異世界転生っていうか転生をしたら幸せが待っていた話

ぽいぽい

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友達ができたようです

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『さっき!!!リーマン風の二人が、部屋に入るなり待ちきれないって感じでいきなりイチャイチャ!その最中に『仕事中なんだから』『後輩の躾も俺の仕事』とか言い出すから、もう萌えて萌えて!!!』
『何それ!ヤバい!ちなみにこっちは、中年男性と大学生っぽい人だったよ!パパ活とか訳ありかなと思ったんだけど、なんと!真剣交際っぽくて!年の差萌えで悶えた~~~~!!!!』

あの日以来、如月岬には友達ができた。隣の部屋の壁に設置された壁掛けライトに転生した元OL、神崎緑(25)だ。腐女子という共通点がきっかけで一気に仲良くなった。緑は、作品を読んだり愛でたりするだけでなく、創作活動もしていたとのことだ。それを聞いて岬は『もっと早く知り合っていれば~~!!』と悔しそうな声を上げた。それを聞いて、緑は『R18だから、今は無理だね』と笑った。それに対し、岬は『トラックにはねられたのは18歳になる直前だったし、あれから数週間経ってるし、私は実質18歳!』と抵抗する。
そんなやりとりをしながらも、2人は時間を見て話し合う仲となった。

ちなみに、緑は仕事帰りにトラックにはねられたらしい。異世界転生は考えなかったけれど、生まれ変わったら『ホモカップルが暮らす部屋の壁になりてぇなぁ』とか考えていたらしい。
『ここに転生した時は、神様も粋なことするな!って思ったよ。マジで』
『ああ!!!私も壁になりたいって思ったことがある!!!だから今こうしてここにいるのかも!!!』
転生してから、暫く壁として過ごしてきた岬にとっては、こんな他愛のない話すら楽しい時間だった。


そんな友達がいる生活は楽しいが溢れていた。
むさくるしい男性のカップルなど、岬から見てあまり興味がない組み合わせが部屋に入ってきた時は、緑との雑談で時間を潰せる。何気ない話をすることもできれば、緑側の部屋の様子を実況して貰うこともできた。
緑は創作活動をしていたというだけあって、伝えることが上手い。実況さながらに、部屋の様子を教えてくれる。直接見ている訳ではないし、部屋の囁き声が聞こえる訳でもない。それでも、悶える程萌えることも多かった。
さらに、入ってきた時点では興味を感じないカップルであっても、緑から萌え要素を説明されると、目の前のカップルがとても魅力的に感じ、新たなステージに進めることもあった。この現象は、岬側だけに起きたものではない。岬の説明によって、緑が新たな萌えに目覚めることもあるなど、2人は充実した日々を過ごしていた。


難があるとすれば、映像や活字がない世界のため、お互いが話す言葉と妄想が全てということだ。たまに、転生前の生活が恋しくなることもあったが、途切れることのない供給に悶える2人だった。


そんな時間に、変化が訪れたのは転生から1ヶ月程経過した頃だった。
2人は、相変わらずそれぞれの部屋の光景や、相手から伝えられる情報に萌える日々を送っていた。この頃になると、リピーターの存在にも気づき、育まれていく愛やすれ違いなどにも萌えるようになっていた。岬は『ラブホテルは人生だ』と悟りを見せ始めていた。
そんな時、第3の声が聞こえた。

声が聞こえたのは、初々しい大学生カップルがベッドで致していた時だ。
甘い言葉を囁く声、それを笑って受け止めながらも、時々漏れる甘い声に交じって女性らしき声が聞こえてきた。
2人の声とは全く違うだけでなく、その声が発したことは絶叫に近かった。


『やばばばばばばばば!!!!か、神様ありがとう!!!!!!!!』

最初は、どこから声が聞こえているのか分からなかった。岬は緑に声が聞こえるか尋ねたが、聞こえないという返事が返ってきた。そのため、声の主は岬のいる部屋にいると推測をした。
『どこにいるんだろう?向こうの壁?鏡?でも声の感じからするともっと近いような?手前の壁?照明?床?』
必死で目をこらすが、分からない。転生先が岬や緑と同じ無機質な物体であれば、見て分かる筈がない。
そんな間にも、ベッドでの行為は進んでいく。いつの間にか全裸になった男性は、足を大きく開かされ、挿入されるのを待つ状態だ。「俺…、初めてだから…」と、恥ずかしそうに言う声が聞こえ、岬は第3の声探しよりも、ベッドの上に意識を集中する。もしこの場に他の転生者がいたとしても、今一番大切なことはDDの処女喪失だ!壁の向こうからも『は、ハツモノ大学生!いいなぁ!!!今だけそっちの部屋に行きたい!!!』という声が聞こえる。さっき岬が『処女!!!』と言ったのが聞こえたのだろう。
緊張しながらも、相手のモノを受け入れようと頑張る受けは、なんとも健気だ。そんな様子を見ながら岬は『頑張れ!応援してる!!!』と心の中でエールを送る。
最初は上手く入らず、お互い困った顔をしていたが、お互いの緊張を和らげるようにキスをしてもう一度挿入に挑むと「あ…」という声が漏れ聞こえてきた。受けがきつそうな顔をしながら、攻めの体にしがみついている。
『…ああああ~~~!!!健気で萌える!!!!』
という心の声がダダ洩れになりそうな瞬間だった。

『こんなに可愛い受けの処女喪失を、こんな特等席で見れるなんて……!!!!』

またあの声が響く。
『特等席?』
その言葉が気になり、岬は再び部屋を見渡す。どこにいるのだろう?
『ああっ!!!2人の重みも素敵!!!陰で2人を支える私は、助演シーツ賞を貰ってもいいくらいだわ!!!!』
言われて岬はベッドに目線を移す。

『…シーツ?』

どうやら第3の声は、部屋の真ん中にあるベッドのシーツから発せられているようだった。
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