上 下
126 / 159
打倒、物語の強制力

怒りは大人へ

しおりを挟む
後ほど、姿絵を描く人物を手配してから連絡する、と言われ、初回の視察に手応えを感じたお兄様。

「やっぱ、大人どもが仕事しやがらなかったから、健気な子供は受けが良い」
良い笑顔のお兄様。
「まぁ、その分、大変っちゃ大変だけどね」

「お兄様だけが大変なのが申し訳ないですわ。私で出来る事はなんでもやるのですわ!」
握り拳でやる気をアピールです。
あら、最近握り拳が多い気がしますわ?

「ディが居てくれるから、僕は頑張れる」

「まぁまぁ!私もですわ!お兄様のためなら、全力でチィちゃんも止めてみせますわ!!」

「…うん、確かに、今一番の懸念ではある。何かを破壊しそうになったら全力で止めて?」

「もちろんですわ!!
いいですこと、チィちゃん!お出かけの際は、必ず私と手を繋いで行くのですわ!」「ハイ!」

「うん、なんか違う気がする」

「エミリオ、諦めろ。
リア嬢は、エミリオのために、今一番必要な事で、ものすごくいい案だと、本気でそう思っている」
ホネマント、いきなりなんですの?

「うん、わかってはいる。ディがいつでも真剣なのは知っている。
…微妙にズレている事も」
え、お兄様まで残念な顔をするのは何故ですの?
チィちゃんはこんなにも喜んでくれてますのに!

「私と手を繋いでいたら、チィちゃんは私を引きずってまで暴走しないですわ!
私もチィちゃんも何処か行かない、シチミは監視しやすい、チィちゃんはゴキゲンだし、破壊活動をしない。
ほら!一石二鳥どころか、三鳥も四鳥もありますのよ?!」

「ちゃんと考えてるんだよなぁ」
ホネマント、馬鹿にしてますの?

「理にかなってるから否定もできない、けど、コレジャナイ感」
え?お兄様、違いましたの?

「でも今、視察中で、イチイの暴走は死活問題に発展するからヨシとする。
この安定のディ品質、安心する」
そうでしょう、そうでしょう。お兄様、ぎゅっとしても良いんですのよ?
腕を広げたら、あら、チィちゃんが釣れましたわ。
チィちゃんとぎゅっとします。

「うほー、鼻血でそう」

「出すなよ?」
…お兄様、目が据わってますわ。



そんなこんなで、馬車は森の近くの村に着きました。

さぁ、視察第2弾ですわ!


護衛で来ていた兵士さんが先に村長さんをお迎えに行き、私達は村の入り口で待機です。
馬車の置き場とかね、イロイロあるでしょうから呼ばれるまで待ちましょう、ということになりましたの。

そしたら、兵士さんに連れられたお爺さんを先頭に、大勢の村人がやって来ましたわ。
え?どうしましたの?

「エミリオ様!村長を連れて来ましたよ!」

「ああ、ありがとう。村長、はじめまして。
僕が侯爵代理のエミリオ・エアトルで、こっちが妹の」

「ユーディリア・エアトルですわ」ここでもスマイル0円ですわ! 

「な、な、なんと!本物の子供ではないか?!」

「だから言っただろ、エミリオ様はまだ小さいのに素晴らしい方だから、なんでも相談したらいい、って」

「小さいって、子供でも未成年は皆子供じゃろう!
わしらは学園卒業間近とか、そういう青年を想像しとったんじゃ!!
ほんとうに、本当に、このようなお小さい方がわしらのことも考えてくださっていると…」

「だって、実際に森が安全になってきたのは、エミリオ様達が来てからだぞ?!」

「そうじゃ、本当にそうじゃ。
今ままで何度も何度も何度も、それこそ、わしが若いころから、森の魔物討伐を大々的にやってくださいと、わしらの生活がままならなくなってきていると、あれほど、あれほど陳情を出してきたのに、定期巡回のみ。
それがこの数年で、魔物がほとんど出なくなり、森が清浄になってきました。
薬草なども取れるようになりました。
去年の秋など木の実もキノコも、魔物に会うことなく取れました。
大人の侯爵様に言っても、軍の伯爵様に言っても、何も、何もしてくださらなかった。
してくださったのは、こんなにお小さいお方。そのお方の方がキチンと考えて下さるなんて。

わしらは、わしらは、エミリオ様、貴方様に忠誠を誓います。
どうか、どうか、大人になっても、このままでいてくださいますように」
そういって、村人全員でお兄様に向かって膝をついて、祈りだしましたわ。

これにはお兄様もびっくりです。

「んんんっ!
ありがとう!とりあえず、顔を上げて欲しい!
今ままで、僕達の身内がすまなかった。
これからは、僕達が!!貴方達の忠誠に報いるように頑張って仕事をするよ。
だから、僕達をキチンと覚えてね、他の奴らに惑わされないでね。
ああ、兵士くん、君、えーっと「シンです!」そうそう、シンくん。君が窓口になってくれて統括に報告上げてくれてもいいよ。
統括からは必ず僕に上がってくるから。
僕と妹のユーディリアは、この領地を良いものにしたいと思っている。
共に成長していこう!」

「「「わあぁぁぁーーー!!!!」」」
村の皆さんからは拍手と大歓声ですわ。

「謝って下さった、お貴族様が、今まですまなかったと言って下さった。
お願いします、お願いします、どうぞこのままわしらを見捨てず、大人になってくださいませ」

…大人への不信感、ハンパないですわ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

なんで元婚約者が私に執着してくるの?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,043pt お気に入り:1,844

殺人鬼転生・鏖の令嬢

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:37

ヒマを持て余した神々のアソビ ~ 白猫メルミーツェは異世界をめぐる ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,236pt お気に入り:27

【連載版】「すまない」で済まされた令嬢の数奇な運命

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:4,880pt お気に入り:226

真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

BL / 完結 24h.ポイント:2,346pt お気に入り:5,140

処理中です...