180 / 344
第二十五話「動き出す闇と新型の優劣について」
城壁破りの戦神
しおりを挟む
赤いAMWに誘い出される形で、廃墟群の中に飛び出した志度だったが、その相手を見失ってしまっていた。
後を追ったは良いが、ビルとビルの間を利用して、敵は姿を眩ませてしまったのだ。センサーを使おうにも、そのセンサーに対象らしき影は映らない。
《対象をロスト》
「あんな形してステルスかよ……」
志度はぼやきながらもセンサーをフル活用して周囲を探る。音、動体、熱。あらゆる反応を探るようにモニターに目配せする。相手がステルス機だとして、どういう理屈で隠密性を獲得しているのか、何よりどうやって造られたのか……Tkー7改二のデータベースにもない、どこのメーカー製かも解らない正体不明の機体。
志度はその正体不明さに覚えがあった。数ヶ月前、比乃を攫い太平洋のど真ん中で戦った、あのAMWと同じだ。あれも、どのメーカーの機種とも一致しなかった。
もしも、自分の考えが正しければ、あのテロ組織の機体と同じ輩と見るべきだ。そして、その機体性能と乗り手の技量は、きっと並みではない。
気付かぬ内に冷や汗をかいていた志度が、それを片手で拭った。そのとき──
《五時方向 接近警報》
「後ろをっ」
取られた──志度は機体を全力で左へと横転させた。その一瞬後、巨大な槍による刺突がTkー7改二を襲った。掠めた衝撃で機体が揺れる。とんでもない馬力だ。もし直撃を受けていたら、串刺しにされていただろう。
横転の姿勢で片手を地面について、そのまま更に横へと飛んだ機体に、更なる刺突が加えられる。が、これは何とか避け切った。地着地した志度が、正面に映った赤い機体を睨みつける。
全長は推定で九メートル。Tkー7改二よりも一回り長身で逞しい、西洋の戦鎧のような機体だった。その両手に持った巨大な、Tkー7の全長より大きい槍を、なんと片手で保持して振り回している。真っ赤な全身に金色が入ったそのカラーリングから、相手がただの量産機でないことは明白だった。
「とんでもないのを引き受けちまったな……」
志度は悪態を吐きながら、腰のウェポンラックから高振動ナイフを取り出し、左手に構えた。右腕に装備された電磁ブレイカーが「がしゃり」と音を立てて鉄杭を装填する。
腰にぶら下がっている短筒は、ペイント弾が入った玩具だ。志度の射撃の腕では頭部カメラに当てるなどという曲芸は出来ない。何より、こちらを品定めするように見ているこの相手に、そんな物が通用しそうな隙が見られなかった。
見るからに、近接戦闘仕様の未知のAMWに対して、同じ近接戦闘用の装備で挑まなければならないという状況に、志度は思わず舌打ちした。
「でも、やるっきゃないよなぁ!」
叫んで、志度から仕掛けた。闇雲に見える突進。対して赤い機体は片方の槍をぐるりと一回転させて、その進路上を狙うように突きを放って来た。
突きが当たると思われた直前、光の粒子を放ちながら志度の機体が直角に曲がった。腰のフォトンスラスターによる強引な方向転換。並みの機士であれば脳震盪でも起こしていそうな挙動だったが、志度はなんてことないように、今度は前方へと加速。
槍を振るった赤い機体の側面を通り抜けて後方に着くと、その場で急旋回、そのがら空きに見える背中に高振動ナイフを突き刺さんと飛び込んだ。刺突が装甲に達する。しかし、甲高い音と共に弾かれた。確かに背面装甲に入った一撃は、その装甲の表面に弾かれたのだ。
「かってぇ!」
思わず叫びながら、スラスターを逆噴射させて機体を後退させる。そのすぐ後を、振り向き様の薙ぎが通り過ぎる。振り返った赤い機体が「その程度か?」と言わんばかりに肩を竦ませた。
(ステルスだけじゃなくて相転移装甲か何かまで……あの時のと同じだな)
ミッドウェイで戦った水陸両用のAMWを思い出す、これで、あの時と同じ組織の機体であることは確信に変わった。ならば、その狙いは比乃だろうか、益々、こいつを向こうにやる訳には行かなくなった。それに、あの時は決定打が無く、どうしようもなかったが、今回は違う。
