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7.襲いくる魔の手。

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 いくつもの岩場から溢れる綺麗な湧水が、月の光に照らされて、すごく輝いて見える。
 湧水は流れて小さな湖を作っていた。
 その湖に触れてみると、そんなに冷たくない。
 シャンプーやリンスがないのが残念だけど、全身を洗えるという石鹸があるから、まあこれでなんとか洗える。
 旅の支度を手伝ってくれたレムリアさんには、本当に感謝してもしたりない。

「ふふっ、また会えたら……ちゃんとお礼を言わないと」

 服を脱いで、湖に体を沈めるとすごく気持ちが良かった。
 体を洗うための布に小さな石鹸をこすりつけ泡立てると、全身を洗う。
 今度は、髪飾りを外して髪も洗う。
 
 髪の水分をしっかり拭き取ると、服を着込んだ。
 まだ濡れている髪は、少しだけ夜風に当たって乾かすことにした。
 
 髪飾りの小さな穴に、髪を結んでいた細い紐を通して、ペンダントみたいにする。
 それを首にかけて、紫水石をなんとなく眺めると、レムリアさんの事を思い出して、心が暖かくて優しい気持ちになれる。
 あまり長居ができないから帰ろうとして、振り返ると少し離れた場所にブレイブがいた。

「え……」

 まさか、ずっと見ていた?
 
 いくらなんでも、ありえない……ふいに、さっきの会話を思い出した。
 それにブレイブは、性的な目でずっと見ていた。だったら水浴びをしていた時から、見ていた可能性がある。

「よお……やっぱ良い体してるよなぁ」

 ブレイブは、まとわりつくような気持ち悪い視線を向けてくる。
 ゴクリと喉を鳴らすと、慎重に少しずつ後ずさする。
 
 それに合わせるように、ブレイブも近づいてくる。
 頭の中で必死に回避することを考えるけど、何も思い浮かばない。

「私はもう帰るけど、ブレイブさんも水浴び?」

 下手に刺激しないように、無難な返答をする。
 とりあえず神宮司くんが寝ている場所までたどり着けば、神宮寺くんがなんとかしてくれるはず。

「あ、俺か?俺は別にいいよ……いや、この後は入るかもな?」

 この後ってなんだろう……深く考えるのはやめよう。
 
 今は、逃げることが先決だった。
 なるべくブレイブさんに近寄らないように、遠回りをして森の中へ入る道を通って逃げよう。

「待てよ。そこは森へ続く道だ」
「ここからでも帰れるから、どうぞ水浴びをしてください。それに私なら、モンスター忌避剤を持ってますし、大丈夫です」

 なぜかブレイブさんが、こっちに向かって歩いていくるから、小走りで森の中へと急いだ。
 怖くなって必死に走ると、ブレイブさんも入って追ってきた。
 
 慌てて森の中を走り抜けようとすると、後ろからブレイブさんが恐ろしい速さで追いかけてくる。
 あと少しというところで、追いつきそうで追いつかない。

「なっ、なんでっ……追いかけてっ、来るんですか!」
「見てわかんねーか。楽しいからだ」

 私を追い詰めて愉しんでいるという恐ろしい発言に、恐怖が沸いてくる。
 これは非常にまずい。
 きっと体力が切れたら運の尽きだ。
 体力がなくなって抵抗できなくなるのを待っているとしたら、なんて鬼畜なんだろう。
 必死に逃げているのに、体力差のせいで逃げ切れない。
 足がだんだんと上がらなくってきてとうとう木の根っこに足を引っ掛けて転んでしまった。

 変な方向に足首を打ち付けたようで、痛みが走り、立ち上がっても歩けない。
 なんとか引きずって逃げようとしていると、腕を掴まれて引っ張られ、地面に引きずり倒された。
 お腹の上に伸し掛られ、両肩を手で押さえつけられて起き上がれない。

「や、止めてくださいっ」
「は?自分の立場をわかってんのか?」
「立場も何も、私はこんなことをするために着いてきたわけじゃありません!」
「あー……そんなこたぁ、どうでもいいんだよ。俺はやりたいわけで、目の前に良い体した女がいる。っつーことは、することは決まってる」

 初めから人の体が目当てだったんだと気がついた。
 
 そういえば初めから、気持ち悪い目で体ばっかり見ていたわ、この暴漢。
 
 少し遠回りしたと言っても、野宿している場所からはそんなに離れていない。
 がんばって声を出せば、神宮司くんが気づいて助けてくれるかもしれない。

「神宮寺?神宮司?くんっ!!ちょっと神宮寺?神宮司?くん来てーっ!!」

 がんばって叫んでいると、気に食わなかったらしくて顔を叩かれた。
 剣士の腕力で叩かれたせいで、ものすごく痛くて、口から血の味がした。
 きっと頬は腫れ上がるかもしれない。

