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エピローグ
しおりを挟む「疲れた!!!!!お休み下さい室長!!」
「全部終わったら良いよ~」
間延びした声が図書館に響く。
謁見から一ヶ月後、図書館司書総動員で新たな防御陣の設置やお披露目の式典で大忙しとなった。
「元凶であるリンドバーグ嬢が頑張ってくれなきゃ私たちも休めませ~ん」
「あぁぁぁぁもう!!魔法師団にも掛け合ってくださいよ!猫の手も借りたいのに!!」
「魔法師団員は君の見つけた魔石の調査や遺跡の調査で手は借りれませんよ~」
「んんんん!!もう!!!」
こんなやりとりが続き慌ただしい日々を過ごしている。
グリード公とは後に僅かな時間面会が許された。
彼の言葉は今も私の胸を燻らせる。
ーーーー
「全てが妬ましかったんだ」
同年代の義父たちの才をを妬ましく思うと同時に、それよりも私利私欲に溺れた自分自身や公爵家を憎み最後は公爵家など潰れてしまえばいいと思っていたと静かに語っていた。
血の繋がった娘を見殺しにしたり、汚いことにも手を出した。と言った彼は自らの手を見つめながら話していた。
「君がとても眩しくてね」
自分の子供たちとは違う孤児の私が常に前向きで見返りを求めない優しさを持ち神秘的な瞳で見つめられた時、やはり公爵家が間違っていたことを確信したのだと。
「最後に君の幸せを願うことだけは許してほしい。どうか君は君のままで、君の愛する人とこの国を愛して欲しい」
そう静かに微笑んだグリード公を忘れることはないだろう。
誰にも知られずに消えた命を、勇気を忘れることはない。
ーーーー
「やるしかない!!」
自らを鼓舞し立ち上がる。
「良いね良いね~頼むよ~リンドバーグ嬢」
「もう!室長!!その名前で呼ばないでくださいよ!!」
そうして慌ただしくも華々しく式典を迎えた。
式典と共に王政の代替わりとなり、マテオやウィリアム軍人達も大忙しだった。
グリード公の家系である第一王妃と王子は隣国へと隠居し、先王は退位、新たな王がたつ。
悪癖を生む血統重視の王政も同時に廃止になることが決まった。
私自身もあの日記や魔術書でも可能性を感じたこともあり、まだまだ研究は続けられそうだ。
これで少しずつではあるがまたこの国は成長していくだろう。
街は色とりどりの花で飾られお祭り騒ぎ。
王家の代替わりと、魔術先進国の新たなる防御陣のお披露目ともあり他国からの賓客や観光客で人々が溢れかえっている。
「どうしよう!緊張してきて手が震える!!」
「そんな繊細だったけ?」
「え!マリー酷くない!?」
「あ、この焼き菓子すごく美味しい♡」
「ロゼにはそんな繊細さは持ち合わせてなんかいないでしょ?そのお菓子、マリーが好きだと思って持ってきたの」
「ちょ!ナザリーもひどい」
わいわいと仲良し三人組で司書室から外を眺めながらお菓子を啄んでいる。
「少しは御めかししなさいな。大勢の人に見られるんだから」
「えぇー無理ー」
「そのまま行ったら花形司書の恥だからね!」
二人に手入れされ私は式典への準備中。
王城と大樹の図書館の間に湧く湖のそばに時間が近づくにつれ人々が集まり出す。
湖の辺りには新たな魔術紋が施され中央へと放射状に伸びる。
その景色を司書室から眺め感慨深くなる。
「上手くいくかな…」
「「もちろん」」
二人の声が重なり三人見つめ合い笑い抱きしめ合う。
「大丈夫、絶対上手く行くから」
「特等席から貴女の晴れ姿を見せてもらうわね」
時間になり二人に背を押され部屋を出る。
人垣を護衛騎士たちが囲む中、一歩また一歩と辺りに近づく。
百m四方の小さな湖の対岸に大好きな人の姿が見えた。
私たちの姿に騒がしかった人々が気付き波紋の様に静けさが訪れた。
互いに辺りに手を付き魔力を込める。
――この地が永遠にあることを
その願いと共に輝かしい光が魔術紋を流れる。
放射状に伸びる魔術紋が水面下を通り光の魔力と共に水面がキラキラと光り中央に集まると、間欠泉のように散布した。
大気に魔力を宿した水滴が、陽の光を浴びダイヤモンドダストの様に輝く。
喝采が鳴り響く中、国全体を覆う様に風で運ばれる輝く水滴たちを見守る。
「…綺麗」
「ロゼの方が綺麗だ」
いつの間にか私の元に来ていたノアを振り返る。
「さ、最後の確認をしに行こう」
そう手を取られ、まだ波紋の浮かぶ湖にノアと共に歩みを進めた。
二人手を取り合い中央にある魔法陣を目視した。
「上手く行った様だな」
水面下で未だキラキラと輝く魔法陣を見て肩の荷が降りた。
「よかったー」
「これで気兼ねなく休めるな」
引き寄せられる様に口づけを交わす。
「誰か見てるかも」
「誰も俺たちなんか見てないさ」
笑い合い何度も何度もキスをした。
不意に腰を抱かれて体が浮遊感を感じるとノアを見下ろす形になる。
「愛してるぞ、ロゼ。お前と共にこの偉業を成し得たことは俺の誇りだ。ありがとう」
そう満面の笑みで言うノアが涙で霞む。
「ノア、私も!ありがとう、ずっと忘れないでいてくれて。見つけてくれてありがとう。…愛してる」
そうしてまた口づけ合う。
キラキラと水滴が舞い幻想的な中、私たちは肩を取り合い歩んで行った。
――fin――
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