38 / 85
アイドル転向!?
38話 まとめサイトの巡回はほどほどに!
しおりを挟む
「麻衣?……この記事を見て欲しいんだけどね……」
妙におずおずとして態度で社長がスマホをこちらに差し出してきた。
「何ですか?……3ちゃんねるのまとめ記事じゃないですか、もう……」
匿名掲示板のまとめサイトの記事だった。
もちろんWISHは日本で最も人気のあるアイドルグループで、規模も大きくメンバーも多い。
情報量が圧倒的に多いので、オタクたちもこうした掲示板でも無限に語り合っているようだ。
深読みを生き甲斐とするオタクたちにとっては、語り合う情報が幾らでも手に入る素晴らしい時代なのだろうが……匿名掲示板などというものには酷い罵詈雑言が書き込まれていることもあるし、何より発言者には何の根拠も責任もなく好き勝手言っているだけだ。純粋に悪意でもって発言している者もいるだろう。
メンバーや、ましてや社長のような運営の中枢に立つ人間がこうした情報に触れることはあまり褒められたものではないだろう。
私はため息をつきながらも、仕方なく社長が差し出したスマホに目を向けた。
そしてスレッドのタイトルを見た瞬間、息を吞んだ。
『小田嶋麻衣とかいうマネージャーが一番ビジュアル強いのおかしくね?』
「……え、え?は、y、j、w1p……」
まさか自分のことが取り上げられているとは思わず、その衝撃に呼吸は詰まり、動悸と眩暈が押し寄せてきた。
「ちょっと、麻衣!大丈夫?……一回深呼吸して!」
社長が慌てて背中をさすりに来た。
(え?ウソだろ?……なんでWISHのスレでメンバーのことじゃなくて、俺のことが取り上げられてるんだよ!っていうか本当にこれ俺のことか?……うん、どう見ても『小田嶋麻衣』って書いてあるな)
「……はい、すいません。大丈夫です……」
意識的に呼吸をして何とか正気を保つ。
「ごめんね、それはショックよね……でも、アイドルよりも美人なんて言われるの……すごくない? 」
社長が心配するフリをして何か言いたげなのを察し、流石にそれに対して返事をする気にはなれず、黙って差し出されたスマホに目を落とす。
そこには『マネージャー小田嶋麻衣』について様々に語られていた。
「黒木希様の『密着大陸』にこっそり出演して、ちゃっかり地上波デビューを飾る我らが麻衣タン!」
「見てた!地上波に出られないWISHのメンバーも全然多いのに、黒木希というエースのバーターで出て、いつの間にか本家を食っちゃってたやつね」
「地味な就活生的な服装でも隠し切れない美人アイドルオーラ。不人気メンにも分けてやれよ。つーか不人気メンはどう思ってるんだろうな?『国民的アイドルです』って自分で名乗っておいて、マネージャーより明らかにルックス劣ってるのって死にたくならないのかな?」
「そういう不人気メンに引導を渡す意味もあるのかもな」
「はあ……雑魚メン処刑人麻衣タン……俺も首刈られたいよぉ」
(……怖!何コレ?これが3ちゃんねる……ていうかそうか、希の『密着大陸』に私も映ってたってことか。いやでもそこから名前まで割り出すなんて、オタクの諜報能力怖すぎるよぉ……)
私の知らないところで、私の存在について、あまりにも好き勝手悪意混じりに語られることは、控えめに言って恐怖だった。
だけどそれでも自分について語られていれることだと知ると、画面のスクロールを止めることは出来なかった。
「いやでもマジで冷静に聞きたいけど、何でマネージャーなんてやってるんだろうな?」
「そりゃあメンバーで入る予定だったけど、彼氏がいるのがバレて仕方なく社員として入れてもらったんだろ?知らんけど」
「ってことは、毎日彼氏とラブラブか。……くぅ、たまらん!」
「おい、やめろ!俺の麻衣タンをHな想像で汚すな!」
「おいおい。Hな想像?まったく、ここには童貞しかいないのかよ。……ふぅ」
(社長!この辺りのクソレスも読んだ上でこれを私に見せているのですか!?……24歳にもなったんだから多少は下ネタにも耐性を付けなきゃってこと?)
