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9話 衝突①
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何とか蜂屋さんの手を引っ張り、屋上の鉄扉を開けて階段の前まで来た。
そのまま教室まで戻ろうとしたところで蜂屋奈々子は口を開いた。
「あの……九条君。さっきは途中になってしまいましたが、隣のクラスの人たちから聞いてきた話によると、海堂さんは、イジメられていたのではないかという情報がありました……」
流石に俺も立ち止まって彼女の顔を見る。
「いじめられていた?……あの海堂のび太だよ?アイツが誰かから嫌われるなんてあり得ないでしょ……」
「いえ……クラスメイトの多数からいじめられていたというのではなく、どうやら何人かのヤンキーさんたちから集中的にではないか、という話でした……」
その言葉を聞いてまたまた頭に血が上りそうにもなったが、同時にどこか納得がいくような感覚も覚えた。
俺は教室に引き返すのを止め、屋上の鉄扉を再び開いた。
今度は大きな音がしないようなるべく慎重にだ。
「……………………いやしかし昨日は最高だったね、允生君! 」
コンクリートの地べたにだらしなく胡坐を掻きながら、3人は例の如くバカ話をしていた。
ヤツらは外側を向いて座っているため、扉を細く開いた俺が聞き耳を立てていることにまるで気付いていないようだ。
「ふ、だから言ったろ?南十字星のヤツらはバイクに乗って暴走してる時は威勢がいいけどな、バイクから下りて一人一人になっちまえば雑魚だって!ロクにタイマンも張れねえヤツらがヤンキー気取るなってんだ!」
「マジ、それ!允生君が2,3発殴っただけで泣いて謝ってきて……あの情けない顔写真撮っときゃ良かったね! 」
どうやら昨日また隣接する松栄南十字星とやらとケンカが起き、その勝利を振り返っているようだ。
今時殴り合いのケンカなどファンタジーの世界の中の話かと思っていたが、コイツらの口ぶりから察するに本当にそれをしているようだ。
「そう言えばオレも、この前夜の街でゲーセンで遊んでたら何かチンピラみたいのに絡まれてよぉ。『表出ろ! 』とか言うから仕方なく相手してやったけどよぉ、マジでヒョロガリに殴られても全然効かんかったわ。10発くらい殴られて鬱陶しかったから、こっちは1発タックルかましたったら相手は勝手に地面に頭ぶつけて、もうそれだけでKOですわ。マジ楽勝! 」
今度は飯山が誰に訊かれてもいないのに1人で話し出した。
まあ確かに100キロ近いであろう飯山がぶつかってきたら普通の人間はひとたまりもないだろう。飯山の普段の動きを見ていると如何にも鈍重そうに見えるが、アイツもいざとなれば素早く動くのだろうか?
「まぁ、まだまだ南十字星のヤツらとの抗争は続くからな、街では普段から油断するなよ」
やはりコイツらのリーダーは允生のようだ。允生の言葉にアキラも飯山も頷く。
「しっかし、さっきのアイツ!あの陰キャのツレの奴、マジで来なくなっちゃったねぇ!さっきのアイツらの泣きそうな腐り切った面、俺マジで笑っちゃいそうだったんだけど! 」
……俺たちのことだ!
そして間違いない!のび太のことだ!
