僕が生きてる必要なんてあるんだろうか?~人狼の涙~

園田美栞

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不思議な女性

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 その教会は古ぼけていた。あたりが雪で覆われ別空間な、異世界に来たような雰囲気だった。そっと中に入ると先客がいた。
「あら、いらっしゃい」
髪をまっすぐ伸ばした綺麗な女の人は僕をみるとすぐにこっちに来た。恐怖で後ろに後ずさった。
「あなた、人狼でしょう。私にはわかるの」
そうその人は静かに僕の耳元でささやいた。怖くて身動きが取れない僕に
「大丈夫、何もしないから。私はあなたの見方よ」
そう言うとふふっと笑って僕の腕をひき、暖炉の傍へ連れて行った。
 それから小さな声でその女の人と話をした。
「私もあなたと同じ種族の人間よ。この近くに住んでいるわ」
「…」
「どうしてここにきたの?」
僕はさっきまである街に住んでいたこと、その街で起こったことを話した。その女の人は悲しそうな顔をした。
「まだいるのね、そういう人間が。この際奴らに復讐をしてやりましょう」
「復讐?」
「そう、今晩は嵐になるわ。あなた、遭難する前にここにたどり着いて良かったわね。じきにここに多くの人間が来るわ。このあたり寒さをしのぐ場所なんてないもの」
 それから暫くすると、その女の人が言ったように多くの人たちがこの教会に集まった。誰もあの街の人ではなさそうだった。決して人狼だという事がバレないようにとその女の人に言われた。
「あなたも知っているでしょうけど、人間は弱いけれど集団で来られると恐ろしいものになるわ」
僕は肝に銘じ、頷いた。
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