「やめろ。くだらん」
「いやでもマジで、意味わからんくね?『アイドル大好きです!』っつうならあのルックスならどこのグループでも引く手数多でしょ?逆に人目に付くのが嫌ならこんな仕事じゃなくて他に幾らでもあるだろ? 」
「社長の愛人枠だよ。よっぽど金に困ってるんじゃね?……はぁ、麻衣タン養ってあげたいよぉ、俺なら幸せにしてあげられるのになぁ」
「黙れ。時給350円のバイトのくせに」
「いや、あの、俺日本に住んでるよ?最低賃金は?」
「(株)コスモフラワーエンターテインメントはアイドルグループWISHのマネジメントを主な業務として行っている会社である。社長は高木真由子」
「突然どうした?明らかにコピペしてきたような文章だな」
「麻衣タンの会社の社長は女性だよ。社長の愛人枠じゃないね」
「あちゃ~」「じゃあ余計に何でマネージャーやってるんだ?」
「バカかお前ら!これだけLGBTQと声高に叫ばれる時代に。時代錯誤も甚だしいぞ!女同士でも愛人である可能性はあるだろうが!!!」
「な」「は」「え、マジかよ!」「天才キタ!」
「何だよ、お前ら百合もイケる口かよ、まったく……ふう」
「待て待て、妄想でお楽しみのところを邪魔して悪いかもしれんが、社長っつったら結構な年齢だろ?」
「たしかに……ちょっと萎えたわ」
「バカ、逆に想像してみろ。麻衣タンのあのプリティフェイスが経験豊富なエロBBAの培ってきたテクで快楽に歪む姿を……結構イケると思わないか?」
「え、マジかよ!」「たしかに!……ちょっと復活してきたわ!」
「変わり身早いな、おい!」
「いやむしろ逆の逆に考えてみろよ。麻衣タンが30歳を超えている可能性はないのか?」
「え、マジかよ!」
「麻衣タンBBA説の提唱者」
「え、あの顔だったら30超えてても全然ありじゃね?むしろあれで優しくリードしてくれるとか考えたら……至高じゃね?」
(コラ!全然知りもしないのに失礼なこと言うな!実年齢的にはまだ24歳だわ!)
心の中でツッコミを入れながらも、このまま下らないレスが延々と続くようなら流石に社長にキレようかと思っていたが、話は本筋(?)に戻っていった。
「もう良いよ、童貞ども。いい加減にしろ。エロネタは別で探せ。なぜ国民的アイドルWISHのメンバーよりも顔面が強い人間がマネージャーをやっているのか?それを考えるのが主旨だろ」
「そんなもん本人しか分かるわけないだろ?それぞれの事情があるんだろうし、オタク同士がゴチャゴチャ語ったって何の意味もないだろ」
「出た!このスレの存在意義を否定するやつ!」「それを言っちゃあ、おしまいよ……」
「良いだろ、好きに妄想を語る分には」
「だから社長の百合愛人枠なんだって!」
「分かった!枕営業の人身御供用としてだよ。芸能界だからWISHのメンバーにも枕営業の誘いは結構来るんだろ?知らんけど。そういったところにメンバーの代わりに行って……それでWISHのお仕事を獲得してくるんだよ」
「え、マジかよ!」「まさかのWISHの人気は麻衣タンのご奉仕によって成り立っている説」
「だからエロネタはもういいんだって……」
「え、でもそんなお飾りのマネージャーじゃなくね?普通にテキパキ動いてたし、何ならむしろちょっと怖かったくらいだぜ?」
「ん?」「は?」「え、マジかよ!」
「……待て待て、お前は生の麻衣タンを見たことがある。そう主張しているのか?」
「え、普通にあるけど。生の姿を見た上でこれだけ盛り上がってるんじゃないのか、このスレは?」
「マジか!」「裏山!」
「いつだ!どこでだ!どんな手を使った!」
「いや、どんな手も何も、普通に握手会の手荷物の受け渡しとかしてたし、握手券の回収もしてたぜ?最近は見てないけど何回か見かけたよ。たしか桜木舞奈のレーンだったと思う」
「あー、希パイセンの次は、たしか舞奈ちゃんに付いてたって話は聞いたことあるね」
「ぷ。桜木舞奈。永遠の次期エース」
「黙れ。お前の目は節穴か?どう見たって次に来るのは舞奈だろ!」
「え、待って。それって本当に麻衣タンだったの?ソースは?」
「ソースも何も普通に舞奈本人が言ってたよ。その頃は舞奈レーンも割と過疎っててさ、ループしてたら話題もなくなってきたから『あの人すごい美人だよね、社員さんなの?』って聞いたんだよ。そしたら『ね。そうでしょ!小田嶋麻衣さん。私のマネージャーさんなんだよ。すっごく良くしてくれてるんだよ!』って誇らし気に答えてくれたよ」
「ほう」「少しは信用できそうだな」
「いや……ダメでしょ舞奈ちゃん。個人情報漏らしちゃ」
「だが、このスレがこれだけ充実してきたのはその情報があったからではないのか?」
(舞奈~!!!勘弁してよ、もう。……ここから私の情報が漏れたってこと?)
