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31話 神を降ろされた者-1

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「なんであんた達が居ながらそんなことになるのよ!」
「お、落ち着いてください。僕達もちゃんと反省してます…それに、相手は僕達より力は無くとも謎が多く見守る事しか出来なかったんです」
「…わかった。今すぐ馨恵を助けに行く」


 すると突然馨恵の元に向かおうとする私の前にペンが通り抜け壁に刺さった。
 殺されると思い体の血の気が引きその場に崩れ落ちた。


「人間一人で叶う相手では無い…無茶なことをしていなきゃその馨恵という者も殺されないだろう」
「いや、妖王…それは無理だと思う。馨恵さんの事だからもう行動を起こしていると思うよ」










「うっ…お、お腹が痛い」


 私は目を覚ました時に突然襲った腹の猛烈な痛みで体を丸くした。これは今まで味わった事の無い痛さ…


「ふふ、起きた?」
「だ、誰?!…痛った…」
「そう言えば、人間の身だったね」


 そう言うと謎の男は私の痛がる私のお腹をさすった。一度警察にセクハラで訴えようかとは思ったが何故かお腹の痛みがきれいさっぱり消えた。


「あれ、痛くない…神か?!」
「そりゃ、僕の術だからね。ふふ、それに神は僕じゃない君だよ」
「術?神?…もう少し簡単に説明してくれない?」
「…君って馬鹿?」
「少なからずあんたよりかは馬鹿じゃないと思う!それより、ここはどこなの?」


 私は辺りを見渡した。知らない間に謎の場所に運び込まれている…それに、さっき自分の術で私の腹痛を発動させたとか言っていたし…


「もしかして、あんた敵?」
「…今頃?まぁ、君だけじゃ何も出来な…」
「手足があればなんでも出来る!」


 私は華麗な飛び蹴りを腹に食らわし綺麗な着地を見せた。


「これぞ、腹痛の恨み」
「…ま、まさか…逃げる気じゃないよね…?」


 謎の男は地面にうずくまって居たが声を発した。今の飛び蹴りを食らって喋る事が出来るとは…なんて、厨二病を発症してる暇はなく、私は敵を一睨みするとドアを開け部屋から出た。


「まだ、逃げられなそうだな」


 私は広大な廊下を見てため息を着いた。早く萩君達の元へ向かわないと…










「さてと、こんなものでいいかしら」


 私は横たわる陰陽師の上に腰をかけた。久しぶりに動いたわね…するとそこに妖王の部下が現れた。


「もしかして、馨恵の事?」
「…はい、至急宮殿に集まるようにとの事です。後のことは私たちにお任せ下さい」
「分かったわ」


 雲を出現させてると私はそこに乗り猛スピードで宮殿へ向かった。やっぱりこっちへ来ようとする妖が多く門は詰まっている…
 私は宮殿のベランダに降りると扉を開けた。


「妖王!馨恵は…」
「…気づいていたようだな。敵陣に捕まったままだ…酒呑童子と茨木童子を解放したが、また面倒な事になった」
「いや、貴方の望みが一歩進んだのよ」


 私は呆れていた妖王の言葉に付け足した。もちろんその言葉に妖王は食いついた。


「相手は陰陽師だけど陰陽師では無い特殊な存在よ」
「どういう事か詳しく説明してはくれませんか?」
「神落を狙う陰陽師…神落だとしても力は強いから、その力を食って自分の力へと変えるのよ」
「それはずっと前に禁止されたはずじゃ」
「妖に似た人間がそんな言うことを聞くと思う?」


 妖なら知る人間の恐ろしさ…全てを自分の物にするためにどんな卑怯な手を使ってでも手に入れる…
 この世の中で一番卑劣ひれつなのは人間だ。


「とりあえずこっちの事は任せろ。お前ら全員でその馨恵という人間を救うといい…」
「ありがとう。妖王」


 そうして私達は馨恵を救うために向かったのだった。

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