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一章
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しおりを挟む「奥さま、旦那さまを乗せた馬車がご到着なさいます」
「あら、早かったのね」
ロラがシャルロットの肉体に宿って二ヶ月。
甲斐性なしが本邸のこの屋敷に戻ってくるという報せが半月ほど前に封書で届いた。
「お迎えの前にお耳に入れておきたいことが」
「なにかしら」
侍女たちが忙しなく最後の確認をする中、家令は少し言いにくそうに言葉を続ける。
「どうやら愛妾もお連れになったようで」
それを聞いてロラの支度をしていた侍女たちの手が止まる。
「まあ。それは歓迎して差し上げなくては。私の方から会いに行く手間が省けて良かったわ」
手を合わせてロラはふふっと笑う。
愛らしさと美しさを持つその笑みが恐ろしい。
この二ヶ月で枯れ木のように痩せ細っていたシャルロットの肉体は驚きの変化を遂げた。
まだ細身で小柄なものの背が伸び痩せ細っていた面影もない。
カサついていた肌もシルクのように滑らかで艶やか。
パサついていた髪も一本一本に栄養が行き届きサラサラに。
何よりの変化は、髪と虹彩がプラチナ色に変わった。
健康的な生活をするようになって栄養状態が良くなったから。
その理由だけで枯れ木のように痩せて背も低く子どもにしか見えなかった肉体が劇的な変化を遂げたとは考えられない。
通常なら起こりえないほどの変化を遂げたのはシャルロットが竜の子孫であるドラゴニュート一族だから。
使用人たちはそう考えた。
シャルロットは何の力もないなり損ないではない。
破壊のドラゴニュート一族の血が引き継がれている。
怒らせてはいけない。
王国の王さえも誓約を結ぶことで抑えられているだけのドラゴニュート一族を敵に回しては殺される。
そんな危険な人物を虐げていた者はもちろん、見て見ぬふりをしていた者たちも生殺与奪を握られている恐怖に怯えていた。
もっとも真実は使用人が考えるそれとは関係ない。
妖精が一時的に肉体の回復力を高める妖精の粉を浴びせてくれたお蔭で通常より肉づくのが早かったことと、ロラが元の肉体だった時に作った魔法液を惜しみなく使って毎日美容に勤しんだ結果で、シャルロットは何の力も持っていないことが事実。
「お迎えの準備はもう済んでおりますの?」
「整ってございます」
「そう。ご苦労さま」
最後にピンクダイヤのビブネックレスを着けて終わり。
「貴女たちもご苦労さま。これを差し上げますわ」
「よろしいのですか?」
「二人で髪や衣装や化粧と大変だったでしょう?ご苦労さま」
「「ありがとうございます!」」
ロラが二人に渡したのは宝石箱の中にあった装飾品。
どちらにも同じ宝石を使ったブローチ。
飴と鞭の使い分け。
実際にロラは女主人として見れば優秀で、使用人たちは常に死の恐怖を覚えながらもロラに従うようになっていた。
「お片付けはお願いね」
「はい。奥さま行ってらっしゃいませ」
「行ってらっしゃいませ」
侍女の二人はスカートを摘んでカーテシーで見送った。
「このドレスで良かったかしら。白は成婚の誓い以来だわ」
「大変お綺麗です。美しい一輪の白薔薇が咲いたかのように」
「ふふ、お上手ね」
家令と一緒にエントランスホールに向かう。
半月前に封書が届いてからたっぷりと公爵家らしい金額と時間をかけて歓迎の準備をした。
ロラが階段の上に着くと甲斐性なしの迎え入れのために控えていた従僕や荷物運びが気付いて丁寧に挨拶をする。
「お足元にお気をつけくださいませ」
「ええ。ありがとう」
裾を踏まないよう片手ではドレスを摘み少し持ち上げ、反対の手では手摺りを掴んで階段を降りる。
ロラならば仮に階段で足を滑らせようと魔法を使い着地して無傷で終わるのだけれど。
階段を降りてドレスをおろすとその時を待っていたかのようなタイミングで腕を組んだ男女が入ってくる。
避暑地に遊びに来たかのような軽装と赤のワンピース姿で。
これがシャルロット嬢の伴侶。
この王国では比較的多い金色の髪に透き通った翡翠色の瞳。
背の高さは平均より高め、顔はまあまあいい。
でも甲斐性なし。
愛妾とのお喋りに夢中な甲斐性なしを観察するロラ。
なにせシャルロットの記憶に顔すら出てこなかった夫の姿。
シャルロットの肉体に宿っている今は不本意ながらも自分の夫でもあるのだから、どのような人物かを判断する必要がある。
「旦那さま、お戻りなさいませ」
「ああ、長いこと留守に」
甲斐性なしは家令の声でようやく前を向き言葉を止める。
家令の隣に居る女性を見て。
「旦那さま。お帰りを心待ちにしておりました」
淑女の見本のように上品で美しい所作のカーテシー。
体に染みついているのだと分かる。
「……まさか、君がシャルロットなのか?」
「はい。ドラゴニュート公爵家より嫁いでまいりました」
話が違う。
灰色の髪と灰色の瞳の何の力もない竜のなり損ない。
ドラゴニュート公爵家の恥と言われる痩せこけた子ども。
そう聞かされていたのにと、甲斐性なしは驚きを隠せない。
「灰色ではなくプラチナではないか」
「髪と瞳の色のことでしょうか。ドラゴニュートの象徴と言われる黒い髪や赤い瞳ではなく申し訳ございません」
「い、いや。責めているのではない。十二分に美しい」
「ありがとうございます」
どこが一族から嫌われ虐げられている令嬢だと言うのか。
シャンデリアで輝くプラチナ色の長い髪に雪のように白い肌。
ぱっちりと大きな目にプラチナ色の虹彩に長い睫毛。
鼻筋の通った高い鼻に形のよいふっくらした桜色の唇。
ほんのり頬を染め照れ隠しか頬に手を添える姿も愛らしい。
公爵家の恥どころか自慢のご令嬢の間違いだろうに。
腕を組んでいる自分の存在など忘れたかのようにシャルロットを見ている甲斐性なしを見て愛妾はギリリと奥歯を噛む。
聞いていた話と違うと思ったのは愛妾も同じだった。
ドレスの形はシンプルな白のマーメイドドレス。
ハーフアップにした髪には花がモチーフの髪飾り。
首元には派手になり過ぎないビブネックレス。
ただその全てが質の高いもの。
高級シルクのドレスの装飾にそれとなく使われている宝石も、銀の髪飾りに使われている宝石も、ビブネックレスに使われている宝石も、全てが最高級品のピンクダイヤ。
主人が不在中まだ嫁いだばかりの若奥様の代理で経費を割り振り管理する役割を持つ家令が、それだけの経費を割り振るだけの価値がある女主人と判断していると言うこと。
「シャルロットさまはデビュタントをして貰えてませんよね」
「ご挨拶もなく奥さまにお声をかけるなど無礼ですよ」
噂と違って美しく愛らしいシャルロットに焦り噛みつくように話しかけた愛妾は家令から注意を受ける。
「バート、よろしくてよ」
「出過ぎた真似を」
「いいえ。ありがとう」
胸に手をあてスっと下がる家令にロラは優しく微笑む。
そんな家令の行動にも驚く甲斐性なし。
仕事はできるものの素行が悪く解雇も考えていた執事を臨時で家令に付かせていただけなのに、行動も振る舞いもまさしく女主人を守るそれ。
「旦那さま。私からこちらの女性にご挨拶をしても?」
「いや、駄目だ。シャルロットは公爵夫人なのだから。私の気が利かず済まなかった。アン、君の方から挨拶を」
挨拶は目下の者から目上の者に行うのが貴族の礼儀。
話をするのもまずは挨拶を済ませてから。
本来なら家令が注意した通り愛妾の言動は無礼な行為。
ドラゴニュート公爵家の令嬢で礼儀作法も完璧なシャルロットがそんな貴族の礼儀を知らないはずもなく、気が優しいために彼女に合わせ自分の方から挨拶をしてあげようとしてるのだろうと思い止めた甲斐性なしは愛妾へ先に挨拶をするよう話す。
