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15話

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 俺が正気になり落ち着きを取り戻したのは、嵐のような突然の一連の騒動が全て過ぎ去ってからのことだった。

 その時には翔先輩と中野先輩の合コンコンビだけでなく、岸本・川藤・高野・今野先輩のゼロサムチームも完全に姿を消していた。
 騒動のあった校舎裏の着換えスペースには今井キャプテンと俺だけでなく、1年生全員が練習を中止して集合していた。……あれだけの騒ぎになれば当然だろう。そもそも1年生たちもずっと2年生の動向を気にしながら練習していたのだろう。
 そして俺の隣にはいつものふわふわした雰囲気を完全に取り戻したコイツがいた。

「おい、太一!どういうつもりだよ!……冗談じゃないぜ、ホントに……」

 俺は形式的に太一に怒って見せたが、本気で腹を立てていたというよりも、事態がこうしてとんでもない状況に進んでしまったことをただただ嘆きたい気分だった。

「あははは、正洋ごめんね。……なんか先輩たち見てたら黙ってられなくなっちゃってさ、気付いたらあんなこと言ってたんだよね」

 相変わらず太一はえへらえへらと笑いながらの釈明だったので、これには流石の俺も腹が立った。

「俺に謝るってよりも、みんなに謝れよ!……もうサッカー部全体の問題になっちゃってるんだからよ。……下手したら部の存続が危うくなるんだぞ!」

 俺はサッカー部を続けようとする1年生を代表して意見を述べたつもりだった。
 当然他の1年生も事態をすでに理解しているわけだから、キャプテンに不満をぶつけるなり問題の発端となった太一を責める……くらいの動きは起こるはずだと想定していたのだが、1年生たちは何も言わずに俺やキャプテンを見つめていた。
 さっきあれだけ豹変して先輩たちに挑発的な言葉を吐いた太一のことを恐れているのだろうか?あるいは事態がこうして進んでしまった以上、もうサッカー部の存続にも彼らはさして興味がないのだろうか?
  太一は相変わらずヘラヘラしていたが俺もそれ以上怒る気にはなれず、誰も言葉を発さずに重苦しい時間が少しだけ流れた。
  その僅かの沈黙の時間に俺は色んなことを考えていた。まともにミニゲームをやって先輩たちに勝てる気は全くしなかった。二週間程度でサッカーが劇的に上手くなることはない。この期間練習をどう頑張ったところで、先輩たちとの実力差を埋められるはずはなかった。
 土下座でも何でもしてなんとか許してもらえないだろうか?最悪部外者の太一だけでも許してもらうように交渉するか……いや、もういっそこのままバックれちゃってサッカー部の存在自体がなくなれば先輩後輩関係も無いようなものになるんじゃないだろうか……………………


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