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6話 家具屋ニテリ-2
しおりを挟む「着いた!大手家具屋ニテリ!」
「大きいな」
「そりゃ、大きな家具とか置いてあるからかな…勉強机は2階だって」
「その、出来るだけ和の部屋にしたいんだが…洋風はどうも落ち着かない」
萩君はモジモジしながらも部屋の要望を述べた。
「やっぱり自分の慣れてる方が良いからね…じゃあテーブル見に行く?ちゃぶ台風見たいのがあると思う。後は…畳はった方が雰囲気出るよね」
ぶつぶつと喋りながら歩いていると萩君が着いてきていないことに気づきわたしは後ろを振り返った。
その場に止まってずっとこっちを見ている。
「萩君?」
「…なんでそこまでしてくれるんだ?」
「なんでって言われると何でだろうな…やっぱり推しには弱いところもあるけど、一番は推しが幸せの方が嬉しいからだと思うよ。あ、あのテーブル良さそうじゃない?!」
「そうだな、良いな」
萩君はクスッと微笑むと私の元まで来た。やっぱりこれが良い…私の知っている限りの酒呑童子の人生を思い出すと楽しい事はあったのかな、幸せだったのかなと思ってしまう事がある。
だから今を…今こうして一緒に居れる私が幸せにしたい。
「じゃあこのテーブルにしようか」
「嗚呼」
「後はリビングのテーブルと椅子…タンスも必要だよね?」
「あると嬉しいな」
「じゃあ見に行こう」
「…私、もう歩けないよ」
「流石にキツかったか」
家に帰ってくると私はここまで家具を運んできた疲れで玄関に倒れた。外が寒過ぎてもう手の感覚が無い…
「ほら、とりあえずリビングまで行くぞ」
萩君が渡してくれた丸く赤い球体を持つと私はリビングへ向かった。丸い球体は暖かく人の体温の様だった。
「これ暖かいね」
「それは妖力の塊だ」
「妖力の?」
「俺は日を主に使うからな、俺の妖力は暖かいんだよ」
「そうなんだ」
私はストーブを付けると前の座布団に座り軽くその球体を抱きしめた。何だか懐かしく感じる…こういった温もりは久し振りだからかな。
「よし、テーブルとか組み立てるか?」
「あ、そうだ…でもこれ離したくない」
「…じゃあちょっと貸せ」
私は暖かい球体を渡すと防寒するものが無くなりブルブルっと震えた。この部屋、エアコン付けようかな…
少しすると萩君は突然私に抱き着くようにしてきて驚いてしまった。
「…これでいいだろ」
そう言われ私は首元を確認した。そこにはさっきの球体が小さくなって私の首元を照らしていた。小さくなっても物凄く暖かい…
「ありがとう」
「嗚呼、さっさと作るぞ」
「あ、うん!」
萩君が廊下から買ってきたテーブルなどをダンボールを持ってくると私達は協力して組み合わせた。
力仕事は萩君に、細かい作業や説明書の解読は私が…そうして一番最初に出来たのがリビングのテーブルだ。
「思っていたより部屋の雰囲気にピッタリだね」
「木の机だと暖かく感じるな」
「うん」
私は木のテーブルを指でなぞった。誰かとこうして暮らすのっていいな…ずっと家に篭もっていた私には全く想像のできないことばかり。
「ねぇ、萩君はずっとここに居て…」
「…嗚呼、お前が良いならずっとここに居る」
私はふっと出てしまった自分の言葉に驚き手で隠した。けれど萩君はその言葉に答えてくれた…
「…ありがとう」
「あ、そこのネジ取ってくれないか?」
「うん、はい」
私は言われた通りネジを渡した。こうして物を組み立てている萩君って絵になるな…などと思いながら見ているとずっと見つめてくる私に気づいたのか少し顔を赤らめていた。
「初だね」
「初ねですわ~」
私は突然隣から聞こえた声に驚き今だけはまでに見せたことの無い速さで後ろまで下がった。
見ると小さな女の子が居る…だれ?
「驚かせちゃったかしらですわ」
「お前…座敷童子か」
「そう、私が正真正銘の座敷童子。この家の神にして全座敷童子の長ですわ」
「えっと、君が座敷童子の長?」
すると座敷童子は私の唇に人差し指を置いた。突然過ぎてあまり思考が追いついていないのですが…
「人間、私は神。拝み讃えなさいですわ」
「へ?えっと…座敷童子様」
「それはむず痒いわ…鈴様と及びなさいですわ」
「鈴?それが貴方の名前ね!」
「そ、そうよ。というか様を付けなさいですわ!」
鈴は突然握手をさせられ勢いよく振られ驚いていた。テンションが上がると身振り手振りが大きくなってしまう私のくせが…
「じゃあ、鈴が居れば幸運に」
「それですわ。今まで汚い家でズット出てこれなかったのですわ…もう散々ですわ!」
「それについては本当にごめんなさい…萩君がいる限りは大丈夫ですから」
鈴は萩君をじっと見つめるといつの間にか萩君の隣に移動していた。
「いい男ですわ」
「ちょっと鈴、萩君は私の夫なんだからね!」
「うるさいですわ!今日からこの男は私のですわ。にしても酒呑童子様がこんな場所に来るなんて思っても見なかったですわ」
「やっぱりそう言うのは分かるの?」
鈴は何処から持ってきたのかいつの間にかジュースの入ったコップを持っている…
「分かるですわよ。他の妖とはオーラ見たいのが違うのですわ…それに、酒呑童子様は絶対分かりますですわ」
萩君は自分のテーブルを組み立て終わったのか裏返してテーブルを立てた。
「座敷童子、誰に封印されていた」
「え、封印?さっき部屋が汚くてって…」
「天狗ですわ。あいつはこの家を守るとか言い出してたですわ…あいつが怖くて封印されてから出てこれなかったですわ」
天狗ってあの鼻の長い妖だよね…そんな天狗がこの家に関係してたなんて。
「その、天狗が鈴を封印してたの?」
「そうだですわ。これは全てお前のせいですわ…あの野蛮な天狗を連れてきやがってですわ」
「え、私が連れてきたの?!」
「無自覚だったのですわ」
鈴はフンっと顔を背けるとその場から消えた。もっと話したかったけど気分を害しちゃったみたい…
「あまり気にするな、座敷童子はちょっと空気の読めない奴らが多かったりするからな」
「うん…でも、むかしからここに住んでたみたいなのに封印しちゃったのは悪かったな…にしても天狗ってまだ何処かに居るのかな」
「…」
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