種の期限

ながい としゆき

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二日目

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 神武と名乗る男の話を聞いて、総理も官房長官もあきれた表情で男を見つめている。男の存在以上に話の内容が信じられないといった感じだ。男の了承を得て話の場面を記録しているビデオカメラの録音ボタンだけが赤く光続けている。
「そ、それじゃぁ、地球を救うために現在存在している一種族を犠牲にすると?その種族を一年の間に選択して知らせろと神が言っているのか?」
「こんな突拍子もない話を信じられるとでも?」
二人の顔には嘲笑の笑みが浮かびはじめている。
「いかにも。天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)様も苦渋の決断だったのだ。己達の愚かさを反省し、すべての種族の血と肉と命の灯を再生のために使われずに済んで良かったと、御心の広さに感謝せねばなるまいな」
総理は笑いをこらえながら話し出した。
「それを伝えるためにわざわざ天から伝説上の人物であるあなたが来られたと?そんな話誰が信じると思いますか?まったくふざけた話だ。くだらない!」
総理の顔から嘲笑が消え、怒りの表情が現れた。
「余はこの世に実在したからここに居る」
総理が顔を紅潮させ、テーブルに身を乗り出して神武と名乗る男に詰め寄った。
「神が本当にいるなら、全知全能の神なんだから種族を犠牲にしないで地球を救えるはずじゃないか?何で一種族が犠牲にならなきゃならないんだ?そんなおかしな話があってたまるか!」
「しかと伝えたぞ。今頃は世界各国の政権を担う者の所にその国や国教の指導者が余と同じように伝えておる頃だろう」
それでも男は平静な表情で総理に答えた。
「まったくふざけた話だ。誰がそんな馬鹿げた話を信じるか!とっとと帰りたまえ!」
 総理がテーブルを強く叩き出入り口を指差した時、執務机の電話が鳴った。官房長官が席を立ち、電話に出た。嘲笑を浮かべていた顔が急に強張り出したかと思うと、受話器を耳から離し、通話口を手で塞ぎながら総理の方へ差し出した。顔はすでに蒼ざめ、手がわずかに震えている。
「総理・・・。ホワイトハウスからです。たった今大統領の執務室にジョージ・ワシントンが現れたって・・・」
総理の顔も強張り、蒼ざめた。
「な、何だって・・・?」
慌てて神武と名乗る男の方を見たが、そこには既に彼の姿はなかった。扉を開けて出て行ったわけではなく、忽然と目の前から消えてしまった。彼の座っていたところを確かめてみたが、まだ少し生暖かく、彼のぬくもりが残っていた。
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