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出会い
5話 私に協力するしかないのです!
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「何だ? もったい付けずに話してみろ」
突如表情を変えたはるぴよを胡散臭い表情で見つめる土方だったが、とりあえず話は聞いてくれる様子だった。
「はい、まあ要は私と協力してこのダンジョンを攻略しませんか? ……ってことです」
「はあ? 俺たちの目的は江戸に帰り幕府を復興すること。今しがたそう説明しただろう? 下らんことに時間を割いている暇など俺たちには無い」
「だからです! そのためには皆さんは私と協力して行動することが必要不可欠なのです!」
「……何故だ? 順を追って説明しろ」
依然として自信たっぷりな態度を崩さないはるぴよに、少しだけ土方は聞く姿勢を見せた。
「ふふふ、良いですか土方さん。あなたたち新撰組はたしかに強いのかもしれません。しかしこちらの世界では色々と決まりごとがあり、それを無視しては生きていけないのですよ。こちらで活動してゆくにはダンジョン攻略者としてのギルドからの許可証が必要なのです!」
はるぴよは自らの携帯端末から『ダンジョン攻略者免許』を表示した。
「……それが俺たちと何の関係がある? 俺たちには隊の規律以外に法はないし、会津中将様以外の指示を受けるつもりもないぞ?」
「ところがそうもいかないのです。ギルドから正式に認定された攻略者、及びそのパーティーに属する者でないと報酬も経験値も得られない決まりになっているのです! アイテムですら勝手に持っていったら犯罪になります。まあ今時そんな野良の冒険者はもう絶滅したに等しいですけどね。ともかく土方さんが言う通り近藤勇さん……ですか? その方もこちらの世界に来ているのかもしれません。そして近藤さんを探し、元の世界に戻る、そうした情報を得るためにはこのダンジョンのことを知らなければならないのではないでしょうか? つまりそのためにはあなたたちだけで行動するよりも、正式な免許を持っている私と行動を共にした方が断然有利なのです!」
「……で、お前の目的は何だ?」
調子良くベラベラと喋りつづけるはるぴよに対して土方はカウンターを決めた。
この辺りの機微は流石に武芸者といったところだろうか。単に彼らへの便宜を図るだけでなく、はるぴよにははるぴよの打算があることは当然土方もわかっていたようだ。
「え、わ、私の目的ですか?……それは純粋に皆さんに興味が出てきたっていうかぁ、皆さんの強さに興味が出てきたっていうかですねぇ……皆さんが私のパーティーにいてくれたら心強いなっていうかぁ、皆さんカッコいいなっていうかぁ……」
もちろんその言葉もあながち嘘ではないのだが、目的を完全に明かすわけではないのがはるぴよの小賢しい所だ。
「おい小娘。こっちは真剣に話してるんだ。お前も真剣に話せ。何を企んでいる?」
「まあまあ、土方さん。相手は年端も行かぬ娘さんなんですし、何より我々の命の恩人じゃないですか? 多少はこの子の言う通りに動いてあげても良いんじゃないですか?」
間に入ってくれた沖田の言葉にはるぴよは救われる。
何よりも年端も行かぬ娘さんという言葉である。19世紀の武士から見れば現代人の女子は幼く見えるのだろうか? はるぴよは本当は社会人だし、実年齢で言えばアラサーだし、全然年端も行かぬ娘ではないのだが、それゆえに若く見られるのは嬉しいものだ。
あとまあ実利的な面でも頼りない少女のように見られていた方が恐らく何かあった時は間違いなく責任を逃れられる。
一瞬のうちに打算コンピューターを弾いてそう判断したはるぴよは、きゅるるんとしたあざとい顔を作り純真な少女を演じてみせる。
