40 / 42
40話 大嶽丸
しおりを挟む大嶽丸、鬼の中の鬼…鬼神。
人々を襲い、度に都の貴族の屋敷を狙い高価なものなどを盗み取った。その悪行は瞬く間に陰陽師に知られた。
そうして立ち上がったのは田村麻呂なのだが、今現在語られている話とは真逆の方向へ向かった。
田村麻呂は一人で鬼神討伐に向かったのだが、途中でそれはもう美しい女性に会った。
今語られている話ではこの女性に助けてもらい大嶽丸が持つ三明の剣を取ってきて貰うのだが、本当は違った。田村麻呂は騙された…女性の本当の正体は酒呑童子。
大嶽丸と酒呑童子は元から組んでいた。もちろん、女性が持ってきた三明の剣は作り物で屋敷に乗り込んだ田村麻呂はそのまま帰ってくる事は無かった…。
「ねぇ、私って誘拐され過ぎじゃない?」
「それは僕も思うよ」
私は謎に着せられた似合うことの無いドレスを邪魔そうにたくしあげると椅子に座った。
拉致られた身なのだが、へやに鍵が掛かっている事だけ考えなければVIP待遇だ。綺麗な洋風な大きな部屋にこのドレス…普通の生活では味わえないお嬢様な気分。
「というか、ここは何処なの」
「多分裏鈴鹿山だろうね」
「…裏裏聞きすぎて耳が痛い」
「まぁ、強いあやかし程人間の前に出ることは出来ないからね」
「萩君とか出てるよね…?」
「化ける事が出来るからだよ。意外と化けるのは大変なんだよ」
私は窓の外から森らしきものを見た。何処を見ても森なのだが。でも、こう思うと本当に山なんだ…良く考えればここって三重とか滋賀とか…。
「今すぐ脱出するよ」
「急に急いでどうしたの?」
「私、葛の葉から聞いたの…酒呑童子は…話は後!今はここから出ないと」
「…とりあえず行こうか」
そうして私たちは部屋から出ようとしたのだが…
「逃がすわけがないでしょう?」
「えっと…誰?」
私はそれはもう綺麗な白髪の女を見つめた。頭からは牛のような耳が生えている。
「このお方は牛鬼様です」
「あらあら、誰かと思えば葛の葉の所の…そうだわ。葛の葉と繋がっているのならば貴方を見せしめにしまょう」
そう言うと牛鬼は私から久助を奪って尻尾を持ってクスッと笑った。
「久助をどうするの」
「言ったでしょ人間。見せしめよ…葛の葉は前から気に入らないのよ。元人間のくせに幼王様のそばに…」
「分かった。じゃあ全力で久助を取り返させて貰うよ」
私は近くに置いてあった果物を切るようのナイフを手に取ると着ていたドレスの裾を破った。
勿体ないけどごめんなさいと思いつつ。
「大胆な姫だこと。その心意気だけは認めてあげるわ」
「ドンと来い!」
「こんな場所にまた来る事になるとは…」
「萩…無理だったらいいよ?」
楚は俺の顔を覗き込むと心配そうに見つめた。こいつは俺の過去を知っているからな。
「いや、楚一人で生かせる訳にはいかない…あの大妖怪達は使い物にならないからな」
「失礼な子供たちね。陰の妖気に慣れていないだけよ」
狐になり楚に抱えられた葛の葉と烏の姿で俺の頭に居座る天狗…二人共陰、悪気の耐性がないらしく、山に入ると同時に獣の姿になった。
「それに、感じるのよ…あいつが居る」
「あいつ?」
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
生まれ変わっても一緒にはならない
小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。
十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。
カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。
輪廻転生。
私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる