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41話 約束
しおりを挟む「さてと、萩君達の元へ向かいますか」
「牛鬼様はどうするの?」
「そこら辺にほっときゃいいよ」
すると久助は倒れ込んでいた牛鬼を蹴った。ここに至るまでに色々とあったのだが…とりあえず今は早く萩君の元に向かわなければならない。
「馨恵、何を急いでいるの?」
「ちょっと前に葛の葉から聞いたんだよ。ここは萩君にとって大嶽丸との大切な思い出なのかもしれない。だけど今の萩君には辛い思い出だって」
「確か酒呑童子と大嶽丸は親友と言ってもいい程の仲だったよね?」
「うん。共に過ごしていた時期もあったって…だけど、ある日を境に萩君は」
「そうだった。あの日、田村麻呂を倒した日あいつは何処かに消えたんだよ」
「大嶽丸」
私達はそこの声を聞いてすぐに後ろに下がった。ここで大嶽丸が出てきてしまった…早く萩君の元に行って京都観光を再開しようとおもったのに。
「流石に大嶽丸を相手にするのは」
「無謀だね」
「やっぱり勇気だけはあるんだ。馨恵ちゃん、せっかく見つけたんだ、逃がすわけが無いよ」
「そんなに萩君に恨みがあるの?!」
私がそう問いかけると大嶽丸は意味が分からないと言うように首を傾げた。萩君に恨みがあって私を攫ったんじゃ無かったの?
「酒呑童子に恨みは無いよ。馨恵ちゃんを誘拐したのはそのためじゃない、解放だよ」
「解放?なんの?」
すると私の隣にいた久助が突然大きな狐の姿になった。なんで戦う感じになってるの?
今の私には分からない事だらけだ。でも、前世の記憶と言いみんなが狙う訳…何となく分かる自分が何者でもない何かという事が。だって、あの時も…
「馨恵、無理に思い出そうとするでない」
聞き覚えのある声が聞こえると安心したのか私は意識を無くしその者に倒れ込んだ。
「葛の葉…」
「すぐに終わらせるわ。今は楽にしてなさい」
「うん…」
「萩、こっちから入れそうだよ」
「嗚呼、あの狐め…俺たちだけを置いて行きやがって」
「そう怒らないでよ。少なからず馨恵さんが無事なのは確信できたのだから」
「…そうだな。大嶽丸が居るのか」
「怖い?」
「…分からない。けど、少なからず会いたいとは思わないな」
俺は器用に壁に穴を開ける楚をずっと眺めていた。楚に会う前より昔、俺は大嶽丸と共に過ごしていた。助け合い殺し合った。
だが、俺は田村麻呂を倒した日大嶽丸から離れた。元人間だった俺は後悔し始めた。
「萩、ここに居るのは大嶽丸だけじゃ無さそうだよ」
「どういう事だ?」
楚は目の前を指さした。一人の男…人間だ。どこかで会ったことがある気がする…。
「お久しぶりです。酒呑童子様、茨木童子様」
「誰だ」
「やはり、忘れてしまったのですね」
「それより馨恵は何処に…」
「馨恵?まるで自分の物のように…馨恵は元々俺の物だった。それなのにいつもいつもお前は!」
「おい、何の話を」
男は鞘から刀を抜くと俺の元へ飛んできた。今はこいつの相手をしてる暇は無いというのに。
「僕が相手をしよう。馨恵さんの元へ急いで」
「嗚呼、頼む」
「何を、戯けたことを言っている!馨恵の元には行かせない」
俺は扉を見つけるとすぐに向かった。葛の葉が馨恵のそばに居るとしても心配だ、相手は大嶽丸…何をするか分からない。
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