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謝罪はひとりで 仲直りはふたりで
2話
しおりを挟む「ああーひまーーー」
エルが酒場に出掛けてから。
僕は暇を持て余してベッドの上でゴロゴロとしていた。
僕たちが泊まってる部屋のベッドはキングサイズ。
端から端まで転がると結構な距離があって楽しい。
しかしそれにも飽きてきた。
テレビやスマホがないのが現代っ子には地味にきつい。
「オナニーでもしてようかなぁ。でも絶対エルのこと抱きたくなるしなぁ。無駄撃ちなんて勿体ないし……お?」
結界に接触反応があった。
触れている場所に集中する。
この魔力は……エルだ!
僕はすぐに結界を解除して扉に駆け寄った。
「おい、ノックと合わせて二重確認するって約束しただろ?」
「ごめんごめん。エルだと思ったら嬉しくて」
「ったく…。もうちょい危機感持てよなあ」
そう言いながらエルの顔もにやけている。
ふふふ、満更でもないくせに~………あれ?
「酒場で色々聞いて回ったんだが、よく似た四人組を国境沿いで見たって話があったんだ。まだ距離はあるが用心に越したことはねえ。金もある程度貯まったし、そろそろ別の国へ………おいルイ、聞いてんのか?」
エルが色々喋っているが、今の僕はそれどころではない。
だってーーエルのシャツの胸元に赤い口紅の跡がついている。
しかも一つじゃない。複数。
あ!肌にもちょっと着いてるじゃん!!!
この世界でも化粧をする人間は一定数存在する。
劇団の俳優や踊り子、そして…男娼などだ。
僕はぐっとエルの胸ぐらを掴んだ。
「エリオットくん、君、酒場で何してたのかな?」
「は?だから聞き込みを…」
「ふぅん。聞き込みだけでこんな跡が付くんだ~不思議だな~」
とんとん、とその場所を指で突くと、エルの顔色がざっと悪くなった。
…なんだ?疾しいことがあんのか?
ガタガタと激しい音を立てて窓に風が吹き付け始めた。
他国でも神子パワーは健在のようだ。
「あ!いや、これは…!」
「もしかしてエルくんは~、エッチなことして情報を聞き出したのかな~??」
「違う!!そんなことは誓ってしてない!!」
「じゃあなんでこんなモノがつくの?」
すん、と表情を削ぎ落とし聞く。
雷が鳴り、雨が強く窓を叩く。
外はすっかり嵐だ。
「酒場に居た客引きの男娼がしつこかったんだ!何度も断ってんのに絡んできて!俺がマスターの話を聞いてる時に不意打ちでやられたんだ!」
「本当に?」
「当たり前だろう!!お前がいるのに他の奴に手なんか出すか!俺は…っお前じゃなきゃダメなのに…っ!なんで信じてくれないんだ!!」
鼻の頭を真っ赤にして泣きそうになりながら、エルは無実を主張した。
すっ…と怒りが消え去り、同時に嵐の音が止む。
僕は胸ぐらを掴んでいた手を離して、エルに抱きついた。
「ごめん。ごめんね、エル。頭に血が上っちゃった。すぐに信じなくてごめん」
「…分かってくれたなら良い。俺も悪かった。こんな跡つけられるなんて…油断してた。ごめん」
「うん。それについてはきっちり謝罪を求めます」
「…………許す流れじゃなかったか?」
「それとこれとは話が別。"神子様のお心を乱した罪"、償ってもらわなきゃ」
「………仰せのままに、神子様……」
ふふふ、何して貰おっかな♡
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