「今は、こいつがある!」
《電磁ブレイカー充填完了》
コンデンサへの充填を終え、帯電し始めた電磁ブレイカーが紫電を纏う。それを構えて、志度は再度突撃を敢行する。今度は最初からスラスターを後方へ向けて吹かし、前方への莫大な推進力を得て、猛然と距離を詰める。相手は槍を振り、今度は真上から叩くようにその巨体を振り下ろした。
「いっけぇ!」
志度はそれを、下からアッパーカットのように突き上げて立ち向かった。電磁ブレイカーの電力が解放され、超加速を受けた鉄杭が、爆音を立てて槍の巨大な穂先を穿いた。それだけでなく、その衝撃で槍の持ち手から先をバラバラに吹き飛ばした。東京技本の誇る、相転移装甲すら貫くと評判の突貫兵器が、本領発揮した。
「まずは一本!」
《電磁ブレイカー、再装填開始》
加速と受けた電磁力の熱で真っ赤に染まった鉄杭が排出され、次の鉄杭が装填される。その間に、志度は再度スラスターを吹かし、驚愕に固まる相手の背後に一瞬で回る。
《再装填完了》
AIの報告と同時に、必殺の一撃を背面から叩き込んだ──対し、赤い機体は背中に目でも付いてるような正確さで、もう一本の槍を背面、電磁ブレイカーの進路上に起き、その一撃を防いだ。その槍が吹き飛び、衝撃で赤い機体がたたらを踏む。
「これで二本!」
目に見える相手の主兵装はこれで奪った。後はその硬い胴体に一撃をくれてやるだけ。余裕の笑みを浮かべた志度だったが、その前で、ゆっくりと振り返った赤い機体が、仰け反るように笑った。そう、笑っているのだ。この状況に陥って尚、楽しそうに。
(なんだ……?)
怪訝そうにする志度の目の前で、赤い機体が太腿に備え付けられていたウェポンラックから、二振りの高振動ナイフを取り出した。いや、ナイフと呼ぶには大柄で、太刀と呼んだ方がしっくり来る、大型のモデルだ。
肉厚なその刃を、赤い機体は順手に構えると、先程までの鈍重な動きからは想像も付かない瞬発力で、Tkー7改二に受かって飛び掛った。
「なっ!」
志度がそれに反応できたのは、相変わらずも超人的な反応速度のおかげだった。辛うじて身を逸らした肩にナイフの切っ先がぶつかり、甲高い音を立てて寸断された。
「槍よりそっちの方が得意ってわけかよ!」
やけくそ気味に叫んで、志度は機体を躍らせる。赤い機体と白い機体の、狂ったような速さの斬り合いが始まった。
後を追ったは良いが、ビルとビルの間を利用して、敵は姿を眩ませてしまったのだ。センサーを使おうにも、そのセンサーに対象らしき影は映らない。
《対象をロスト》
「あんな形してステルスかよ……」
志度はぼやきながらもセンサーをフル活用して周囲を探る。音、動体、熱。あらゆる反応を探るようにモニターに目配せする。相手がステルス機だとして、どういう理屈で隠密性を獲得しているのか、何よりどうやって造られたのか……Tkー7改二のデータベースにもない、どこのメーカー製かも解らない正体不明の機体。
志度はその正体不明さに覚えがあった。数ヶ月前、比乃を攫い太平洋のど真ん中で戦った、あのAMWと同じだ。あれも、どのメーカーの機種とも一致しなかった。
もしも、自分の考えが正しければ、あのテロ組織の機体と同じ輩と見るべきだ。そして、その機体性能と乗り手の技量は、きっと並みではない。
気付かぬ内に冷や汗をかいていた志度が、それを片手で拭った。そのとき──
《五時方向 接近警報》
「後ろをっ」
取られた──志度は機体を全力で左へと横転させた。その一瞬後、巨大な槍による刺突がTkー7改二を襲った。掠めた衝撃で機体が揺れる。とんでもない馬力だ。もし直撃を受けていたら、串刺しにされていただろう。
横転の姿勢で片手を地面について、そのまま更に横へと飛んだ機体に、更なる刺突が加えられる。が、これは何とか避け切った。地着地した志度が、正面に映った赤い機体を睨みつける。
全長は推定で九メートル。Tkー7改二よりも一回り長身で逞しい、西洋の戦鎧のような機体だった。その両手に持った巨大な、Tkー7の全長より大きい槍を、なんと片手で保持して振り回している。真っ赤な全身に金色が入ったそのカラーリングから、相手がただの量産機でないことは明白だった。
「とんでもないのを引き受けちまったな……」
志度は悪態を吐きながら、腰のウェポンラックから高振動ナイフを取り出し、左手に構えた。右腕に装備された電磁ブレイカーが「がしゃり」と音を立てて鉄杭を装填する。
腰にぶら下がっている短筒は、ペイント弾が入った玩具だ。志度の射撃の腕では頭部カメラに当てるなどという曲芸は出来ない。何より、こちらを品定めするように見ているこの相手に、そんな物が通用しそうな隙が見られなかった。
見るからに、近接戦闘仕様の未知のAMWに対して、同じ近接戦闘用の装備で挑まなければならないという状況に、志度は思わず舌打ちした。
「でも、やるっきゃないよなぁ!」
叫んで、志度から仕掛けた。闇雲に見える突進。対して赤い機体は片方の槍をぐるりと一回転させて、その進路上を狙うように突きを放って来た。
突きが当たると思われた直前、光の粒子を放ちながら志度の機体が直角に曲がった。腰のフォトンスラスターによる強引な方向転換。並みの機士であれば脳震盪でも起こしていそうな挙動だったが、志度はなんてことないように、今度は前方へと加速。
槍を振るった赤い機体の側面を通り抜けて後方に着くと、その場で急旋回、そのがら空きに見える背中に高振動ナイフを突き刺さんと飛び込んだ。刺突が装甲に達する。しかし、甲高い音と共に弾かれた。確かに背面装甲に入った一撃は、その装甲の表面に弾かれたのだ。
「かってぇ!」
思わず叫びながら、スラスターを逆噴射させて機体を後退させる。そのすぐ後を、振り向き様の薙ぎが通り過ぎる。振り返った赤い機体が「その程度か?」と言わんばかりに肩を竦ませた。
(ステルスだけじゃなくて相転移装甲か何かまで……あの時のと同じだな)
ミッドウェイで戦った水陸両用のAMWを思い出す、これで、あの時と同じ組織の機体であることは確信に変わった。ならば、その狙いは比乃だろうか、益々、こいつを向こうにやる訳には行かなくなった。それに、あの時は決定打が無く、どうしようもなかったが、今回は違う。
「今は、こいつがある!」
《電磁ブレイカー充填完了》
コンデンサへの充填を終え、帯電し始めた電磁ブレイカーが紫電を纏う。それを構えて、志度は再度突撃を敢行する。今度は最初からスラスターを後方へ向けて吹かし、前方への莫大な推進力を得て、猛然と距離を詰める。相手は槍を振り、今度は真上から叩くようにその巨体を振り下ろした。
「いっけぇ!」
志度はそれを、下からアッパーカットのように突き上げて立ち向かった。電磁ブレイカーの電力が解放され、超加速を受けた鉄杭が、爆音を立てて槍の巨大な穂先を穿いた。それだけでなく、その衝撃で槍の持ち手から先をバラバラに吹き飛ばした。東京技本の誇る、相転移装甲すら貫くと評判の突貫兵器が、本領発揮した。
「まずは一本!」
《電磁ブレイカー、再装填開始》
加速と受けた電磁力の熱で真っ赤に染まった鉄杭が排出され、次の鉄杭が装填される。その間に、志度は再度スラスターを吹かし、驚愕に固まる相手の背後に一瞬で回る。
《再装填完了》
AIの報告と同時に、必殺の一撃を背面から叩き込んだ──対し、赤い機体は背中に目でも付いてるような正確さで、もう一本の槍を背面、電磁ブレイカーの進路上に起き、その一撃を防いだ。その槍が吹き飛び、衝撃で赤い機体がたたらを踏む。
「これで二本!」
目に見える相手の主兵装はこれで奪った。後はその硬い胴体に一撃をくれてやるだけ。余裕の笑みを浮かべた志度だったが、その前で、ゆっくりと振り返った赤い機体が、仰け反るように笑った。そう、笑っているのだ。この状況に陥って尚、楽しそうに。
(なんだ……?)
