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溺愛に、振り回される?振り回す?

幕間 俺の唯一

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俺はシラヌイ・センバ。

母親は、センバ辺境伯の直系で、現在の御当主様の妹だ。
だから、センバ辺境伯様は叔父に当たる。

俺が生まれた当初はお祖父じい様がまだ当主で、どうやら俺が初孫だったらしく、お祖母ばあ様と二人、目に入れても痛くないとはこういう事だろう、というのを体現してくれた。

具体的には、それこそ、なんでも与えられた。

俺の一番最初の記憶は、ハイハイした頃、動くのが楽しくて、どこまででも行きたい、動きたい、と思ってるのに、床に置かれている大量のおもちゃが邪魔で、避けて行こうにもそこらじゅうにあるし、ふんずけたら、体がままならないため自分がコケるし、どうしてくれよう、と、自分的には物凄く睨んでいたら「おお、これが気になるのか!」とお祖父様が俺とそのおもちゃを抱き上げて交互に見ているな、と思って、しばらくしたら、似たおもちゃが大量に床に並んだ事がある。
俺の行く手を阻む物が増えている!?と思って、お祖父様を見たら「そうかそうか、嬉しいか!!」ってニッコニッコで俺の頭をなで回すから、イヤだと泣けなかったものだ。

それ以来、なるべく物に興味を示さないようにしてきた。
ただ、体を動かすのは楽しかったから、お祖父様の体をよじ登ったり、叔父様にローリング体当たりをかましてみたりして遊んでいた。

3歳頃だったか、2~3日俺だけでお祖父様の家に預けられたことがある。
その頃は、叔父様もまだ結婚していなかったから、叔父様も家にいて、叔父様に遊びながら体術を習っていた。
叔父様が「シラヌイ、お前、スジが良いな。たぶん、辺境にいる同じくらいの子供達より強くなるぞ。
あ、魔の森行ってみるか?」
そう言って、叔父様と数人の兵士達と一緒に、魔の森に連れて行ってくれた。

初めて入る魔の森は、ビックリする程楽しかった。
思う存分体を動かせた。
思いっきり走っても叔父様達はついてきてくれるし、森の木に登ったり、蔦をブランコのように揺らして隣の木に飛び移ったり、いくらでも遊べた。

だから全く気づかなかった。

数人の兵士達も一緒に来ているということは、それだけ、大人達が周囲に気を配ってくれていたということに。

どれだけ早く走っても叔父様達がついてきたので、一度、振り切ってみたくなった俺は、出し抜くためにはどうするべきか?と考えた時、身軽さしか勝てるものはないと思った。

3歳児が大人に勝てるわけがないと気づくべきだったが、まぁ、3歳児には考えもつかないわな。

ひときわ大木があったから、それに登った。
上へ上へと、どんどん進んだ。

「シラヌイ!!その辺で止めておけ!!」
そんな叔父様の言葉も聞かず、逆に、その言葉を聞いたからこそ、大人はここまで来れないんだ!と嬉しくなって、余計に上を目指した。

ふと視界が開けてたので周りを見ると、木がまばらになっていた。
おお、と思って、手頃な枝に立つと、しかしそこに、何か飛んでくる?と思ったら、目の前に大人の大きさもあるグリフォンが、本当にニヤっと笑って、俺を捕獲しようと鉤爪を伸ばして迫ってきたが、俺は硬直していまっていた。

爪が届くと思った瞬間、抱きしめられて、下へと落ちて行って、俺は意識を失った。

気がつくと病院のベットの上にいた。

叔父様にめちゃくちゃ怒られた。
お祖母様に抱きしめられて、号泣された。お祖父様は、そんなお祖母様の背中をさすっていた。

俺が落ちた後、どうなったかと言うと、

俺を抱きしめて落ちたのはその年の新人で、肩にグリフォンからの傷を受けてしまっていた。
落ちた新人が、なるべく勢いを消そうと、身体強化で木を蹴りながら落ちて来た所を、叔父様が受け止めたらしい。

俺を助けてくれた兵士にお礼を言いたいと、病室に連れて行ってもらった。

肩に包帯を巻いたその人は、俺を見て一番始めにこう言った
「どっこも怪我してませんね?!良かった!!」って、にっこり笑って俺の頭をなで回した。
「ご、ごめ、ごめんなさいぃぃ」俺は泣きながら謝った。

そしたらその人は
「謝罪じゃなくて、ありがとうの感謝の言葉が欲しいです。
俺は、兵士として、きちんとぼっちゃんを守れたと胸を張りたいんで!
さ、ぼっちゃん、言うべき言葉は?」

「あ"、あ"、あ"じがどうございばじだぁぁ!!」俺は90度にお辞儀をして、泣きながら言った。

この時、俺も守る人間になりたいと思ったんだ。
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