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第六話「イベント会場における警備と護衛について」
騎士の戦い
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一方、ジャックのカーテナは、ニコラハムの赤い機体を完全に補足していた。
当初は光化学迷彩を用いた逃走と奇襲により、ニコラハムが優位を保っていた。しかし、何度目かの奇襲を仕掛けた時、その姿を虚空から滲み出るように晒したのだ。
カーテナは未だ先行量産型、つまりは試験機である。そのため、光化学迷彩を纏ったままの戦闘機動を行うだけのエネルギー容量など積んでいないし、消費電力の削減など以ての外だ。
それを失意していたニコラハムは、先ほど自身が撃破したコンカラーⅡの残骸が転がっている船着場で、ジャックのカーテナを相対するはめになった。
『もう逃げ場はないぞ……なぜ、何故だニコラハム、貴様ほどの腕を持つ近衛が』
言って双剣を抜刀する、対するニコラハムも観念したように同じ型の双剣を手に取る。お互い飛び道具である三十ミリチェーンガンは構えない。
近接戦闘と運動性能を主眼においた、ある意味で日本のTkー7と同じコンセプトを持つカーテナ同士では、射撃で撃ち合うことは長期戦を意味する。片方は王女を救うため、片方はもう長期戦をするエネルギーがないため、それぞれの理由で短期決戦に拘った。
『ふん、王室だ近衛だと、時代錯誤なことを言っているのに着いていくよりも、現実的に高収入を頂ける側に着いた方が得だからだ!』
ニコラハムの赤いカーテナが先に仕掛ける、振り抜かれた双剣二振りが、的確にコクピットを狙って飛ぶように舞う。
『そんな物のために、陛下と殿下を裏切ったのか!』
その二撃をジャックの金色のカーテナは双剣の内片方の一本だけで逸らし、もう片方で袈裟斬りにせんと振り下ろす。だが、ニコラハムも伊達に技量で近衛になった男ではない。
『五百万ドルだぞ! たかが小娘二人を拉致して渡すだけでだ!』
その斬撃を受ける前に、赤色が金色を蹴り飛ばして距離を取り直すことで斬撃を空振りさせる。
互いに構え直し、生身の人間の斬り合いのように隙を伺う。一進一退の攻防。
その合間に外部スピーカー越しに言いたい事を言い合い、罵り合う。
『そのような端金でか!』
『ああそうだ、お前達が名誉と言う下らない物を、俺は高値で売り捨てたんだよ!』
同時に駆け出した二機が激突する。合計四本の剣が、相手の剣を絡め取ろうと、突き刺そうと、斬り伏せようと乱舞する。互いの一撃が相手を弾き飛ばし、同時に振り返る二体の機体。
金色の機体が足元のアスファルトを砕き、赤色の機体が残骸の破片を蹴り飛ばしながら、一度離れた相手に突撃する。
『王女殿下の令にかけて、貴様をここで断罪する!』
『黙れ、ガキのお守りが!』
『貴様ほざいたなぁ!』怒りに叫んだジャックが力任せに振るった横殴りの一撃を、ニコラハムの機体が受け止め切った……かと思った次の瞬間、力負けをして押し切られた。
ここまで光学迷彩を一切使わなかったジャックのカーテナと、少なくとも三回は長時間の光学迷彩を使用したニコラハムのカーテナでは、もはや残量エネルギーが天と地ほど違ったのだ。そこが命運を分けた。
エネルギーが十分に供給にされずに押し負けた腕部モータが、剣の上を滑るよう進んだ刃で断ち切られ、赤い右腕が地面に落ちる。
『っまだだぁ!』
再度、片腕を失ったにも関わらず驚異的なバランス感覚で放たれた蹴りが金色の頭部に直撃し、センサーの半分を破壊した。
