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二章
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しおりを挟む風呂に入った後は勉強をして時間は深夜。
1階の父の寝室も母の寝室も静まり返っているのを確認してから優香の部屋に行って、部屋の電気はつけず机の上の卓上ライトだけ灯してさっきの続きを確認する。
二種類あるメールの中身は全て迷惑メール。
優香は開くことさえしていなかったことが分かる。
やはりパソコンは全く使っていなかったのだろうかと思いながらブラウザを開いてみた。
検索履歴は……。
出てきたのは設定のやり方。
恐らくパソコンを買って貰った時に検索したのだろう。
ブックマークも空。
調べ物をする時にタブレットを利用しているのを見たことがあるから、普段から使い慣れているそちらを使うのも分かる。
無駄だったかと溜息をつきながら閲覧履歴を見る。
「……あった」
唯一パソコンを利用していた形跡が見つかって一番最近アクセスしたアドレスを確認してみる。
「え?」
出たのはHTTPステータスコード404。
未検出をあらわす〝Not Found〟と書かれている。
URLが間違ってた?
戻って再度履歴を確認して息を飲む。
並んでいた履歴が最新の履歴と全く同じだったから。
もう一度最新の一つ前にアクセスしてもNot Found。
そのひとつ前もNot found。
同じアドレスだから当然だけれど。
これだけアクセスしているのだから何かあったはず。
普通ならURLが間違ってると思ってやめるはずなのに懲りもせずこれだけアクセスを繰り返しているのだから、このURLが間違っていない自信があったのだろう。
とすると優香がアクセスした後に削除されたのか。
ただそうだとしても、どうして同じサイトを何度も繰り返し観たのだろう。
まさかここもあのチャットのような所だったとか?
書きこまれる内容が気になって何度も確認したとか。
何があったのか気になってURLで情報を検索してみると、出るのは同じNot foundのページ。
どんなサイトかの情報さえ出てこない。
もしこのアドレスにサイトがあったのなら何かしら情報が引っかかってもいいはずなのに。
検索方法を変えようにも分かっているのはURLのみ。
サイトの名どころかどんなサイトなのかも分かず、URLのみでは検索してみてもお手上げだった。
もしあのチャットのような所だったのならまたあの子たちが何か分からないだろうか。
持って来ていたスマホを手にして時間を見る。
今日帰る前に牧君から番号を教わった。
線香をあげにくる時間の都合などを連絡するために教わったのだけれど。
牧君は受験生。
勉強をしているだろう時間にかけたら迷惑になる。
でも母が片付けてしまう前に知りたい。
優香が残した形跡を。
もしかしたらなんてことはない普通のサイトかも知れない。
虐められていた形跡とは全く関係ないかも知れない。
でも優香が最後の晩にこんなにも何を観たかったのか、どうしても知りたい。
牧君には迷惑をかけてしまうけれど、何か知らないかだけ訊いてすぐ切るつもりで電話をかけた。
『はい』
「夜分遅くにごめん。優香の兄です」
数回鳴らして出なければ諦めようと思ったけれど牧君はすぐに出た。
「受験生だったよね。勉強中だったかな」
『大丈夫です。もう今日の範囲は終わったので』
「ごめん。牧君しか訊ける人が居なくて」
『本当に大丈夫ですから。どうしたんですか?』
やはり勉強中だった。
受験生なのに邪魔をしてしまって申し訳ない。
「うちの母が優香の部屋片付けるって言うからその前にと思って優香のパソコン開いたんだけど、何か変なサイトにアクセスした履歴があって」
余計なことを話すより早く訊いて早く切ろうと判断して電話をかけた経緯を話す。
『変なサイト?』
「それがアクセスしてみても404 Not Foundなんだ」
『え?ページが見つからないってことですよね』
「うん。でも何度もそのアドレスにアクセスしてる」
不思議なのは何度もアクセスしていること。
だから気になってしまった。
「一昨日の深夜だけで数十回。朝までアクセスしてる」
『朝まで?』
「最初は間違ったアドレスにアクセスしたのかと思ったけど、何十回も朝までアクセスしてたとか普通じゃない気がして」
誰かに教わったURLが間違っていたというだけのことならこんなにもアクセスしないと思う。
数回くらいは試してみたとしても、教えてくれた人にまた聞こうと諦めるだろう。
『濱名さんがアクセスした後に閉鎖したとか?』
「でもそれならどうして何度もアクセスしたんだろう。何かしらのページがあったのなら一度で観るよね?わざわざ何度も閉じて開いてしないで」
牧君も閉鎖されて削除された可能性を考えたようだけど、もし閉鎖して削除したのだとしても何の情報も出て来ないことが少し気にかかる。
「牧君に訊いても困らせるだけかなとは思ったんだけど、自分で調べてみてもアドレスの情報が出て来なくて。何かのサイトだったなら少しは引っかかるかと思ったんだけど」
『俺にもそのアドレスを教えてくれますか?』
「うん」
自分もアクセスしてみると言う牧君にURLを教える。
URLを聞いても覚えはないようだ。
『一昨日までココに何が……』
少し待っているとそんな牧君の呟きが聞こえる。
「今日見せたチャットあったよね」
『はい』
「あんな感じのがあったのかな。これだけ観たって事は」
『濱名さんの悪口ってことですか?』
「分からないけど気になって。最後の履歴だから」
優香が最後に観たサイト。
いやもう本当にサイトがあったのかさえも確かではないのだけれど。
『俺も少し調べてみます』
「あ、いや、アドレスに見覚えがないならそれで」
『濱名さんが何を観たかったのか俺も知りたいので』
そう言ってくれた牧君にお礼を言って、受験生だから少しだけの約束を交わして電話を切った。
知りたかったのは俺の身勝手な我儘だったのに、牧君も知りたいと言って協力してくれることが本当にありがたい。
俺より年下の高校生なのに頼りになる。
「優香。やっぱり優香が羨ましい」
優香にはこんなにも思ってくれる人が居る。
それは自分にはないもので、優香が羨ましかった。
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