復讐するならストーカーの彼とともにやり遂げましょう。憎しみの連鎖にはお気をつけて

葵視点

　佳代子とは中学が同じだった。三年間同じクラスで、彼女はいつも女子たちの中心にいた。暗くて、アニメにしか興味のないような、しかも髪の長い自分には到底似合わないタイプの女の子だった。彼女は容姿もスタイルもよく近くにいるだけでも明るく、笑った顔は綺麗だった。誰にでも優しい彼女に男は恋をしていた。見ていればいい幸せな日々を毎日送っていた。

　一度だけ席が隣になったことがあった。余り人と話すことが苦手な葵にさえ優しく話しかけてくれた。葵は当時成績だけはよかった。それがあってか、休み時間になれば佳代子に
「次の授業の宿題教えて」とか言われ、緊張しながらもノートを挟んでの会話ができた。
「凄い、北川君って頭いいのね。先生に教わるよりわかるもん」シャーペンを握りしめてクシャリと笑うその笑顔がかわいい。大人になった今でもそれはずっと頭に残っている。決して忘れることは無い。何も得意なものが無くて、ひっそりと過ごしていた僕を明るい場所に引っ張り出してくれた彼女を忘れられるわけがない。

　だが、そんな幸せは長く続かなかった。彼女は３年の秋に突如引っ越していってしまった。これから大事な受験だっていう時になぜ？と周りは言っていた。自分も彼女の進学先が分からず悔しがった。誰かに聞こうか、クラスの女子なら知っているかも知れないと思ったが、そんな勇気は出なかった。それからはどこにいるのか全く分からないまま月日も年月も過ぎた。