怪訝そうにする志度の目の前で、赤い機体が太腿に備え付けられていたウェポンラックから、二振りの高振動ナイフを取り出した。いや、ナイフと呼ぶには大柄で、太刀と呼んだ方がしっくり来る、大型のモデルだ。
肉厚なその刃を、赤い機体は順手に構えると、先程までの鈍重な動きからは想像も付かない瞬発力で、Tkー7改二に受かって飛び掛った。
「なっ!」
志度がそれに反応できたのは、相変わらずも超人的な反応速度のおかげだった。辛うじて身を逸らした肩にナイフの切っ先がぶつかり、甲高い音を立てて寸断された。
「槍よりそっちの方が得意ってわけかよ!」
やけくそ気味に叫んで、志度は機体を躍らせる。赤い機体と白い機体の、狂ったような速さの斬り合いが始まった。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
絶世のディプロマット
一陣茜
SF
惑星連合平和維持局調停課に所属するスペース・ディプロマット(宇宙外交官)レイ・アウダークス。彼女の業務は、惑星同士の衝突を防ぐべく、双方の間に介入し、円満に和解させる。
レイの初仕事は、軍事アンドロイド産業の発展を望む惑星ストリゴイと、墓石が土地を圧迫し、財政難に陥っている惑星レムレスの星間戦争を未然に防ぐーーという任務。
レイは自身の護衛官に任じた凄腕の青年剣士、円城九太郎とともに惑星間の調停に赴く。
※本作はフィクションであり、実際の人物、団体、事件、地名などとは一切関係ありません。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―
EPIC
ファンタジー
建設隊――陸上自衛隊にて編制運用される、鉄道運用部隊。
そしてその世界の陸上自衛隊 建設隊は、旧式ながらも装甲列車を保有運用していた。
そんな建設隊は、何の因果か巡り合わせか――異世界の地を新たな任務作戦先とすることになる――
陸上自衛隊が装甲列車で異世界を旅する作戦記録――開始。
注意)「どんと来い超常現象」な方針で、自衛隊側も超技術の恩恵を受けてたり、めっちゃ強い隊員の人とか出てきます。まじめな現代軍隊inファンタジーを期待すると盛大に肩透かしを食らいます。ハジケる覚悟をしろ。
・「異世界を――装甲列車で冒険したいですッ!」、そんな欲望のままに開始した作品です。
・現実的な多々の問題点とかぶん投げて、勢いと雰囲気で乗り切ります。
・作者は鉄道関係に関しては完全な素人です。
・自衛隊の名称をお借りしていますが、装甲列車が出てくる時点で現実とは異なる組織です。
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
超克の艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
「合衆国海軍ハ 六〇〇〇〇トン級戦艦ノ建造ヲ計画セリ」
米国駐在武官からもたらされた一報は帝国海軍に激震をもたらす。
新型戦艦の質的アドバンテージを失ったと判断した帝国海軍上層部はその設計を大幅に変更することを決意。
六四〇〇〇トンで建造されるはずだった「大和」は、しかしさらなる巨艦として誕生する。
だがしかし、米海軍の六〇〇〇〇トン級戦艦は誤報だったことが後に判明。
情報におけるミスが組織に致命的な結果をもたらすことを悟った帝国海軍はこれまでの態度を一変、貪欲に情報を収集・分析するようになる。
そして、その情報重視への転換は、帝国海軍の戦備ならびに戦術に大いなる変化をもたらす。
【BIO DEFENSE】 ~終わった世界に作られる都市~
こばん
SF
世界は唐突に終わりを告げる。それはある日突然現れて、平和な日常を過ごす人々に襲い掛かった。それは醜悪な様相に異臭を放ちながら、かつての日常に我が物顔で居座った。
人から人に感染し、感染した人はまだ感染していない人に襲い掛かり、恐るべき加速度で被害は広がって行く。
それに対抗する術は、今は無い。
平和な日常があっという間に非日常の世界に変わり、残った人々は集い、四国でいくつかの都市を形成して反攻の糸口と感染のルーツを探る。
しかしそれに対してか感染者も進化して困難な状況に拍車をかけてくる。
さらにそんな状態のなかでも、権益を求め人の足元をすくうため画策する者、理性をなくし欲望のままに動く者、この状況を利用すらして己の利益のみを求めて動く者らが牙をむき出しにしていきパニックは混迷を極める。
普通の高校生であったカナタもパニックに巻き込まれ、都市の一つに避難した。その都市の守備隊に仲間達と共に入り、第十一番隊として活動していく。様々な人と出会い、別れを繰り返しながら、感染者や都市外の略奪者などと戦い、都市同士の思惑に巻き込まれたりしながら日々を過ごしていた。
そして、やがて一つの真実に辿り着く。
それは大きな選択を迫られるものだった。
bio defence
※物語に出て来るすべての人名及び地名などの固有名詞はすべてフィクションです。作者の頭の中だけに存在するものであり、特定の人物や場所に対して何らかの意味合いを持たせたものではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる