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心に入った錘
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父の言いつけを守るかのように部屋に籠った紗紀子はぼんやりと空を眺めていた。空は紗紀子の心と違って青く明るい。雲一つなく風さえなかった。遠くには鳥が楽しそうに番いになって飛び回っている。それが紗紀子の心をゆっくりと落ち着かせていた。何も考えず空気と一体になるように。
「お嬢様」
どこからか声が聞こえてくる。視界の先は真っ暗でどこから声がするのかわからない。
「紗紀子お嬢様」
また声がする。自分を呼ぶ声。何度も何度もその声は近くなってくる。
(呼ばないで)
誰かが返事をした。だけどその声は呼ぶ声の主に届いていないらしく頻りに紗紀子の名を呼んでいた。
肩を掴まれ目を開けると鈴木が視界に入ってきた。トロンとした目を見て鈴木はやれやれといった顔をした。
「そんなところで寝ていたら風邪ひいてしまいますよ」
お母様のようなことを言う。ならさっきまで私の名を呼んでいたのは鈴木さんだったのね。立ち上がると何も考えられない心が無になったように重い。私が何をしているのかも分からない。どうしてここにいるのか、目を閉じていた方が楽かもしれない。
鈴木が整えてくれたベットに横になった。
「体調が悪いのか」と言われたけどただなぜかこうしていたかった。放っておいて欲しくなった。それがただ唯一の紗紀子の願いだった。
≪この家の恥さらしだ≫
お父様の声が心に響いてきた。そう昨日の夜に言われた言葉。それがグサリと心に刺さった。
鈴木は無表情のまま横になっている紗紀子を放っておけなかった。まるで生きる意味をなくした子のように何もせず今朝から食事もとっていない彼女が心配だった。昨晩の主人の怒鳴り声は屋敷中に響いていた。それからお嬢様の微かな泣き声も。
「お嬢様」
どこからか声が聞こえてくる。視界の先は真っ暗でどこから声がするのかわからない。
「紗紀子お嬢様」
また声がする。自分を呼ぶ声。何度も何度もその声は近くなってくる。
(呼ばないで)
誰かが返事をした。だけどその声は呼ぶ声の主に届いていないらしく頻りに紗紀子の名を呼んでいた。
肩を掴まれ目を開けると鈴木が視界に入ってきた。トロンとした目を見て鈴木はやれやれといった顔をした。
「そんなところで寝ていたら風邪ひいてしまいますよ」
お母様のようなことを言う。ならさっきまで私の名を呼んでいたのは鈴木さんだったのね。立ち上がると何も考えられない心が無になったように重い。私が何をしているのかも分からない。どうしてここにいるのか、目を閉じていた方が楽かもしれない。
鈴木が整えてくれたベットに横になった。
「体調が悪いのか」と言われたけどただなぜかこうしていたかった。放っておいて欲しくなった。それがただ唯一の紗紀子の願いだった。
≪この家の恥さらしだ≫
お父様の声が心に響いてきた。そう昨日の夜に言われた言葉。それがグサリと心に刺さった。
鈴木は無表情のまま横になっている紗紀子を放っておけなかった。まるで生きる意味をなくした子のように何もせず今朝から食事もとっていない彼女が心配だった。昨晩の主人の怒鳴り声は屋敷中に響いていた。それからお嬢様の微かな泣き声も。
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