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三人の王子達

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たった一夜にして一国を滅ぼした三人の王子の帰還に国中が歓喜に沸き立つ。流石は王子様達、国の未来は明るいぞ、この国は安泰だ…等、民達の口からは王子達の称賛ばかりが零される。お祭り騒ぎとなっている街を他所に、当の本人達は私室に転送した1つの宝箱の中身に釘付けとなっていた  




「…貰っていいか?」




シンと静まり返った部屋で真っ先に声を出したのは第三王子のアヴェンタ、真紅の髪はサイドパートショートに整えられ瞳は琥珀色に輝いている。ソファの背もたれに腰をかけ立っていた彼は、口元を隠すように抑えていた




「駄目だ。お前に渡すくらいならば私が貰う」




そんなアヴェンタに反論するは第二王子のアイオリア。右耳に髪をかけかきあげたショートの髪はエメラルド色をしており、瞳はアヴェンタ同様琥珀色に輝いていた。落ち着きあるその声は、けれど何処か力強く有無を言わさぬ雰囲気を醸しだしている



「イ・ヤ・だ!…俺は恋に落ちた!だからいくら兄様だろうとこの幼子はやらん!」

「幼子相手に恋に落ちるとはとんだ変態が弟になったものだ。見たとこ歳は一桁だぞ」

「仕方がないだろう。身体が女性を受け付けなくなってしまったんだから……ならば逆に兄様がこの子を欲しがる理由は一体なんだという?」

「…」

「都合が悪くなると黙るのは兄様の良くない所だぞ」

「…私はお前と同じ思考に至っている事に気が付き嫌悪感を感じているだけだ」

「要は兄様も惚れたんじゃないか…何も恥ずかしがる事は無いぞ兄様。惚れた相手が少年なだけだ、何も問題はない」

「大ありだろうが」



騒ぎ立てる弟達を横目に、それまで黙っていたもう一人の王子がソファに降ろしていた重たい腰をあげる。目の前に置かれた宝箱を覗き込むと穏やかな寝息をたてる少年をそっと抱き上げた


「…あ、兄者…?」

「兄上」

「泣いた痕が残っている…目元も微かに腫れてるね。だけど不思議な事に寝顔はこんなにも穏やかだ。今は眠っているけれど、起きたらこの子は一体どんな瞳を僕らに向けてくれるんだろうか」


少年の目元を拭う彼の瞳は愛おしげに緩められている。その表情を見た2人はやっぱり自分はこの人の弟なのだと心の中で呟き、彼の腕に抱かれる少年に目を向けた


「まぁ…ここで言い合っても仕方がない。起きたら色々と聞くしかないか」

「兄上はこの子をどうするつもりです?」

「うん?お前達が考えている事と同じだけど?」

「然し兄者…兄者は来週、隣国の王女との婚儀を控えて━━」

「婚約を破棄するからいい」

「えっ?」

「出たよ…」

「元々写真で顔を見ただけでどんなかも知らないし、父上が決めた婚約だ。僕は頷いてすらいないんだから」

「だ、だがもう式の段取りも決まっているぞ!」

「うん…そもそもさぁ、好きでも無い子と婚儀を交わすってどうなのかな?父上は一目惚れした母上に猛アピールして結婚したくせに、子には望まぬ結婚をさせるって不公平だと思わないかい」

「兄上がそうするとしても父上が納得するかどうか」

「だから父上の意見なんかどうでもいいんだよ。僕は見知らぬ王女と結婚して国の領土を広げるよりも……お前達と共にこの子を愛でた方がよっぽど幸せだ」



これ以上何も言うな、と言わんばかりに銀灰色の瞳が2人を睨めつける。冷たい瞳の底にある確かな欲の塊にアヴェンタとアイオリアは互いに顔を見合わせ、ふっと表情を綻ばせた



「であれば、婚約破棄を明言しなければならないな!」

「兄上が言うなら私達は止めませんよ。彼処が破談に納得しなければ力で黙らせたら良い」

「ありがとう2人とも」

「兄者の問題は良しとして、この子が懐いてくれるかどうか」

「それなら問題無いかと思いますがね」

「アイオリアの言う通り心配はいらないよ」



何も問題は無いと言い張る兄達に首を傾げるアヴェンタ。何故こうもハッキリと言い切れるのか疑問を抱きながらも少年が目覚めるのを待つ彼は、数時間後に目を覚ました少年を見て床に崩れ落ちる事になる






















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