112 / 344
第十五話「第八師団と相棒達の活躍について」
第八師団の戦い
しおりを挟む 私はサイラスの後ろを冷や汗を流しながら付いて歩いている。
「サイ様、もうこれ以上は困るよ。家狭いのにこんなの入んないよ」
「だって、ミウは僕の妹になったんだから。不自由な生活はさせられないよ」
「今も不自由じゃないよ。ちょこっとお金がないだけでさ、自由気ままに生活出来てるよ」
私はサイラスに溢れんばかりの貢ぎ物を頂いている。
『サイ様は、もう一人のお兄ちゃんだね!』
私がこの言葉を言った瞬間、サイラスは翠の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせて、私の手を取った。串焼きと一緒に。
『お兄ちゃん……良いね! 良い響きだ』
『サイ様……どうしたの?』
『僕はミウの事が気になってしょうがなかったんだ。パーティーで膝を付いて僕に謝罪した時に、ミウ言ったでしょ。僕の前には二度と現れないって。正直悲しかった。もっと話したいって思ってたから』
『そ、そうなんだ』
『これは恋愛感情なのだとばかり思っていたけれど、今はっきり分かったよ。ミウは僕の妹だ。妹になって欲しい』
サイラスの圧が半端ない。ひとりっ子は兄弟姉妹に憧れると言うがここまでとは。同い年で兄妹と言うのも変な話だが、私自身、恋愛のいざこざに巻き込まれるよりは兄妹ごっこを楽しむ方が気が楽だ。私は軽い気持ちで返事をした。
『良いよ。おにいちゃん』
これが間違いだった。サイラスは私を串焼きも買えないほどに貧乏だと思っているようで、お金を渡してきた。流石にそれは駄目だ。全拒否しているとサイラスが言った。
『だったらせめて、兄としてプレゼントをさせてくれ。それなら良いでしょ?』
『まぁ、物で貰った方が現金よりはマシかな』
——そして、今現在家具やら衣服を大量にプレゼントされているところだ。
「家に荷物を送ろうと思うんだけど、どこに届けたら良い?」
「あー、どこかな……」
自宅の住所を言っても届かないし、やはり魔王に持って帰ってもらうしかないか。私が悩んでいると、サイラスが言った。
「とりあえず城に送っとこっか。部屋狭いなら僕の部屋にドレスとか置いといてさ、着替えたい時においでよ」
「あー、うん。そうだね」
それならそのままサイラスに返品という形を取れる。良いかもしれない。
サイラスが使用人らしき人に耳打ちすると、荷物は次々と店から運び出された。そして、サイラスは私の方に向き直ってにっこり笑顔で手を出してきた。
「ん? 握手?」
「手繋いで帰ろう」
「え……? 私たち恋人とかじゃないよね?」
「うん、兄妹。だから手繋いで帰ろう」
サイラスの頭の中の兄妹像はどうなっているのだろうか。兄妹で手を繋ぐのは小さい頃くらいだ。呆気に取られていると、サイラスは眉を下げて言った。
「ごめん、抱っこだった? それともおんぶ?」
何だろう。普通に兄に見えてきた。言っている事ややっている事が日本にいる兄と変わらない。私はそれが可笑しく思えて、ふっと笑った。
「良いよ。手繋いで帰ろう」
「母上と父上にも紹介しなくちゃね」
「それはやめといた方が……」
私はサイラスと手を繋いで仲良く城へと戻っていった。
◇◇◇◇
「ねぇ、サイ様?」
「おにいちゃん!」
「ねぇ、おにいちゃん。どうして私の部屋が出来てるの? しかも、おにいちゃんの隣の部屋に」
城へ戻ると、客間で魔王の迎えを待つのかと思いきやサイラスの部屋に通された。そして、そのまま繋がっている隣の部屋に。
そこには先程購入した品の数々が並んでおり、今にも住める状態になっていた。
「大事な妹だから。僕の目の届く部屋じゃないと不安でしょ」
「いや、そうかもしれないけどさ、ここって将来のお妃様の部屋だよね? せめて別の部屋にしてよ」
「細かいことは気にしなくて良いよ。もう一人のお兄さんが来るまでまだ時間あるからさ、少し休んでなよ」
もう一人の兄とは本物の兄ではなく魔王のことだ。この世界では私の兄と言う設定でいくらしい。
「こっちの部屋が気になって使えないなら僕の部屋使いなよ。さっきからミウ眠たそうだし」
