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40話 大嶽丸
しおりを挟む大嶽丸、鬼の中の鬼…鬼神。
人々を襲い、度に都の貴族の屋敷を狙い高価なものなどを盗み取った。その悪行は瞬く間に陰陽師に知られた。
そうして立ち上がったのは田村麻呂なのだが、今現在語られている話とは真逆の方向へ向かった。
田村麻呂は一人で鬼神討伐に向かったのだが、途中でそれはもう美しい女性に会った。
今語られている話ではこの女性に助けてもらい大嶽丸が持つ三明の剣を取ってきて貰うのだが、本当は違った。田村麻呂は騙された…女性の本当の正体は酒呑童子。
大嶽丸と酒呑童子は元から組んでいた。もちろん、女性が持ってきた三明の剣は作り物で屋敷に乗り込んだ田村麻呂はそのまま帰ってくる事は無かった…。
「ねぇ、私って誘拐され過ぎじゃない?」
「それは僕も思うよ」
私は謎に着せられた似合うことの無いドレスを邪魔そうにたくしあげると椅子に座った。
拉致られた身なのだが、へやに鍵が掛かっている事だけ考えなければVIP待遇だ。綺麗な洋風な大きな部屋にこのドレス…普通の生活では味わえないお嬢様な気分。
「というか、ここは何処なの」
「多分裏鈴鹿山だろうね」
「…裏裏聞きすぎて耳が痛い」
「まぁ、強いあやかし程人間の前に出ることは出来ないからね」
「萩君とか出てるよね…?」
「化ける事が出来るからだよ。意外と化けるのは大変なんだよ」
私は窓の外から森らしきものを見た。何処を見ても森なのだが。でも、こう思うと本当に山なんだ…良く考えればここって三重とか滋賀とか…。
「今すぐ脱出するよ」
「急に急いでどうしたの?」
「私、葛の葉から聞いたの…酒呑童子は…話は後!今はここから出ないと」
「…とりあえず行こうか」
そうして私たちは部屋から出ようとしたのだが…
「逃がすわけがないでしょう?」
「えっと…誰?」
私はそれはもう綺麗な白髪の女を見つめた。頭からは牛のような耳が生えている。
「このお方は牛鬼様です」
「あらあら、誰かと思えば葛の葉の所の…そうだわ。葛の葉と繋がっているのならば貴方を見せしめにしまょう」
そう言うと牛鬼は私から久助を奪って尻尾を持ってクスッと笑った。
「久助をどうするの」
「言ったでしょ人間。見せしめよ…葛の葉は前から気に入らないのよ。元人間のくせに幼王様のそばに…」
「分かった。じゃあ全力で久助を取り返させて貰うよ」
私は近くに置いてあった果物を切るようのナイフを手に取ると着ていたドレスの裾を破った。
勿体ないけどごめんなさいと思いつつ。
「大胆な姫だこと。その心意気だけは認めてあげるわ」
「ドンと来い!」
「こんな場所にまた来る事になるとは…」
「萩…無理だったらいいよ?」
楚は俺の顔を覗き込むと心配そうに見つめた。こいつは俺の過去を知っているからな。
「いや、楚一人で生かせる訳にはいかない…あの大妖怪達は使い物にならないからな」
「失礼な子供たちね。陰の妖気に慣れていないだけよ」
狐になり楚に抱えられた葛の葉と烏の姿で俺の頭に居座る天狗…二人共陰、悪気の耐性がないらしく、山に入ると同時に獣の姿になった。
「それに、感じるのよ…あいつが居る」
「あいつ?」
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