その後も延々と続いていたが、ほとんどバカバカしい妄想話だった。
だがまとめサイトの末尾は次のように結ばれていた。
「冗談抜きに麻衣タンの握手レーン作ったら結構盛況なのでは?」
「たしかに。マネージャーの苦労話とか聞いてみたいな」
「メンバーの裏側の話とかな」
「まあ難しければ、そういうの抜きでも一回くらい普通に握手してみたいかも」
顔を上げると社長と目が合った。
妙にニコニコした作り笑顔は相変わらずだった。
「社長……あの、これ本当に全部読んだんですか?なんか結構下ネタもあったし、ヒドイことも言われてたし、何なら社長の悪口っぽいのもあったんですけど……」
「あ、え!そうなの?ちょっと忙しくて最初と最後くらいしかちゃんとは読んでないかも……そもそも私、長い文章読むのが苦手なのよね……あんまり長いと頭痛で頭が痛くなってくるっていうか……」
その後もごにょごにょ言っていたが、まあ要はちゃんと読んではいなかったのは間違いない。
それでもこれを読ませたということは、その中に自分の言いたいことが含まれていたということなのだろう。
社長はゴホンとわざとらしく咳ばらいを一つすると、私をビシッと指差して告げた。
「麻衣!これは業務命令よ!あなたはWISHのメンバーとして、ステージに立ちなさい!」
芝居がかったその仕草は妙に様になっていた。
妙におずおずとして態度で社長がスマホをこちらに差し出してきた。
「何ですか?……3ちゃんねるのまとめ記事じゃないですか、もう……」
匿名掲示板のまとめサイトの記事だった。
もちろんWISHは日本で最も人気のあるアイドルグループで、規模も大きくメンバーも多い。
情報量が圧倒的に多いので、オタクたちもこうした掲示板でも無限に語り合っているようだ。
深読みを生き甲斐とするオタクたちにとっては、語り合う情報が幾らでも手に入る素晴らしい時代なのだろうが……匿名掲示板などというものには酷い罵詈雑言が書き込まれていることもあるし、何より発言者には何の根拠も責任もなく好き勝手言っているだけだ。純粋に悪意でもって発言している者もいるだろう。
メンバーや、ましてや社長のような運営の中枢に立つ人間がこうした情報に触れることはあまり褒められたものではないだろう。
私はため息をつきながらも、仕方なく社長が差し出したスマホに目を向けた。
そしてスレッドのタイトルを見た瞬間、息を吞んだ。
『小田嶋麻衣とかいうマネージャーが一番ビジュアル強いのおかしくね?』
「……え、え?は、y、j、w1p……」
まさか自分のことが取り上げられているとは思わず、その衝撃に呼吸は詰まり、動悸と眩暈が押し寄せてきた。
「ちょっと、麻衣!大丈夫?……一回深呼吸して!」
社長が慌てて背中をさすりに来た。
(え?ウソだろ?……なんでWISHのスレでメンバーのことじゃなくて、俺のことが取り上げられてるんだよ!っていうか本当にこれ俺のことか?……うん、どう見ても『小田嶋麻衣』って書いてあるな)
「……はい、すいません。大丈夫です……」
意識的に呼吸をして何とか正気を保つ。
「ごめんね、それはショックよね……でも、アイドルよりも美人なんて言われるの……すごくない? 」
社長が心配するフリをして何か言いたげなのを察し、流石にそれに対して返事をする気にはなれず、黙って差し出されたスマホに目を落とす。
そこには『マネージャー小田嶋麻衣』について様々に語られていた。
「黒木希様の『密着大陸』にこっそり出演して、ちゃっかり地上波デビューを飾る我らが麻衣タン!」
「見てた!地上波に出られないWISHのメンバーも全然多いのに、黒木希というエースのバーターで出て、いつの間にか本家を食っちゃってたやつね」
「地味な就活生的な服装でも隠し切れない美人アイドルオーラ。不人気メンにも分けてやれよ。つーか不人気メンはどう思ってるんだろうな?『国民的アイドルです』って自分で名乗っておいて、マネージャーより明らかにルックス劣ってるのって死にたくならないのかな?」
「そういう不人気メンに引導を渡す意味もあるのかもな」
「はあ……雑魚メン処刑人麻衣タン……俺も首刈られたいよぉ」
(……怖!何コレ?これが3ちゃんねる……ていうかそうか、希の『密着大陸』に私も映ってたってことか。いやでもそこから名前まで割り出すなんて、オタクの諜報能力怖すぎるよぉ……)
私の知らないところで、私の存在について、あまりにも好き勝手悪意混じりに語られることは、控えめに言って恐怖だった。
だけどそれでも自分について語られていれることだと知ると、画面のスクロールを止めることは出来なかった。
「いやでもマジで冷静に聞きたいけど、何でマネージャーなんてやってるんだろうな?」
「そりゃあメンバーで入る予定だったけど、彼氏がいるのがバレて仕方なく社員として入れてもらったんだろ?知らんけど」
「ってことは、毎日彼氏とラブラブか。……くぅ、たまらん!」
「おい、やめろ!俺の麻衣タンをHな想像で汚すな!」
「おいおい。Hな想像?まったく、ここには童貞しかいないのかよ。……ふぅ」
(社長!この辺りのクソレスも読んだ上でこれを私に見せているのですか!?……24歳にもなったんだから多少は下ネタにも耐性を付けなきゃってこと?)
「やめろ。くだらん」
「いやでもマジで、意味わからんくね?『アイドル大好きです!』っつうならあのルックスならどこのグループでも引く手数多でしょ?逆に人目に付くのが嫌ならこんな仕事じゃなくて他に幾らでもあるだろ? 」
「社長の愛人枠だよ。よっぽど金に困ってるんじゃね?……はぁ、麻衣タン養ってあげたいよぉ、俺なら幸せにしてあげられるのになぁ」
「黙れ。時給350円のバイトのくせに」
「いや、あの、俺日本に住んでるよ?最低賃金は?」
「(株)コスモフラワーエンターテインメントはアイドルグループWISHのマネジメントを主な業務として行っている会社である。社長は高木真由子」
「突然どうした?明らかにコピペしてきたような文章だな」
「麻衣タンの会社の社長は女性だよ。社長の愛人枠じゃないね」
「あちゃ~」「じゃあ余計に何でマネージャーやってるんだ?」
「バカかお前ら!これだけLGBTQと声高に叫ばれる時代に。時代錯誤も甚だしいぞ!女同士でも愛人である可能性はあるだろうが!!!」
「な」「は」「え、マジかよ!」「天才キタ!」
「何だよ、お前ら百合もイケる口かよ、まったく……ふう」
「待て待て、妄想でお楽しみのところを邪魔して悪いかもしれんが、社長っつったら結構な年齢だろ?」
「たしかに……ちょっと萎えたわ」
「バカ、逆に想像してみろ。麻衣タンのあのプリティフェイスが経験豊富なエロBBAの培ってきたテクで快楽に歪む姿を……結構イケると思わないか?」
「え、マジかよ!」「たしかに!……ちょっと復活してきたわ!」
「変わり身早いな、おい!」
「いやむしろ逆の逆に考えてみろよ。麻衣タンが30歳を超えている可能性はないのか?」
「え、マジかよ!」
「麻衣タンBBA説の提唱者」
「え、あの顔だったら30超えてても全然ありじゃね?むしろあれで優しくリードしてくれるとか考えたら……至高じゃね?」
(コラ!全然知りもしないのに失礼なこと言うな!実年齢的にはまだ24歳だわ!)