そのまま距離を取って、赤い機体が残された左腕のチェーンガンを向け、ニコラハムがトリガーを引いた。
砲弾が銃口から飛び出す直前、金色の機体が高振動ブレードを投擲した。その切っ先と砲弾がぶつかり合い、暴発。赤いカーテナの残った左腕の肘から先が吹き飛んだ。
センサーを潰された不明瞭な視界の中で、ジャックは距離を取ったニコラハムが取るであろう行動を予測し、二振りの内、片方を投げつけたのだ。
『な、なにぃ……?!』
両腕を失った赤い機体の前に、一振りの剣を構えた近衛兵の金色のカーテナが、構える。
『もう終わりだ、ニコラハム!』
そして、目の前の敵が自分を殺そうと駆け出して来た。ニコラハムを支配したのはただただ強い恐怖であった。作戦は完全に失敗したが、それでも死にたくはない。生きてさえいればなんとでもなる。此奴らに復讐してやることだって――
ニコラハムの判断は早かった。駆けてくるカーテナに背を向けると、フェリーへ向けて全力で走り出したのだ。
肘から先がなくなった両腕を振り回し、情けなく、無様なその姿にジャックは一瞬目を閉じ、目の前のあまりに無様な、愛機の同型機に憐れみを覚えた。
『じ、ジャック! お前にも分け前をやる、ぜ、全部でもいいぞ! だ、だから』
往生際悪く情けない命乞いを吐きながら、もうどこへ逃げると言うのか、機体をフェリーに向けて跳躍させたが、明らかに跳躍距離が足りない。
ニコラハムが手元のサブモニターを見やる、そこには『Energy run out』――エネルギー切れの文字。遂に乗機にすら見放されたニコラハムが絶叫する。それをもはや聞いていられないとばかりに、ジャックのカーテナが勢い良く跳躍し。
『そんなもの、端金と言ったぁッー!』
命乞いへの返答と共に、一文字に斬り伏せた。
上半身と下半身に分離した残骸は回転しながら海へと落ち、数瞬後、海水を巻き上げて爆発した。
「……何億、何兆詰まれても、殿下への忠義に比べれば紙切れ同然だ。ニコラハム」
当初は光化学迷彩を用いた逃走と奇襲により、ニコラハムが優位を保っていた。しかし、何度目かの奇襲を仕掛けた時、その姿を虚空から滲み出るように晒したのだ。
カーテナは未だ先行量産型、つまりは試験機である。そのため、光化学迷彩を纏ったままの戦闘機動を行うだけのエネルギー容量など積んでいないし、消費電力の削減など以ての外だ。
それを失意していたニコラハムは、先ほど自身が撃破したコンカラーⅡの残骸が転がっている船着場で、ジャックのカーテナを相対するはめになった。
『もう逃げ場はないぞ……なぜ、何故だニコラハム、貴様ほどの腕を持つ近衛が』
言って双剣を抜刀する、対するニコラハムも観念したように同じ型の双剣を手に取る。お互い飛び道具である三十ミリチェーンガンは構えない。
近接戦闘と運動性能を主眼においた、ある意味で日本のTkー7と同じコンセプトを持つカーテナ同士では、射撃で撃ち合うことは長期戦を意味する。片方は王女を救うため、片方はもう長期戦をするエネルギーがないため、それぞれの理由で短期決戦に拘った。
『ふん、王室だ近衛だと、時代錯誤なことを言っているのに着いていくよりも、現実的に高収入を頂ける側に着いた方が得だからだ!』
ニコラハムの赤いカーテナが先に仕掛ける、振り抜かれた双剣二振りが、的確にコクピットを狙って飛ぶように舞う。
『そんな物のために、陛下と殿下を裏切ったのか!』
その二撃をジャックの金色のカーテナは双剣の内片方の一本だけで逸らし、もう片方で袈裟斬りにせんと振り下ろす。だが、ニコラハムも伊達に技量で近衛になった男ではない。
『五百万ドルだぞ! たかが小娘二人を拉致して渡すだけでだ!』
その斬撃を受ける前に、赤色が金色を蹴り飛ばして距離を取り直すことで斬撃を空振りさせる。
互いに構え直し、生身の人間の斬り合いのように隙を伺う。一進一退の攻防。
その合間に外部スピーカー越しに言いたい事を言い合い、罵り合う。
『そのような端金でか!』
『ああそうだ、お前達が名誉と言う下らない物を、俺は高値で売り捨てたんだよ!』
同時に駆け出した二機が激突する。合計四本の剣が、相手の剣を絡め取ろうと、突き刺そうと、斬り伏せようと乱舞する。互いの一撃が相手を弾き飛ばし、同時に振り返る二体の機体。
金色の機体が足元のアスファルトを砕き、赤色の機体が残骸の破片を蹴り飛ばしながら、一度離れた相手に突撃する。
『王女殿下の令にかけて、貴様をここで断罪する!』
『黙れ、ガキのお守りが!』
『貴様ほざいたなぁ!』怒りに叫んだジャックが力任せに振るった横殴りの一撃を、ニコラハムの機体が受け止め切った……かと思った次の瞬間、力負けをして押し切られた。
ここまで光学迷彩を一切使わなかったジャックのカーテナと、少なくとも三回は長時間の光学迷彩を使用したニコラハムのカーテナでは、もはや残量エネルギーが天と地ほど違ったのだ。そこが命運を分けた。
エネルギーが十分に供給にされずに押し負けた腕部モータが、剣の上を滑るよう進んだ刃で断ち切られ、赤い右腕が地面に落ちる。
『っまだだぁ!』
再度、片腕を失ったにも関わらず驚異的なバランス感覚で放たれた蹴りが金色の頭部に直撃し、センサーの半分を破壊した。
そのまま距離を取って、赤い機体が残された左腕のチェーンガンを向け、ニコラハムがトリガーを引いた。
砲弾が銃口から飛び出す直前、金色の機体が高振動ブレードを投擲した。その切っ先と砲弾がぶつかり合い、暴発。赤いカーテナの残った左腕の肘から先が吹き飛んだ。
センサーを潰された不明瞭な視界の中で、ジャックは距離を取ったニコラハムが取るであろう行動を予測し、二振りの内、片方を投げつけたのだ。
『な、なにぃ……?!』
両腕を失った赤い機体の前に、一振りの剣を構えた近衛兵の金色のカーテナが、構える。
『もう終わりだ、ニコラハム!』
そして、目の前の敵が自分を殺そうと駆け出して来た。ニコラハムを支配したのはただただ強い恐怖であった。作戦は完全に失敗したが、それでも死にたくはない。生きてさえいればなんとでもなる。此奴らに復讐してやることだって――
ニコラハムの判断は早かった。駆けてくるカーテナに背を向けると、フェリーへ向けて全力で走り出したのだ。
肘から先がなくなった両腕を振り回し、情けなく、無様なその姿にジャックは一瞬目を閉じ、目の前のあまりに無様な、愛機の同型機に憐れみを覚えた。
『じ、ジャック! お前にも分け前をやる、ぜ、全部でもいいぞ! だ、だから』
往生際悪く情けない命乞いを吐きながら、もうどこへ逃げると言うのか、機体をフェリーに向けて跳躍させたが、明らかに跳躍距離が足りない。
ニコラハムが手元のサブモニターを見やる、そこには『Energy run out』――エネルギー切れの文字。遂に乗機にすら見放されたニコラハムが絶叫する。それをもはや聞いていられないとばかりに、ジャックのカーテナが勢い良く跳躍し。
『そんなもの、端金と言ったぁッー!』
命乞いへの返答と共に、一文字に斬り伏せた。
上半身と下半身に分離した残骸は回転しながら海へと落ち、数瞬後、海水を巻き上げて爆発した。
「……何億、何兆詰まれても、殿下への忠義に比べれば紙切れ同然だ。ニコラハム」
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