未来透視

桜田紅葉

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未来透視

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皆さんは夢を見たことがあるだろうか。どこかで見たことがあるような。同じことがあったような。そのような体験をしたことがあるのではないでしょうか?
それは「正夢」というものが働いているのです。その出来事が起こる前にそれを夢に見ることができて、その展開を自らの手で変えることができたらいいなと思ったことはないでしょうか?
今から始まるお話は、そんなことが起こってしまった女の子の話です。


ピピピ、ピピピ。
朝早くから高い音がスマートフォンから響く。
「んん…」
目を開いてからは嫌なほどの光が私の目に射し込んできた。
「あれ?何の夢だっけ?」
さっきまで見ていた夢の内容を全て忘れてしまうことは多々あるだろうが、誰かに記憶を盗まれたかのように覚えていなかった。
「支度するか。」
私はリビングに出ると、昨日飲んで散らかしっぱなしの缶ビールの残骸を片付けながら、テーブルの下に落ちていたリモコンをテレビに向けて操作した。
今日は晴れ。素晴らしい秋晴れでしょうとお天気お姉さんが笑顔でリポートをしているのをちらちら見ながら、私は狭い台所でインスタントコーヒーを作っていた。
そのままいつもと変わらないままの支度をし、会社に出社したと思えば、同僚がデスクの横へとやってきた。
「ねぇ聞いてよ、今日さぁ会社でいいことがある夢を見たんだけどさ、イマイチピンと来なかったんだよねぇ。」
私の同僚の真奈がそう一人で黙々と昨日の夢の話をしていた。
「そういえば私もなんか夢を見たんだけどさ、忘れちゃったんだよね。よくある事だけど。」
「覚えてないってことは、それほど印象に残ってないからじゃないの?」
「まぁ、大したことはなかったんだろうね。さ、始めるよ。」
そんな日々が私を潤していた。
しかし、私の日常は置いておき、別の観点から言うと、私の人生はさほど上手くはいっていなかった。
出会った男の人からはすぐに別れを告げられ、母親からも心配されるような身だ。外見はそこそこだと昔言われていたが、肝心な中身は思っていたのと違うと落胆されるばかりであった。
そんなことは早く忘れて、いずれ現れるであろう運命の人を待つなんて言いながら既に二十代も後半戦にさしかかろうとしている。
安心と不安を抱えながら生きる毎日なら、友達と遊んで何気ない毎日を過ごす方が余程楽だと思いながら、今日も私は目を閉じた。


すると私はいつの間にかあまり見た事がない公園の自販機の前に立っていた。
その自販機にはあまり見た事がないジュースがあったから、私は隣にいる誰かの後押しにはいはいと答えながらそのボタンを押した。
その自販機は当たり付き自販機だった。するとルーレットが始まり、四、四と揃っていた。外れていても恐らく二桁までは揃う仕組みなのだろう。
そのチャンスを待ち遠した自分がバカみたいだと思っていた。しかし、ピーーと自販機から音が鳴ると、自販機の全てのボタンが光っていた。当たったのである。
「良かったですね!」
隣にいた後輩がそう私にそう言った。
私は少しいい気分になった。しかし、
「ん?」
気がつくと私の携帯のアラームが時間だぞと私を叱るかのように高い音を出していた。
「やっぱりな。」
そういいことが起こるものじゃないんだぞと私に伝えるかのような夢だった。
私はテキパキと出社すると、上司が悩んだ顔をしていた。
「どうしたんですか?」
そう私が聞くと、
「実はな。今日の新しい取引先に行くはずだったやつが熱を出してしまって。この時期に代わりに誰を行かせようかと。そうだ。君なんてどうだ?忙しいなら無理には言わない。」
「いや、私が行きます。」
「そうか、まぁ君一人にはと言うものだ。一緒に彼女を連れて行くといい。なぁ。どうだい?」
「えぇ。今日は特に忙しくありませんし、全然問題ないですよ。」
「そうか、すまない急な案件で。」
「いえ、しょうがないですよ。」
そうすると昼前に上司から送ってもらったマップのスクリーンショットを見ながらその会社を目指していた。
「すみません先輩。飲み物を買いたいのでそこの公園に寄ってもいいですか?」
「えぇいいわよ。」
何だか私はどこかで見たことあるような光景だった。
私はそんなことはよくあることだと思いながら彼女の後についた。
そうすると、見たことない珍しいジュースを見つけた。
「あ、これネットで見たやつですよ。好き嫌いは激しいみたいですけどね。」
そうすると、彼女はそれを買い、ピピピとルーレットが始まった。三三と揃うが、呆気なく四が舞い降りてきた。
「まぁそう当たらないですよね。」
彼女はそう言いながらそのジュースを飲んでいた。
私の番だ。どこかで見たことがある。
今日の夢だ。それからもその通りになった。
「あ!良かったじゃないですか!」
ここは少し違ったが、私は生まれて初めて正夢を見た。
それから私は毎日正夢を見た。忘れ物をする夢。これはよく覚えていたので、正夢になるのを防ぐと言った方が正しいだろう。
仕事が上手くいくこと。後輩に彼氏ができる夢。その他諸々。
そして、ある日の事っだた。
「あなたの事が好きです。是非僕と…」
そこで目が覚めた。しかし、その男の人の顔も名前も知らない。私は遂に正夢が途絶えたんだと確信した。
しかし神様は私に微笑んでくれたんだと思った。
あの時の取引先に彼はいた。その途端あの夢を全て思い出した。
そのあとも夢のままに進んで行った。話の内容は初めて聞いたが、流れも全て昨夜見たままだった。
そんなことをしていく中、遂に私に彼が出来ていた。
それからしばらくは夢を見ることはなかった。それからは充実したり時に危機にあったりしたが、久しぶりに先が見えない生活をすることに嬉しさを覚えた。
そして三年の月日が経ち、私達は結婚した。親はさぞかし喜んでいた。一生独身だと思っていたからだろう。
そんな私の生活に、ある出来事が起きた。
ある日の夜、恐ろしい夢を見た。
夢を見るのは久しぶりだった。私はその時今までは正夢を見ていたことを幸せに包まれて忘れていた。
プーーーー
ピピピ、ピピピ、
高い音のクラクションが横から聞こえたと思えば、今度はアラームが鳴っていた。体は鳥肌と冷や汗だらけだった。
私は咄嗟に正夢を見ていたこと思い出した。
そう、私は今日死ぬ。そう思っていた。
私は焦った、死ぬ。私は今日死ぬ。
そう思いながら朝食は喉をあまり通らなかった。
もしかしたらこれが最後の晩餐なのかもしれない。そう思った。
焦るだけで時間はみるみると進んでいく。
私は時間という指導者に導かれていくままに私は会社に居た。
いつも通り仕事をしていれば、クラクションが鳴って轢かれることなんてないだろう。そう確信していた。しかし、その時に見た夢は全てその通りになった。
私が見る夢からは逃げることは出来ないのだ。
昼休みは会社から出ず、会社という巣にこもった。
問題は帰り、見た夢の通りにならないように、恐る恐る帰った。そして見事に帰りきった、ついに私は正夢から逃れることが出来たのだ。
嬉しかった。そして私はまたそれから夢を見ることはなかった。
それか一ヶ月後、私はまた普通の生活をしていた。
そして仕事の移動先に行く時、どこかで見たことがある風景だった。確かに信号は青だった。
しかし、
「危ない!」
プーーーー!!
ガシャーーン!
私は思い出した。あの夢を、私の体は思うがままに吹っ飛んだ。
もうそこから記憶が無い。
そう、夢の世界からは逃れることは、結局できなかったのだ。
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