心の中でツッコミを入れながらも、このまま下らないレスが延々と続くようなら流石に社長にキレようかと思っていたが、話は本筋(?)に戻っていった。
「もう良いよ、童貞ども。いい加減にしろ。エロネタは別で探せ。なぜ国民的アイドルWISHのメンバーよりも顔面が強い人間がマネージャーをやっているのか?それを考えるのが主旨だろ」
「そんなもん本人しか分かるわけないだろ?それぞれの事情があるんだろうし、オタク同士がゴチャゴチャ語ったって何の意味もないだろ」
「出た!このスレの存在意義を否定するやつ!」「それを言っちゃあ、おしまいよ……」
「良いだろ、好きに妄想を語る分には」
「だから社長の百合愛人枠なんだって!」
「分かった!枕営業の人身御供用としてだよ。芸能界だからWISHのメンバーにも枕営業の誘いは結構来るんだろ?知らんけど。そういったところにメンバーの代わりに行って……それでWISHのお仕事を獲得してくるんだよ」
「え、マジかよ!」「まさかのWISHの人気は麻衣タンのご奉仕によって成り立っている説」
「だからエロネタはもういいんだって……」
「え、でもそんなお飾りのマネージャーじゃなくね?普通にテキパキ動いてたし、何ならむしろちょっと怖かったくらいだぜ?」
「ん?」「は?」「え、マジかよ!」
「……待て待て、お前は生の麻衣タンを見たことがある。そう主張しているのか?」
「え、普通にあるけど。生の姿を見た上でこれだけ盛り上がってるんじゃないのか、このスレは?」
「マジか!」「裏山!」
「いつだ!どこでだ!どんな手を使った!」
「いや、どんな手も何も、普通に握手会の手荷物の受け渡しとかしてたし、握手券の回収もしてたぜ?最近は見てないけど何回か見かけたよ。たしか桜木舞奈のレーンだったと思う」
「あー、希パイセンの次は、たしか舞奈ちゃんに付いてたって話は聞いたことあるね」
「ぷ。桜木舞奈。永遠の次期エース」
「黙れ。お前の目は節穴か?どう見たって次に来るのは舞奈だろ!」
「え、待って。それって本当に麻衣タンだったの?ソースは?」
「ソースも何も普通に舞奈本人が言ってたよ。その頃は舞奈レーンも割と過疎っててさ、ループしてたら話題もなくなってきたから『あの人すごい美人だよね、社員さんなの?』って聞いたんだよ。そしたら『ね。そうでしょ!小田嶋麻衣さん。私のマネージャーさんなんだよ。すっごく良くしてくれてるんだよ!』って誇らし気に答えてくれたよ」
「ほう」「少しは信用できそうだな」
「いや……ダメでしょ舞奈ちゃん。個人情報漏らしちゃ」
「だが、このスレがこれだけ充実してきたのはその情報があったからではないのか?」
(舞奈~!!!勘弁してよ、もう。……ここから私の情報が漏れたってこと?)
その後も延々と続いていたが、ほとんどバカバカしい妄想話だった。
だがまとめサイトの末尾は次のように結ばれていた。
「冗談抜きに麻衣タンの握手レーン作ったら結構盛況なのでは?」
「たしかに。マネージャーの苦労話とか聞いてみたいな」
「メンバーの裏側の話とかな」
「まあ難しければ、そういうの抜きでも一回くらい普通に握手してみたいかも」
顔を上げると社長と目が合った。
妙にニコニコした作り笑顔は相変わらずだった。
「社長……あの、これ本当に全部読んだんですか?なんか結構下ネタもあったし、ヒドイことも言われてたし、何なら社長の悪口っぽいのもあったんですけど……」
「あ、え!そうなの?ちょっと忙しくて最初と最後くらいしかちゃんとは読んでないかも……そもそも私、長い文章読むのが苦手なのよね……あんまり長いと頭痛で頭が痛くなってくるっていうか……」
その後もごにょごにょ言っていたが、まあ要はちゃんと読んではいなかったのは間違いない。
それでもこれを読ませたということは、その中に自分の言いたいことが含まれていたということなのだろう。
社長はゴホンとわざとらしく咳ばらいを一つすると、私をビシッと指差して告げた。
「麻衣!これは業務命令よ!あなたはWISHのメンバーとして、ステージに立ちなさい!」
芝居がかったその仕草は妙に様になっていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~
繭
ファンタジー
高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。
見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に
え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。
確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!?
ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・
気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。
誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!?
女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話
保険でR15
タイトル変更の可能性あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる