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35話

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 それからの2週間、俺たちは練習に集中した。
 入学してから今までの漫然とボールを蹴っていた3か月間よりも、この2週間の方が実力は伸びたのではないか、と俺は感じていた。もちろん他のみんながどう感じていたのかは定かではないが。
 ロクな指導者もおらず人数も揃っていないため、限られた練習しか行えない状況ではあったが、それでも先輩たちに勝ちたいというモチベーションが俺たちを向上させた。

 太一も当然毎日練習に参加した。
 運動経験のほとんどない太一だったが、フィジカルトレーニングにも音を上げることなくついてきた。逆に言えば太一がついてこれるほどの強度のトレーニングでしかなかった……ということにもなるが、我が弱小サッカー部の感覚で言えばかなり追い込んだ練習だった。

 最初にキック、トラップ、パス、ドリブルなどの技術練習をして、その後試合に向けた戦術的な練習を行う。そして最後にフィジカルをやるという流れだったから、当然みんなその頃にはかなり疲労が溜まっていた。
 毎日行ったのは走り込みだ。ただこれも前述した通り長い距離のジョギングではない。50メートルをインターバルを取りながら10本以上走ったり、寝転がった状態からのダッシュを練習したり、コーンを立ててサイドステップを織り込んだダッシュの練習をしたりした。ポイントは全速力で動く時間と休む時間をはっきりさせ、メリハリを付けたことだ。心拍数が最大になるような運動を何度も行った方がスタミナも付く……という話を聞いたからだ。
 その後は補強として筋トレも行った。自重で行うスクワット、体幹を鍛えるプランク、鉄棒を使った懸垂など簡単なものばかりだったが、身体に刺激は間違いなく入っていた。もちろん2週間足らずでは目に見えて筋肉が付いた……というわけではないが。

 フィジカルトレーニングを取り入れてからの最初の数日は、疲労も強く「こんなことしてないで、もっと戦術的な練習を重視した方が良かったんじゃないか?」という声も上がってきたし、提案した俺自身そんな気もしたのだが、今井キャプテンが「一度決めたことなんだから、最後までこれでいこう!」とみんなを励ましてくれた。
 1週間が過ぎると身体も慣れてそれほど疲労を感じなくなったし、みんなのキレもスタミナも増しているような気がした。
 太一はフィジカルの部分では当然弱かったが、それでも弱音を吐くことなく練習を続けた。太一もみんなと同様に1週間経つと身体が慣れて楽になってきたようだ。その間にも太一はサッカーというものを急速に吸収し成長していった。


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