人間不信になったお嬢様

園田美栞

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婚約

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「そんなんだろうと思った」
数日後、真紀子に報告すると彼女は笑ってそう言った。
「父同士がね~知り合いだったとは」
「私も驚いちゃった。お父様に報告したら手を叩いて喜んでくれたもの。それに今までの誤解も
溶けて、なんだかすっきりした」
「甘いなって思うけど、貴女が幸せそうなら何も言わない。あの方なら何とかやってくれそうだ
し、噂も広まっているみたいよ」
紗紀子は婚約指輪を見て微笑んだ。真紀子もそれを見て頬杖をつきながら幸せそうな顔をして
笑っていた。
「ちょっといいかしら?」
ふと声がするのでその方を見ると朋子が立っていた。怪訝そうな顔をする真紀子を制しながら紗紀子は
「どうしたの?」と聞いた。
「取り込み中ごめんさいね、私の得た情報でも欲しいかなって思って」
腕をくんで立っている彼女に紗紀子は椅子を勧めた。
「葛城夫人の浪費が激しいって話したじゃない?貴女たちも知ってるとは思うけど世界が不況に見舞われてるせいで中小企業も大きな打撃だって。それにも関わらず昔のまま…」
「えぇ、知ってるわ。あちこちで倒産が相次いでるって話じゃない。それに葛城は金融系に重きを置いてるわ」
「それだけじゃない、株式、商品の定期市場はもちろんのこと…それに株価は大暴落…」
「私達も軽く考えられないわね…」
真紀子はうなづいていた。
「それを夫人は気づいてるの?」
「いいえ、少し前までは栄えていた輸出も転不振となって余剰生産物が大量に発生…」
「それは何故?」
「ヨーロッパ列強が市場に復帰し、輸出が一転不振ですって、それに第一次世界大戦からの過剰生産が原因だそうよ」
「なら夫人の性格的に後からお金は入ってくるから大丈夫ってことかしら」
「そのようね」
「古くからの家柄なのにそんなことも……何か策は無いのかしら?」
「家を重視するなら大幅のリストラね。あちらは株価が落ちてることだし、そうする他なさそう」
朋子はため息をついた。あれこれ話した後、急いで帰らないとと彼女は席を立った。

玄関を出る時、朋子は紗紀子の耳元で囁いた
「やっぱり先を見ることよね」
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