「アン・ボードです。ルカとは親しくさせていただいてます」
「ご挨拶ありがとうございます。アレニエ公爵が妻、シャルロットと申します。主人がお世話になっております」
愛妾にも変わらず美しいカーテシーで挨拶をするロラ。
親しくをお世話になってると返されてアンはムッとする。
わざとルカと呼び捨てたのに気にする様子もないことも。
嫌味をサラリと躱されたのだから。
「ルカの別邸で一緒に暮らしています」
「まあ。アンさまが旦那さまの愛妾でしたのね。私の察しが悪いためにそのような自己紹介までさせて申し訳ありません。旦那さまの愛妾でしたら私のことはお気軽にシャルロットとお呼びください。私とも仲良くしていただけたら嬉しいですわ」
愛らしい無垢な笑顔。
純粋という言葉が合うシャルロットの姿に甲斐性なしは和む。
見た目だけでなく心も美しく愛らしいのだな、と。
そう思っているのは何も知らない甲斐性なしだけだけれど。
「アンさま、先程のご質問は旦那さまにもご説明したかったことですのでお食事の際にでもゆっくりお話しいたしますわ。馬車での移動でお疲れでしょう。お部屋へご案内しますわね」
出迎えに来たエントランスホールで長話はしない。
ロラが話題に区切りをつけると使用人たちはすぐに行動し始めて主人や愛妾から上着を、侍従や侍女から荷物を預かる。
「バート、アンさまを来賓室へご案内して」
「承知いたしました」
家令もロラから指示を受け胸に手をあて軽く頭をさげると愛妾や愛妾の侍女を連れて階段を登って行った。
「シャルロット」
「はい、旦那さま」
「長いこと不在にしてすまなかった」
名前を呼ぶと愛らしい笑みで見あげてきたシャルロットに甲斐性なしは謝る。
「私少し怒っておりますの」
「ああ。怒っていて当然だ。本当にすまなかった」
「謝らないでくださいませ。私が旦那さまのご期待に添える者ではなかったから顔を合わせることもお帰りになることもなかったのだと本当は分かっておりますから。ただ、寂しかった」
見あげていた顔をおろして最後はポツリと呟いたシャルロットの姿に甲斐性なしは心を鷲掴みにされる。
成婚式どころか成婚証を交わす場すら代理を立てた自分をこんなにも待っていてくれたのかと。
「旦那さまが期待していたドラゴニュートの象徴である容姿はもう手に入れられませんが、そのぶん旦那さまの妻に相応しくなれるよう努力いたしますわ。ですからたまに、いえ、気が向いた時だけで構いませんから……私の所にも戻ってきて」
プラチナ色の美しい瞳が潤んでいるのを見た甲斐性なしは、シャルロットの美しく愛らしい顔の造りによく似合っている淡い化粧を崩してしまわないようハンカチでそっと吸い取る。
「シャルロット、君は既によくやってくれている。それは使用人を見れば分かる。容姿だってドラゴニュートの象徴など気にならないほど美しく愛らしい。真実を確かめもせず噂を信じた私が愚かだったと反省している。これから償わせてほしい」
「償いだなんてそんな。旦那さまがそう思ってくださっただけで幸せですわ」
多くを求めず謙虚に夫の自分を求める妻。
同い年の女性と比べてこんなにも身体が小さいのだから、まだ子宝に恵まれる準備ができていなくとも不思議ではない。
それに例え子宝に恵まれなくともシャルロットは十分美しい。
「ふふ。旦那さまがお戻りになると聞いてから御屋敷の使用人たちにはお迎えの準備を頑張って貰いましたのよ?」
「それはありがたいことだ。屋敷が華やかになっている」
「みんな旦那さまのお戻りを心待ちにしておりましたもの」
両手を繋いで会話を交わす夫婦を見守るのは甲斐性なしがこの屋敷から別邸に連れて行った執事や従者。
