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20話 夢か現か…-4

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「よし、ここだね」


 私はコンコンと床を叩きはずれる場所を探して床に耳をつけた。はたから見たらこいつ何してるんだろうっていう絵だよな…
 ふと、私は下から聞き覚えのある声が聞こえてきた気がして耳を凝らした。


「…良かった、ここだ」


 私はタイルを外すと下に飛び降りた。やっぱり合っていた、私は降りる直前で下にいる葛の葉に触った。
 そして見事綺麗に着地…ここでまさか高校の体育5を生かせるなんて思っても見なかった。


「なっ……よく、ここの仕掛けに気付いたね」


 葛の葉はこの仕掛けを知っていたのかニコッと私に笑いかけた。
 このぐらいの仕掛けならアニメで見た事があったから、すぐに見分けられた。でも、もっと複雑な構造だったら見分けられなかったかも…


「じゃあ、願いを言うといい。出来ることなら叶えるわ…それに、そこの娘は気に入った」


 そう言うと葛の葉は突然私の手を取り甲にキスを…


「え?!」


 楚と萩君もその行動に驚いているみたい。手の甲へのキスって何かあったような…でも今の私の頭はハテナばかりで役に立たない。
 私はキスされた手を見ていた。すると葛の葉は…


「娘に忠誠を誓おう。こんな娘に使われるのはそう悪くない…で、本題だが、どうやら前世をおっているのだね」
「…嗚呼、そうだ。お前なら前世の記憶を引っ張り出せるだろ」
「それは朝飯前だわ。けれど、それはまだ早い…近々娘の見た夢の真実が分かる、その時まで待つといい」


 そう言うと葛の葉は私のそばで小狐の姿になり必然的に私が抱っこすることになった。
 それより、ふわふわ…もふもふ…


「真実は必ずすぐ側にある。自分たちで探すのもいいが、待つのもまた良い…酒呑童子、その言葉の意味が分かるだろう?」
「…嗚呼、お前の事ならそうなんだろうな…それに」


 そう言うと萩君は私の顔を見た。私には全く葛の葉の言葉の意味が分からないのですが…


「…まぁ、そう焦るな。難しい事でもないし悲しい事でもない…言うなれば、これからの事。未来だ」


 未来…この前世が未来に関わってくる。けどそれは私、それとも私達…?
 私の夢は謎が深まるばかりで何が良くてなにが悪いのかさえ分からない…ただ一つ分かるのは葛の葉は全てを知ってる。


「そう難しそうな顔をするな。馨恵は隠世を見たいのだろう。私と行こうじゃないか…酒呑童子と茨木童子は妖王にでも会ってくるといい、それとこの事は内密にな」


 小狐の姿で表情が読み取れないとしても何故だか葛の葉のその怪しい微笑みが伝わってきた。


「さてと、行こう。馨恵は私に任せておけ」


 葛の葉がそう言うと目の前がぼやけはじめた。頭痛がする…
 ふと、頭痛が収まった頃には目の前が宮殿では無いことに気がついた。これって瞬間移動みたいなやつかな…


「やはり、人には転移術は身に来るか」
「あ、いや…大丈夫。今のが転移術なの?」
「そうだ。そう難しい妖術じゃない…たしか、これは霊力が高い陰陽師であれば出来た術だ」
「じゃあ、人間でも出来るの?!」
「いや、今の馨恵は例外だ」
「そっか…」


 あからさまに落ち込む私に葛の葉はコロコロと笑った。小狐の姿デあっても伝わってくるこの美しさ…


「それでだが、隠世を回るのも良いけれど私が連れ出したのはこれが目的ではない…少しばかり馨恵の気になる夢を教えよう」
「教えてくれるの?」
「ちょっとしたヒントだ。この夢の真実を知るための選択で己の命さえ奪われる可能性もある」
「え…死んじゃうの?」
「もし間違った選択をしたのならば私が馨恵を助けよう」


 そう言うと葛の葉は私の腕から飛び降りて元の姿…いや、鈴と同じぐらいの女の子の姿になった。
 それでも美しいのは何故だろう…


「まず一つ、妖関連の事件には関わらない事だ」
「妖関連?」
「…妖は気の短いやつが多い。そのせいかどこへ行ってもケンカが耐えない…ほら、あそこをご覧」


 そう言われ指さされた方を見ると店の前で取っ組み合いが始まっていた。それも人間のような取っ組み合いでは無くもっと激しい取っ組み合い…これに関わったら必ず命を落とすんじゃ…


「…そして二つ目、今の生活は楽しいか?」
「勿論、今までとは違って毎日のように楽しくて…みんな私の大事な家族だよ」
「じゃあ、その家族に災難が降り注ぐ」
「災難?それは夢を知る事でそうなってしまうの?」
「まだ何も言えない…ただ、私は馨恵の未来を予知している様なものだ。詳しい事は全く分からない」
「そうなんだ…って言うことは変えられ事も出来るって事だよね?」
「そうだが…」


 私が開き直った事に驚いたのか葛の葉は立ち止まりジッと私のことを見ていた。


「どうしたの?」
「…馨恵は強い人間だな」
「私が…?」
「酒呑童子の気持ちが分からない事も無い」
「そう言えば、私と萩君の事って一ヶ月ぐらいしか経ってないよね?!」
「妖は噂話が好きだからな、誰かが広めたのだろう」


 そう言えばそんな事前にもあったような…やっぱり妖はあなどれないな、いつどこで私たちを見ているのか。
 そう思い私はキョロキョロと見渡した。今度からあまり広まらないよう頑張らないと。

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