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アイドル転向!?

45話 まとめサイトの巡回はほどほどに!②

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『ようやくデビューした我らが麻衣タン』

 ……いきなりタイトルからフルスロットルだった。

「オメ!」「オメ!」「オメ!「嫁!」
「デビュー前から注視していた我々こそ圧倒的な先見の明。青田買い。大勝利。昨日は美酒に酔いしれたものよ」
「どこが青田買いだよ。24なんていうBBAアイドルをマジでデビューさせてどうすんだよ?」
「マジでこういう話題作りだけのやり方、ホント止めた方が良いと思う。滝本篤って昔からそういう所あるよな?」
「な?しかめっ面決め込んで如何にも深く考えました感を演出してるけどさ、結局長期的な戦略なんてなくて行き当たりばったりなのよ、アイツは。今だけ、金だけ、自分だけ……行き過ぎた資本主義である新自由主義の悪い部分の象徴だよ、あの豚は!これからの時代SDGsだろ?持続可能なアイドル活動こそ一番に意識せねばならんのに。小田嶋麻衣とかいう彼女自身が一番の被害者だよ」
「え、待って。……お前らって昨日のライブ観てないの?どう考えても観てないよな?観た上でそんなクソみたいな意見言えるわけないもんな?どう考えても昨日の麻衣タンはビッカビカに輝いてたろ?」
「まあダンスとかは急造の割にはしっかりしてたんじゃない?表情もキラキラしてたっていうか、WISHのメンバーとして違和感なかったっていうか、まあいきなりセンターで出てくるだけのことはあるっていうか」
「はい、見事沼りました!一緒に麻衣タン沼に沈んで溺死しような、同志よ!」
「いやでもさ、彼女のパフォーマンスとかルックスとかがそれなりに良いとしてもさ……桜木舞奈の言う通り今まで地道に頑張ってきた他のメンバーはどうなるのって話でしょ?……そもそも彼女は24でしょ?もっと若い世代に世代交代していかなきゃいけないのに運営何逆行してんの?って話でしょ」
「黙れ。アイドルは10代のものなんていう価値観こそ時代遅れだな」
「舞奈と言えばさ……希様が話ししてる時によく割り込んでいったよね?」
「な?ああいう出しゃばりなところホント嫌い」
「いや、そういう意味じゃなくてさ……明らかに嫉妬の炎がメラメラしてなかったか?」
「は?」「え?」「わかる!俺も思った!」
「ごめん、マジでどういうこと?」
「お前気付かなかったのか?希様がマネージャーだった彼女とのエピソードを語っている最中に、自分の方がお世話になりました!仲良いです!ってアピールをしたんだぞ?しかもあの顔を見てみろよ?明らかにをしてやがったろ?」
「な!」「は?」「待て待て待て」
「おい貴様!エロい妄想は止めておけと言っただろうが!」
「あの顔の背景に咲き乱れる白い百合の花が見えないなら……お前らオタクっていうか、人間続ける意味ないよ?」
「おい、ふざけんな!俺の舞奈がマネージャーBBAに篭絡されたってことか!」
「ああ、身も心もな」
「いや嫉妬ってことは……まさか希様までもが!?」
「その通りだ。嫉妬の炎が燃え上がる理由は恋の他に存在しない……そして彼女はあの2人だけでなく、多くのメンバーを担当していた。……あとは言わなくても分かるよな?」
「おい!」「マジで裏山!「裏山!」
「……WISHのメンバーに次々と手を出すなんて、前世でどんな徳を積めばなれるんだよ!しかも本人も美女って!」
「え……お前、女の子になりたいの?ウケる」
「は、何言ってんだ?冴えないおっさんより美人の女の子の存在価値の方が一億倍くらい高いんだから当たり前だろ?」
「な」「たりまえ」「常識」
「マジか……認識を改めるわ」
「しかし『恋愛禁止』という鉄の掟がありながら……良いのか?」
「メンバー内恋愛は恐らく禁止事項にないのだろう。想定になくて」
「<悲報>WISH、清純派を装いながらメンバー内恋愛でドロドロだった!」



 ……怖、怖、怖!!!
 だからまとめサイトなんて見るなって散々言ったじゃん!私のバカ!
 ……マジで何なのこの人たちは?怖すぎるんだけど!
 百合なんてあるわけないじゃん!馬鹿じゃないの?マジで馬鹿なんじゃないの!女の子同士で恋愛なんてあるわけないじゃん!
 そりゃあ……希さんとも軽くキスはしたし、舞奈にもチュッてされたけど……あんなのは本気のキスとは全然言わないしね、うん。
 ……あれ?そう言えば俺、元は男だったな。
 転生してきた当初は女の子との接触に物凄くドキドキしていたけれど、いつの間にか慣れていったな。……やっぱり心も身体に影響されるのかもしれない。というかそれ以外考えられない。



 しかし、それはさておき……私のオタクは特にヤバいんじゃないか?ヤバすぎるんじゃないだろうか?もちろん悪い方の意味で。
 もしかして、いつか彼らと面と向かって握手をしなければいけないのだろうか?っていうかもうコンサートで観られているし、それ以前にマネージャーとしての姿も見られているってことか……
 なんか、アレだな……本当に見るんじゃなかった、まとめサイト。とほほ。





「麻衣、ずいぶん長かったけど大丈夫?顔色も悪いし、今日は休んでも良かったのよ?」

 気分が悪くなったところを社長に見つかってしまった。

「あ、いえ……ちょっと興奮して寝付けなかったというか、全然元気ですのでお気遣いなく……」

 むしろ今1人になったら、この気分をずっと引きずってしまいそうな気がした。なんならまとめサイトをまた見てしまうかもしれない。事務所に残ってデスクワークでもしている方が絶対マシだった。

 プルルルル、プルルルル…………
 事務所の電話が鳴った。

「はい、お電話ありがとうございます。コスモフラワーエンターテインメントです」

 反射的に私は電話を取っていた。
 私も社会人も3年目。電話対応も慣れたものだ。

「もしもし、私『月刊ポム』編集部の者ですが」

「はい、いつもお世話になっております!」

『月刊ポム』とは老舗のアイドル雑誌だ。グラビアも多いがアイドルのインタビュー記事も多く、コアなアイドルファンからは今も根強い支持を受けている雑誌だ。ウチのメンバーもほぼ毎月、誰かしらが掲載させてもらっている。

「あの、昨日のコンサートを拝見いたしましてですね。小田嶋麻衣さんという方は本当に実在される方なんですよね?」

「はい?……小田嶋は私ですが……」

「あ、ご本人でいらっしゃいましたか!ということは本当にマネージャー業務をなさっているんですね?」

「え?……ええ」

「小田嶋さんに是非とも取材をさせて頂きたいと思いましてですね、近々ご都合の方は如何でしょうか?」

「あ……はい。取材ですね。毎度ありがとうございます。それでしたら………………」

 今までメンバーのスケジュール調整は散々行ってきたのだが、まさか自分で自分にそれをすることになるとは思ってもみなかった。



(……明日はアイドルとして雑誌の取材を受ける?私が?冗談だよね?)

 スケジュール調整をして、ため息を吐きながら電話を切った。
 ふと周りを見渡すと、何故か社員皆が電話対応をしていた。そう言えば私が電話をしている最中に何度も電話が鳴っていたような気がする。

「小田嶋麻衣ですか?はい、間違いなく弊社に所属しております」
「はい、たしかに現在もマネージャー業務を行っておりますが……」
「いえ、新たにオーディションで入ったメンバーではなくてですね……」



 ……なんだかとんでもない事態になりそうな予感がした。


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