17 / 33
白椿家のパーティー3
しおりを挟む
それから少しずつ会話が盛り上がり楽しい時を過ごしていた。今までのわだかまりが少しずつ消えていった気がした。
「ここでなら周りの目を気にしなくても大丈夫でしょう」
彰宏はにこりと笑っていった。紗紀子はパッと顔を上げて
「私のことは気になさらないで。それに私も自分自身を変えたいって思ってるの」
「なぜ?」
彰宏は首をかしげた。
「知らない間に誰かを傷付けてると思うと怖いの」
「俺はそのままでいいと思う。そのままの紗紀さんを受け入れるし、変わりたいのなら止はしないけど…なんていうか…」
うまく言えず口ごもる彰宏に紗紀子はクスクスっと笑った。
「そう言ってくれるのって貴方がぐらいね。だけど…」
「だけど?」
ハッとして紗紀子は黙った。この楽しい時を壊してはいけない。
(だけど、誰でも最初はこう言って気を引こうとするだけ。だなんて言えないよ…)笑顔を作って彼女は柱時計をみた。時間は23時を大きく回っている。門限が決まっているから父がどうせ家にいなくても帰らなければならない。でもこの人と一緒にいてもいいのかな?初めての感情だった。
(彼に心を許してもいいの?裏切ったりしない?)
たまに出てくるこの気持ちを思わずにはいられない。でも、違う気持ちも来る。心が温まるような苦しいような。もうどうしたらいいのかわからない。
「私そろそろ帰らなきゃ」
紗紀子はそういった。
「そっか」
帰ってきた返事はそっけなく聞こえた。だけど
「送っていくよ」
と笑顔でそう言われた。
彰宏に手を引かれカーテンから広間に出れば多くの人の目線が紗紀子刺さっていた。
「あんなに一人でいるからかわいそうにと思って声をかけただけなのにしつこい女ね。私たちのほうがあの方を愛してるのよ。いくらく辻倉のお嬢様だからっていい気になってバカみたいよね」
と後ろを歩く紗紀子によく聞こえるようにあちこちで様々な人がひそひそと話している。
「元婚約者に捨てられたんですって」
「あんなに暗かったら一緒にいてもつまらないわよ」
「ずっと壁のほうにいらっしゃったんですもの」
「壁の花がお似合いよ」
クスクスと笑い声も聞こえてくる。自分がここにいる意味がないような気がしてくる。
(早く手を離した方が彼も…)
そう思ってスッと離れようとするとグイと引き寄せられた。
「堂々としてていいんだ」
え?とした顔をしていると「変わりたいんだろ?」と小さな声で言われた。
(手伝いをしてくれているだけなのかな)
でもうれしい、このままの関係だけでもいい。
車に乗りながら紗紀子はそんなことを思っていた。いつもより星は綺麗に見える。心のもやもやも消えてる気がする。
家につくまで短く感じた。夢のような時間が終わる。
「ねぇ」
紗紀子は車から降りたとき彰宏に声を掛けた。
「ん?」
というその顔は優しかった。彼女の言葉をゆっくりと待っていてくれるようだった。
「どうして私に優しいの?」
「ここでなら周りの目を気にしなくても大丈夫でしょう」
彰宏はにこりと笑っていった。紗紀子はパッと顔を上げて
「私のことは気になさらないで。それに私も自分自身を変えたいって思ってるの」
「なぜ?」
彰宏は首をかしげた。
「知らない間に誰かを傷付けてると思うと怖いの」
「俺はそのままでいいと思う。そのままの紗紀さんを受け入れるし、変わりたいのなら止はしないけど…なんていうか…」
うまく言えず口ごもる彰宏に紗紀子はクスクスっと笑った。
「そう言ってくれるのって貴方がぐらいね。だけど…」
「だけど?」
ハッとして紗紀子は黙った。この楽しい時を壊してはいけない。
(だけど、誰でも最初はこう言って気を引こうとするだけ。だなんて言えないよ…)笑顔を作って彼女は柱時計をみた。時間は23時を大きく回っている。門限が決まっているから父がどうせ家にいなくても帰らなければならない。でもこの人と一緒にいてもいいのかな?初めての感情だった。
(彼に心を許してもいいの?裏切ったりしない?)
たまに出てくるこの気持ちを思わずにはいられない。でも、違う気持ちも来る。心が温まるような苦しいような。もうどうしたらいいのかわからない。
「私そろそろ帰らなきゃ」
紗紀子はそういった。
「そっか」
帰ってきた返事はそっけなく聞こえた。だけど
「送っていくよ」
と笑顔でそう言われた。
彰宏に手を引かれカーテンから広間に出れば多くの人の目線が紗紀子刺さっていた。
「あんなに一人でいるからかわいそうにと思って声をかけただけなのにしつこい女ね。私たちのほうがあの方を愛してるのよ。いくらく辻倉のお嬢様だからっていい気になってバカみたいよね」
と後ろを歩く紗紀子によく聞こえるようにあちこちで様々な人がひそひそと話している。
「元婚約者に捨てられたんですって」
「あんなに暗かったら一緒にいてもつまらないわよ」
「ずっと壁のほうにいらっしゃったんですもの」
「壁の花がお似合いよ」
クスクスと笑い声も聞こえてくる。自分がここにいる意味がないような気がしてくる。
(早く手を離した方が彼も…)
そう思ってスッと離れようとするとグイと引き寄せられた。
「堂々としてていいんだ」
え?とした顔をしていると「変わりたいんだろ?」と小さな声で言われた。
(手伝いをしてくれているだけなのかな)
でもうれしい、このままの関係だけでもいい。
車に乗りながら紗紀子はそんなことを思っていた。いつもより星は綺麗に見える。心のもやもやも消えてる気がする。
家につくまで短く感じた。夢のような時間が終わる。
「ねぇ」
紗紀子は車から降りたとき彰宏に声を掛けた。
「ん?」
というその顔は優しかった。彼女の言葉をゆっくりと待っていてくれるようだった。
「どうして私に優しいの?」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】離縁など、とんでもない?じゃあこれ食べてみて。
BBやっこ
恋愛
サリー・シュチュワートは良縁にめぐまれ、結婚した。婚家でも温かく迎えられ、幸せな生活を送ると思えたが。
何のこれ?「旦那様からの指示です」「奥様からこのメニューをこなすように、と。」「大旦那様が苦言を」
何なの?文句が多すぎる!けど慣れ様としたのよ…。でも。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる