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10話 文化祭の悲劇-1
しおりを挟むバンバンと音で知らせる花火がまだ明るい空に打ち上がった。
そう、今日はついに文化祭だ、勿論カメラは持ってきた!
「萩君達を撮りまくるぞ!」
「変な事するんじゃないですわ」
「大丈夫、捕まらない程度には頑張るよ」
「…これからが心配ですわ」
フリフリなゴシック服に着替えた鈴が大きなため息をついた。すみません、推しには弱いのです…
「えっと…萩君達のクラスはコスプレカフェ…なんと?!」
「なんだその、コスプレとはですわ」
「コスプレって言うのは、アニメとか動物の擬人化だったり、そう言う格好をする事かな…説明しろと言われると難しいんだよな」
「そうなのか、大体なら分かったですわ」
そう言うと一目散にどこかへ飛んで行った。あ、これ迷子になってしまうのではと思ったが鈴はパンケーキのお店で止まった。
わざわざオシャレな椅子などを借りてきたのかお店の隣には食べられる所がある。
「これが食べたいですわ!」
「鈴ちゃんパンケーキ知ってるの?」
「ネットで見た事があるですわ」
「いつの間にノーパソを使いこなして…」
「それはいいから早く並ぶですわ」
そう言うと鈴はパンケーキの列に並んだ。まさか、鈴このためにネットで色々調べてたんじゃ…
「馨恵さーん!」
「あれ、今どこかで…」
「茨木童子様ですわ」
「あ、楚?!」
楚は私たちの元まで来ると並んでる列を見た。
「萩から聞いてますよ。なので迎えに来ました…でも、パンケーキに並んでるみたいですね」
「うん、鈴が食べたいって」
「そうだ。食べたいんだですわ」
「なら、後で行きましょうか」
「うん、わざわざごめんね」
そうして私達はパンケーキを食べ終え萩君のクラスに向かった。この目で萩君が働く姿を抑えなくては!
「じゃあ入りましょうか。今の時間なら萩出てますよ」
「出てるって事は…コスプレ?!」
「はい」
楚は頷くと笑顔で扉を開けた。そして出迎えてくれたのは…
「いらっしゃい…げっ」
「萩、あからさまに動揺したね」
「酒呑童子様が珍しく動揺したですわ」
「うっせぇ、楚お前裏切ったな」
「僕は馨恵さんの喜ぶ姿が見たいんだ」
と、うるうるした目で萩君の言葉に反論した。本当は私にコスプレ姿を見せたくなかったんだと思い少し嬉しくなった…にしても、コスプレと言うよりかつての酒呑童子を彷彿させるようなコスプレ…萌える。
私が撮ろうとカメラを構えるとそのカメラは萩君の手によって奪われた。
「撮るな」
「え~、せっかく萩君の和服姿を毎晩拝めると思ったのに」
「おい、怖いこと言うなよ」
「あれ、萩の知り合い?」
私達が話していると女の子が私たちの会話に入って来た。小柄でいかにもスポーツ出来ますよみたいな感じの子だ…高校生可愛いな。
「この人は俺の」
「親戚なの!」
「親戚?」
私は萩君の言葉に被せるように割って入ってしまいピリピリとしたものを感じた。また怒らせてしまった…
「ほら、彩恵呼ばれてるよ」
「ほんとだ…萩の親戚の人、ごゆっくりどうぞ!」
「あはは…」
「萩、ピリピリするのは分かるけど仕方ないよ。萩の年齢は千歳行っていたとしても高校生は高校生だから馨恵さんが捕まりかねない」
「嗚呼、分かってる」
そう言うと萩君は奥へと戻って行った。完全に怒らせちゃったな…
「怒らせちゃったね」
「そう見たいですね。ああ見えて、一途なんですよ…だから、夫婦だと言えない事が辛い見たいです」
「そっか…堂々と言えれば良いんだけどね」
その後の変事が帰ってこないことに気付き楚を見ると驚いた顔をしていた。いや、急にそんな顔されても分からないが…
「ど、どうしたの?」
「え、あ…馨恵さんがその様に言うとは思いませんでした。てっきり子供の戯れ事だと思っていたり…」
「え、私をなんだと思ってるの?私だって一途だから!」
「そうだですわ。この人間と来たら毎時間酒呑童子様は今頃何をしているのだろうと聞いてくるですわ」
「…意外ですね」
「失礼な」
私の純粋な恋を馬鹿にしていた楚になんとか言ってやりたかったが、いつの間にかコスプレカフェのケーキを間食してしまった鈴は次へ行きたいと言い出した。
「萩はまだやる事があって…僕もこの後入らなきゃ行けないんですよ」
「あ、そうなの?じゃあ鈴と二人で回ってるよ…萩によろしく言っといて」
「分かりました。そうだ、くれぐれも気をつけてくださいね…この学校には人外が居るみたいなので」
「人外…妖怪?!」
私は思わず大きな声を出してしまって急いで楚はシっと人差し指を唇の上に重ねた。
「妖怪かは分かりませんが…萩の言うことなので本当かと」
「うん、分かった。でも、鈴も居るし大丈夫だよ」
「…そうですね。じゃあ、文化祭を楽しんでください」
「うん、楚も頑張ってね」
私達は別れたあと、鈴と一緒に色々なところを回った。でも、全て食べ物関連…鈴の暴飲暴食は誰にも止められない…
「食った食ったですわ」
「…あんだけ食べたのにお腹が膨らまないからいいね」
「座敷童子は別名ブラックホールですの。食べた物を出すというはしたない行為はしませんですわ。全て妖力になるですわ」
「それはまたいい力を…」
私達は長い廊下を歩いているとふと、入ってはいけない場所に入っていたことに気づいた。
「あ、ここ駄目なところじゃ…」
「いや、私達はおびき寄せられた見たいですわ」
鈴はいつの間にかゴスロリ服ではなく、普段の着物になっていた。これまた便利な…
「来る、ですわ」
「これはこれは、座敷童子の長ではないか」
「女狐かですわ」
「相変わらずその語尾は鬱陶しいな。これだから大正妖怪は」
「あの~、お話中悪いのですが…貴方は?」
「そうだったな。私は玉藻前、平安の三大悪妖怪の一人だ…以後お見知り置きを、花栗 馨恵」
「玉藻前…私の名前…ずっと前から大ファンでした!握手して貰えませんか?!サイン貰えませんか?!」
「あ、嗚呼…構わないが…」
玉藻前は私の対応に驚いたのか目を丸くして私と握手とサインをしてくれた。意外にもファンサが良き…!
「人間、そいつは一様敵だですわ」
「え、そうだったの?てっきり三大悪妖怪関連で萩君達と仲良いのかと思ってた」
「昔は仲が良かった。でも、私はあの二人を裏切ったんだ…人間、話を聞いてくれるか?」
「はい、勿論」
そうして私達は突然の昔話を聞くのであった…
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