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二人の男
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他人のこと、ましてや恋愛には全く興味がなかった自分をここまで惹きつけた彼女から離れることはできなかった。彼女の友人の真紀子からあのパーティーの話を聞き、真紀子が彼に頼む前に紗紀子を連れ戻せねばと考えたのだった。
「失礼なのよ、あの瑠奈っていう子。昔から何かと泣いて喚いて迷惑だった。ここまで他人の悪口を貴方に言いたくないけど…」
真紀子はそこまで言うと彰宏の耳元で
「紗紀子のこと好きなんでしょう?」
と囁いた。動揺した素振りを少し見せた彰宏だったがすぐさま
「そうだ」
と返事した。真紀子はそれを聞いて笑った。
「安心した。素直な方なんですね」
彰宏もその言葉ににこりと笑い
「彼女のことはお任せください」
と立ち去りながらそう言ったのだった。
圭吾は召使を使って調べまわった。昔から気になっていた白椿の素行となぜここまで成りあがったのかを。詳しいことは誰も知らず謎に包まれていたあの家。自分が悪いのもわかっているけれど紗紀子の傍にいるあの男が憎たらしくて仕方がなかった。それはどこから来るのだろうか。嘗て愛していた女性。何事もなければあのままでいられたはずだ。
「もう私たちの邪魔はしないでしょうね。あんなに噂を流したんだもの。さっきの大声もきっと負け犬のセリフね」
瑠奈は嬉しそうに話している。いつからかこの女が怖いと思うようになった。だが止めることができない。好きなようにさせといてもこちらには非はなく、葛城家には有意義に働いていた。彼女の笑顔も仕草も作法を型破りしたものだったが、それがまた新しいと気に入った者もいた。元気で明るくて前向きな女性、誰の目にもそう見えていたのだろう。だが、圭吾はそうは思わず、紗紀子のことを考えていたりすると決まって彼女の話をし始めるのだった。それが見透かされている気がして怖かった。だから白椿のことを調べた。嘗て愛していた女性が気になるから。それに声をかける得体の知れない男のことを調べたかった。
「失礼なのよ、あの瑠奈っていう子。昔から何かと泣いて喚いて迷惑だった。ここまで他人の悪口を貴方に言いたくないけど…」
真紀子はそこまで言うと彰宏の耳元で
「紗紀子のこと好きなんでしょう?」
と囁いた。動揺した素振りを少し見せた彰宏だったがすぐさま
「そうだ」
と返事した。真紀子はそれを聞いて笑った。
「安心した。素直な方なんですね」
彰宏もその言葉ににこりと笑い
「彼女のことはお任せください」
と立ち去りながらそう言ったのだった。
圭吾は召使を使って調べまわった。昔から気になっていた白椿の素行となぜここまで成りあがったのかを。詳しいことは誰も知らず謎に包まれていたあの家。自分が悪いのもわかっているけれど紗紀子の傍にいるあの男が憎たらしくて仕方がなかった。それはどこから来るのだろうか。嘗て愛していた女性。何事もなければあのままでいられたはずだ。
「もう私たちの邪魔はしないでしょうね。あんなに噂を流したんだもの。さっきの大声もきっと負け犬のセリフね」
瑠奈は嬉しそうに話している。いつからかこの女が怖いと思うようになった。だが止めることができない。好きなようにさせといてもこちらには非はなく、葛城家には有意義に働いていた。彼女の笑顔も仕草も作法を型破りしたものだったが、それがまた新しいと気に入った者もいた。元気で明るくて前向きな女性、誰の目にもそう見えていたのだろう。だが、圭吾はそうは思わず、紗紀子のことを考えていたりすると決まって彼女の話をし始めるのだった。それが見透かされている気がして怖かった。だから白椿のことを調べた。嘗て愛していた女性が気になるから。それに声をかける得体の知れない男のことを調べたかった。
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