚きはしなかったものの、なんだか胸の辺りがもぞもぞとする。なんだろう……胸焼けか? それにしては不快感がない。未知の感覚に首をひねる。

「すみません。副隊長も他の隊員と同じように好戦的だと思っていたので、あまりに差があったのがおかしくて……」
「あ、ああ。あいつは実力はあるのに、自己評価が低いんだ」

 俺が首をひねったのを、笑った理由を問うたのだと判断したのだろう。そのつもりではなかったのだが、説明のしようもない。誤解したままの方が好都合か。

「すまない、話がれたな。任務におもむく日だが――」

 コホン、と咳払いをして話を戻す。話をしながら頭の片隅で、先ほどのシローの笑顔が再生されていた。……どうにも最近調子がおかしい。というより、彼によく調子を乱される。彼がいつもの無表情に戻ってしまって、残念に思っているのは何故だ? 自分のことなのに理解できないこともあるのだな、と心の中でもう一度首をひねった。


 シローに初任務について説明した数日後。今日はついに一角鼠討伐の日だ。初めて第三隊の黒い隊服に身を包んだシローも、元気いっぱいに基地を飛び出した……まではよかったのだが。

「……ぅぷ…………」
「……大丈夫か?」

 目的地が遠地の森だったため、王都の基地から瞬時に各領へ移動できる大型魔導具『転移門』を使用した。それで、転移も初めての経験だったシローは、転移酔いをしたらしい。元々白い顔が更に色をなくしている。

「すみません、情けないですね……」
「魔力がある者は誰しも経験することだから、気にするな。魔力循環は習っただろう? 意識して体の魔力を巡らせてみろ。それで落ち着く」

 転移酔いの原因は魔力の乱れだ。魔導具の魔力が使用者の魔力に干渉し、正常な流れを乱してしまうのだという。その流れさえ戻せば、すぐに治る。

「んん……あれ? ぐぐぐ……」

 しかし、シローは苦戦しているのだろう。首を傾げて低くうなっている。思えば、彼が魔力を自覚してからまだ二ヶ月も経っていない。上手く魔力が操れなくても仕方がないか。

「ほら、手を貸してみろ」

 見かねて彼の前に立ち、その両手を取った。俺の左手から魔力を送り、右手から回収する。これなら強制的に流れが作れるはずだ。その証拠に、じわじわと触れているところが温かくなってきた。

「よし。どうだ? 少しは楽になっただろう」

 しばらくそうしてから手元を見ていた顔を上げると、思いの外、彼の顔が至近距離にあった。この距離で俺が見下げ、彼が見上げると、身じろぐだけでお互いの鼻先が触れそうだ。……なんとなく気まずい。そう思って身を引こうとしたが、彼にがっちりと手を握られていたために叶わなかった。

「シロー……?」

 どうしたのだろう。顔色はよくなっているから、転移酔いは治まっているはずなのに。理由がわからずいささか混乱していると、するっと彼の指が俺の手のひらを撫でた。くすぐったさにぴくり、と体が震える。そのまま離れると思っていたが、彼は手を反転させ、指を一本一本俺の指の間に差し込んで……ぎゅっ、と再び握り込んだ。

「!?」
「ありがとうございます」

 耳元でそう囁かれ、ようやく手が離れていく。

「……一応、衛生班にもてもらうといい……」

 シローの顔も見られないまま、なんとかそれだけ絞り出す。わかりました、と言って離れていく彼の足元を見送り、完全に離れたところで大きく息を吐いた。無意識に呼吸を止めていたようだ。……い、今のはなんだったんだ? ドクドクと心臓が激しく脈を打っている。先ほどの一連の流れで、何か状態異常を起こす魔法でもかけられたのか? こんな状態異常は聞いたこともないが……。深呼吸をし、落ち着いて自分の状態を把握する。うん、動悸どうき以外に問題はなさそうだ。まったく理由はわからないが、とにかくこの動悸どうきを収めねば。そう思い、もう一度深く息を吐く。