シャルロットが話に聞いていた女性とは全く違ったことも、女主人が不在だった頃の屋敷と印象ががらりと変わっていることも、使用人たちのやる気が違うことも、全てに驚かされた。
「旦那さまもお疲れになったでしょう。お食事の時間までお部屋でお休みになって。旦那さまのお部屋はいつお戻りになってもすぐにお使いになれるよう整えてございましたから」
「ありがとうシャルロット」
優しい笑みで自分を見上げるシャルロットの愛らしさに既に惹かれている甲斐性なしは、繋いでいた手を名残惜しそうに離して白い手の甲に口付けた。
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「こちらのお部屋をお使いください」
家令が案内したのは二階の東側にある来賓室。
主人の部屋と夫人の部屋があるのは二階の西側。
ゲストが宿泊する部屋と夫妻の部屋は階段フロアを挟んで東西に分かれている。
「階段フロアから西側は夫妻の居住階となっておりますので公爵夫妻の許可なくお入りにならないようお願い申しあげます」
この公爵邸は本妻と暮らすための屋敷で愛妾はあくまで来賓。
愛妾が我が物顔で自由に振る舞える場所でもなければ、その立場でもないことを遠回しに忠告する。
「ではお時間までごゆっくりとお寛ぎください」
胸に手を当て軽く頭を下げた家令は静かに扉を閉めた。
「なんなのよ!偉そうに!」
愛妾は手に持っていたつばの広い帽子を床に叩きつける。
それを冷めた目で見るのは部屋の端に立っている侍女二人。
偉そうにも何も本邸は公爵夫妻のお屋敷であって、許可なく夫妻の居住階には入らないよう家令が説明するのは当然のこと。
それに腹を立てる方が理解できない。
愛妾とは婚姻関係にない相手のこと。
つまり正妻にとっては全く無関係な赤の他人。
公爵家の第二夫人ではなく夫が個人的につまみ食いしているだけの妾であって、追い返されても文句の言える立場ではない。
むしろ若奥さまがよく怒りも追い返しもせず受け入れてくれたものだと二人は思う。
この二人は甲斐性なしがこの屋敷から連れて行った使用人ではなく、愛妾の世話係として後から雇われた侍女。
だからシャルロットのことは愛妾から聞かされていた悪い話でしか知らなかったけれど、実際に見たシャルロットは貴族令嬢の二人から見て高貴なドラゴニュート公爵家のご令嬢に相応しい品のよさと愛らしさを兼ね備えた淑女にしか見えなかった。
「役に立たない竜のなり損ないが生意気な。私に恥をかかせたことを後悔させてやるから」
ブツブツ言って親指を噛む愛妾を見て二人は目を合わせる。
気に入らないことがあるといつもこう。
「恐れながらアンさま。お支度にお時間がかかりますので入浴を済ませなければお食事に間に合わなくなるかと存じます」
「煩いわね!ただのメイドが私に指図しないで!」
「きゃっ」
カッとして怒鳴った愛妾は進言した侍女に帽子を投げる。
帽子があたったところで痛くはないけれど、その暴力的な行動と無礼な発言に二人は内心カチンとする。
自分たちは主人の世話をするためだけに個別に雇われた侍女であって、屋敷の掃除や雑用をするメイドではないのにと。
「誰のお蔭でお金が貰えてると思ってるの!あんたたちなんて私がルカに言えばすぐ屋敷から追い出されるんだから!あんたたちの代わりはいくらでも居るのよ!」
下級貴族が上級貴族の妻妾の侍女になることは珍しくなく、二人も公爵家の侍女であれば御家の繋がりためにもなるだろうと引き受けたものの、蓋を開ければワガママ放題の愛妾の世話。
侍女とメイドの違いも分からない人に仕えているのかと思うと馬鹿馬鹿しくなってくる。
「「差し出がましいことを申しました」」
ただそれでも二人はグッと堪えて頭を下げる。
貴族家の自分たちが公爵家で騒ぎを起こす訳にはいかないと。
家紋に傷をつけないよう、醜い罵声も静かに聞いていた。