サイラスの言うように私は眠い。昨日の睡眠時間は三時間。そして、半日サイラスに付き合って動き回っているので、今にも寝落ちしそうな程に眠たいのだ。
時計を確認すると、魔王が迎えに来るまで後一時間。そして、そこにはふかふかのベッドが……。
セドリックの時に異性の部屋に二人きりで入るのはやめようと決めていた。しかし、サイラスは私に対して恋愛感情がないとはっきり言った。
「お言葉に甘えて、少し寝るね」
「どうぞ」
サイラスに誘導され、サイラスのベッドの中に入った。
「気持ち良い……」
私はサイラスに布団をポンポン叩かれながら船を漕いだ。
◇◇◇◇
五十分後。
「——ミウ、ミウ」
耳元で声がする。何だかくすぐったい。
「ミウ? そろそろ時間だよ」
「うん。お兄ちゃん、後五分」
私はいつものように抱き枕をギュッと抱きしめながら二度寝した——。
五分後私はパチッと目を覚ました。いつものことだが、この五分はアラームが無くても起きられる。不思議だ。
「はー、二度寝って最高だよね。お兄ちゃん」
「そうだね」
兄の声が下から聞こえるのは気のせいか? 恐る恐る下に目線をずらした。
「お兄ちゃん? え、わっ! 誰?」
「おにいちゃんで合ってるよ」
「え、な、なんで? なんでそんな所にいるの?」
私の腕の中にサイラスがいたのだ。しかも、私は思い切りサイラスの頭を抱きしめている。
「ご、ごめん」
パッとサイラスを解放すると、サイラスは至極嬉しそうに言った。
「五分前に起こしたんだけどさ、ミウがおにいちゃんって言いながら僕を抱きしめてくれたんだよ。そんなに僕を慕ってくれて嬉しいよ」
「あー……」
もしかしなくとも私は抱き枕と間違えてサイラスを抱きしめて寝ていたようだ。
私がしていたように今度はサイラスが私を頭からしっかりと包み込んだ。自分からサイラスを抱きしめていた手前、サイラスを拒絶できない。
「今度からは初めから一緒に寝ようね。兄妹なんだから」
「はは、そうだね。おにいちゃん……」
「サイ様、もうこれ以上は困るよ。家狭いのにこんなの入んないよ」
「だって、ミウは僕の妹になったんだから。不自由な生活はさせられないよ」
「今も不自由じゃないよ。ちょこっとお金がないだけでさ、自由気ままに生活出来てるよ」
私はサイラスに溢れんばかりの貢ぎ物を頂いている。
『サイ様は、もう一人のお兄ちゃんだね!』
私がこの言葉を言った瞬間、サイラスは翠の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせて、私の手を取った。串焼きと一緒に。
『お兄ちゃん……良いね! 良い響きだ』
『サイ様……どうしたの?』
『僕はミウの事が気になってしょうがなかったんだ。パーティーで膝を付いて僕に謝罪した時に、ミウ言ったでしょ。僕の前には二度と現れないって。正直悲しかった。もっと話したいって思ってたから』
『そ、そうなんだ』
『これは恋愛感情なのだとばかり思っていたけれど、今はっきり分かったよ。ミウは僕の妹だ。妹になって欲しい』
サイラスの圧が半端ない。ひとりっ子は兄弟姉妹に憧れると言うがここまでとは。同い年で兄妹と言うのも変な話だが、私自身、恋愛のいざこざに巻き込まれるよりは兄妹ごっこを楽しむ方が気が楽だ。私は軽い気持ちで返事をした。
『良いよ。おにいちゃん』
これが間違いだった。サイラスは私を串焼きも買えないほどに貧乏だと思っているようで、お金を渡してきた。流石にそれは駄目だ。全拒否しているとサイラスが言った。
『だったらせめて、兄としてプレゼントをさせてくれ。それなら良いでしょ?』
『まぁ、物で貰った方が現金よりはマシかな』
——そして、今現在家具やら衣服を大量にプレゼントされているところだ。
「家に荷物を送ろうと思うんだけど、どこに届けたら良い?」
「あー、どこかな……」
自宅の住所を言っても届かないし、やはり魔王に持って帰ってもらうしかないか。私が悩んでいると、サイラスが言った。
「とりあえず城に送っとこっか。部屋狭いなら僕の部屋にドレスとか置いといてさ、着替えたい時においでよ」
「あー、うん。そうだね」