「隊長! 作戦について聞きたいことがあるんすけど……」

 何度か大きく呼吸を繰り返し、やっと心臓が落ち着きを取り戻し始めた頃、今回の任務に同行させていたレプレがこちらに駆け寄ってきた。平常心を意識しつつ、彼に向き合う。

「なんだ?」
「……どうしたんすか? 顔、真っ赤っすよ?」
「え?」

 言われて、顔が熱いことに気がついた。シローに触れていた手のひらも。自覚して更にじわりと熱が上がり、落ち着いたはずの心臓がまた慌てたように鼓動する。

「……いや、なんでもない。気にするな……」

 片手で顔を隠すように覆う。レプレが不思議そうに見ているが、俺にだってわからない。
 やっぱり最近の俺はおかしい。胸がざわめいたり、動悸どうきが起こったり。理解不能な感情の起伏もだ。それらは全てシローに関係している。……まだ彼には隠された能力スキルがあって、故意か偶然かはわからないが、それが俺に作用しているのかもしれない。彼を鑑定しただろう鑑定士には心当たりがある。他人の鑑定内容を聞き出すのは褒められた行為ではないが、この際そんなことは言ってられない。基地に帰還したらそいつのもとに行って直接話を聞こう。そう決意した。


 謎の状態異常魔法事件(仮)は置いておいて……気を取り直して討伐だ。目的地の森の中ほどに目標、一角鼠を発見し、作戦を開始する。一角鼠はざっと見て七十体程度。そこそこ多いが、こちらも見習いを含めて二十名。奴ら程度なら問題はない。
 俺はあくまで監督役としてついてきただけなので、作戦の邪魔にならないようマントのフードを目深まぶかに被り、少し離れたところで待機する。小隊長レプレが隊員たちに目線で合図を送り、まず、先輩隊員たちが一角鼠の群れを取り囲んだ。あとは一気に叩くだけ。見習いはその包囲から逃げ出した個体を丁寧に潰す。極めて単純な作戦だ。初めて魔物と相対したシローは最初こそ口元をゆがめていたが、すぐに慣れたのか淡々と討伐している。悪くない働きだ。そうする内に、大量にいた魔物は全て消滅していた。
 フードを外し、俺も現場に向かう。大量の魔石を隊員たちが回収する中、シローはぽっかりと口を開けたまま突っ立ていた。その間抜けな顔がおかしくてつい噴き出してしまい、存外かわいらしい顔もするのだ、と胸がキュンと軽く絞られる。この感覚は知っているぞ。子イヌとかを見た時になるやつだ。……俺はシローを子イヌか何かだと思っているのだろうか。それは少し失礼な気もするな。
 先輩隊員に叱られて魔石を回収を始めたシローの姿をしばし見守った後、一角鼠が集まっていた付近の調査を始めた。ついついなごんでしまったが、気を抜いている場合ではない。今回の討伐……あまりにあっさり終わりすぎた。
 一角鼠は狭くて暗い場所を好み、ほとんどが小さく深い穴倉に棲んでいる。討伐しようと思っても、不利になれば人が通れない穴に素早く逃げ込むため、少し面倒な敵なのだ。……本来は。今回はというと、日当たりのいい森のひらけた場所に、隠れもせずに集まっていた。近くに巣穴の形跡もない。

「妙だな……」
「隊長もやっぱりそう思うっすか」

 身の丈ほどもあるウォーハンマーを軽々と肩に担いだレプレが、こちらに歩み寄ってきた。彼は魔法が使えないが、そうとは思えない力を持つ。小さな体にみっちりと筋肉が詰まっているのだ。武器がハンマーなのは、彼の実家が木彫り細工から建築までを手がける『ミディ木工』という店をいとなんでいて、幼い頃から慣れ親しんだ道具だからだそう。見た目や言動で粗野だと思われがちだが、手先は器用だし、感覚も繊細だ。彼もこのたびの異変に気づいたらしい。しかめっつらで辺りを見回している。

「一角鼠って、群れにオスは一匹しかいないはずっすよね?」
「ああ。違ったのか?」
「はい、複数確認されたっす。それは他の隊員にも確認したから、間違いねぇす」
「そうか……」

 通常の生態ではあり得ない。そもそも、このひらけた場所自体が不自然だ。綺麗に円状に木が伐採され、その中に小さな池、土でできた山……あの木材はもしかして遊具か? まるで箱庭だ。誰かが意図的に作って、一角鼠を飼育していたかのよう。一体誰が、どんな目的で?

「ああああああぁぁぁぁぁぁ~~~~!!!」

 レプレと共に調査を続けていると、突如として甲高い絶叫がその場に響いた。弾かれたように武器を手にする。考え事をしていたとはいえ、まったく気配を感じなかった。……常人ではない。

「ひっどぉぉぉっい!! ネズミちゃんたち、みーんないなくなってるじゃん! めちゃくちゃ頑張ってあそこまで増やしたのにぃ~~~!!」

 声の主は、幼い少年だった。うるうると涙を浮かべたその表情は、庇護欲をそそるものかもしれない。人間にはあり得ない、羽と尻尾さえ生えていなければ。

「魔人……」

 レプレが呟いた。魔人。それは強さを極めた魔物が変異しただの、悪魔の眷属けんぞくだの、人が闇に堕ちてなるだのと諸説ある。魔人は魔素の薄い人間の国では活動が鈍ると言われていて、反対に濃い魔素が毒となる人間とは住処が明確に分けられるため、滅多に遭遇しない。いまだ謎の多い魔人についてはっきりとわかっていることは、人間によく似た見た目に角や羽など一部他の動物の特徴を持つこと。そして……魔物の何倍も手強いことだ。

「かわいいかわいいボクにお似合いの、かわいいかわいいネズミちゃんランドを作ってたっていうのにさぁ? なんでこんなことできるの? おにーさんたち、ひとでなし??」

 えんえん、と魔人は大袈裟おおげさに目元を擦っているが、その頬はちっとも濡れていない。わざわざ自白してくれるとは。この場所を作ったのはこいつか。

「いたいけな美少年をいじめて楽しい? そーゆー趣味の変態さんなのかな??」
「さっきから黙って聞いてりゃ好き放題言いやがって……! つーか自分で自分を美少年って、恥ずかしくねえの? そもそも、魔人ってのは長命らしいじゃねえの。外見だけかわいこぶって、中身はいい歳なんじゃね?」
「あ゛?」

 怒りの沸点が低いレプレは、魔人のあおりに堪えられなかったようだ。あおり返すその言葉に、ざわりと魔人の纏う空気が変わる。

「っあ゛~~~ほんっと、言っていいことと悪いこともわかんないの? そんな馬鹿だから嫌いなんだよなぁ、人間って! かわいくもないしさぁ? ……なんのために存在してんの?」

 魔人の声は甲高いものから低くしゃがれたものに変わり、表情をなくした顔にはいくつも青筋が浮かんでいる。どうもレプレの発言は、魔人の地雷を踏み抜いたらしい。まずいな。魔人とまともに戦えるのは、俺とレプレくらいだろう。奴の手の内もわからない今、隊員たちを庇って戦うのは不利だ。一旦森の方へ退避させて……

「決めた。かわいくないお前たちには、お似合いの醜~い争いをしてもらいま~す! 〈魅了チャーム〉!!」

 その掛け声と同時に、魔人の瞳が怪しく光った。よりにもよって、夢魔のたぐいか! しまった、と思った時には、思考が暗闇に落ちていった――


「……! …………!? ………………!!」
「…………! ………………」

 誰かが言い争う声が聞こえる。

「そ……! …………い? かわ……す……!」
「ふざけ……! ……うは…………ろうが!!」
「……って……? ……るーい! ……なこ……いっしょ…………ね?」

 一人は……シローか? きりが晴れるように、意識が徐々に回復してくる。そうだ、魔人に遭遇して、〈魅了チャーム〉をかけられて……それから?

「ショタジジイはッ! お呼びじゃねぇんだよッッッ!!」

 その怒号で目が覚めた。ぼんやりとかすむ視界の先で、シローが魔人の顔面を殴りつけている。ドゴッと重たい音。真っ直ぐ吹っ飛んでいく魔人。その状況を一瞬では理解できずにいたが、ばしゃん、と池に落下した魔人が立てた大きな水音で正気に戻った。

「シロー!」
「……! 隊長!! よかった、気がついたんですね!」

 拳を振り抜いたままのシローに駆け寄ると、彼は何事もなかったかのような顔をしていた。

「お前は平気だったのか?」
「ええ、俺はなんとも」

 彼には〈魅了チャーム〉が効かない? 精神状態異常魔法を完全に防げるのは、聖魔法のみのはず。しかし、彼が聖魔法使いなら、厄介払い同然に俺たちに預けられることはない。それ以外で何か特別な能力スキルを持っている……?

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これは、あざと可愛い悪役令息の義弟VS.あざと主人公のおはなし。 ボクの名前は、クリストファー。 突然だけど、ボクには前世の記憶がある。 ジルベスターお義兄さまと初めて会ったとき、そのご尊顔を見て 「あああ!《《この人》》、知ってるう!悪役令息っ!」 と思い出したのだ。 あ、この人ゲームの悪役じゃん、って。 そう、俺が今いるこの世界は、ゲームの中の世界だったの! そして、ボクは悪役令息ジルベスターの義弟に転生していたのだ! しかも、モブ。 繰り返します。ボクはモブ!!「完全なるモブ」なのだ! ゲームの中のボクには、モブすぎて名前もキャラデザもなかった。 どおりで今まで毎日自分の顔をみてもなんにも思い出さなかったわけだ! ちなみに、ジルベスターお義兄さまは悪役ながら非常に人気があった。 その理由の第一は、ビジュアル! 夜空に輝く月みたいにキラキラした銀髪。夜の闇を思わせる深い紺碧の瞳。 涼やかに切れ上がった眦はサイコーにクール!! イケメンではなく美形!ビューティフル!ワンダフォー! ありとあらゆる美辞麗句を並び立てたくなるくらいに美しい姿かたちなのだ! 当然ながらボクもそのビジュアルにノックアウトされた。 ネップリももちろんコンプリートしたし、アクスタももちろん手に入れた! そんなボクの推しジルベスターは、その無表情のせいで「人を馬鹿にしている」「心がない」「冷酷」といわれ、悪役令息と呼ばれていた。 でもボクにはわかっていた。全部誤解なんだって。 ジルベスターは優しい人なんだって。 あの無表情の下には確かに温かなものが隠れてるはずなの! なのに誰もそれを理解しようとしなかった。 そして最後に断罪されてしまうのだ!あのピンク頭に惑わされたあんぽんたんたちのせいで!! ジルベスターが断罪されたときには悔し涙にぬれた。 なんとかジルベスターを救おうとすべてのルートを試し、ゲームをやり込みまくった。 でも何をしてもジルベスターは断罪された。 ボクはこの世界で大声で叫ぶ。 ボクのお義兄様はカッコよくて優しい最高のお義兄様なんだからっ! ゲームの世界ならいざしらず、このボクがついてるからには断罪なんてさせないっ! 最高に可愛いハイスぺモブ令息に転生したボクは、可愛さと前世の知識を武器にお義兄さまを守りますっ! ⭐︎⭐︎⭐︎ ご拝読頂きありがとうございます! コメント、エール、いいねお待ちしております♡ 「もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!」書籍発売中! 連載続いておりますので、そちらもぜひ♡

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
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目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

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ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

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定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

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