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崩龍のハナシ
穏やかな龍、崩龍。
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その龍、西の森に居る。その地は穏やかな風の吹く居心地のよい所だったが、龍の存在が人々の足を踏みとどまらせた。
世界には五匹の龍がいた。
一、ブレスや魔法よりも脳筋戦法を好む剛龍。
二、魔法に特化し、蛞蝓のように這いずる軟体な魔龍。
三、空を駆け回りブレスに特化した飛竜。
四、人龍とも呼ばれ、魔石を使い、龍となる星龍。
五、『触らぬ龍に祟りなし』の格言の張本龍、崩龍。
その地にいたのは五番目の龍、崩龍だ。崩龍は別名『歩く災害』と呼ばれた。何百年も前に崩龍を怒らせた人物がいた。愚者ケンザブロウ。彼はたった一回、崩龍を怒らせただけで生涯愚者と呼ばれることになった。
そんな龍にも強さの階級が存在し、崩龍は未知と言うことでランク外であった。
何せ、崩龍が生涯に行った攻撃はたった一回。ケンザブロウが宿泊するはずだった街に放った一本のレーザーのようなブレス。そこはその一発だけでクレーターになった。
ケンザブロウはその街に居なかったことで当たらずにすみ、色々な人にその事実を伝えた。恐らくすべてを話さなければ愚者と呼ばれることもなかったのだが、それは別のお話。
いつしか、人々を蔑む三体の龍と、人々に寄り添う人龍、無干渉で傍観する崩龍で別れてしまう。人龍は今日も訪れていた。
「やぁ、今日も来ましたよ!」
『……またか、何度来たって人間に手は貸さんぞ?無論お前にもな。』
近々人間と三龍の戦争が始まるであろうと聞いていた。三龍の方も、崩龍の元へ訪れていたが、
『ワタシの力など不要であろう?人間ごときに遅れをとるのか?』
と言ったら納得して去っていった。……と言うのに。
「むぅ……貴方が他の三匹に手を貸さないか心配なんだよ。」
『おお、心配と言ったら最近胸の辺りが物理的に痛いぞ?』
そうはぐらかすと更に頬を膨らまして怒る。三龍の方が物分かりが良いと言うのに。
「ったく、大丈夫なんですか?」
『なにがだ?』
「その痛みに決まってるじゃないですか!」
やけに心配性。そりゃ人々の味方するわな。そう思い、呆れた崩龍は少しだけ力を貸すことにした。
『………』
「どうしました?何か……」
『サドミックと言う街にドラゴンキラーとなる武器を作る人の鍛冶職人が居る。……予言の結果だ。行ってみるがいい。』
「!サドミックのどこに、」
『自分で調べろ。』
予言。崩龍に使える力の一つ。目の前に居る相手が次どうするべきかを感じとる力。居場所まで教えたら手伝いになるかもしれんが大雑把になら自分達で見つけられたと言ってもバレないだろう。
「ありがとう!やっぱり崩龍はやさしいな!」
『さっさと行け。そこで隠れてるお前らもだ。』
草木の影に身を潜めて何らかの魔法でバレないようにコーティングしても分かる。しかし、それ以上に眠いのにうるさい。と言うことが崩龍は嫌なのだ。
『……安心しろ、龍は負ける。』
予言の通りであればそう出ていた。崩龍はそれだけ告げると猫とように丸くなり、惰眠を貪り始めた。人龍はその姿を見て、
「ありがとう。」
静かにそう言うと、待っていた人たちとともに森を後にした。
世界には五匹の龍がいた。
一、ブレスや魔法よりも脳筋戦法を好む剛龍。
二、魔法に特化し、蛞蝓のように這いずる軟体な魔龍。
三、空を駆け回りブレスに特化した飛竜。
四、人龍とも呼ばれ、魔石を使い、龍となる星龍。
五、『触らぬ龍に祟りなし』の格言の張本龍、崩龍。
その地にいたのは五番目の龍、崩龍だ。崩龍は別名『歩く災害』と呼ばれた。何百年も前に崩龍を怒らせた人物がいた。愚者ケンザブロウ。彼はたった一回、崩龍を怒らせただけで生涯愚者と呼ばれることになった。
そんな龍にも強さの階級が存在し、崩龍は未知と言うことでランク外であった。
何せ、崩龍が生涯に行った攻撃はたった一回。ケンザブロウが宿泊するはずだった街に放った一本のレーザーのようなブレス。そこはその一発だけでクレーターになった。
ケンザブロウはその街に居なかったことで当たらずにすみ、色々な人にその事実を伝えた。恐らくすべてを話さなければ愚者と呼ばれることもなかったのだが、それは別のお話。
いつしか、人々を蔑む三体の龍と、人々に寄り添う人龍、無干渉で傍観する崩龍で別れてしまう。人龍は今日も訪れていた。
「やぁ、今日も来ましたよ!」
『……またか、何度来たって人間に手は貸さんぞ?無論お前にもな。』
近々人間と三龍の戦争が始まるであろうと聞いていた。三龍の方も、崩龍の元へ訪れていたが、
『ワタシの力など不要であろう?人間ごときに遅れをとるのか?』
と言ったら納得して去っていった。……と言うのに。
「むぅ……貴方が他の三匹に手を貸さないか心配なんだよ。」
『おお、心配と言ったら最近胸の辺りが物理的に痛いぞ?』
そうはぐらかすと更に頬を膨らまして怒る。三龍の方が物分かりが良いと言うのに。
「ったく、大丈夫なんですか?」
『なにがだ?』
「その痛みに決まってるじゃないですか!」
やけに心配性。そりゃ人々の味方するわな。そう思い、呆れた崩龍は少しだけ力を貸すことにした。
『………』
「どうしました?何か……」
『サドミックと言う街にドラゴンキラーとなる武器を作る人の鍛冶職人が居る。……予言の結果だ。行ってみるがいい。』
「!サドミックのどこに、」
『自分で調べろ。』
予言。崩龍に使える力の一つ。目の前に居る相手が次どうするべきかを感じとる力。居場所まで教えたら手伝いになるかもしれんが大雑把になら自分達で見つけられたと言ってもバレないだろう。
「ありがとう!やっぱり崩龍はやさしいな!」
『さっさと行け。そこで隠れてるお前らもだ。』
草木の影に身を潜めて何らかの魔法でバレないようにコーティングしても分かる。しかし、それ以上に眠いのにうるさい。と言うことが崩龍は嫌なのだ。
『……安心しろ、龍は負ける。』
予言の通りであればそう出ていた。崩龍はそれだけ告げると猫とように丸くなり、惰眠を貪り始めた。人龍はその姿を見て、
「ありがとう。」
静かにそう言うと、待っていた人たちとともに森を後にした。
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