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テーマ『歯医者へ行く』
サブテーマ『世界5分前仮説』
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「いだいいだいいだぁぁあい!!!」
泣き叫びながらカーペットを掴み、その場を動かないぞと固い意志を表明している我が息子(5歳)と
「あんたが痛いって言うから歯医者に連れてってあげるって言ってんのに、なんでイヤイヤするの!!!!」
叫びながら息子のケツを引っ張り、必ず治してもらうぞと強い意志を持つ私(37歳)
「だって!母ちゃん!いつも歯医者連れてくぞ連れてくぞって怖いんだもん!!絶対痛いことされるじゃんか!!!」
「それはいつも隠れておやつ食ってるからでしょうが!!しかも虫歯になったら歯医者行くんだよって優しく言っとるわ!!」
「優しいもんか!!毎回毎回オバケみたい言ってくるじゃんか!!」
「うるさい!とにかく虫歯になるまでおやつ食ったあんたが悪い!!」
こうして息子と押し問答して約10分。お互いに疲れてきたものの一歩も引かない泥試合。
(もう歯医者の予約まで時間ねぇんだから早くしろよー!!!)
思いとは裏腹に、迫ってくる時間と思い通りにいかないイライラが焦りを産み、帰りにケーキでも買ってやるかとか夕飯を大好きなハンバーグにしてやるかとか様々な打開策を考えるも、それでは今後もごほうびをあげなければならなくなるのですぐさま却下する。
(どうしたもんかな.......)
ヒィーハァー荒い息を吐き、虫歯の痛みに耐えながら、必死に抵抗する息子を見てなんだか悲しくなってきた。
思い返せば、自分が虫歯になった時も親に引きづられながら怖い歯医者に向かったものだ。待合室で響くドリルの音と泣き声。いつも名前を呼ばれるなと念じ、呼ばれたら母に最後の抵抗をするも通じず、待合室で聴いた音を自分で再現する。恐ろしかった。歯医者という場所すら敵に感じたあの痛みがあるから、今でも虫歯にはなりたくない。
だが息子はこれからあの痛みを受けることになる。心苦しいが行かないと治らない。
助けてくれとつぶやきながら私はスマホを手に取った。
----------------------------------
(やっとあきらめたか.......!
昨日の夜、虫歯を見つけられてソッコーで予約するなんて、こーどーりょくがありありなんだぞ!!)
悪態をつきながらゆっくりとカーペットから手を離す。
力を抜いたからかより一層奥歯の痛みが大きくなる。
(ここまでやれば歯医者に行かねぇよな。まったく、母ちゃんが「虫歯になったら歯医者で歯を抜くんだよー。だからちゃんと磨きなよー。」とか!「お母さんは虫歯になった時に歯をドリルでグリグリ削ったんだよー。」とか!いっつも言うもんだからゼッタイ虫歯になりたくねぇとは思ってたけど、まさか虫歯になっちゃうとはな。でも!元々はおやつがすくねぇのがいけねぇ!!もう少しあったら隠れて食べたりしないのに.......)
そんなことを考えていたら、母ちゃんは正座でオレを見つめてた。
(出たよ.......母ちゃんのせっきょータイム..............)
こうなったらおしまいだ。ただただ母ちゃんが怒って、無理にでも歯医者に連れていくんだ。
ため息をつきながら、オレも母ちゃんのマネをして正座になる。
そしたら、母ちゃんは怒ることはなく
「ごめんなさい。」とオレに言った。
思わずキョトンとなるオレ。
いつもなら怒鳴り散らかしてくるのになんなんだ?
返事がないからか母ちゃんの言葉は続いた。
「私ね、あんたぐらいの歳に虫歯になって、ドリルでグリグリされたのね。すっごい痛かったの。泣きながら歯医者に行って泣きながら家に帰ったの。正直もう虫歯になんかなるもんかって思ったもんよ。」
そんなん知ってる。いつも母ちゃんにつまみ食いが見つかる度に言われてる。
「でも違うんだって。昔はドリルでグリグリしてたけど、今は口に麻酔っていう注射を打つんだって。ドリルのグリグリの痛みが無くなるお薬を注射するんだって。あんた、注射は我慢できたことあるから、あれだけなら大丈夫でしょ。あんた強い子なんだから。」
そう言う母ちゃんの目は真剣だった。まるであんたなら出来るよと信頼してくれてるような感じ。
「今日はあんたも疲れてるからまた今度にするけど、虫歯がずっとある方が痛いんだから歯医者には早めに行かないとね。」
母ちゃんは「さぁて昼飯でも作るか」と言いながらキッチンに向かった。
オレは(あの母ちゃんが怒んねぇなんて.......)と正座のまんま、おどろきまくってた。
-----------------
後日、息子を連れて歯医者に来たが予想以上に息子は大人しかった。
なんか、少しこわがってはいるが頑張るぞと言いたげな気迫が見える。でも、名前を呼ばれた時に「ひゃい!」って思いっきり噛んだのは母ちゃん笑ったわ。まだまだ子どもだな。
でも、
「母ちゃん!」
と呼び、グーサインを決めたあんたは少しずつ大人になってんだなって思ったよ。
痛かったんだろうけど「ちっとも痛くなかった!」と強がるあんたも、歯医者に「あと2回かけて虫歯をしっかり治そうね。」と言われて落ち込むあんたも、どっちも頑張ってる息子に変わりないし、かっこいい。
「よく頑張ったな!」と頭を撫で回すと恥ずかしくて嫌がる息子と共に、夕飯のハンバーグを食べる私は幸せなもんだ。
泣き叫びながらカーペットを掴み、その場を動かないぞと固い意志を表明している我が息子(5歳)と
「あんたが痛いって言うから歯医者に連れてってあげるって言ってんのに、なんでイヤイヤするの!!!!」
叫びながら息子のケツを引っ張り、必ず治してもらうぞと強い意志を持つ私(37歳)
「だって!母ちゃん!いつも歯医者連れてくぞ連れてくぞって怖いんだもん!!絶対痛いことされるじゃんか!!!」
「それはいつも隠れておやつ食ってるからでしょうが!!しかも虫歯になったら歯医者行くんだよって優しく言っとるわ!!」
「優しいもんか!!毎回毎回オバケみたい言ってくるじゃんか!!」
「うるさい!とにかく虫歯になるまでおやつ食ったあんたが悪い!!」
こうして息子と押し問答して約10分。お互いに疲れてきたものの一歩も引かない泥試合。
(もう歯医者の予約まで時間ねぇんだから早くしろよー!!!)