「……副長。自分もそう思います。とにかく今は情報が何もない状態です。利用できるものは何でも利用しておくべきかと」
沖田の言葉を斎藤も支持したことで土方も折れた様子だ。
「ち、何が諾斎だよ、斎藤。きっちり意見してきやがって……。だがまあそうだな。何のとっかかりもなく落ちてゆく俺たちの前に偶然出てきたのがこの小娘という小さい出っ張りなら、とりあえずは掴んでみるべきか……」
「あ、え、じゃあ私と一緒にパーティーを組んでくれるってことですね!?」
フライング気味に喜色を漏らしたはるぴよに土方は再び釘を刺す。
「だが忘れるな、小娘。俺たちは俺たちの正義で動く。俺たちを縛ることは隊の規律と会津中将様以外何者にも出来んことだ。お前が俺たちの義を邪魔しない限りは協力してやる。……そして俺たちの首領は近藤さん以外存在しない。仮に再会を果たした際、あの人がお前を斬れと命じれば俺たちは一切の躊躇なくそれを実行する。そうであったから新撰組は今まで新撰組たり得たのだ。このこと忘れるなよ?」
土方はそう言い終えると刀の鍔をジャキリと鳴らした。
「はい! わかりました!」
今までの誇りを覗かせる土方の重い一言だったが、はるぴよは実に軽く聞き流して返事をした。
まあそんな先のことはわからないし、本当に近藤何某とやらが同様にタイムリープしてきたとでも言うのだろうか? 絆だかなんだか知らないがそんなものが本当にあるのなら、一緒に飛ばされて今も一緒にいなきゃおかしいだろう。
つまりこちらとしては、可能性のほとんどない近藤何某との再会を引っ張れば引っ張るほど、彼らを操る材料になるということだ。
再び打算コンピューターを弾き終えたはるぴよは、ぎゅふふと小さく笑うとスイッチを入れた。
「やほほ~! ということで配信をご覧の皆さん! はるぴよです!」
先ほどのガルムの群れ退治が多少のインパクトを残したからか同接者は30人ほどに増えていた。
むろん依然として弱小配信者の域を出はしないが、それでもはるぴよは自身の最高記録の同接者数に手応えと自己顕示欲が満たされてゆくのをじわじわと感じていた。
突如表情を変えたはるぴよを胡散臭い表情で見つめる土方だったが、とりあえず話は聞いてくれる様子だった。
「はい、まあ要は私と協力してこのダンジョンを攻略しませんか? ……ってことです」
「はあ? 俺たちの目的は江戸に帰り幕府を復興すること。今しがたそう説明しただろう? 下らんことに時間を割いている暇など俺たちには無い」
「だからです! そのためには皆さんは私と協力して行動することが必要不可欠なのです!」
「……何故だ? 順を追って説明しろ」
依然として自信たっぷりな態度を崩さないはるぴよに、少しだけ土方は聞く姿勢を見せた。
「ふふふ、良いですか土方さん。あなたたち新撰組はたしかに強いのかもしれません。しかしこちらの世界では色々と決まりごとがあり、それを無視しては生きていけないのですよ。こちらで活動してゆくにはダンジョン攻略者としてのギルドからの許可証が必要なのです!」
はるぴよは自らの携帯端末から『ダンジョン攻略者免許』を表示した。
「……それが俺たちと何の関係がある? 俺たちには隊の規律以外に法はないし、会津中将様以外の指示を受けるつもりもないぞ?」
「ところがそうもいかないのです。ギルドから正式に認定された攻略者、及びそのパーティーに属する者でないと報酬も経験値も得られない決まりになっているのです! アイテムですら勝手に持っていったら犯罪になります。まあ今時そんな野良の冒険者はもう絶滅したに等しいですけどね。ともかく土方さんが言う通り近藤勇さん……ですか? その方もこちらの世界に来ているのかもしれません。そして近藤さんを探し、元の世界に戻る、そうした情報を得るためにはこのダンジョンのことを知らなければならないのではないでしょうか? つまりそのためにはあなたたちだけで行動するよりも、正式な免許を持っている私と行動を共にした方が断然有利なのです!」
