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18話 夢か現か…-2
しおりを挟む「来ました!隠世!」
私はテンションが上がりその場でジャンプあんどバンザイをしていた。
それを見た萩君と楚はクスクスと笑っている。隠世なんて夢の世界でしか無かった…それがここに来れるなんて…
私達のいる場所は多分妖都と言われる場所。私達が通った門はとにかく巨大だった…それもそのはず、私達の様に門を越えてくるのは巨大な妖怪。
すると、踏み潰されそうになってすぐに門の端へ避難した。
「あまりはしゃぎすぎるなよ」
「大丈夫、そこら辺分かって…あ、火が浮いてるよ!」
「先が思いやられる」
「まぁまぁ」
楚は苦笑いをした。萩君は何処かに行かないようにと私の手を掴んだ…もう離れませんと誓い、私は他の物に目もくれず萩君と楚を追った。
「どこまで行くの?」
「この先の妖宮だよ。そこなら葛の葉に会えると思う」
「妖宮って…入れるの?!」
「そこの者!」
突然後ろから呼びかけられ私達は足を止め振り返った。そこにいたのは槍を持った一反木綿。
布が浮いてる…と不思議がっているといつの間にか3人の会話が進んでいて…
「これはこれは、酒呑童子様と茨木童子様でしたか。久しぶりの入国で、今日はなんの要件で…それに、人間まで」
「この人間の前世を知るために葛の葉に逢いに来たんだ」
「そうでしたか、ならこの先の団子屋に居ると先程部下に聞きましたよ」
「嗚呼、ありがとう」
「いえ、久しぶりの隠世をお楽しみください。そうだと思うよ、こちらをどうぞ」
そう言って一反木綿は私に飴玉のような物を渡してきた。
「これは何?」
「そこを過ぎるまで待て」
萩君にそう言われ私は飴玉をポッケに入れ、振り返りいつまでも手を振る一反木綿に小さく手を振り返した。
良い妖だな。と思っているといつの間にか萩君の言っていた場所を通り過ぎ二人は私を路地裏に手を引いた。
「ど、どうしたの?」
「さっき貰った飴を出せ」
「あ、うん」
私は萩君にポケットから出した飴玉を渡した。すると顔を顰めその飴玉を粉々に割った。
「え、どうしたの?!」
「これは人を妖にする飴だ。ここで何か渡されても絶対に食べるな」
「わ、分かった!」
私はコクコク頷いた。妖怪になるのには憧れるけどまだ人間を謳歌していない!
「それじゃあ行こうか。妖に声掛けられても反応しなきゃ大丈夫だよ」
「分かりました…」
そして私達は再び妖都を歩いた。度々妖に声を掛けられたりしたが、一反木綿に悪い様に話しかけたりはしなかった。
「これ美味しいね」
「あ、いつの間に買ってたんですか」
「うん、萩君が買ってくれた」
「…こういう時甘いんですから」
照れて顔を背ける萩君に楚は、はぁと深いため息を着いた。
そんなんだよな、萩君って私には甘いんだよな…そこが可愛いけど。
「あ、見えてきましたよ。あれが妖宮で…」
「…痛っ」
私はずっと大きな宮殿を見ていたため突然止まった楚に衝突した。
「あ、すみません。昔の知人が居て…何処から情報を仕入れたんでしょうね。あいつだけには会いたくなかったのですが」
楚が指さす方には何処からどう見ても鬼の様な見た目の者が居た。強面な顔面をお持ちで…睨まれたら失神でもしそう。
などと思っているとフラグが立ったのか目が合いズンズンと私たちの方へ近づいて来て私は萩君の後ろに隠れた。
「見つけたぞ!茨木童子、酒呑童子!」
「一体何処から僕達の情報を入手したのですか」
「そこら辺妖に聞けばすぐにわかるんだ!」
そう言ってワハハと笑った。いや、この妖とは絶対分かり合えないやつだ…
「貧乏神、今はお前に構ってられない」
「なんだ酒呑童子…その娘は誰だ?」
「酒呑童子の嫁ですよ。もう良いですよね、先を急いで居るんです」
「葛の葉狐だろ。どうせ、門の前にたむろってる一反木綿に嘘を言われたんだろうが、良く嘘だと分かったな!」
確かにあの時一反木綿は団子屋に居るって言っていたかも…楚は躊躇いもなく妖宮に向かって行ったし…
「そのぐらいの嘘なら表情で分かりますよ」
「そんな茨木童子に教えてやろう。葛の葉狐は宮殿の最上階、妖王の元にいる」
「…これは先を読まれちゃった見たいですね。情報ありがとうございます」
そう言うと楚は宮殿の中に入って行った。やっぱり後ろでは貧乏神が手を振っている。人当たりがいいのか繕ってるのか分からないな…。
「馨恵、ここからは葛の葉の所まで一言も喋るな。ここの妖は皆人嫌いだ」
そう言って萩君は私に市女笠を被せた。綺麗なピンクの桜が特徴の物だ。
「可愛い」
私は思わず声を出してしまい口元を隠した。
「それなら良かった」
萩君はクスクスと笑い微笑んだ。これは惚れてしまう。
そうして私達は宮殿の中にある長い道を歩いた。どうやら宮殿の中に入るには門番の許可を取らなくてはいけないみたいだった。そして、その長い列はまるで百鬼夜行の様だった。
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