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41話

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(ここだ!)

 右サイドのDFを担っていた俺は、状況を打開するためにドリブルで相手陣地への侵入を図った。
 こちらのチームの攻撃は逃げのパスを繰り返すばかりで、ドリブルを試みる場面は全くなかった。当然2年チームもそのリズムに慣れ切っていた。ボールを持っている人間に対しても、パスが出てくることが前提の守備になっていた。
 ハーフウェイラインよりも若干自陣右サイドでボールを受けた俺に対する敵の守備も、パスコースを切るばかりで直接のプレッシャーは掛かっていない状況だった。しかも後方の守備陣も自陣に張り付いているようなポジショニングで、俺の前にはぽっかりと大きなスペースが空いていた。

 ここしかなかった。勝負に出るには何かを変えなければならないのだ。
 俺が右サイドをドリブルで上がれば、敵も必ず誰かがチェックに来なければならない。そうすればこちらのチームの誰かが必ずフリーになるということだ。安東も高島も当然そのタイミングを狙っているはずだ。そこにパスを出せば必ず決定的なチャンスになる。もし敵がマークを中々捨てずチェックが遅くなれば、俺がそのままシュートを狙えば良いだけだ。
 もう一つボールをつつき相手の反応を窺う。……まだチェックには出て来ない。
 もう一つ。……敵DFは俺のことをしっかりと見てはいるが、誰も出ては来ない。自分のマークを捨てることへのリスクを考えてもいるだろうが、先輩たちはこの2週間ロクに練習もしていないのだ。自分ではない誰かが行くだろう……という無責任さが根底にあるのだろう。そういう人たちだ。
 もう一つドリブルを進める。……まだチェックは来ない。このままシュートを打とう。俺は得意の右足を振りかぶりシュートモーションに入った。

「吉川、後ろ来てる!」

 声を掛けたのは逆サイドにいた竹下だっただろうか。

「……バーカ、ザコがあんま調子乗るんじゃねえぞ」

 後ろから戻ってきたのは中野先輩だった。

(しまった!)
 シュートモーションに入っていた俺に対して中野先輩は、突いて俺からボールを外すのではなく、後ろから足裏でそのままボールを掠め取って反転した。こんな奪い方が出来るということは相当余裕があったということだ。本来ならもう一つ前あたりでボールを奪うことも出来たのだろう。だが、自陣の方にボールを戻して奪うような守備の仕方では手ぬるい……ということで一気にカウンターを仕掛けるためのボールの奪い方を中野先輩は選んだのだ。
 そしてこんなボールの奪われ方をするということは……相当舐められていたということだ。もし俺がもう一つ前のタイミングでパスやシュートを選択していたら、中野先輩のディフェンスはボールを奪える時に奪わなかった……ということになる。セオリーとして守備はなるべくリスクを負うべきではない。ピンチの芽は一刻も早く潰しておくべきなのだ。


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