「あいつらならお薬で、お寝んねしてるから起きねぇーよ」
「……薬?」

 そういえば、さっき見た時の神宮寺くんはすごく眠そうだった。
 あれは、この暴漢が薬を仕込んだせいだったんだ。

「なぁに、朝までぐっすりさ」

 ブレイブさんは懐から小さな小瓶を取り出すと、蓋を開ける。
 必死に首を振って避けようとすると、鼻先をがっちり摘まれた。
 鼻先を摘まれてしまい、息苦しい。

 耐えれずに呼吸を求めて口を開けると、小瓶の中身を口の中に入れられた。
 甘苦い液体が口の中に入ってきて、吐き出そうとするけど上を向いていて、吐き出せない。
 顔を横に向けようにも、鼻先をがっちり握られていて無理だった。
 空気を吸い込むと同時に、液体が重力のせいで喉の奥へと入っていった。

「げふっ、がはっ……っ!」

 やっと息が出来た時には、薬の大部分を飲み込んだあとだった。

「なに、を……っ」
「媚薬って言えばわかるか?バルトレイの闇市でたまーに流れてくるんだけどよぉ、これが高くて高くて……そのぶん効果もすごいがな」

 口内に残った香りが微かに鼻に上がってくる。
 妙に体が疼くような変な感覚が、あるような気がする。

「たしか……淫蕩花って名前で、バルトレイ王室御用達だとよ」

 王室内で媚薬が日常に使われているなんて、かなり腐りきっているんじゃないかと思う。
 まさかそんな国があるなんて信じたくない。

「王室って……そんな馬鹿げてる」
「最後の一本で惜しいが、勇者が合意があればいいっつーてたし」

 まさか媚薬を使ったのに、合意だと言い切るんだろうか。
 いや、こんな強姦をしようとしているのだから、きっと何かろくでもないことを企んでいるかもしれない。
 
 だんだんと熱っぽいような変な感じが強くなってきて、息が上がってくる。下着も変な湿気がまとわりついている気がする。

「そろそろか……」
「どいて……」
「強がってもよぉ、顔が赤いぜ。この媚薬は時間が経てば経つほど、効果が強くなるらしくてよ……放っておくと薬に負けて自分から腰を突き出し始めるんだぜ」

 まさか、媚薬のせいで自我がなくなるのを待ってる?
 
 抵抗するように動くと、服が肌に擦れて変な刺激になって体に伝わる。
 まだ意識があるのに体が勝手に動いてしまいそうで、怖い。

「強がっていてもよぉ……」
「……っ!」

 服を前から引き裂かれ、下着に覆われた胸が現れる。
 さらに下着を無理やりはがされると、ピンと尖った自分の胸の先端が見えた。

「乳首をビンビンに尖らせて、感じまくりじゃねーか」

 これは非常に危ない。
 なんとか這いずってでも逃げないといけないのに、なぜか上手く動けない。
 荒い息だけが、口から出て行く。
 
 地面にもかまわずに、ひっくり返されてお尻を高く突き上げられる。
 履いていたズボンと下着を一気に下ろされ、大事な場所がさらけ出された。

「やぁ、やぁだっ……止めてっ」
「下の口は涎を垂らしまくってるつーのに、強情だな。今すぐに犯してやりてぇところだが、勇者から合意を貰えって言われてるんでな」

 うつ伏せでお尻を突き出すような体勢のせいで、胸が地面に押し付けられている状態になってしまった。
 すこし身じろぐと、胸が揉まれているような感覚になってしまい、体が自然に前後に動く。
 どうしよう、胸が揉まれて、気持ちが良い。

「ぁっ、ふっ……」
「おー、ずいぶんと効いてきたなぁ。こりゃあ、自分が女だってしっかり自覚させてから、調教だなぁ」

 こんなのダメなのに、気持ちと体が全く別物になってしまい、体が欲求に対して自然と動いてしまう。
 こんな強姦魔のいい様に扱われている自分が情けなくて、悔しくて、涙が薄らとこぼれてくる。
 ふと、目の前の地面に転がる紫水石が目に入った。レムリアさんと同じ、綺麗な紫色の石が月光に輝いて見える。

 またレムリアさんに会いたい。
 この間のお礼だってちゃんと言えてないのに……。
 レムリアさんの穏やかな微笑みを思い出して、強く願った。助けて欲しいと。


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