思いとは裏腹に、迫ってくる時間と思い通りにいかないイライラが焦りを産み、帰りにケーキでも買ってやるかとか夕飯を大好きなハンバーグにしてやるかとか様々な打開策を考えるも、それでは今後もごほうびをあげなければならなくなるのですぐさま却下する。
(どうしたもんかな.......)
ヒィーハァー荒い息を吐き、虫歯の痛みに耐えながら、必死に抵抗する息子を見てなんだか悲しくなってきた。
思い返せば、自分が虫歯になった時も親に引きづられながら怖い歯医者に向かったものだ。待合室で響くドリルの音と泣き声。いつも名前を呼ばれるなと念じ、呼ばれたら母に最後の抵抗をするも通じず、待合室で聴いた音を自分で再現する。恐ろしかった。歯医者という場所すら敵に感じたあの痛みがあるから、今でも虫歯にはなりたくない。
だが息子はこれからあの痛みを受けることになる。心苦しいが行かないと治らない。
助けてくれとつぶやきながら私はスマホを手に取った。
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(やっとあきらめたか.......!
昨日の夜、虫歯を見つけられてソッコーで予約するなんて、こーどーりょくがありありなんだぞ!!)
悪態をつきながらゆっくりとカーペットから手を離す。
力を抜いたからかより一層奥歯の痛みが大きくなる。
(ここまでやれば歯医者に行かねぇよな。まったく、母ちゃんが「虫歯になったら歯医者で歯を抜くんだよー。だからちゃんと磨きなよー。」とか!「お母さんは虫歯になった時に歯をドリルでグリグリ削ったんだよー。」とか!いっつも言うもんだからゼッタイ虫歯になりたくねぇとは思ってたけど、まさか虫歯になっちゃうとはな。でも!元々はおやつがすくねぇのがいけねぇ!!もう少しあったら隠れて食べたりしないのに.......)
そんなことを考えていたら、母ちゃんは正座でオレを見つめてた。
(出たよ.......母ちゃんのせっきょータイム..............)
こうなったらおしまいだ。ただただ母ちゃんが怒って、無理にでも歯医者に連れていくんだ。
ため息をつきながら、オレも母ちゃんのマネをして正座になる。
そしたら、母ちゃんは怒ることはなく
「ごめんなさい。」とオレに言った。
思わずキョトンとなるオレ。
いつもなら怒鳴り散らかしてくるのになんなんだ?
返事がないからか母ちゃんの言葉は続いた。
「私ね、あんたぐらいの歳に虫歯になって、ドリルでグリグリされたのね。すっごい痛かったの。泣きながら歯医者に行って泣きながら家に帰ったの。正直もう虫歯になんかなるもんかって思ったもんよ。」
そんなん知ってる。いつも母ちゃんにつまみ食いが見つかる度に言われてる。
「でも違うんだって。昔はドリルでグリグリしてたけど、今は口に麻酔っていう注射を打つんだって。ドリルのグリグリの痛みが無くなるお薬を注射するんだって。あんた、注射は我慢できたことあるから、あれだけなら大丈夫でしょ。あんた強い子なんだから。」
そう言う母ちゃんの目は真剣だった。まるであんたなら出来るよと信頼してくれてるような感じ。
「今日はあんたも疲れてるからまた今度にするけど、虫歯がずっとある方が痛いんだから歯医者には早めに行かないとね。」
母ちゃんは「さぁて昼飯でも作るか」と言いながらキッチンに向かった。
オレは(あの母ちゃんが怒んねぇなんて.......)と正座のまんま、おどろきまくってた。
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後日、息子を連れて歯医者に来たが予想以上に息子は大人しかった。
なんか、少しこわがってはいるが頑張るぞと言いたげな気迫が見える。でも、名前を呼ばれた時に「ひゃい!」って思いっきり噛んだのは母ちゃん笑ったわ。まだまだ子どもだな。
でも、
「母ちゃん!」
と呼び、グーサインを決めたあんたは少しずつ大人になってんだなって思ったよ。
痛かったんだろうけど「ちっとも痛くなかった!」と強がるあんたも、歯医者に「あと2回かけて虫歯をしっかり治そうね。」と言われて落ち込むあんたも、どっちも頑張ってる息子に変わりないし、かっこいい。
「よく頑張ったな!」と頭を撫で回すと恥ずかしくて嫌がる息子と共に、夕飯のハンバーグを食べる私は幸せなもんだ。
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