それならそのままサイラスに返品という形を取れる。良いかもしれない。
サイラスが使用人らしき人に耳打ちすると、荷物は次々と店から運び出された。そして、サイラスは私の方に向き直ってにっこり笑顔で手を出してきた。
「ん? 握手?」
「手繋いで帰ろう」
「え……? 私たち恋人とかじゃないよね?」
「うん、兄妹。だから手繋いで帰ろう」
サイラスの頭の中の兄妹像はどうなっているのだろうか。兄妹で手を繋ぐのは小さい頃くらいだ。呆気に取られていると、サイラスは眉を下げて言った。
「ごめん、抱っこだった? それともおんぶ?」
何だろう。普通に兄に見えてきた。言っている事ややっている事が日本にいる兄と変わらない。私はそれが可笑しく思えて、ふっと笑った。
「良いよ。手繋いで帰ろう」
「母上と父上にも紹介しなくちゃね」
「それはやめといた方が……」
私はサイラスと手を繋いで仲良く城へと戻っていった。
◇◇◇◇
「ねぇ、サイ様?」
「おにいちゃん!」
「ねぇ、おにいちゃん。どうして私の部屋が出来てるの? しかも、おにいちゃんの隣の部屋に」
城へ戻ると、客間で魔王の迎えを待つのかと思いきやサイラスの部屋に通された。そして、そのまま繋がっている隣の部屋に。
そこには先程購入した品の数々が並んでおり、今にも住める状態になっていた。
「大事な妹だから。僕の目の届く部屋じゃないと不安でしょ」
「いや、そうかもしれないけどさ、ここって将来のお妃様の部屋だよね? せめて別の部屋にしてよ」
「細かいことは気にしなくて良いよ。もう一人のお兄さんが来るまでまだ時間あるからさ、少し休んでなよ」
もう一人の兄とは本物の兄ではなく魔王のことだ。この世界では私の兄と言う設定でいくらしい。
「こっちの部屋が気になって使えないなら僕の部屋使いなよ。さっきからミウ眠たそうだし」
サイラスの言うように私は眠い。昨日の睡眠時間は三時間。そして、半日サイラスに付き合って動き回っているので、今にも寝落ちしそうな程に眠たいのだ。
時計を確認すると、魔王が迎えに来るまで後一時間。そして、そこにはふかふかのベッドが……。
セドリックの時に異性の部屋に二人きりで入るのはやめようと決めていた。しかし、サイラスは私に対して恋愛感情がないとはっきり言った。
「お言葉に甘えて、少し寝るね」
「どうぞ」
サイラスに誘導され、サイラスのベッドの中に入った。
「気持ち良い……」
私はサイラスに布団をポンポン叩かれながら船を漕いだ。
◇◇◇◇
五十分後。
「——ミウ、ミウ」
耳元で声がする。何だかくすぐったい。
「ミウ? そろそろ時間だよ」
「うん。お兄ちゃん、後五分」
私はいつものように抱き枕をギュッと抱きしめながら二度寝した——。
五分後私はパチッと目を覚ました。いつものことだが、この五分はアラームが無くても起きられる。不思議だ。
「はー、二度寝って最高だよね。お兄ちゃん」
「そうだね」
兄の声が下から聞こえるのは気のせいか? 恐る恐る下に目線をずらした。
「お兄ちゃん? え、わっ! 誰?」
「おにいちゃんで合ってるよ」
「え、な、なんで? なんでそんな所にいるの?」
私の腕の中にサイラスがいたのだ。しかも、私は思い切りサイラスの頭を抱きしめている。
「ご、ごめん」
パッとサイラスを解放すると、サイラスは至極嬉しそうに言った。
「五分前に起こしたんだけどさ、ミウがおにいちゃんって言いながら僕を抱きしめてくれたんだよ。そんなに僕を慕ってくれて嬉しいよ」
「あー……」
もしかしなくとも私は抱き枕と間違えてサイラスを抱きしめて寝ていたようだ。
私がしていたように今度はサイラスが私を頭からしっかりと包み込んだ。自分からサイラスを抱きしめていた手前、サイラスを拒絶できない。
「今度からは初めから一緒に寝ようね。兄妹なんだから」
「はは、そうだね。おにいちゃん……」
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説



元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる