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want to protect said Noah
しおりを挟む遠くに人々の騒がしい声が聞こえる。
重い瞼をあげると視界は僅かに霞む。
意識が浮上すると同時に四肢に力が入り全てを思い出す。
「ロゼッタ!っう」
「師団長!!まだ起きてはダメです!!」
慌てた部下たちの肩越しに司書や騎士たちに囲まれる自身の最愛の姿が見えた。
最後に記憶した安心し切った表情とは違い青白く力なく横たわる姿。
その姿に周りの喧騒は掻き消え自身の鼓動が耳に響く。
ドクンドクン
痺れが残る体を煩わしく思う中、無我夢中で駆け寄る。
たかが数メートルが永遠に思えるほど長く感じ鼓動は加速する。
人々を掻き分け青白くなった頬に手を伸ばすと、何度も感じた記憶にある熱は氷のように冷えていた。
胸に手を置くと僅かに上下し、微かに鼓動を感じた。
冷えきった唇に自身の唇を合わせありったけの魔力を注ぐ。
思いはただ一つ。
「目を開けてくれ…ロゼッタ」
無我夢中で魔力を注ぐ。
「師団長!やめてください!!貴方が死んでしまう!」
部下たちを乱暴にあしらいロゼッタを胸に抱きながら口付けを続ける。
不意に肩を掴まれ引き剥がされると顔面に衝撃が走りそのまま倒れた。
「冷静になれ、グランヴェル!」
よく通る声があたりに響き渡り、静寂が訪れる。
見上げれば青筋を立てながらも怒りを押し殺すディランが立っていた。
「奴らは騎士団と海軍が拘束した。お前はその怪我の治療を優先にしろ」
ディランが辺りを見まわし魔術師団員に指示を出す。
「私たちが持つ魔力ポーションは全てお渡しする。もちろん騎士団のも私の権限で。貴方方には彼女の魔力回復と治癒を最優先にして頂きたい。今はまだこの場で納めて頂きたいが、彼女はグランヴェルと“同格”の魔術師だ。彼女はこの国にとっても貴重な人材だ。私個人としても…どうかご協力願いたい」
最後は絞り出すように告げ最敬礼で頭を下げた。
俺やディランの必死さが伝わったのか、すぐに混乱は解け人々が各々動き出す。
「師団長…こちらへ」
部下に支えられて立ち上がるが、魔力枯渇と刺された腹の傷の痛みで顔が歪む。
ディランの目を見据えながら告げる。
「……治療は行うがロゼのそばにいる」
先程より僅かに怒りは消えた表情でディランが背を向ける。
「好きにしろ。ただ今あるポーションだけではお前たち二人を補えるか怪しい。ロゼを助けたいならばさっさと回復しろ、馬鹿者が。私は私のできることをする」
そう言い捨て、ディランは騎士たちに指示を出しながら去っていく。
「ロゼの元に」
部下と共にロゼッタが治療にあたっている簡易テントに入る。
互いに治療を受けながらナザリーからの報告を受けた。
「異変に気付いた師団長が去った後も調査を続行いたしました。ロゼッタさんが睨んだ通り水源にて魔術紋を発見いたしました。可能な限り司書の方々が写し終え文献と照らし合わせているところです。また以前マリーが発見したサンプルも何個か徴収済みになります。ただ、ロゼッタさんが発見した魔術書は専門過ぎてほかの方々も読め解けませんでしたが、ロゼッタさん本人が発見し撤収を申告していたことからおそらく十分な収穫はあったかと司書の方々も仰っていました。また現状として、ロゼッタさんの魔力量が師団長と“同格“となるとリンドバーグ大佐が仰った通りポーションが足りません。現地で薬草を可能な限り採取しましたが、それでも足りないかと…こちらの件に関しては善処致しますが、師団長の許可があれば相性の良い「それは論外だ」
ナザリーの言葉を遮り告げる。
「しかしそれではっ」
「俺は最低限でいい。だいぶマシになってきた。ここは自然エネルギーが豊富なんだろ。体の傷を治したら回復が早くなってる。残りは全てロゼに回してくれ、あとは俺が何とかする」
「しかし…」
今だ不安を拭いきれないナザリーが言葉を濁す。
「ロゼッタは俺が助ける。この名と命に変えても」
少し暖かくなった頬に手を添えて、まだ開かぬ瞼を見つめながら告げる。
「命に変えたならばロゼッタさんは師団長を一生恨むでしょうね」
ハッとなりナザリーに振り向く。
――そうか。
「…そうだな。善処しよう。……感謝する、ナザリー。これからも彼女の良き友人でいてくれると有難い」
「言われなくても、その予定です。女子会の約束もしておりますわ。…マリーがそろそろ戻る頃だと思いますので、私は一旦これにて。…師団長、あまり気を落とさず心を強くお持ち下さい。魔術師の心得の初歩ですよ、お忘れなきよう。それでは、失礼します」
ナザリーの背中を見送りから笑いが出る。
「…情けないな」
出会ってから数ヶ月。
この地に調査に来てから期限の二週間が経とうとしていた。
がむしゃらなロゼッタの姿に感化されるのか、ただの人たらしなのか。
最初は警戒していた魔術師団の者たちも、一人また一人とロゼッタに絆されていた。
ナザリーもその中の一人だろう。
彼女を思う人間は俺だけではないのだ。
それは地位も名誉も魔力量も関係ない”ロゼッタ“という一人の女性が築き上げてきたものなのだ。
「お前は本当に…すごいな…すごすぎるよ。みんな待ってるぞ、だから…だから早く目を開けてくれ…ロゼ。お前の笑顔が見たい。ロゼッタの瞳が好きなんだ。また見せてくれ、ロゼッタ……ロゼ……」
握る手に力が入り、すがるように額に当てた。
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