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知らなかったこと
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「え?」
紗紀子は彰宏の言葉を聞いて耳を疑った。
「彼を知ってるの?」
「知ってるも何も、有名な奴だし…。俺がイギリスにいた時に出会ったんだ」
「…私そんな話聞いてない。私もその国に行った事あるわ。でも彼には会わなかったし、彼がそこに行ったなんて聞いたことも…」
彰宏は言葉を選びながら話はじめた。
「俺はただ単に日本人がいたから話しかけてみたんだ。人見知りとかではないからね、圭吾もそんな感じで話してくれたよ」
「そうだったのね」
彰宏は困った。その先の言葉が出てこなかった。
(まさか圭吾にこんな可愛い婚約者がいたとは。話は聞いてはいたけど、全然それとは違うじゃないか。それにあの時も違う女と出かけていたし、新婚旅行だのと言っていた。彼女をここまで傷付けてまで…)
あいつの元婚約者の名前は聞いてはいたけどそれをはっきり思い出したのはついこの間だった。それで慌てて今日紗紀子のもとを訪れたのもあった。横に座る紗紀子はため息をついた。それを見て彼はこれ以上目の前の彼女を悲しませたくはなかったし、もう終わってしまったことを話したとしても何もならないと思った。何か話題を変えようかとあたりを見渡した。
「「ねぇ」」
二人の声が重なった。互いに目を丸くし「どうぞ」と言い合っては笑った。
「私、貴方の話を聞いてみたい。ほかにどこかの国に行ったりしたの?」
紗紀子のその質問に彰宏はにこりと笑って答えた。彼は多くの国に行っていた。様々な事業に成功し、世界にまで手を広げていた。その国の話を聞く度に紗紀子は笑顔で聞き入った。でも一番驚いたのはあとから分かった、彰宏の母親が外国の人だったことだった。彼の独特の雰囲気と少し変わった顔立ちはそれだと紗紀子は心の内で納得した。
話し込んでいて気づいたら夕方を既に回っていた。
「そろそろ帰るね」と彰宏は言った。
上着を着て立ち上がった彼は玄関を出る前に彼女にキスをした。
「また来てもいいかな」
耳元で囁く彼の声に顔と耳を赤くした紗紀子はコクリと頷いた。それを見てにこりと笑って手を振って彼は車に乗って帰って行った。
紗紀子は彰宏の言葉を聞いて耳を疑った。
「彼を知ってるの?」
「知ってるも何も、有名な奴だし…。俺がイギリスにいた時に出会ったんだ」
「…私そんな話聞いてない。私もその国に行った事あるわ。でも彼には会わなかったし、彼がそこに行ったなんて聞いたことも…」
彰宏は言葉を選びながら話はじめた。
「俺はただ単に日本人がいたから話しかけてみたんだ。人見知りとかではないからね、圭吾もそんな感じで話してくれたよ」
「そうだったのね」
彰宏は困った。その先の言葉が出てこなかった。
(まさか圭吾にこんな可愛い婚約者がいたとは。話は聞いてはいたけど、全然それとは違うじゃないか。それにあの時も違う女と出かけていたし、新婚旅行だのと言っていた。彼女をここまで傷付けてまで…)
あいつの元婚約者の名前は聞いてはいたけどそれをはっきり思い出したのはついこの間だった。それで慌てて今日紗紀子のもとを訪れたのもあった。横に座る紗紀子はため息をついた。それを見て彼はこれ以上目の前の彼女を悲しませたくはなかったし、もう終わってしまったことを話したとしても何もならないと思った。何か話題を変えようかとあたりを見渡した。
「「ねぇ」」
二人の声が重なった。互いに目を丸くし「どうぞ」と言い合っては笑った。
「私、貴方の話を聞いてみたい。ほかにどこかの国に行ったりしたの?」
紗紀子のその質問に彰宏はにこりと笑って答えた。彼は多くの国に行っていた。様々な事業に成功し、世界にまで手を広げていた。その国の話を聞く度に紗紀子は笑顔で聞き入った。でも一番驚いたのはあとから分かった、彰宏の母親が外国の人だったことだった。彼の独特の雰囲気と少し変わった顔立ちはそれだと紗紀子は心の内で納得した。
話し込んでいて気づいたら夕方を既に回っていた。
「そろそろ帰るね」と彰宏は言った。
上着を着て立ち上がった彼は玄関を出る前に彼女にキスをした。
「また来てもいいかな」
耳元で囁く彼の声に顔と耳を赤くした紗紀子はコクリと頷いた。それを見てにこりと笑って手を振って彼は車に乗って帰って行った。
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