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打倒、物語の強制力

家令に恵まれないエアトル家?

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サンショウが馬に乗り先導しながら本邸へ向かいます。

そして、やっぱり、すんなりいかなかったのです。

家令が家に入れようとしません。玄関前で仁王立ちです。

お兄様が前に出ました。

「僕達は現侯爵の命令だと言われて領地へ来たのだが?」

「私どもは、双子がこの家には来ないと聞いております」

「それは、誰から?」

「侯爵様からは、双子がとてもワガママだと聞いております。
そこに、エアグラフ伯爵様が、使用人の手に負えないであろうから、こちらで迎えに行くと!何とかしようと言われました!!」

「つまり、アンタらは、雇い主であるエアトル侯爵の命令よりも、分家の伯爵家の言う事を聞いた、と言うことで間違いないな?」

「なっ!違います!!」

「では、どう違うのか、納得のいく説明を求める」

「やはり、生意気でワガママな子供というのは本当だったのですね!!」

「僕は、オマエが侯爵の命令を聞かなかった理由を聞いているのだが?」

「双子がワガママだからだ!そんな当たり前のことを聞くなんて、やはり、双子は無能なのだな!!」

「なるほど、個人的な感情で雇い主の命令を聞かない、暴言を吐く使用人というのは、この地では普通だと?
王都とはずいぶんと違うのだな?」

「田舎者だとバカにするのか?!」

「なら、ここの常識が王都で通用するのか、試してみればいい。
オマエのように僕達に仕えたくない人間に選択肢を与えよう。
オマエだけでは不平等だろう?
使用人全員を集めてくれ、今すぐだ。
そのぐらいは出来るだろう?」
フンっと、お兄様が鼻で笑って馬鹿にしたようにいうと、

「双子に仕えよう、なんて人間はここにはいないと思いますよ、後悔するのはどっちでしょうね!」
捨て台詞を吐いて、屋敷へ向かう家令。

お兄様のイライラが伝わってきますわぁ。
シラヌイ様が護衛としてお兄様の1歩後ろ、私の隣にいますが〝無〞の表情です。
反対隣には先生が居ますが、ため息をついて、首を横に振っています。諦めの境地です?
そして、後ろのセリの殺気が駄々漏れで、怖くて振り向けません。

「サンショウ!
近くにセンバ商会の支部があると言ってなかったか?馬ならどのくらいで到着する?」
「2時間もあれば」
「頼みがある」
「何なりと」
お兄様が指示を出します。

「シラヌイ様」「ハッ」
「多分、今日も宿へ泊まります。途中に宿とかあったかどうか、覚えてます?」
「大丈夫です」

「セリ、今日の夜もディの護衛頼むね」
「おまかせください」

「先生、もう一泊お付き合いください」
「もちろんです。ご立派ですぞ。思うようになさいませ」
先生がにっこり笑って、サムズアップしながら親指を立てます。
隣で、私も同じポーズをとります。
やっと、お兄様が少し笑いました。


わらわらと使用人達が出てきました。

お兄様も私も子供なので、使用人達の顔が見渡せません。
サンショウに後ろから支えて貰って馬にまたがります。
上から見下すスタイルで、話し始めます。

「これで、全員か?
僕がエアトル家の嫡子、エミリオ・エアトルだ」

あら、お兄様、風魔法使って声を全員に届けてますわ。
もうこんな使い方も出来ますの?
相変わらず、魔法制御が素晴らしいですわ。

「今、風魔法を使って全員に声を届けている。
なので、あとで、聞いていない、聞こえなかったなどの苦情は受け付けない。

心して聞け!

僕達は、侯爵の命令でここまできたが、貴方達は僕達には仕えたくないようだ。
僕達も侯爵家の人間だ。そんな奴らに支えて欲しいと思わない。
なので、選択肢を与えよう。

1つ!王都にいる侯爵にそのまま仕えたいという者!
王都までの馬車を用意しよう!
明日の朝6時までに荷物をまとめ、ここに同じように集まるように。時間厳守だ!

2つ!侯爵家にはもう仕えたくないという者!
紹介状を用意しよう。出ていって貰って構わない!
これを選んだ者は明日の朝6時半に同じように荷物をまとめ、玄関のエントランスへ。
紹介状を書くにあたり、名前と配属の確認作業を行う。

3つ!このまま僕達に仕えるという者!
裏切られても困る。魔法契約を結んでもらう!
これを選んだ者は明日の12時までは通常作業を行ってくれ。
12時から契約を行う!

今晩じっくり考えてくれ。
以上、解散!」

ザワザワと波紋が広がります。

「はぁ?!オマエみたいな子供にそんな事出来るわけないだろう!!」
家令が叫びます。

「先程の話を理解してないのか?
。問答無用で解雇しても構わないんだが?
選択肢を与えただけ、優しいと思わないのか?」

「侯爵様からの説明を求める!!」

「ならば、明日の朝、6時に荷物をまとめてここに来ればいい。
家令、キサマには1以外の選択肢を認めない。
王都で侯爵に好きなだけ聞けばよかろう?
侯爵がオマエに興味を持てば良いな?」
フンっと鼻で笑ってお兄様は答えます。

「ついでだ、他に質問のあるヤツはいるか!」
お兄様が尋ねると、またザワザワとし始めましたが、少し声が拾えました。

「え?偉そうだけど、ちゃんと話を聞いてくれるの?」
「そうだよ、無礼なことした使用人は問答無用で解雇するよな?」
「選択肢なんて貰えたことないよな?」

そうでず、そうです、お兄様は悪ぶってますが、優しいのです!

「は、ハイ!聞いても良いでしょうか!」
メイドの1人が手を上げます。

「許す」

「あ、あの、そのままお仕えした場合、契約内容は、お、お給料とかは同じでしょうかぁ!」
ガクブルしながら涙目で、スカートの裾を握り締めながら叫ぶメイドさん。
何か、ご事情がお有りなのかしら?

「ああ、そこも気になるか。
基本は同じと思ってくれ。
ただ、今までは侯爵大人1人だったが、僕達は双子、子供2人、あとは専属医者、護衛も連れている。
その辺が少し変わるから、今までの契約書を見て、契約内容は後日詰める。
明日の契約は僕達を裏切らない、という契約のみだ。
他には?
……ないな?では、解散!」

そして、私達は一旦本邸を後にしました。
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