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正体 2

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「あの日?」とぼけた口調で言う結衣に

「そう、私と親しか知らないはずの固定電話にかけてるのは結衣だった。北川君は違うことを言ったけど、女の声だった。私、ちゃんと近くで聞いていたんだから」

 そう、あの日は北川君が二回目に出た電話には彼は

「もうかけてこないでくれるかな?」と言っていた。少しの沈黙の後、受話器の向こうからはっきりとは聞こえなかったが女の声が聞こえてきた。以前相手が無言だった時も咳払いが聞こえたりして男ではないのは感じていた。佳代子の固定電話にかかってきたのだから北川の元カノだとは思わない。彼女に電話をかけてくる女と言えば結衣しかいない。

 「なら、私が言ったことも聞いていたんじゃないかな?」結衣は佳代子の責めに物怖じしない顔で笑っていった。

「もう言いがかりはやめて。これ以上私たちの事に足を踏み入れないで」隣の北川は黙ったままだった。長い沈黙が流れ、その空気を破った人物がいた。「言いがかりじゃないんだよ」急に現れたのは、亮介だった。

「佳代子、こいつの名を知ってるか?」椅子を引いて座ると亮介は佳代子に聞いた。

「え?」確かにずっと佳代子は北川の下の名を知らない。彼自身も教えてはくれないし、彼女自身もそれでいいと思っていた。

「こいつの名は葵だよ。北川葵。覚えてるか?中学が一緒だった…」

(葵…)そういえば…だめだ思い出せない…。佳代子は首を傾げた。

「貴方の秘密がバレちゃったね。ずっと隠していられると思った?」

結衣は頬杖をついたまま笑った。北川は唇を噛み締めた。

「だからって…彼女を追い回してるってならないじゃないか」

顔を青ざめながら言う葵に亮介は

「馬鹿だな、ボイスレコーダーにお前の友人の言葉を残しといたんだよ」

亮介は結衣の隣に座るとスマホを出しピッと再生した。

【葵のことをわかってやれ、お前が他の女と遊んでた時あいつは岡崎のこと心配していたぞ。夜も安全に帰れてるかって彼氏でもねぇのに後ろ歩いていたけど、俺はあいつが悪いことをしてるようには思えない。逆に心配しているからこそ見守ってやってるって思ってる。お前がのほほんと遊んでる間、岡崎はどんな気持ちで待てたんだ…】

途中で亮介は音声を止めた。

「わかったか?佳代子、お前の後を四六時中付きまとっていたのは葵だ。その隣に座るそいつだ。最近知り合った男じゃない」

「だったら、なんで亮介が傍にいてやってねぇんだよ」

テーブルから立ち上がり葵は声を荒げた。佳代子は三人の様子を見て北川が今まで何も言わない理由が分かった。何も知らなかった自分がバカみたいだ。佳代子は席を立ってその場から離れた。
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