「……で、お前の目的は何だ?」
調子良くベラベラと喋りつづけるはるぴよに対して土方はカウンターを決めた。
この辺りの機微は流石に武芸者といったところだろうか。単に彼らへの便宜を図るだけでなく、はるぴよにははるぴよの打算があることは当然土方もわかっていたようだ。
「え、わ、私の目的ですか?……それは純粋に皆さんに興味が出てきたっていうかぁ、皆さんの強さに興味が出てきたっていうかですねぇ……皆さんが私のパーティーにいてくれたら心強いなっていうかぁ、皆さんカッコいいなっていうかぁ……」
もちろんその言葉もあながち嘘ではないのだが、目的を完全に明かすわけではないのがはるぴよの小賢しい所だ。
「おい小娘。こっちは真剣に話してるんだ。お前も真剣に話せ。何を企んでいる?」
「まあまあ、土方さん。相手は年端も行かぬ娘さんなんですし、何より我々の命の恩人じゃないですか? 多少はこの子の言う通りに動いてあげても良いんじゃないですか?」
間に入ってくれた沖田の言葉にはるぴよは救われる。
何よりも年端も行かぬ娘さんという言葉である。19世紀の武士から見れば現代人の女子は幼く見えるのだろうか? はるぴよは本当は社会人だし、実年齢で言えばアラサーだし、全然年端も行かぬ娘ではないのだが、それゆえに若く見られるのは嬉しいものだ。
あとまあ実利的な面でも頼りない少女のように見られていた方が恐らく何かあった時は間違いなく責任を逃れられる。
一瞬のうちに打算コンピューターを弾いてそう判断したはるぴよは、きゅるるんとしたあざとい顔を作り純真な少女を演じてみせる。
「……副長。自分もそう思います。とにかく今は情報が何もない状態です。利用できるものは何でも利用しておくべきかと」
沖田の言葉を斎藤も支持したことで土方も折れた様子だ。
「ち、何が諾斎だよ、斎藤。きっちり意見してきやがって……。だがまあそうだな。何のとっかかりもなく落ちてゆく俺たちの前に偶然出てきたのがこの小娘という小さい出っ張りなら、とりあえずは掴んでみるべきか……」
「あ、え、じゃあ私と一緒にパーティーを組んでくれるってことですね!?」
フライング気味に喜色を漏らしたはるぴよに土方は再び釘を刺す。
「だが忘れるな、小娘。俺たちは俺たちの正義で動く。俺たちを縛ることは隊の規律と会津中将様以外何者にも出来んことだ。お前が俺たちの義を邪魔しない限りは協力してやる。……そして俺たちの首領は近藤さん以外存在しない。仮に再会を果たした際、あの人がお前を斬れと命じれば俺たちは一切の躊躇なくそれを実行する。そうであったから新撰組は今まで新撰組たり得たのだ。このこと忘れるなよ?」
土方はそう言い終えると刀の鍔をジャキリと鳴らした。
「はい! わかりました!」
今までの誇りを覗かせる土方の重い一言だったが、はるぴよは実に軽く聞き流して返事をした。
まあそんな先のことはわからないし、本当に近藤何某とやらが同様にタイムリープしてきたとでも言うのだろうか? 絆だかなんだか知らないがそんなものが本当にあるのなら、一緒に飛ばされて今も一緒にいなきゃおかしいだろう。
つまりこちらとしては、可能性のほとんどない近藤何某との再会を引っ張れば引っ張るほど、彼らを操る材料になるということだ。
再び打算コンピューターを弾き終えたはるぴよは、ぎゅふふと小さく笑うとスイッチを入れた。
「やほほ~! ということで配信をご覧の皆さん! はるぴよです!」
先ほどのガルムの群れ退治が多少のインパクトを残したからか同接者は30人ほどに増えていた。
むろん依然として弱小配信者の域を出はしないが、それでもはるぴよは自身の最高記録の同接者数に手応えと自己顕示欲が満たされてゆくのをじわじわと感じていた。
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