思わず鉄扉を抑える手に力が入った。今にもヤツらの前に飛び出したくなるのを理性で必死に抑える。
「ま、そりゃあな、アイツらが先に仕掛けてきたようなもんだからな。俺たちが舐められたらお終いだろ?つーかアイツもマジで雑魚だよな。ちょっとちょっかい出しただけで来なくなって学校辞めちゃうなんてな。雑魚中の雑魚だろ?」
允生の言葉に続き、3人で揃えたかのようなギャハギャハという汚い笑い声が響いた。
「允生君、次はどうするの?アイツらはもう終わり? 」
「バーカ、最初に絡んできたあの女のことをそのままにしておいちゃダメだろ?俺たちも正々堂々とヤンキー魂に則ってきっちりと落とし前を付けないとな」
「よ、允生君、流石!女にも容赦ない!鬼畜! 」
飯山の相槌に3人でゲハゲハと笑い声が追加された時、俺はもう自分を抑えることが出来なかった。
そのまま教室まで戻ろうとしたところで蜂屋奈々子は口を開いた。
「あの……九条君。さっきは途中になってしまいましたが、隣のクラスの人たちから聞いてきた話によると、海堂さんは、イジメられていたのではないかという情報がありました……」
流石に俺も立ち止まって彼女の顔を見る。
「いじめられていた?……あの海堂のび太だよ?アイツが誰かから嫌われるなんてあり得ないでしょ……」
「いえ……クラスメイトの多数からいじめられていたというのではなく、どうやら何人かのヤンキーさんたちから集中的にではないか、という話でした……」
その言葉を聞いてまたまた頭に血が上りそうにもなったが、同時にどこか納得がいくような感覚も覚えた。
俺は教室に引き返すのを止め、屋上の鉄扉を再び開いた。
今度は大きな音がしないようなるべく慎重にだ。
「……………………いやしかし昨日は最高だったね、允生君! 」
コンクリートの地べたにだらしなく胡坐を掻きながら、3人は例の如くバカ話をしていた。
ヤツらは外側を向いて座っているため、扉を細く開いた俺が聞き耳を立てていることにまるで気付いていないようだ。
「ふ、だから言ったろ?南十字星のヤツらはバイクに乗って暴走してる時は威勢がいいけどな、バイクから下りて一人一人になっちまえば雑魚だって!ロクにタイマンも張れねえヤツらがヤンキー気取るなってんだ!」
「マジ、それ!允生君が2,3発殴っただけで泣いて謝ってきて……あの情けない顔写真撮っときゃ良かったね! 」
どうやら昨日また隣接する松栄南十字星とやらとケンカが起き、その勝利を振り返っているようだ。
今時殴り合いのケンカなどファンタジーの世界の中の話かと思っていたが、コイツらの口ぶりから察するに本当にそれをしているようだ。
「そう言えばオレも、この前夜の街でゲーセンで遊んでたら何かチンピラみたいのに絡まれてよぉ。『表出ろ! 』とか言うから仕方なく相手してやったけどよぉ、マジでヒョロガリに殴られても全然効かんかったわ。10発くらい殴られて鬱陶しかったから、こっちは1発タックルかましたったら相手は勝手に地面に頭ぶつけて、もうそれだけでKOですわ。マジ楽勝! 」
今度は飯山が誰に訊かれてもいないのに1人で話し出した。
まあ確かに100キロ近いであろう飯山がぶつかってきたら普通の人間はひとたまりもないだろう。飯山の普段の動きを見ていると如何にも鈍重そうに見えるが、アイツもいざとなれば素早く動くのだろうか?
「まぁ、まだまだ南十字星のヤツらとの抗争は続くからな、街では普段から油断するなよ」
やはりコイツらのリーダーは允生のようだ。允生の言葉にアキラも飯山も頷く。
「しっかし、さっきのアイツ!あの陰キャのツレの奴、マジで来なくなっちゃったねぇ!さっきのアイツらの泣きそうな腐り切った面、俺マジで笑っちゃいそうだったんだけど! 」
……俺たちのことだ!
そして間違いない!のび太のことだ!
思わず鉄扉を抑える手に力が入った。今にもヤツらの前に飛び出したくなるのを理性で必死に抑える。
「ま、そりゃあな、アイツらが先に仕掛けてきたようなもんだからな。俺たちが舐められたらお終いだろ?つーかアイツもマジで雑魚だよな。ちょっとちょっかい出しただけで来なくなって学校辞めちゃうなんてな。雑魚中の雑魚だろ?」
允生の言葉に続き、3人で揃えたかのようなギャハギャハという汚い笑い声が響いた。
「允生君、次はどうするの?アイツらはもう終わり? 」
「バーカ、最初に絡んできたあの女のことをそのままにしておいちゃダメだろ?俺たちも正々堂々とヤンキー魂に則ってきっちりと落とし前を付けないとな」
「よ、允生君、流石!女にも容赦ない!鬼畜! 」
飯山の相槌に3人でゲハゲハと笑い声が追加された時、俺はもう自分を抑えることが出来なかった。
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