家令が向かったのはロラの自室。
扉の外で聞いていた範囲で分かったことを報告する。
「まあ。そのような気性の方でしたの」
報告を聞いたロラは溜息を一つ。
嫉妬深く負けず嫌いな性格であることは挨拶を交わしただけの短時間でも分かっていたけれど。
「侍女の二人が失礼なことをした訳ではないのね?」
「はい。公爵夫妻の食事に招かれた来賓の立場で遅刻をすれば失礼にあたります。まして本来ならば居る予定のない急遽の訪問者に関わらず招いてくださったことは奥さまの心遣いであると、男爵家のご令嬢である侍女たちは理解しての進言かと」
「そう。お二人のご両親はよい教育をなさったのね」
別邸で暮らしてから雇われた侍女の二人はシャルロットを虐げたことがあるでもなく、魂の醜さもない。
だからロラとしても最初からあの二人のことは何をするつもりでもなかったけれど。
「後で彼女たちのお部屋にお食事を運んで差し上げて。デザートや飲み物も忘れずにね。別邸で愛妾のために雇われている侍女は私の管轄下にないから口を挟むことはしないけれど、せめて愛妾の居ない間だけでも彼女たちが寛げるよう配慮を」
「承知いたしました」
そう話してロラは机から小さな布袋を出す。
「貴方もこの半月ほど頑張ってくれたことの心付けよ。今日の迎え入れの際も家令として素晴らしい振る舞いだったわ。このまま気を抜かずしっかりとお務めを果たして頂戴」
「奥さまの仰せのままに」
家令のお仕着せのポケットに忍ばせた袋の中身は数枚の金額。
横領していたほどお金が好きな家令への飴。
「ふう」
家令が部屋を出たあとロラは溜息をつく。
「愛らしいシャルロット嬢の魅力を最大限に引き出すためとは言え慣れない演技をするのも疲れますわぁ……。兄さまがここに居られなくて本当に良かった。純粋無垢な演技をする私なんて見られた日には生涯からかわれそうですもの」
時々ふいに思い出す兄の存在。
悪戯好きの迷惑極まりない襲撃犯と思っていることも確かだけれど、居なくなったらなったで寂しく思う。
ロラにとってジルはそういう存在。
「ねえ、兄さま。私迷っておりますの。だってシャルロット嬢の名残りが旦那さまを不快に思っていないのですもの。愛ではなく執着。自分を地の底から救ってくれる人への。一度も顔を見せず自分を放置して愛妾とお楽しみだったロクデナシでもまだ救世主と信じているなんてね。いえ、信じたいのかしら」
シャルロットの記憶に甲斐性なしの姿は一度も出てこなかったけれど、実際に会っても不快感は湧き出てこなかった。
虐げてきた使用人と最初に対面した時は必ずロラの感情ではないシャルロットの魂の残滓が恐怖や不快感を訴えてきたのに、甲斐性なしと会っても一切の負の感情を感じなかった。
むしろホッとしたような安心感を覚えたように思う。
「馬鹿ね、シャルロット嬢。あの甲斐性なしは貴女を救ってくれるようなヒーローではなくてよ。覚悟が決まる前に急遽家督を継ぐことになって公爵になっただけで、実際は公爵家の主人という重責から目を逸らして愛妾の元に逃げただけの弱虫」
それでもシャルロットにとっては地獄のような生家から救い出してくれたヒーローだったのだろう。
だからいつかここに帰ってきてまた自分を救ってくれると。
そう希望を持っていなければ堪えられないほど、この屋敷での生活も地獄のようだったのではないかと思う。
「さあ、白と黒の半端な魂の旦那さま。貴方をヒーローと信じるシャルロット嬢のために、私が貴方を無罪と判断するだけの価値がある者なのかを見せて頂戴。不本意ながら私の夫でもあるのですから優しくして差し上げますわ」
机に置いてあった身辺調査書類を魔法で燃やしながらロラはくすくすと笑った。
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