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出会い
1話 ダンジョン攻略配信者はるぴよです!
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「ねえ『えまそん』? 見てる? 同接何人?」
「はいはい、見てるよぉ。同接は10人……あ、今9人に減ったわね」
「は? マジで? いい加減にしてよね! 同接ひとケタなんて弱小ザコ配信者じゃないのよ!」
「あ、今8人……あ、7、6……5人になったわね。ヒステリックな声がいけなかったみたいねぇ」
「…………ヤバ、音声スイッチ入ったままだったぁ…………。え~、残る5人のみなさぁん、数あるダンジョン攻略配信者の中から私『はるぴよ』に同接してくれて本当にありがとうございます! みなさんだけが私の支えでございます。どうかこれからも応援して下さいね~」
慌てて猫なで声を作ってリアルタイム視聴者に呼びかけるはるぴよだったが、それに対しても5人の視聴者からは何のコメントも返ってこない。
「……ね、えまそん。マジでどうしたら良いのよぉ……」
今度はきちんと音声スイッチを切り替えたことを確認して、はるぴよは通話先の親友えまそんに泣きついた。
「さあねぇ? 私もダンジョン攻略配信者なんてぜ~んぜん素人だもん。どうしたら良いかなんてアタシに聞かれてもわかるわけないわよ?」
神妙なトーンのはるぴよに対して、えまそんの返事は実に軽くそっけない。
「ヒドイ! この薄情者! 玉の輿!勝ち組主婦!」
「はいはい、そうねぇ。じゃ、アンタもダンジョン配信なんてやめれば良いんじゃない? わざわざ貴重な休みの日にこんなことする意味ある? 別にお金に困ってるわけでもないでしょ? アタシも中学からの同級生っていう縁だけでこうしてサポートしてるわけだしさ。アタシが協力を続けるメリットも別にないしさ」
「……そうもいかないの! 本業なんかより私はこっちで大物にならなきゃいけないのよ! ……感謝はしてるからね、えまそん」
はるぴよが何やらダンジョン配信というものに並々ならぬ情熱を持っているように聞こえたかもしれないが、別に親の遺言だとか世界を救うためだとかのそうした大義思想があるわけではない。
はるぴよは元々アイドルか芸能人になりたかった。だけどその夢は叶わず今は立派な大企業に勤めている。だがその名残というか、自己顕示欲というか、有名になってチヤホヤされたい願望がいつまでも燻《くすぶ》っており、彼女はそれを満たすためにダンジョン攻略配信を始めたのであった。
しばらく進んだ所ではるぴよは異変を察知した。
「あれ……? 人が倒れています! どうしたんでしょうか! これは一大事です! とりあえず行ってみましょう!」
〈やらせくさくね?〉
ここで初めて視聴者からのコメントが飛んできた。同接者は再び10人を超えていた。
「やらせじゃありません! そもそも私のダンジョン攻略に付き合ってくれるような人間なんかえまそん以外1人もいません!」
100メートルほど先、人が倒れているいる場所に向かって駆け出しながら、はるぴよはコメントに答えた。
「あ、どうやら3人いますね。全員男性、しかも着物みたいな服を着ているように見えます! どうしたというんでしょうか!?」
〈だからやらせでしょ? こんな何もないところで冒険者が倒れているのなんて不自然でしょ?〉
大袈裟な実況の声を作ったのがいけないのか、またそんなコメントが飛んできた。
でもそのコメント主も本当に面白くないと思えば配信を切れば良いのに、ずっと見続けてしまっている。やはり興味を惹かれる状況ではあるのだろう。
「あ、何かちょんまげを結ったような髪型をした人……お侍さんみたいな人たちが3人倒れています! もしも~し、大丈夫ですか? どうされたんですか?」
2,3メートルの距離まで近付いたところで大声で声をかけたはるぴよだったが、彼らは依然として倒れたままで何の反応もない。
〈ガチで武士じゃん。どっかでコスプレ流行ってるんか?〉
そのうちの1人の顔が目に入るとはるぴよの目の色が変わった。
「あれ?……よく見ると結構イケメンかも……もしも~し! 大丈夫ですかぁ? 今すぐ新進気鋭・才色兼備のダンジョン攻略配信者はるぴよが助けてあげますからね~……少しでも恩義を感じたらどこかでコラボしてくださいねぇ」
はるぴよが目を付けたのは、苦み走った目元の涼やかな切れ長な目をした男だった。俳優と言っても通用するような雰囲気があった。
はるぴよが倒れている彼らにすぐに近付かなかったのは自衛のためだ。
負傷して倒れているフリをして、助けに来た人間を襲うというのはあまりに古典的な強盗の手法だ。
「あら大変!……大ケガじゃないですか!」
だが近寄って角度を変えて見たはるぴよの目に映ったのは、おびただしく流れ出ている血だった。まだ乾ききってはいないから出血してからそれほど時間は経っていないだろう。
〈ヤバ! 血の量エグ! これは助からないんじゃ……〉
状況を見てほんの一瞬考えていたはるぴよだったが、やがて意を決したようだ。
「今助けてあげますからね。……さあ、視聴者の皆さん! 新進気鋭・才色兼備のダンジョン攻略配信者はるぴよのことをよろしくお願いいたします! 回復魔法!!!」
