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前の住人、Margaret様

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 彼が案内した部屋はDonnaの趣味に合ったような綺麗で可愛らしいものが並んでいた。

「素敵…」

思わず出てしまうため息にNicolasは笑った。

「ここの屋敷にはかつてCavendish家が住んでいました。その部屋はその一人娘のMargaret様が使われていた部屋です」

「可愛いものがたくさん並んでいるわ。その方たちは今どちらへ?」

Nicolasは唇を噛みしめた。その動作を見てまずいことを言ったと口元に手を当て狼狽えた。

「彼女はとても優しい方でした。たまにここに来られるんです。彼女のお兄さんと彼女の恋人と一緒に」

Donnaは黙ったまま整えられたベットに触れた。Nicolasは何かに気づき

「何かあったら近くにいますので言ってください」とそっと部屋を出て行った。彼を見送り並べられた家具を眺めたり、本を見ていると閉まっているはずの窓からふわっと風が流れた。カーテンは見えない風に揺られている。怖くなったDonnaはNicolasを呼ぼうとしたが声が出なかった。

「あ…」

顔を上げると可愛らしい少女が立っていた。その少女はDonnaと同い年のようだが、小麦色の肌をしたDonnaとは違く色が白く透き通っていた。身長は少し低く、彼女を見上げていた。

「Marga...」

言い終わらないうちにその女の子は頷いた。想像していたお化けとは違く地に足がついていた。Margaretはニコッと笑ってDonnaを抱きしめた。その温かさに驚いた。

「初めまして、どうか怖がらないで」

震えるDonnaに優しい口調で語りかけると二人の男が現れた。小さく悲鳴を上げるとMargaretは「私のお兄様のGeoffと恋人のEdwardよ」と紹介をした。紹介された二人はぺこりとお辞儀をし、Geoffはそれでも怯えたDonnaの前に屈んだ。

「皆はずっとこの屋敷にいるの?」震えた唇を抑えつつ、Donnaはゆっくりとした口調でそう聞いた。足が震えて今にもしゃがみ込みそうになっているのを見かねて、Geoffは椅子をすすめた。がっちりした体形でいかにも好青年に見えるGeoffをDonnaは好きになった。もしこの人が生きていたら…そう思ってしまう自分が恥ずかしいと彼女は顔を赤らめた。それからしばらくして、DonnaとMargaret達の楽しそうな会話が朝まで続いた。もうそろそろ帰らなきゃというMargaretにDonnaはいつ会えるのかを聞いた。

「私はここから抜け出すことができないの。だから呼んでくれればいつでもあなたの傍に会いに行けるわ」

「ここから出られないってどういうことなの?」

「私たちにもわからないのよ。ただ、唯一それができるのはButlerという男だけよ。彼から何かを聞き出せればいいけれど、私たちは会えないの」

「Butlerさんに会いに行けばいいのね。その人はどんな人なの?」

なんて答えようか迷っているMargaretの代わりにGeoffが彼女の肩に手を置き、

「僕の父です。この屋敷に彷徨っていると思うのですが、どういうわけか…」

申し訳なさそうに言うGeoffにDonnaはゆっくり首を振った。夜が明け、周りが明るくなった。その明るさが増すごとに、彼らの体は消えて行った。

「それじゃあね、Donnaゆっくりしていってちょうだい」

Margaretは目を細めて笑顔でそう言った。
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