〈おお、弱小配信者だと思ってたけど、回復魔法は結構スゲェ!〉
薄暗いダンジョンに眩いばかりの光が集まり、倒れている3人を包み込んだ。
「はいはい、見てるよぉ。同接は10人……あ、今9人に減ったわね」
「は? マジで? いい加減にしてよね! 同接ひとケタなんて弱小ザコ配信者じゃないのよ!」
「あ、今8人……あ、7、6……5人になったわね。ヒステリックな声がいけなかったみたいねぇ」
「…………ヤバ、音声スイッチ入ったままだったぁ…………。え~、残る5人のみなさぁん、数あるダンジョン攻略配信者の中から私『はるぴよ』に同接してくれて本当にありがとうございます! みなさんだけが私の支えでございます。どうかこれからも応援して下さいね~」
慌てて猫なで声を作ってリアルタイム視聴者に呼びかけるはるぴよだったが、それに対しても5人の視聴者からは何のコメントも返ってこない。
「……ね、えまそん。マジでどうしたら良いのよぉ……」
今度はきちんと音声スイッチを切り替えたことを確認して、はるぴよは通話先の親友えまそんに泣きついた。
「さあねぇ? 私もダンジョン攻略配信者なんてぜ~んぜん素人だもん。どうしたら良いかなんてアタシに聞かれてもわかるわけないわよ?」
神妙なトーンのはるぴよに対して、えまそんの返事は実に軽くそっけない。
「ヒドイ! この薄情者! 玉の輿!勝ち組主婦!」
「はいはい、そうねぇ。じゃ、アンタもダンジョン配信なんてやめれば良いんじゃない? わざわざ貴重な休みの日にこんなことする意味ある? 別にお金に困ってるわけでもないでしょ? アタシも中学からの同級生っていう縁だけでこうしてサポートしてるわけだしさ。アタシが協力を続けるメリットも別にないしさ」
「……そうもいかないの! 本業なんかより私はこっちで大物にならなきゃいけないのよ! ……感謝はしてるからね、えまそん」
はるぴよが何やらダンジョン配信というものに並々ならぬ情熱を持っているように聞こえたかもしれないが、別に親の遺言だとか世界を救うためだとかのそうした大義思想があるわけではない。
はるぴよは元々アイドルか芸能人になりたかった。だけどその夢は叶わず今は立派な大企業に勤めている。だがその名残というか、自己顕示欲というか、有名になってチヤホヤされたい願望がいつまでも燻《くすぶ》っており、彼女はそれを満たすためにダンジョン攻略配信を始めたのであった。
しばらく進んだ所ではるぴよは異変を察知した。
「あれ……? 人が倒れています! どうしたんでしょうか! これは一大事です! とりあえず行ってみましょう!」
〈やらせくさくね?〉
ここで初めて視聴者からのコメントが飛んできた。同接者は再び10人を超えていた。
「やらせじゃありません! そもそも私のダンジョン攻略に付き合ってくれるような人間なんかえまそん以外1人もいません!」
100メートルほど先、人が倒れているいる場所に向かって駆け出しながら、はるぴよはコメントに答えた。
「あ、どうやら3人いますね。全員男性、しかも着物みたいな服を着ているように見えます! どうしたというんでしょうか!?」
〈だからやらせでしょ? こんな何もないところで冒険者が倒れているのなんて不自然でしょ?〉
大袈裟な実況の声を作ったのがいけないのか、またそんなコメントが飛んできた。
でもそのコメント主も本当に面白くないと思えば配信を切れば良いのに、ずっと見続けてしまっている。やはり興味を惹かれる状況ではあるのだろう。
「あ、何かちょんまげを結ったような髪型をした人……お侍さんみたいな人たちが3人倒れています! もしも~し、大丈夫ですか? どうされたんですか?」
2,3メートルの距離まで近付いたところで大声で声をかけたはるぴよだったが、彼らは依然として倒れたままで何の反応もない。
〈ガチで武士じゃん。どっかでコスプレ流行ってるんか?〉
そのうちの1人の顔が目に入るとはるぴよの目の色が変わった。
「あれ?……よく見ると結構イケメンかも……もしも~し! 大丈夫ですかぁ? 今すぐ新進気鋭・才色兼備のダンジョン攻略配信者はるぴよが助けてあげますからね~……少しでも恩義を感じたらどこかでコラボしてくださいねぇ」
はるぴよが目を付けたのは、苦み走った目元の涼やかな切れ長な目をした男だった。俳優と言っても通用するような雰囲気があった。
はるぴよが倒れている彼らにすぐに近付かなかったのは自衛のためだ。
負傷して倒れているフリをして、助けに来た人間を襲うというのはあまりに古典的な強盗の手法だ。
「あら大変!……大ケガじゃないですか!」
だが近寄って角度を変えて見たはるぴよの目に映ったのは、おびただしく流れ出ている血だった。まだ乾ききってはいないから出血してからそれほど時間は経っていないだろう。
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状況を見てほんの一瞬考えていたはるぴよだったが、やがて意を決したようだ。
「今助けてあげますからね。……さあ、視聴者の皆さん! 新進気鋭・才色兼備のダンジョン攻略配信者はるぴよのことをよろしくお願いいたします! 回復魔法!!!」
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